遺産分割協議書とは

遺産分割協議書(いさんぶんかつきょうぎしょ)」は、遺産分割協議という話し合いにて、相続人全員が相続内容について承諾したことを証明するために作成する書類です。

本記事では、遺産分割協議書がどのような書類なのか、そしてどんなときに必要なのかを詳しく解説していきます。

相続で欠かせない「遺産分割協議書」とは?

遺産分割協議の内容を記載する遺産分割協議書ですが、遺言書の内容や法定相続分どおりに遺産を相続するときには必要ありません。しかし、それ以外の方法で遺産を分割するときには、遺産分割協議書の作成が必要です。

まずは、遺産分割協議と遺産分割協議書について、説明していきます。

相続人間での話し合いを遺産分割協議という

遺産分割協議書を作成にあたって、まず知っておきたいのが「遺産分割協議」についてです。

遺産分割協議とは、亡くなられた方(被相続人)の遺産について、どのように分割するかを相続人全員で話し合うことをいいます。遺産分割協議の成立には相続人全員の合意が必須で、1人でも欠けていれば無効となるため注意しましょう。

ただし、遺産分割協議は必ずしも顔を合わせて話し合う必要はありません。

相続人それぞれが遠方に住んでいる場合や、仕事や事情があって話し合いに参加できない相続人がいるときには、対面での話し合いではなく、電話などで意思確認をする方法も可能です。

話し合いの内容をまとめた書類が遺産分割協議書

遺産分割協議で話し合った内容をもとに作成するのが、「遺産分割協議書」です。

法律では、被相続人の財産を相続するにあたって、「誰が」「どのくらい相続するのか」という割合(法定相続分)が定められています。しかし、遺産分割協議を行い相続人全員の同意があれば、法定相続割合とは異なる相続割合にすることも可能です。

遺産分割協議書には正式な書式がなく、手書き、パソコン、縦書き、横書きなど、自由な書式で作成できます。ただし、必要事項の記載がない遺産分割協議書は無効になる場合があるので、ひな形や見本などを見ながら作成することをおすすめします。

遺産分割協議書が必要・不要なケース

遺産分割協議書は、法律で作成が義務付けられているわけではありません。

そのため、相続の条件によって、必要なケースと不要なケースがあります。

遺産分割協議書が必要なケース

まずは、遺産分割協議書が必要なケースを見てみましょう。

遺産分割協議書が必要なケース例

  • 遺言書が無く、相続人が複数いるとき
  • 相続登記・相続税申告等の手続きが必要なとき
  • トラブルを防ぎたいとき

遺言書が無く、相続人が複数いるとき

被相続人が遺言書を残していた場合は、遺言書に記載された方が相続人となります。相続割合についても、遺言書に従うこととなります。

しかし被相続人が遺言書を残しておらず、相続人が複数人いる場合には、遺産の分割方法について話し合う必要があり、遺産分割協議書の作成も必要です。

相続登記・相続税申告等の手続きが必要なとき

相続登記や相続税の申告手続きをする場合も、遺産分割協議書が必要とされています。

遺産分割協議書は、被相続人の財産をどのように分割するかを記した、いわば証明書です。相続財産となる不動産や自動車などの名義変更する場合には、どのように遺産が分割されたのかを確認するため、証明書となる遺産分割協議書の提出が求められます。

また、相続税の申告時や、相続税に関する特例や控除の手続きにも遺産分割協議書が必要です。手続きのために遺産分割協議書が必要になるケースがあることも、覚えておきましょう。

トラブルを防ぎたいとき

財産の所有者が亡くなっている相続では、分割方法をめぐってトラブルが起こることも少なくありません。分割時には納得していても、将来的に相続人同士が不仲になることや、気が変わる人が出てきて後々揉めることもあるでしょう。

そのようなときも、遺産分割協議書を作成しておけば「言った」「言わない」の水掛け論になることなく、トラブルを回避できます。

遺産分割協議書が不要なケース

遺産分割協議が必要なケースを見ると、作成が必須のように思いますが、作成が不要なケースもあります。

遺産分割協議書が不要なケース例

  • 相続人が1人だけのとき
  • 遺産が現金・預金だけのとき
  • 遺言書の内容に沿って遺産分割するとき
  • 法定相続分の割合で分割するとき

相続人が1人だけのとき

遺産を相続する人が1人しかいない場合は、全ての遺産を1人の相続人が相続することになるため、遺産分割協議書の作成は必要ありません。

また、相続放棄や相続人の廃除、相続欠格によって相続人が1人になった場合も、相続する人が1人しかいない場合と同じように考えます。

遺産が現金・預金だけのとき

相続する財産が、現金や貯金だけで相続税の申告が不要なときには、遺産分割協議書の作成は必要ありません。自宅にある現金は名義変更が不要で、預金は銀行の指定用紙に相続人全員が記入すれば払い戻しの手続きができるからです。

ただし、複数口座に預金がある場合は、毎回指定用紙に相続人全員が記入するのは手間なので、遺産分割協議書の作成、提出をおすすめします。

遺言書の内容に沿って遺産分割するとき

亡くなった方が遺言書を残しており、誰が何を取得するのかしっかりと記載されているのであれば、遺言書どおりに遺産を分け合うため、遺産分割協議書は不要です。

ただし、遺言と異なる内容で遺産分割をする場合は、相続人全員の合意を得た内容で遺産分割協議書を作成しなくてはなりません。

法定相続分の割合で分割するとき

遺言書がなかったとしても、民法で決められている法定相続分どおりに遺産を分割するのであれば、遺産分割協議書の作成は不要です。

ただし相続する財産の中に、不動産、有価証券、自動車、船舶などの名義変更が必要な財産がある場合は、遺産分割協議書の作成が必要になります。

「遺産分割協議書」まとめ

遺産分割協議書は、遺産の名義変更時や相続税を申告する際などに必要な書類ですが、法律で作成が義務付けられているわけではありません。遺言通りに遺産を相続する場合や、法定相続分通りに遺産を分ける場合の作成は不要です。

しかし、遺産分割協議書の作成が不要でも、相続人が複数人いる場合やトラブルが起こりそうなときなど、状況によっては作成しておいたほうがいいケースもあるので、臨機応変に対応しましょう。

遺産分割協議書の作成を心配に思う方は、司法書士や弁護士などの専門家に作成を依頼しましょう。