「次の10年」も快適に暮らせる収納を 片付けのプロが直接アドバイス!

「次の10年」も快適に暮らせる収納を 片付けのプロが直接アドバイス!

10年目の収納 [第3回]

株式会社LIXILが運営しているリクシルオーナーズクラブ「住み人オンラインー住まいと暮らしのレシピ集」より抜粋してお届けします。

新築から10年経つと、家財も増え、収納しようにもどこから手を付けていいのかわからないかもしれません。そんなときは、プロのアドバイスが欲しいところ。一級建築士でもある整理収納アドバイザーの拝藤チサトさんは、そんな悩みを持つ人に、リモートで個別に直接アドバイスをしています。その現場の様子をお伺いしました。

最適な整理収納術を伝授

 リフォームや新築の相談を受けることもある拝藤さんは、一級建築士としての知識とアイデアを生かした提案を心がけています。

 たとえ同じ間取りであっても、家族構成や個々の生活スタイルによって生活動線は異なり、それぞれに「しまいやすく取り出しやすい」整理収納があります。拝藤さんはリモートで、その家庭に最適な整理収納をアドバイスしています。

 まず、現状を把握するため家の見取り図や写真をいただき、どう整理収納したいのかお客さまと話し合います。ものの処分については、気に入ってよく使うもの以外は処分すべきという考えではありますが、使わないけど思い出の品については感情の問題ですので、片付け方について具体的にアドバイスします」

モニター越しに収納の状況を確認

 1回きりではなく、ここをもっと合理的に整理したいなど、その都度セッションを行うといいます。そこで、実際にお客さまとやりとりするリモートセッションを見せていただきました。

リモートでのセッション。そのアドバイスは大きな家具の配置や収納術だけでなく、鉛筆立てケースの向きという微細なところにも及ぶ。

 モニター越しに顔を見ながらやりとりし、以前のアドバイスを生かした整理収納の様子を拝藤さんに見てもらい、感想やさらなるアドバイスを受けています。

 この日は、お客さまが利用するプリンターの設置場所や配線のアドバイス。デザイン関係のお仕事をされているとあって、PCで作業される机やプリンターの位置関係、出力した作品や書類をいかにスムーズに取り出せるかなど検証していきます。お客さまはスマホのカメラで問題点を映し、拝藤さんはその場で次々と、作業動線に適した配置を指摘していきます。

 続いて、お子さま図工や自宅でのお絵かきに使う色鉛筆の整理について。鉛筆ケースの置き場所だけでなく、より使いやすくなるケース内の色鉛筆の向きという細かなところまでアドバイスしていました。

女性の視線で新築やリフォームの相談も

拝藤さんは一級建築士の経験を生かして新築やリフォームの相談にものる。相談者の些細な質問にも丁寧にアドバスしていく。

 拝藤さんは、一級建築士としてリフォームや新築の相談にものっていますが、セカンドオピニオンとしてのアドバイスも加えます。

「設計士の中には、デザイン重視のため家事の動線が不自然であったり、ごみ箱や掃除道具の置き場が考慮されていなかったりすることがあります。整理収納の視点から、お客さまの要望にお応えして修正案をお出しすることもあります」

 理想の家を整理収納の視点から考えてみる。デザインも見た目も大切ですが、その家が住みやすいことが優先されるという考え方です。

「お客さまには、『何を叶えたいのか決めてからリフォームに取りかかりましょう』とお伝えしています。最近、75平方メートルの3LDKのマンションのリフォームを手掛けました。お子さまが独立していらない部屋ができたことや、キッチンを広くゆとりのあるものにして、お風呂やトイレを一新したいということでした。そこで、75平方メートルの3LDKのマンションを1LDKに変更しました」

築25年のマンションをフルリフォーム。施主の生活を考慮し3LDKを1LDKにして使い勝手をアップ。水回りを一新、最新の家電品収納対策を施した。(写真提供◎拝藤チサト)

 収納においても、十分考慮したと拝藤さんはいいます。

 また、一軒家でも子供部屋だった2階の部屋が物置となっているケースでは、減築をおすすめることもあります。

「お年を召されると階段の上り下りがつらくなりますので、足の負担を軽くしたいという要望を叶えるには、平屋リフォームも選択肢のひとつですね」

 新築から10年目の現状把握と改善は、単なる整理収納にとどまりません。いま手を打って構想を練っておけば、これから10年先も希望通り快適に暮らせる家と生活環境がつくれます。またそれと同時にその次の節目にも、年齢にあった理想の住まいの準備ができるはずです。

お話を伺った方

拝藤チサトさん

拝藤チサトさん

一級建築士 整理収納アドバイザー。一級建築士として100軒を超えるリノベーションを行う中で「間取りや収納量にこだわっても、使いこなせるかどうかは別の問題」と感じ、2018年整理収納アドバイザーの資格を取得し独立。お客様の性格とライフスタイルにフィットした収納を動線から考え、建築士としての経験を生かした整理収納サポート行う。セミナー講師としても活動する。https://tommy-d.net/

文◎三星雅人
写真◎宇野真由子