アパート経営における利回りとは?最低ラインや注意点を解説

監修者
吉田 宏
吉田 宏(株式会社SUMiTAS 代表取締役社長)
  • 二級建築施工管理技士
  • 宅地建物取引士
  • 測量士補
  • 賃貸不動産経営管理士

アパート経営について調べていると、必ず目にするのが「利回り」という言葉です。不動産投資における利回りは、投資額に対する収益を数値化したものを指します。

投資をするにあたって理想の利回りと、最低ラインの利回りはどのくらいなのでしょうか?

本記事では、アパートを経営していくにあたって欠かせない、利回りについて解説していきます。これからアパート経営を始めるか悩んでいる方は、ぜひ参考にしてください。

アパート経営の「利回り」とは?

アパート経営における利回りは「投資した金額に対する1年間の収益の割合」を指します。

そして利回りには「現況利回り」「想定(表面)利回り」「実質利回り」の3種類あり、種類によって数字に大きな差が出るため、それぞれの内容や違いを正しく理解しておく必要があります。ここでは3つの利回りの内容や違いについて、確認していきましょう。

現況利回り

「現況利回り」は、実際にアパート経営で得られている収入をもとに計算した利回りです。

中古アパートを購入する際に、現在のオーナーが受け取っている賃料と物件価格をもとに計算します。計算に必要なのは「実際の収入」と「物件価格」のみなので、簡単に計算できます。

中古アパートを購入するのなら、現況利回りは必ず計算しておきましょう。

想定(表面)利回り

表面利回り」は、投資額(物件の購入額)に対して1年間で得られる収入の割合をいい、「グロス利回り」と呼ばれることもあります。計算式に管理費や維持費を含まないため、実質利回りと比べて高くなることが特徴です。

Point!

不動産会社の広告やサイトの物件情報に「利回り」として掲載されている数字は、想定(表面)利回りであることがほとんどです。

実質利回り

実質利回り」は、アパート経営にかかる諸経費をすべて含めて計算した利回りです。

年間の家賃収入から、ローン返済額や管理費、税金、保険料などの諸経費をすべて差し引いて計算するため、3つの利回りの中でもっとも信頼性が高い数値になります。

Point!

アパート経営において、諸経費は物件の状態や管理会社によって異なるため、実際に投資を始めてみると、現況利回りと想定(表面)利回りとの差に驚くことも珍しくありません。
物件を購入する前に、必ず実質利回りも確認しておきましょう。

アパート経営で利回りを計算する方法

アパート経営における利回りには、「現況利回り」「想定(表面)利回り」「実質利回り」があることをお伝えしました。これらの利回りは、どのような計算式で求めるのでしょうか?

ここからは、利回りの計算方法を解説していきます。

現況利回りの計算方法

現況利回りは、次の計算式で求めます。

現況利回り=(年間家賃収入 ÷ 物件価格)× 100(%)

前述したように、現況利回りは「投資額(物件の購入額)に対する年間家賃収入の割合」を表した数字です。1年間で得られた家賃収入を投資額で割るだけで、簡単に求めることができます。

たとえば物件価格が5,000万円、年間家賃収入の現況収入額が500万円の場合、現況利回りは次のように計算します。

(年間家賃収入:500万円 ÷ 投資額:5,000万円)× 100=10%

ただし、現況利回りは単純で表面的な収益率の指標であり、あくまで”おおよそ”の数字でしかありません。「現況利回り=実際の利回り」ではない点に注意しましょう。

想定(表面)利回りの計算方法

想定(表面)利回りは、次の計算式で求めます。

想定(表面)利回り = 空室0の年間家賃収入 ÷ 物件購入価格 × 100(%)

想定(表面)利回りは、「投資額(物件の購入額)に対して、満室であると仮定したときの年間家賃収入の割合」を表したものです。

たとえば物件価格が5,000万円、賃料5万円、総戸数10戸の想定(表面)利回りは、

{空室0の年間家賃収入:(賃料5万円×10×12か月)÷ 物件購入価格:5,000万円 }× 100(%)= 12%

となります。

不動産会社の広告やサイトの多くは、想定(表面)利回りが掲載されています。

想定(表面)利回りは空室リスクが考慮されていないため、想定(表面)利回りの数字だけを信じて購入を決めるのは危険です。不動産会社によっては、相場より高い家賃をベースに計算していることもあるので注意しましょう。

実質利回りの計算方法

もっとも信頼できる利回りである、実質利回りの計算式を見てみましょう。

実質利回り = ( 年間家賃収入 – 年間経費 ) ÷ ( 物件購入価格 + 取得時諸経費 ) × 100(%)

実質利回りは、年間の家賃収入からアパート経営にかかる費用をすべて差し引いた金額を求め、その数字を投資額(物件の購入額)と取得時の諸経費を足した額で割って求めます。

想定(表面)利回りと比べて数字が小さく出ることがほとんどですが、3つの利回りの中でもっとも信頼できる数値です。想定(表面)利回りとどのくらいの差が出るのか、実際に計算してみましょう。

想定(表面)利回りの計算例と同じく、物件価格が5,000万円、年間家賃収入の見込み額が600万円(賃料5万円×総戸数10戸×12カ月)、そして購入時の諸経費は120万円、年間の諸経費は100万円かかったとします。

これを計算式に当てはめると、

(年間家賃収入:600万円 – 年間の諸経費:100万円)÷(物件価格:5000万円 + 購入時の諸経費:500万円)= 約9.1%

となります。

年間家賃収入は想定(表面)利回りと同じ600万円でも、アパート経営や取得時にかかった諸経費を含めることで、利回りに約3%もの差が出ました。

計算結果をみてわかるように、想定(表面)利回りだけで収益を想定すると資金計画が大きく狂ってしまう可能性があります。アパート経営をするときには、想定(表面)利回りと合わせて実質利回りも必ず把握しておきましょう。

アパート経営の利回りはどのくらいあればいい?

利回りの種類や計算方法について解説してきましたが、利回りはどのくらいあればいいのでしょうか。

利回りの考え方としては、購入物件の利回りで返済していくだけの収入見込みがあることが重要となります。返済の見込みを判定する基準としては、家賃収入に対する返済比率を50%以下にできる様な利回り・自己資金・金利・返済期間で物件購入することが重要です。

例1

木造で築10年の場合には法定耐用年数が22年の為に融資可能年数が12年となります。

この木造の物件が価格 5000万 想定(表面)利回りり12%  の場合に物件価格5000万を金利2%借入し諸費用を自己資金対応した場合には 元利均等払いで年間返済469万 返済比率78%

例2

RCで築12年の場合には法定耐用年数が47年の為に融資可能年数が35年となります。

この木造の物件が価格 5000万 想定(表面)利回りり8%  の場合に物件価格5000万を金利2%借入し諸費用を自己資金対応した場合には 元利均等払いで年間返済198万 返済比率49%

となります。上記の2例だと保有中の安定度は例2の方が高いことになります。

ただしアパート経営の投資額(物件の購入額)や維持費、賃料などの多くの要因に影響されるため、返済比率だけの判断で投資が成功するというわけではありません。

また、ニュースなどでも報道されている通り、この数年で建築費と新築価格が高騰しています。

これから投資を始める方は「物件購入にかかった分だけ賃料を引き上げよう」と考えるかもしれませんが、家賃は取得費ではなくニーズによって決まるものです。建築費が上がったからといって、その金額を賃料に上乗せできるわけではありません。

そして取得費用が高くなれば、その分利回りも下がってしまいます。

アパート経営をはじめる際には、物件購入費用と周辺の家賃相場を調査したうえで収益をシミュレーションし、慎重に検討しましょう

利回りを見るときに確認すべきポイント

ここまでの説明で、現況利回り・想定(表面)利回り・実質利回りの3つにそれぞれどのような特徴があり、どんな数字を元に計算しているのかを理解していただけたと思います。

では、実際に利回りを見るときには、どのような部分を確認すればいいのでしょうか?

ここでは、利回りを見るときに確認すべきポイントを紹介していきます。

必ず実質利回りを確認する

計算方法をお伝えした章で比較した通り、利回りの種類によって求めた数値には大きな差が出ます。投資用の物件を選ぶときに、もっとも重要な指標となるのは「実質利回り」です。

繰り返しになりますが、想定(表面)利回りで反映されているのは年間の家賃収入のみで、必要経費や空室は考慮されていません。しかし実際はアパートが常に満室になる可能性は低く、入居者募集や居住者の入れ替えなどで空室期間は必ず出てきます。

不動産会社の広告やサイトには想定(表面)利回りのみ掲載されているケースがほとんどですが、その数字だけを信じて投資をスタートすると、実際の収益との差に落胆してしまうかもしれません。

想定(表面)利回りだけではなく、実質利回りも必ず計算しておきましょう。

想定(表面)利回りが高い物件は理由を確認する

広告やサイトに掲載されている利回りが高い物件は、とても魅力的に感じるかもしれませんが、利回りが高すぎる物件はリスクを抱えている恐れがあるため要注意です。

たとえば、管理状態が悪く共用部分が汚れていたり、管理費・修繕積立金が高すぎたりなど、さまざまな要因が考えられます。また、事故物件や心理的瑕疵(かし)物件であるなど、賃貸や売却が難しい物件である可能性も否定できません。

そのような物件は取得費用がとても安価なので、周辺相場で算出した想定(表面)利回りは当然高くなります。しかし実際には相場の賃料で貸し出すことは難しく、当初想定を大きく下回ってしまうかも知れません。

想定(表面)利回りが高い物件は、必ず理由を確認してから購入を検討しましょう。

築年数とともに利回りは下がっていく可能性がある

利回りは、アパートの築年数とともに下がっていく傾向があります。

アパートの築年数が古くなると、当然物件の外観を始めとし、内装や水まわり、設備なども古くなるため修繕費用が必要です。修繕をしない場合は、賃料の引き下げで対応することになります。

そして利回りは投資額に対する収益の割合で決めるため、支出が増える、または収入が減れば下がってしまいます。利回りはあくまで年間の家賃収入を元に求めた数字であって、安定した収入を保証する数字ではありません。

そのため、購入時の利回りが続くことを前提に資金計画を立てていると、利益が減少した際に損失が出る可能性も考えられます

利回りはアパート経営においてとても大切な数値ですが、年数とともに下がっていく可能性も踏まえ、多角的に検討しましょう。

アパート経営で大切なのは利回りだけ?

投資額に対するリターンの割合を指す利回りは、不動産投資においてとても大切な数値です。しかし先ほどもお伝えしたように、アパート経営で大切なのは利回りだけではありません。

アパート経営で大切なのは、長期的な収支計画を考え、経営を安定させることです。

そのためには経営途中でかかる修繕費用や賃貸ニーズの変化など、さまざまなことを把握しておく必要があります。

基本的に実質利回りが高い物件は収益性が高いですが、必ずしも「アパート経営前に計算した実質利回り=実際の利回り」になるとは限りません。空室率などは実際にアパートを運用してみなければわかりませんし、利回りだけで判断すると優良物件を逃してしまう可能性もあります。

利回りは、あくまで物件選びの1つの指標として考えておきましょう

アパート経営のメリット・デメリットは?経営の流れや収入リスクは?アパート経営のメリット・デメリットは?経営の流れや収入リスクは?

アパート経営では利回りだけではなく、さまざまな観点から物件を決めることが大切

アパート経営をするうえで、利回りはとても重要な数値です。中でも諸経費を含めて計算する実質利回りは、アパート経営を始めるにあたって必ず把握しておくべき数値と言えます。

しかし不動産投資をするうえで大切なのは、利回りだけではありません。ユーザーニーズやエリアの空室率、物件の状況、地域の将来性や競合物件などから、長期的な収支計画のシミュレーションも重要です。

しかし、アパート経営が初めての方は、自分で判断するのは難しいと感じるでしょう。

安定したアパート経営をするためには、信頼できる不動産会社に相談することをおすすめします。

アパート経営を検討している方、不動産投資でお悩みの方は、投資物件の取引実績が豊富なSUMiTAS(スミタス)にぜひご相談ください。

監修者
吉田 宏
吉田 宏(株式会社SUMiTAS 代表取締役社長)
  • 二級建築施工管理技士
  • 宅地建物取引士
  • 測量士補
  • 賃貸不動産経営管理士

愛媛大学在学中に愛媛県で株式会社アート不動産を創業する。現在アート不動産では、アパマンショップ(賃貸)を5店舗、SUMiTAS(売買)を2店舗・管理センターを1店舗、売買店舗を2店舗運営。吉田 宏の詳細プロフィールはこちら