土地を売却するときになり土地の権利書が必要となって探しても、見当たらなくて焦る人も多いですよね。しかし、土地の権利書を紛失してしまっても土地の売却手続きは可能です。
本記事では土地の権利書の概要から、紛失時の対応の仕方、土地売却にかかる登記費用について説明します。本記事を読めば、もし権利書が見当たらなくても慌てることなく、安心して土地の売却ができます。
目次
土地の権利書とはなにか?
土地を売却する際には所有権移転登記が必要となりますが、所有者本人である確認をしてから手続きが行われます。土地の所有者を確認するときに「土地の持ち主が自分だという証明書」となるのが、「土地の権利書」です。
権利書という言葉を耳にする人も多いと思いますが、正式名称は「登記済権利証」といいます。現在土地の権利書の様式が変わっており、平成17年の法改正によって書類である登記済権利証から電子データである登記識別情報に変わっています。
どちらも同じ効力を持つものですが、平成17年以前の人は権利書を持っており、平成17年以降の人は登記識別情報を持っています。そのため、銀行や不動産会社から土地の権利書を用意してほしいといわれたら、権利書もしくは登記識別情報のどちらかを用意しておけば問題ありません。
権利書の使用方法
権利書が必要となるのは、不動産の譲渡時や抵当権設定時など、その不動産の所有者かどうかを証明しなければならない時です。そのため、使用する場面はほとんどありません。
実際に不動産の譲渡や抵当権設定が発生するのは所有する不動産の売却時や購入時、相続時です。相続時には通常権利書の提出は不要です。しかし、必要書類の中にある住民票の除票が提出できない場合や、被相続人が複数回住所変更を行ったことにより、登記上の住所と最後の変更先住所が一致しない場合には、権利書が必要となります。
不動産の売買がない場合には、ほとんど使用する場面がないので、取得した後は大切に保管しておきましょう。
権利書と登記簿の違い
権利証は「移転登記が完了したことを証明する書類」であり、登記簿は「不動産の登記情報が記載された情報」です。登記簿は管轄の法務局で手数料を支払えば誰でも見られる登記情報を指し、土地の経歴を見ることができます。
一方で権利書は、登記された時のみ発行される証明書です。不動産の譲渡や抵当権の新規設定をするなど、所有権移転登記をする際に本人確認書類として利用されることが多いです。
二つの書類の内容が異なることを覚えておきましょう。
権利書を紛失した場合
権利書を紛失した場合、再発行ができません。しかし、紛失により権利書で証明された事実がなくなるわけではありません。
権利書が必要なのに紛失してしまった時でも、以下の対処法を行えば大丈夫です。
- 事前通知制度の利用
- 資格者代理人による本人確認証明情報の提供制度の利用
ここからは権利書を紛失した際に行うべき対処法について説明します。
事前通知制度の利用
権利書を紛失してしまった場合は、法務局で利用できる事前通知制度を利用しましょう。事前通知制度とは、法務局に事情を説明することで、事前通知書が不動産の所有者に送付される制度です。
送付された事前通知書を返送することで、権利書がなくても所有者であることが証明できます。ただし、事前通知書類は定められた期限内に返送しないと、法務局で受理されません。
国内住みであれば2週間、海外住みであれば4週間以内に届いた書類を返送する必要があります。権利書を紛失してしまった際はこの事前通知制度を利用して、届いた書類をできる限り早く返送するようにしましょう。
資格者代理人による本人確認証明情報の提供制度
「資格者代理人による本人確認証明情報の提供制度」を利用して、司法書士や弁護士などの専門家に、本人確認手続きを委託することも可能です。
この制度は、司法書士や専門家が不動産所有者の代理人となって、法務局に対して手続きをしてくれる制度です。ただし、司法書士や専門家に支払う手数料がかかるので、注意しましょう。支払う手数料の目安は、3万円~5万円です。
事前通知制度は郵送を待つ時間がかかること、自分で手続きをする負担がかかるため、忙しい人は司法書士や専門家に委託する方法がおすすめです。
権利書を紛失しても土地売却は可能
権利書紛失時でも対応できる売却方法が複数あるため、土地の売却は可能です。考えられる方法は以下の3つです。
- 事前通知制度
- 資格者代理人による本人確認証明情報の提供制度
- 公証人による本人確認
それぞれについて、説明します。
事前通知制度
事前通知制度を利用すれば、権利書を紛失しても土地売却ができます。事前通知制度については上述の通りですが、利用する場合には返信の期限には十分気を付けましょう。
資格者代理人による本人確認証明情報の提供制度
資格者代理人による本人確認証明情報の提供制度を使うことで、司法書士や専門家が所有者の代わりに本人確認ができるため、土地の売却ができます。
こちらも内容は上述の通りです。司法書士に支払う手数料がかかりますが、忙しい方にはおすすめです。
公証人による本人確認
公証人の立ち会いのもと所有権移転手続きをすれば、権利書がなくても所有者本人として認められるため、売却できます。
公証人による本人確認は、公証人が立ち会うなかで書類手続きをすることで、公的に所有者本人であることが認められるというシステムです。利用する際には、公証役場に実印や印鑑証明書、委任状などの必要書類を持っていく必要があります。
また、公証人の立ち合いには目安として3,000円~1万円の費用がかかります。司法書士に支払う手数料よりは低いので、本人確認手続きを安く済ませたい人におすすめです。
権利書を盗まれた!悪用される可能性はある?
権利書は不動産の所有を証明する書類のうちの1つの要素にすぎないため、盗まれたからといってすぐに悪用されることはありません。権利書を盗んだ人が新しく登記をしようと登記所に駆けこんでも、本人確認ができなければ登記はできません。
権利書だけでは登記名義人であると判断できず、本人確認の際は実印や印鑑証明書等の書類が必要となるからです。そのため、権利書が盗まれただけで土地を売却されることはありません。
ただし、盗まれた際の対処法や予防措置を知っておくと万が一のことがあっても対応できるため、以下で説明します。
悪用された場合の対処法や予防措置
権利書を悪用された場合の対処法や予防措置はこちらです。
- 不正登記防止の申出を行う
- 登記識別情報の失効申出を行う
不正登記防止の申出を行う
不正登記防止の申出とは、法務局に申請することで、所有不動産に不正な登記があった場合に、申請者に通知をしてくれる制度です。申出をしておけば、第三者が自分の所有物件に新しく登記申請をすると、法務局から通知が受けられます。
権利書が悪用されて勝手に自分の土地に新しい登記がされてしまった場合、その登記を抹消しなければなりません。不正登記防止の申出を行っておけば、すぐに新しい登記があったことを察知でき、登記抹消手続きができます。
権利書が悪用されないように、権利書紛失時にはなるべく早く不正登記防止の申出を行い、予防措置を取るようにしましょう。
登記識別情報の失効申出を行う
登記識別情報の失効申出とは、現在の登記識別情報の効力を失くすことができる制度です。申出をしておくことで、権利書を盗んだ人が新たに登記しようとしても、登記はできません。
失効した登記識別情報は永久に使えないので、盗んだ犯人に悪用されることもありません。法務局で手続きができるので、権利書紛失時の対策として覚えておきましょう。
土地売却では権利書のほかに何が必要?
土地売却で権利書以外に必要となる書類は、登記の種類によって変わります。
- 住所変更・氏名変更登記
- 所有権移転登記
- 抵当権抹消登記
登記ごとに必要な書類と、かかる費用について説明します。
住所変更・氏名変更登記
結婚や転居により氏名が変わった時は、登記簿上の住所・氏名と登記名義人の住所・氏名が一致していないと所有者である確認ができないため、住所変更・氏名変更登記が必要です。
新築購入当初の住所は旧住所である賃貸住宅の住所となっている場合もあります。このように現住所と違う住所で登記されている場合、土地売却時には現在の住民票上の住所に変更登記してから売却する流れになるのです。
本来、住所や氏名の変更時に変更登記をするのが望ましいですが、土地売却の際にまとめて変更登記する方法でも手続きはできます。
住所変更・氏名変更登記での必要書類
住所変更・氏名変更登記に必要な書類は以下のとおりです。
- 住民票
- 戸籍謄本(※除籍謄本)
住所変更登記では、登記簿上の住所から現在までの住所の経緯がわかる住民票が必要となります。
例えば、登記簿上の住所から二回転居している場合は、二回住所が変わった旨が記載されている住民票が必要です。氏名変更では、変更前と変更後の名前を確認するために戸籍謄本が必要です。
※しかし、戸籍謄本に変更前の名前が記載されていない時は除籍謄本が必要となります。
住所変更・氏名変更にかかる費用
氏名・住所変更登記にかかる費用は、司法書士に依頼すると通常1万円~2万円ですが、自分で法務局に行くことで費用を安くすることが可能です。
1つの不動産につき収入印紙代金が1,000円かかりますので、1つの敷地に1つの建物となっている戸建であれば、かかる費用は2,000円となります。難しい手続きではないので、費用を安くするなら自分で手続きすることをおすすめします。
所有権移転登記
相続などで不動産を譲り受けた場合、亡くなった方がまだ所有者となっている可能性があるため、所有権移転登記が必要となります。
土地の売却時には登記上の名義人と現在の所有者を一致させる必要があります。そのため、所有権移転登記が必要となるのです。
また、不動産売買で所有者が変わるときにも、所有権移転登記をします。氏名・住所変更登記とは違い登記名義人が変わるため、必要書類が多くなります。
所有権移転登記での必要書類
所有権移転登記に必要な書類はこちらです。
- 印鑑証明書
- 実印
- 固定資産評価証明書
- 遺産分割協議書※相続時
- 遺言書※相続時
- 戸籍謄本(相続人・被相続人)※相続時
- 除票(被相続人)※相続時
- 住民票※不動産購入時
不動産売却時の所有権移転登記に必要な書類は、印鑑証明書と固定資産評価証明書、実印の3点です。
相続時に、相続人が複数いる場合は、相続人全員分の印鑑証明書が必要になります。相続人の人数や、遺産分割協議書の内容によって必要書類が変わるので、必ず司法書士に確認してから手続きに進むようにしましょう。
所有権移転登記にかかる費用
所有権移転登記にかかる費用は3万円~10万円です。相続人が複数いる場合や、遺産分割協議書が作成されていない場合は司法書士の書類作成費用が追加で発生するため、費用が少し高くなります。
所有権移転登記とは?手続きの流れと必要な費用や書類を解説抵当権抹消登記
抵当権がついたまま土地を売却すると、購入者にとって不利益となるため、現在の土地に抵当権が付いている場合、抹消登記が必要となります。抵当権が設定されている土地をそのまま売却してしまうと、購入した所有者にも抵当権がついた土地を譲渡することになります。
抵当権が付いたままだと、抵当権者がその土地を差し押さえることができるため、急に土地を利用できなくなる可能性があります。たとえ抵当権設定をしたのが前の所有者だったとしても、抵当権者の言う通りにするしかありません。
土地を売却する前には必ず抵当権抹消手続きを行い、権利の付いていない状態で売却しましょう。
抵当権抹消登記での必要書類
抵当権抹消登記に必要な書類はこちらです。
- 登記済証もしくは登記識別情報
- 登記原因証明情報(弁済証明書)
- 金融機関の代表者事項証明書もしくは商業登記簿謄本
- 委任状
抵当権抹消手続きは自分で行うことも可能ですが、手続きを間違えてしまうと再度抹消手続きを申請するのに時間がかるため、初めての場合は司法書士に依頼するのがおすすめです。
抵当権抹消にかかる費用
抵当権抹消手続きは、自分で行う場合と司法書士に依頼する場合でかかる費用が違います。司法書士に依頼する場合は1万円~3万円かかるのが一般的です。
自分で抵当権抹消手続きをする場合は3,000円~5,000円程がかかります。安く済ませたいのであれば自分でも可能ですが、ミスなく確実に進めたい場合は司法書士に依頼しましょう。
土地の権利書に関するよくある質問
土地の権利書に関してよくある質問についてお答えしていきます。
- 土地の権利書を紛失してしまったが、どこに相談すればいいですか?
- 土地の権利書を紛失してしまった場合は、公証役場の相談窓口に相談しましょう。
公証役場は各地方にあり、無料で権利書に関する相談を受け付けています。紛失時の対処法や、必要な手続きについて丁寧に説明してくれますので、今自分がとるべき行動がわかります。
- 権利書をなくした場合、まずどうすればいいですか?
- 権利書をなくした場合、まずは一旦落ち着きましょう。盗んだ人がすぐ自分名義に登記しようとしても、権利書だけでは登記することができません。
それに、権利書がなくても土地の売却はできますし、悪用を防止する対処法もあります。権利書を失くした場合は、司法書士もしくは法務局・公証役場に相談し、必要な対処手続きを進めていきましょう。
- 今ある権利書を登記識別情報に変更できますか?
- 権利書や登記識別情報の様式を変更することは不可能であるため、今ある土地の権利書を登記識別情報に交換してもらうことはできません。また、権利書や登記識別情報は変更だけでなく、再発行することもできません。
手続きを進めるうえで、権利書と登記識別情報の違いはないため、登記識別情報に変更したくても今ある権利書をそのまま利用し続けましょう。
まとめ
土地の売却は、流れに沿って行えば難しい手続きではありません。しかし、必要書類や手続きを間違えて登記を進めてしまい登記に失敗すると、その売却自体が認められない可能性もあります。
そのため、土地売却の際は不動産知識が豊富で信頼できる不動産会社に相談することが、安心して売却を進めるポイントといえるでしょう。
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この記事を書いた人
Kunika
宅建士 / FP2級技能士(AFP)。不動産仲介会社勤務時に、年間80件以上の成約実績を持つ。特に中古戸建や中古マンションの購入・売却の豊富な経験がある。現在は不動産ライターとして、不動産取引初心者に向けた情報配信を行っている。