高級車のためじゃない! ファミリーユースだからこそ欲しい、母屋一体のビルトイン式ガレージ

高級車のためじゃない! ファミリーユースだからこそ欲しい、母屋一体のビルトイン式ガレージ

シリーズ 男のリフォーム 「ガレージ」本格派のこだわり 第1回

株式会社LIXILが運営しているリクシルオーナーズクラブ「住み人オンラインー住まいと暮らしのレシピ集」より抜粋してお届けします。

我が家のリフォームをするときに立ちはだかる高い壁の1つが「ガレージ」です。屋根付きのガレージに自分の愛車が収まった姿は夢見ても、いざリフォームという話になると、なかなか家族の理解が得られないもの。けれど、しっかり準備をして論理的に説得すれば、必ず家族の理解も得られます。
そのためには、しっかりとガレージについて知っておくことが大切です。そこで、モータージャーナリストの森口将之さんに、そもそもガレージとは何か、どんな楽しさがあるのか、そしてどう家族を説得していけばいいのか、ということを伺っていきましょう。

母屋と一体になったガレージがおすすめ

「ガレージは大きく分けて2つあると思います。1つは、家族が乗るためのファミリーカーを収納するためのガレージ。もうひとつは、自分だけの愛車、例えばスポーツカーやオープンカー、あるいはちょっと高級なクルマを収めるためのものです」

 その2つで大きく違うことはあるのでしょうか。

「基本的な部分では大きく変わることはありません。けれど、使われ方が違ってきますね。なので、ご家族を説得するにも、アプローチの仕方が変わってくると思います」

 なるほど。ではまず、ファミリーカーを入れるガレージというのは、どんな使い方をする傾向があるのか、教えていただきましょう。

「日本はガレージの形態が独特です。アメリカなどは、住宅の敷地面積が広いので、母屋とは別にガレージを建てます。けれど日本は、とくに都市部では敷地面積が狭いし、狭小住宅が多いので、母屋と一体になったビルトイン式のガレージを作ることが多いんです」

 ビルトインにすることで、メリットがあるのでしょうか。

「一番のメリットは、雨の日でも濡れずにクルマに乗り込めるということです。カーポートの場合、クルマの上に屋根があっても、そこまでに行くうちに人が濡れますし、風が強ければクルマは雨にあたりますし、枯れ葉やゴミも入ってきます。そういうものが入ってこないだけでも、ガレージはクルマにとってはいいんですよ」

充電が必要なEV車は雨にあてたくない

 確かに、雨風からクルマを守るうえで、ガレージは効果を発揮しそうですね。そのほかにもメリットはあるのでしょうか。

(c)大崎慎一

「趣味のクルマではない、日常のクルマだとつい忘れがちなのですが、実はしょっちゅう乗るファミリーカーこそ、運転前の点検は大切です。ガレージ車があると、タイヤの空気圧やオイルなどをチェックしやすかったり、ちょっとした姿勢の変化などに気づきやすいんです。日常の道具だからこそ、簡単な点検をさらりとできるスペースがあるのはとてもいいことなんですね」

 お子さんの送り迎えや、通勤で毎日運転して駅まで送る、あるいは買い物に行くといったちょい乗りが多いからこそ、クルマのわずかな変化に気づきやすい環境を作れるというのは大切というわけです。

「将来、プラグインハイブリッド車やEVを購入しようと思っている方は、屋根付きのガレージはおすすめです。充電用の電源は、家庭用電源とは別に設置することになります。その場所も、雨ざらしで、ほこりまみれになりかねない外よりも、ガレージの中の方が絶対にいいと思いますね」

ガレージは収納スペースにも

 さらに、ガレージには、クルマの置き場所という以外に、収納スペースになる側面もあります。

「シーズンタイヤの収納場所ですね。東京など都会の住まいでも、家族で長距離のドライブや旅行に出かけるという方なら、冬タイヤは必携です。ガレージがあれば、あの大きいタイヤをそのまましまっておけます。タイヤは、少し空気を抜いて、横向きで積み重ねるのが一番傷みにくいのです」

 カーポートなどの駐車スペースですと、タイヤ収納ケースなどやカバーに入れることが多いようですが、見た目もよくありません。家の中に置くのも無理。自分でタイヤ交換をする方なら、車載工具より少し使い勝手のいいジャッキ、十字レンチ、空気入れがあれば楽にできます。

「もちろんそれだけではありません。最低限の工具はもちろんのこと、例えばスポーツウェアや釣り具、アウトドアウェアなど趣味のものを置くこともできますし、物置代わりに家の中の邪魔なものを置いておくこともできます。自転車なども屋根のあるところにしまっておいたほうが傷みにくいですし、メンテナンスも楽です」

 自分のスポーツタイプの自転車だけでなく、子どもの自転車なども入れて置くことができれば、奥様を説得しやすそうですね。

「私はオートバイのライダーでもあるのですが、ガレージがあるととてもいいのです。クルマに比べて機械部分が露出しているバイクは、屋根付きの場所に保管するかどうかで、寿命にも大きく差が出てくるのです」

都市生活者こそガレージを作るべき理由

 しかし、収納としてガレージにいろいろ押し込んでしまうと、まるで物置のようになって雑然としてしまいそうですが、そのような懸念はないのでしょうか。

「実は、地方の家のガレージというのは、ご近所の目を気にするからなのか、扉やシャッターで完全に閉め切れる形のガレージが多いのです。一方、都会のガレージは扉などがなく、中が見える形のものが多いんですね」

 それは意外です。都会の方がプライバシーを重視して、外からは見えないようなガレージを建てられる方が多いような気がします  。

「おそらく住宅地の狭さと、生活のリズムにあるのだと思います。都会ではどうしてもお隣との距離が近いし、夜遅くなってからの帰宅、ということもしばしばです。クルマの出し入れで、いちいちシャッターを開けたり閉めたりしなくてはならないとなると、どうしても時間もかかるし、音もするのでご近所迷惑になります。都会の場合、開放型のガレージが多いのはこうした理由ではないでしょうか」

 外から見えるガレージならば、中にいろいろなものを置くにしても、見た目や母屋の外観との調和を気にして、整理をきちんとするようになるかもしれません。その上で、家の中においておくと邪魔なものはまとめられるので、家の中もスッキリしそうです。これは、いい説得材料になるかもしれません。

 次回は、いよいよ趣味のクルマのガレージを作るために、どう説得していくかを伺っていきましょう。

お話を伺った方

森口将之さん

森口将之さん

モビリティ&モータージャーナリスト。
移動や都市という視点から自動車や公共交通を精力的に取材。日本カー・オブ・ザ・イヤー選考委員。著書『パリ流環境社会への挑戦』(鹿島出版会)『これでいいのか東京の交通』(モビリシティ)『富山から拡がる交通革命』(交通新聞社新書)など。

文◎坂井淳一 写真◎末松正義 森口将之
取材協力◎久我敏徳 大崎慎一