経験者に学ぶ!DIYリノベで作る「自分が主役の暮らし」[第2回]
前回に引き続き、一軒家をDIYリノベした川名恵介さんにお話を伺いました。今回は、DIYリノベの工程ごとに、どのような観点で部屋づくりを進めていったのか、ノウハウと共に紹介していきます。第2回は、解体の様子を中心に探っていきましょう。
株式会社LIXILが運営しているリクシルオーナーズクラブ「住み人オンラインー住まいと暮らしのレシピ集」より抜粋してお届けします。
発想の源は、シャレたギャラリー&カフェ
前回は、DIYリノベをはじめる前に、理想の暮らし方や、好みのインテリア・テイストを把握しておくことが大切だとお伝えしました。
目指すライフスタイルは人それぞれですが、川名さんがDIYリノベに挑もうとした時には、どのようなイメージを持っていたのでしょうか。
「趣味が写真なので、自分が撮った写真を、家に飾りたいと思っていました。額を壁に立てかけた時に、さまになる部屋にしたくて。
お手本にしたのは、ギャラリーが併設されたカフェです。『落ち着きある、センスのよいしつらえと、清涼な空気感を再現したい』というのが、構想の出発点でした」
「写真は、まだ飾れていないのですが…」と、川名さんは話しますが、リノベーションされたお宅は、白を基調にした澄んだ雰囲気と、ぬくもりあるカフェ風のしつらえが印象的で、思い描いた「ギャラリーカフェ」のイメージを、手づくりで実現させたことに驚きます。
壁や柱の解体はプロに相談してから
メインとなるDIYリノベの舞台は、1階のリビング・ダイニングです。
1階はもともと、和室と洋室で構成された縦長の間取りでした。
「和室は、日当たりが悪いせいもあるのでしょうが、暗い印象でした。和室の垂れ壁(天井から垂れ下がった壁)のせいで、窓からの光がさえぎられていたんですね。
それなら、垂れ壁と間仕切り壁を取り払い、和室と洋室をひとつにして、日の当たる広々としたLDKにしようと考えました」
川名さんは間取りを変えるため、解体に挑むことにしました。
しかし、自分の家に、自らの手で穴を空けるとなると、勇気がいりそうです。
「初めは恐る恐る、バール(大きな栓抜きのような棒状の鉄製工具)で壁を剥がしていました」と、川名さんは当初の思いを振り返ります。
DIY初心者にとって心配なのは、「壁(柱)を取り除くと、構造に影響を与えるのではないか」という点でしょう。
川名さんは、「自分でも調べましたが、解体にあたってはプロに相談し、慎重に進めていきました」と話します。
そんな川名さんから、壊してよい壁、よくない壁の見分け方について、アドバイスいただきました。
「構造用合板が張られた壁は耐震性に関係します。石膏ボードは壊しても問題ありません。構造用合板は叩くと密度の詰まった音、石膏ボードは軽い音がするので壁を叩いた音でもある程度分かりますが、電気スイッチやコンセントのカバーを外して見るのが一番分かりやすいと思います。また、内部に筋交いと呼ばれる木材があった場合、取り払うことはできません。」
※これらの見分け方は、あくまでもプランニングをする際の目安としていただき、実際に壁を解体するときは、プロのリフォーム業者にアドバイスを受けるようにしましょう。
川名さん宅で解体した壁は、家全体で見ればごく一部。
それでも、なくなると開放感が生まれ、晴れやかな雰囲気に一変しました。
「植物を育てるのも趣味だったので、草木が育ちやすい環境にもなり、大満足です」と、川名さんも笑顔です。
現在の川名さん宅では、すくすくと育つ観葉植物があちこちに置かれ、インテリアになっています。
天井板をはがしダイナミックな空間へ
和室の垂れ壁を撤去した川名さんは、続いて、和室と洋室の天井板をはがす工程に移りました。
天井を解体した理由は、「インテリア雑誌やネット画像を眺めたり、カフェをめぐったりする中で、『解放感がある部屋は、どれも天井が高い』と感じていたから」と、川名さん。
「実際に解体して天井の木組みの梁が現れると、平板なのっぺりした印象から、凹凸のある変化に富んだ印象になり、部屋の雰囲気も全然違うものになりました」
天井の解体は、構造上は問題ないことが多いそうですが、「キッチンの天井は、防火対策の意味で石膏ボードが張られていることが多いので、壊さないように」と、川名さんからのアドバイスがありました。
川名さん宅ではDIYによって天井が50cm高くなり、のびやかな空間に。
その一方で、隠されていた無数の電気配線が丸見えになってしまいました。
「配線整理と照明の設置には、電気工事士の資格が必要です。自分の手には負えないので、業者に依頼しました。間違ったやり方をすれば、感電や火事など命が危険にさらされるので、無理は禁物です」
「昔から梁のある家に憧れていた」という川名さんは、「念願の夢が叶い、DIYリノベを終えた今も、気持ちよく過ごしています」と、リラックスした表情で話します。
解体後は、塗り壁やフローリングのベースを整えるために内装の下地をつくり、ペイントやフローリングに取り組んでいきます。
次回、その様子を解説していただきましょう。
お話を伺った方
川名恵介さん
1986年、東京生まれ。築25年の一軒家をセルフリノベーションしたDIYリノベの名人。奥さん、5歳になる息子さんとの3人家族。「自分の経験が誰かの役に立てば」という思いから、DIYブログ「99%DIY」や、You TubeなどでDIY情報を発信中。
https://99diy.tokyo/
文◎井口理恵 撮影◎平野晋子