和菓子界の風雲児が誕生させた革新的落雁の引力

和菓子界の風雲児が誕生させた革新的落雁の引力

暮らしに生かす甘い和の生活[第3回]和菓子で季節をめでる(Uchu wagashi編)

株式会社LIXILが運営しているリクシルオーナーズクラブ「住み人オンラインー住まいと暮らしのレシピ集」より抜粋してお届けします。

一見、季節には関係なくいただく干菓子の代表格、落雁(らくがん)ですが、色合いや形によって、季節を感じることができる和菓子でもあります。今回は和菓子の歴史の中で培われたいくつもの技を昇華させ、落雁をスタイリッシュな形で提案した、革新的な和菓子ブランド「Uchu wagashi」を紹介します。

落雁はお盆のお菓子で真夏を連想する干菓子?

 落雁(らくがん)とは、米や大麦などの穀類の粉に水飴や砂糖などを混ぜて、木型で象ったものを乾燥させたお菓子です。和菓子では「打ち物」と呼ばれる干菓子の代表格です。

見た目もかわいく、いまや若い世代に人気の京土産になっている。uchu wagashi「Fukiyose」(800円)。
見た目もかわいく、いまや若い世代に人気の京土産になっている。uchu wagashi「Fukiyose」(800円)。

 落雁と聞くと一番にイメージするのが、菊やハスの花が描かれたお盆の白やピンク色をしたお供え物ではないでしょうか。
 落雁の由来は、お釈迦様の弟子が、飢えを救うために修行僧に施したことがその始まりという説もあり、仏壇にお供えする時に日持ちがすることも、お供え物として使われるようになった理由の一つです。

 しかし、新進気鋭の京都和菓子屋「Uchu wagashi」が送り出す落雁はスタイリッシュで、とにかく「おいしい」というのが第一印象です。

落雁はつくるだけなら素人でもできる

Uchu wagashi寺町本店では、落雁の手づくり体験ワークショップが定期的に開催されている。
Uchu wagashi寺町本店では、落雁の手づくり体験ワークショップが定期的に開催されている。

 今回は、Uchu wagashiの落雁ワークショップに参加して、Uchu wagashiのつり方を直接教えてもらいました。シンプルな落雁は、素材の質や職人の技によって味が大きく異なります。

 Uchu wagashiの落雁のおいしさの秘密は、材料にありました。
 和三盆糖を贅沢に使っているのです。

 和三盆糖とは、徳島県や香川県だけで採れるサトウキビからつくられている砂糖のことです。
 上白糖は、甘み以外は捨ててしまいますが、和三盆糖は甘み以外の雑味と旨味も残しています。黒糖をまろやかにしたような味わいと、そのきめ細かさがその魅力です。

用意する素材もシンプルなので、木型さえ手に入れれば自宅でつくることもできる。
用意する素材もシンプルなので、木型さえ手に入れれば自宅でつくることもできる。
Uchu wagashi代表の木本勝也さん。シンプルな和菓子だけに材料にこだわりぬく。
Uchu wagashi代表の木本勝也さん。シンプルな和菓子だけに材料にこだわりぬく。

 まず、粉になった和三盆をボウルに入れます。水を加え、全体が均一になるようにこねていきます。その時に、和三盆のかたまりをつぶしたり、ふるいでこしたりして、ダマにならないようにします。ある程度までこねたら、木型に入れて形にしていきます。
 ポイントは、手早く作業を進めること。時間がかかりすぎるとどんどん乾燥して、水分が飛んでしまい、固まりにくくなってしまいます。一つひとつ丁寧に型から外して、一日乾燥させると完成です。

でき立てホヤホヤの落雁は少し柔らかい食感。
でき立てホヤホヤの落雁は少し柔らかい食感。

 Uchu wagashiでは、工場の湿度に気を使いながら、粉は3.5%の水分量を保つことで、一定の質を保った商品を生み出しているそうです。

「売り物をつくる時には、一度に約3kgの粉をこねたら、5つの大きなボウルに分け、水分量を一定に保つためにボウルの中の和三盆を組み合わせながら手早く型押ししていきます。日本では季節やその日の天候によっても湿度が異なるため、そこは職人の鋭い感覚が生きてきます」と、Uchu wagashi代表の木本勝也さんは話します。

シンプルだけど実は落雁づくりは簡単ではない

 色や形だけではなく、味や香りを楽しめるのもUchu wagashiの落雁の楽しさです。
 ほうじ茶味、オレンジやキウイなどの果実味、チャイ味など、さまざまな味わいの落雁があります。このあたりが従来の落雁のイメージを覆す革新的なものなのです。

夏限定の商品。魚型の落雁と金平糖入り。いわゆる贈答用ではなく、個人で楽しむためにパッケージも小さくして、視覚でも楽しめるように工夫している。uchu wagashi「swimmy」(1388円)。写真提供:Uchu wagashi
夏限定の商品。魚型の落雁と金平糖入り。いわゆる贈答用ではなく、個人で楽しむためにパッケージも小さくして、視覚でも楽しめるように工夫している。uchu wagashi「swimmy」(1388円)。写真提供:Uchu wagashi

「実は、どんな味でも落雁になるわけではありません。落雁は、水分量が命。粘度が高いものや油分のあるものは、水分量の調整が難しく、また、水分が多すぎるものも、逆に風味が飛んで味が消えてしまうこともあるんです」と木本さん。

 さまざまな試行錯誤の上、つくり上げられているのですね。

 型取りのために使われる木型は、現在は希少価値の高いもの。今日本に数人いるかいないかと言われている木型職人がひとつ一つ手づくりしているものなのだとか。

 使われている木材も、日本の古来種である山桜を使用。触ると柔らかくて軽いのがその特徴です。
 職人は、木型を1日何千回と打つので、ある程度柔らかくしなりがないと、手首やひじを痛めるばかりか、手のひらがマメでボロボロになってしまいます。
 そのため軽くて水分を保持している桜の木が適しています。素材も道具も貴重なものばかりでできているんですね。

落雁を洋風にいただいてみよう!

uchu wagashi「drawing」(700円)と玉露入りのジンを組み合わせてみました。驚くほどマッチ!
uchu wagashi「drawing」(700円)と玉露入りのジンを組み合わせてみました。驚くほどマッチ!

 落雁は、干菓子と呼ばれる水分量が10%以下の和菓子です。落雁のほかには、金平糖(こんぺいとう)や煎餅(せんべい)などが干菓子の仲間です。洋菓子で例えると、クッキーと似たような食べ方が合っていて、お茶請けにコーヒーと合わせてもぴったりです。

 形を楽しんだ後は、紅茶の中に沈めて、砂糖の代わりとして使うこともできます。
 その他、リキュールやウイスキーと合わせて食前酒と一緒にいただくのも一興、組み合わせ方はさまざまです。

 もし、お仏壇の前や手をつけていなかったいただきもの落雁があったら、ぜひお試しください。
 組み合わせ次第で、素敵なコーディネートができるかもしれませんよ。

※お菓子はすべて税抜き価格(2020年1月現在)

文・コーディネート◎小倉千明
撮影◎宇野真由子

●UCHU wagashi 寺町本店

●UCHU wagashi 寺町本店

「人をわくわくさせたり、しあわせにする和菓子」をテーマにする和菓子ブランドを展開している。ポップな色合いや形が特徴的な落雁が代表商品で、京都・寺町から新しい和菓子文化を発信している。

〒602-0875
京都市上京区寺町通丸太町上ル信富町307
☎ 075-754-8538
http://uchu-wagashi.jp/