分離課税とは

所得の納税方法には、

  • 総合課税方式(そうごうかぜいほうしき)
  • 分離課税方式(ぶんりかぜいほうしき)

の2つの方法があります。

総合課税」はすべての所得を合算し、その合計額によって税率が決まります。これに対して「分離課税」は、所得ごとに独自の計算式や税率で税金を計算する方法です。

本記事では分離課税に焦点をあてて、総合課税の違いや、不動産売却や家賃収入がどちらの課税方法になるのかを説明していきます。

不動産売却で利益が出たら要確認!「分離課税」とは?

まずは、分離課税と総合課税について説明していきます。

所得単独の税額を計算する方法

冒頭にも書いたように、分離課税はほかの所得と合算せず、それぞれの所得に対して独自の税率をかけて納税額を決める方法です。土地や建物などを譲渡して得た利益など、特定の所得に対して適用されます。

分離課税の大きな特徴は、所得税を抑えられることです。

総合課税のように所得額に応じた税金を納める必要がないので、所得が高い方にとって税負担の軽減になります。

さらに分離課税には、「源泉分離課税(げんせんぶんりかぜい)」と「申告分離課税(しんこくぶんりかぜい)」の2種類があり、それぞれ課税方法が異なります。

源泉分離課税は、他の所得と完全に分離したうえで一定の税率で税金が源泉徴収され、それだけで所得税の納税が完結する課税方式です。所得を受け取る時点で、すでに税金分が徴収されているため、確定申告の必要はありません。

申告分離課税は他の所得と分離して税額を計算し、確定申告によって納税する課税方式です。確定申告が必須であるため、源泉分離課税と比べると手間がかかります。

以上の内容をふまえ、所得の種類と課税方式を見てみましょう。

所得の種類概要課税方式
利子所得預貯金や公社債の利子など原則的に源泉分離課税
配当所得保有している上場株式から得られる配当など申告分離課税または総合課税
退職所得退職によって勤務先から受ける退職一時金など源泉分離課税
山林所得山林を所有して5年以上経過したのち、譲渡した場合に得られる利益申告分離課税
譲渡所得土地や建物、上場株式の売却によって得られる利益申告分離課税

退職所得と山林所得は分離課税の対象となっているため、他の所得とは合算せず単独で税金を算出します。その他の所得については、内容に応じて課税方法が異なるため、その都度確認が必要です。

「総合課税」との違い

それぞれの所得で税額を計算する分離課税に対して、総合課税は、個人の1年間の所得を合算した総所得金額に課税する方法です。給与所得はもちろん、不動産家賃収入や事業所得なども含まれます。

総合課税の大きな特徴は、対象となる所得をすべて合算して、その合計額に対して税率が決まることです。この課税方法を累進課税方式といい、課税対象になる所得が高くなるほど税金も高くなります。

総合課税の対象となる所得を見てみましょう。

所得の種類概要課税方式
配当所得保有している上場株式から得られる配当など総合課税 or 申告分離課税
不動産所得土地や建物などを貸すことによって得られる所得総合課税
事業所得事業を行い得られた利益原則的に総合課税
給与所得勤務先から受ける給料や賞与総合課税
譲渡所得資産の売却によって得られる所得※不動産・上場株式は除く総合課税 
一時所得宝くじの賞金、懸賞の賞品、生命保険の一時金や満期返戻金など、上記8つに該当しない所得総合課税(一部源泉分離課税)
雑所得公的年金、非営業用貸金の利子など、上記9つに該当しない所得原則的に総合課税

一覧表を見てわかるように、所得のほとんどが総合課税に分類されます。

不動産売却における分離課税と総合課税について

不動産売却と不動産所得は、どちらも「不動産」を通じて利益を得ることから同じ課税対象だと思われがちですが、実はまったく違う課税対象です。

ここからは、不動産売却で得た利益と不動産所得で得た利益の違いについて解説します。

不動産売却で得た利益は申告分離課税

不動産売却で得た利益は「譲渡所得」にあたり、分離課税で税額が計算されます。

譲渡所得とは、資産の売却によって得られる所得のことです。譲渡所得は総合課税と分離課税のいずれかで計算されますが、先ほどの表にも記載したように、不動産売却で得た利益は分離課税となります。

不動産売却による、譲渡所得税の計算式を見てみましょう。

「譲渡所得税 = 課税譲渡所得 × 譲渡所得税率」

課税譲渡所得については、以下の計算式で求めます。

課税譲渡所得 = 売却価格 ー(不動産の取得費 + 譲渡費用)ー 特別控除額

なお、税率を決めるボーダーラインは、不動産の所有期間です。譲渡した年の1月1日において所有年数が5年以下の場合は「短期譲渡所得(39.63%)」、5年を超える場合は「長期譲渡所得(20.315%)」の税率で計算します。

家賃収入で得た利益は総合課税

不動産の売却で得た利益は分離課税だと説明しましたが、不動産の家賃収入で得た利益は「不動産所得」として総合課税に分類されます。

不動産所得を求める計算式は以下の通りです。

「不動産所得 = 総収入 ー 必要経費」

総収入は、家賃収入をはじめ、敷金や更新料、共益費などの「賃貸業を営むうえで利益として発生する収入」です。必要経費は、固定資産税や損害保険料、修繕費、減価償却費などが該当します。

「分離課税」まとめ

不動産売却で得た利益や退職所得、利子所得などの特定の所得は、分離課税として給料所得や家賃収入と切り離して計算します。特定の税率で計算されるため、税負担を軽減できる点がメリットです。

不動産売却では大きな金額が動き、税金が心配になる方も多いはずです。所得がどの課税対象になり、どのくらいの税率になるのかをしっかりと理解しておきましょう。