「不動産投資が節税になる」という理由から、節税目的で不動産投資を始める方が増えています。しかし、不動産投資の知識や税金のしくみを知らずに投資を始めて、失敗する方が多いのも事実です。
本記事では、不動産投資における節税のしくみや、不動産投資が節税になる人、ならない人を説明していきます。不動産投資を始める前に、節税のしくみと注意点を確認しておきましょう。
目次
不動産投資と節税の関係性
不動産投資は、事業として収入を得られるだけではなく、節税面でのメリットもあります。
けれど「不動産投資と税金のつながりが、いまいちわからない」という方も多いでしょう。
不動産投資の節税効果を説明する前に、まずは不動産投資とは何か、そして不動産投資で節税できるのはどんな税金なのかを説明していきます。
そもそも不動産投資とは?
不動産投資とは、不動産を購入し、その所有権や賃貸権を保有することによって収益を得る投資のことです。「アパートやマンションの大家さんになること」と言えばわかりやすいのではないでしょうか。
不動産投資は長期的な資産形成を目指す上で有効な手段とされ、安定した収入や資産価値の上昇による資産増大などが期待できます。これまではアパートやマンションの賃貸経営といえば富裕層が行うイメージがありましたが、節税や収入を得る手段として、最近では副業で不動産投資に挑戦する方も増えています。
不動産投資で節税ができる税金
前述したように、不動産投資には税金負担を軽減できるという利点があります。不動産投資で節税できるのは「所得税」「住民税」「贈与税」「相続税」「法人税」の5つの税金です。
それぞれの税金について簡単に説明しましょう。
所得税 | 所得税個人や法人の収入に対して課される税金。不動産投資においては、賃貸収入や売却益などの所得に対して課される。 |
住民税 | 不動産の所在地の自治体に支払われる税金で、個人の所得や財産に基づいて課税される。地方自治体によって税率や課税方法が異なる。 |
贈与税 | 不動産や他の財産を贈与する際に課される税金。贈与された財産の価値に応じて税率が適用され、非課税枠を超える場合に課税される。 |
相続税 | 相続により財産を取得した場合、取得した財産に課される税金。財産の価額が高くなるほど税率が上がる「累進税率」が適用されている。 |
法人税 | 法人が不動産投資を行った場合に課せられる税金。不動産投資においては、法人が所有する不動産から得た収益に対して課税される。法人税の税率や計算方法は、国や地域によって異なる。 |
不動産投資をすれば上記の税金を節税できますが、後ほど説明する減価償却や損益通算を適用して節税するためには「確定申告」が必要です。
不動産投資が節税になるしくみ
ここからは、この記事の本題である「不動産投資が節税になるしくみ」について詳しく説明していきます。
所得税・住民税
所得税と住民税では「減価償却」によって出た赤字を「損益通算」し、所得を圧縮することで税金を抑えられます。
減価償却は不動産や設備などを、その物の耐用年数に応じて経費計上する方法です。減価償却の対象は「物」なので、土地は対象外となる点に注意しましょう。
そして損益通算は、その年に出た利益と損失を相殺することをいいます。
減価償却と損益通算で節税する手順を簡単に見てみましょう。
- 不動産投資に必要な不動産の取得費用を減価償却費として計上する
- 赤字所得を本業の所得から差し引いて損益通算する
取得から不動産投資の維持にかかる諸費用を経費として差し引き、課税所得を減らすということです。
税金は所得に対してかかるものなので、節税のためには所得を下げなければなりません。そのため、節税目的での不動産投資は、自分の本業の所得ではない投資部分で赤字を出し、課税所得を下げることで税額を抑えます。
相続税・贈与税
不動産投資で相続税と贈与税が節税できる理由は、現金と不動産を比較すると、不動産の方が課税評価額が低くなるからです。
不動産の贈与税や相続税を計算する際に用いられるのは「相続税評価額」という基準で、一般的に相続税評価額は売却価格の8割程度とされています。相続税と贈与税は、評価額から基礎控除額を差し引き、残った金額に税率をかけて算出されます。評価額が低いほど税額も小さくなるので、より高い節税効果が期待できるのです。
たとえば、1億円の財産が全て現金であれば、課税対象額は1億円です。これに対して1億円の価値がある不動産を所有している場合、課税対象額は不動産価値の8割である8000万円程度なので、約2,000万円の節税効果が得られたことになります。
また賃貸物件の相続税評価額は、賃貸収入を考慮して元の不動産の価格から減額して計算されることもポイントです。贈与や相続の対象となる不動産を賃貸物件にしておくことで、相続人や受贈者の税負担を軽減することができます。
相続した不動産の評価額 | 評価方法や減額して節税する方法節税目的で不動産投資をするときの注意点
不動産投資は節税効果を期待できる一方で、さまざまなリスクや条件が存在します。重要なのは、適切な知識と計画を持って取り組むことです。
不動産投資を始める前に、これから挙げる注意点をしっかりと頭に入れておきましょう。
さまざまなリスクがある
収入を得られて資産形成にも最適、そして節税効果まで期待できる不動産投資ですが、「投資」であることを忘れてはいけません。投資である以上、株式投資などと同じように損失が出るリスクもあります。
不動産投資で1番に挙げられるリスクが、空室リスクです。不動産には常に入居希望者がいるわけではなく、空室期間が発生する可能性は十分にありえます。空室期間中は収入が得られなくなるため、空室率が高くなったり空室状態が続くと収益に影響が及んでしまいます。
また、賃料変動を受けにくいといわれる不動産投資ですが、賃料の変動リスクは0ではありません。不動産の賃貸収入は市場の需要や競争状況に左右されるため、周辺環境によって賃料が下がったり、入居率が低下したりすることがあります。
不動産投資は資産形成や節税の手段ではなく、「経営」としての側面があることを忘れてはいけません。しっかりとリスクを理解し、適切な事前調査と計画を行うことが重要です。
物件によって節税効果が異なる
不動産投資において、節税効果は物件の性質や条件によって異なる場合があります。
節税効果に影響を与えるのは、「償却期間」と「建物比率」の2つの要素です。
償却期間は減価償却できる期間のことで、建物比率は物件価格における建物の比率を指します。節税目的で不動産を行う場合は、償却期間が短く、建物比率が高い物件を選ぶ必要があります。
償却期間が短く建物比率が高い物件のほうが、短期間で多くの減価償却費を計上して高い節税効果を期待できるからです。償却期間が短い物件というのは、耐用年数が短い中古物件で、償却期間が長いのは、耐用年数が長い新築物件です。
新築物件の場合は1年あたりの減価償却費が少なくなり、大きな節税効果は期待できません。選ぶ物件によって節税効果に大きな差が出るという注意点は、必ず覚えておきましょう。
節税効果は無限に続くわけではない
節税目的で不動産投資を始めたからといって、節税効果が無限に続くわけではなく、一定の期間や条件が存在します。不動産投資で節税効果を得られるしくみに大きく関係しているのは、減価償却だからです。減価償却期間が終了すると経費は減少し、同時に節税効果も薄れてしまいます。
また、税法や税制度の変更も節税効果に影響を与える場合があります。税法の改正や税制の見直しによって、節税手法や控除の対象が変更される可能性もあるでしょう。税制改正や見直しに対応するためには、最新の税法や税制度の動向を把握し、適切な節税戦略を常に練る必要があります。
不動産売却にかかる税金はどれくらい?計算方法や節税対策を紹介!状況によっては課税事業者になる必要がある
2023年(令和5年)10月1日から導入される、消費税の新しいルール「インボイス制度」によって、状況によっては課税事業者になる必要があります。
まずはインボイス制度導入にあたっての対応方法を見てみましょう。
物件種類 | オーナー(大家)の状況 | インボイスへの対応 |
---|---|---|
住宅の家賃収入 | 非課税 | インボイスの登録は不要 |
事務所・店舗などの家賃収入があり、テナントが免税事業者の場合 | 免税事業者 | |
事務所・店舗などの家賃収入があり、テナントが課税事業者の場合 | インボイスの登録を検討 | |
事務所・店舗などの家賃収入 | 課税事業者 | インボイス発行事業者の登録が必要 |
インボイスを発行してもらわなければ、テナント(借主)は“受け取った消費税”から“仕入れにかかる消費税”を差し引く「仕入税額控除」が受けられなくなる可能性があります。
状況によっては課税事業者になり、インボイスの登録が必要になる可能性があることを覚えておきましょう。
収入によっては節税効果をあまり得られない
節税対策に有効な不動産投資ですが、収入によっては効果をあまり得られない場合があります。不動産投資で節税効果を期待できるのは、高い税金を納めている高所得者です。
では具体的にどんな人が不動産投資で節税効果が得られ、どんな人が節税対策をあまり得られないのでしょうか。次項で解説します。
不動産投資が節税対策になる人・ならない人
前項でもお伝えしたように、不動産投資は節税対策として有効な場合もあれば、そうでない場合もあります。最後に、不動産投資が節税対策になる人と、ならない人を説明していきましょう。
不動産投資が節税対策になる人
一般的に不動産投資が節税対策になるのは収入が多く高額納税をしている人で、具体的には年収900万円以上の方が該当します。課税所得が900万円以上になると、累進課税によって所得税率が33%以上になり、所得金額695~899万円以下の23%から一気に10%も税率が上がってしまうからです。
しかし、不動産投資をすることで減価償却費や損益通算などの節税手法を活用すれば、経費の形状によって所得を抑えて課税ベースを減少させることができます。
不動産投資が節税対策にあまりならない人
不動産投資が節税対策にならない人は、年収900万円以下の方です。
年収900万円以下の方は税率がそれほど高くなく、投資に関わるコストやリスクに見合った節税効果が得られません。不動産投資ローンを組む場合は、年収が低いとローンが通らない可能性もあるでしょう。
年収900万円以下の方は、節税よりも「収益」を目的とした投資の方がメリットが大きいと言えます。節税対策としてではなく、収益を目的とした物件を選び、投資にチャレンジしてみてください。
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不動産投資は家賃収入を得られるだけではなく、所得税や住民税といった税負担を軽減する可能性がある魅力的な投資方法です。しかし誰にでも高い節税効果が得られるわけではないことや、物件によって節税効果に差が出る点に注意しなければなりません。
そして忘れてはいけないのが、不動産投資は収入を得たり節税したりする手段ではなく「投資」の1つであるということです。投資である以上コストがかかりリスクがある点も納得したうえで、個別の状況や目的に応じて、不動産投資を通じた節税戦略を慎重に検討する必要があります。
投資初心者であれば、これらの見極めはとても難しいので、不動産会社と相談しながら進めていくことをおすすめします。SUMiTAS(スミタス)は、不動産投資の相談受け付け実績も多く、お客さまに最適な不動産投資を紹介してきた不動産会社です。節税目的の不動産投資を検討されている方は、ぜひSUMiTASにご相談ください。