「整理」ではなく「時短」収納で“自由な時間”を作り出す

「整理」ではなく「時短」収納で“自由な時間”を作り出す

10年目の収納 第1回

株式会社LIXILが運営しているリクシルオーナーズクラブ「住み人オンラインー住まいと暮らしのレシピ集」より抜粋してお届けします。

新築時は収納スペースが豊富にあると思ったのに、数年経ち、押し入れやクローゼットがものであふれかえっている……なんてことはありませんか? 思い切って断捨離もいいですが、それより大切なのは、ものを「分けて」収納すること。「いかに詰めるか」ではなく、「いかに出しやすくするか」ということを軸に、一級建築士で整理収納アドバイザイーの拝藤(はいとう)チサトさんが、「10年目の家の収納」のツボを紹介します。

「仕分け」が収納上手の第一歩

 新築後10年といえば、各部の傷みが多少目についてきても機能的には問題ないし、使い勝手においては、不便な部分も慣れでカバーできるようになったりしてきます。しかし、こと収納においては、ものが増えすぎて限界を迎えているかもしれません。

 断捨離ができればそれに越したことはないですが、手に馴染んだものまで捨てる必要はありません。

「使うものと使わないものを仕分けることから始めましょう」

 これが第一歩とアドバイスするのが、一級建築士にして整理収納アドバイザーの拝藤チサトさんです。

 拝道さんは、縦軸に「気に入っている」「気に入っていない」、横軸に「よく使う」「めったに使わない」ものを並べたマトリックス図をつくると、使うものと使わないものの判断ができると提唱しています。

日常生活で頻繁に使うものは全体の10~20%。反対に、30%は使っていないので、まずはここから処分していく。全体で50%処分を目標にしたい。

 例えば、結婚式やお葬式の引き出物、新聞屋さんからもらったタオルなど、使わないまま押し入れに溜まっているものがあるのではないでしょうか。

「気に入っていなくてかつ使っていないものは、きっと30%はあるはずです。まずはこれらから捨ててみましょう。

 目標は全体の50%は捨てたいですが、ものに記憶や感情が絡み合っていると、なかなか捨てられないかもしれません。でも、感情ではなく論理的に考えて、使わないものを仕分けていくことがポイントです」

 もちろん、使わないけどどうしても捨てられないのなら、それは整頓してしまっておけばいいこと。大切な記憶と結びついたものまで捨てることはありません。

押し入れは使っていないものを保管する場所ではなく、使うものをすぐに取り出す場所とすれば、おのずと整理されるはず。(写真提供◎拝藤チサト)

「時間短縮」収納で自由な時間をつくる

 見た目に美しい状態を保つだけなら、無理やりにでも収納スペースにしまい込んでしまえばいいですが、そのせいで、いざ使おうと思った時にどこに何があるか思い出せず、探し出すのに時間がかかってしまった、という経験のある方もいるのではないでしょうか。

 拝藤さんは、収納の目的は「整理」ではなく、無駄な「時間短縮」をして、自分の時間を増やすことだと言います。

「よく使うものが所定の場所にきちんと収納されていれば、無駄な時間は間違いなく短縮されます。

 掃除、洗濯、食事の準備や後片付けで収納の出し入れにかかる時間が5分、10分と短縮できれば、その積み重ねで、自由な時間を増やすことができるのです。読書、テレビやDVD鑑賞、ガーデニングなど、趣味の時間にあてられます。こう考えて収納をしてみませんか」

生活動線に沿って整理収納すればすぐに取り出せるので、探し出す時間が短縮され、無駄な時間が省ける。(写真提供◎拝藤チサト)

 コロナ禍、自宅で仕事をする機会が増えた方も、資料を整理するだけで、「あれがない、これがない」とものを探す時間を減らすことができれば、効率よく仕事ができることでしょう。

決め手は「生活動線に沿った」収納

 しかし、しまう場所を決めるだけでは不十分です。

 しまう場所と使う場所の位置関係はどうでしょうか。つまり、使うものが離れた場所ではなく、すぐに取り出せてすぐに使える場所にあるかどうか。時間を短縮していくには、生活動線に沿った、あるべきところに収納しなくてはなりません。

 動線から収納を考えた時、一番厄介なのが洗面室だと拝藤さんは言います。

「洗面室は、洗濯機が置かれていることが一般的で、洗濯にもかかわる場所。洗濯は、洗ったものを干し、取り込みたたんで、衣装ケースに収めるという一連の作業の場所がバラバラで、移動する距離が長くなります。

 この洗濯に関する収納場所を効率よくしていくことで、もっとも時間短縮が期待でき、結果的に自由な時間を作り出すことができます」

 最近の新築物件にはランドリールームが設けられることが多くなり、ランドリーボックスや洗濯(・乾燥)機、洗濯物をたたんだりアイロンをかけたりできる作業台、たたんだ洗濯物を一時的に仕分けて置ける棚などが一堂にセットされています。洗濯物を干すベランダとも隣接させ、洗濯の一連の作業を効率よくできるようにしています。

特に、室内の移動距離が長く作業が分散しがちな、洗濯にかかわる動線の整理収納がうまくいけば、作業効率が格段にアップすると拝藤さん。

「注文住宅ではない限り、10年前の住宅にはこうした部屋はなかったかもしれませんが、この洗濯の動線を考えて収納スペースをつくり、干したり、取り込んだり、たたみ、しまいやすくする。なるべく作業をする場所を集約する工夫をしてみてください。きっと大きな時間短縮ができるはずです」

 次回は、一級建築士でもある拝藤さんに、具体的な収納リノベーションの方法についてアドイスしてもらいます。

(第2回に続く)

お話を伺った方

拝藤チサトさん

拝藤チサトさん

一級建築士 整理収納アドバイザー。一級建築士として100軒を超えるリノベーションを行う中で「間取りや収納量にこだわっても、使いこなせるかどうかは別の問題」と感じ、2018年整理収納アドバイザーの資格を取得し独立。お客様の性格とライフスタイルにフィットした収納を動線から考え、建築士としての経験を生かした整理収納サポート行う。セミナー講師としても活動する。https://tommy-d.net/

文◎三星雅人
写真◎宇野真由子