アパート経営をしてみたいと考えたとき、どの程度の初期費用が必要になるのか気になる方も多いでしょう。アパート経営を始めるにあたって、初期費用の把握はとても重要です。どのくらいの金額がかかるのか事前に把握しておくことで、自己資金とローン借入額の割合など具体的な資金計画が立てられます。
本記事では、アパート経営を始める際に必要な初期費用の種類や金額の目安について解説します。初期費用を抑える方法や注意点など参考になる内容もお伝えしますので、アパート経営を検討している方は、ぜひ参考にしてください。
目次
アパート経営にかかる初期費用の目安
アパート経営にかかる初期費用には、建物や土地費用など物件にかかる費用以外にもさまざまな諸費用が発生します。具体的にどのような項目があるのか、まずは一覧表で確認してみましょう。
費用項目 | 費用目安 | |
---|---|---|
建築にかかる費用 | 本体工事費用 | アパートの構造や規模による(全体費用の7~8割) |
別途工事費用 | 同上(全体費用の1〜2割) | |
建築以外にかかる費用 | 土地購入費用 | 場所による |
不動産取得税 | 固定資産税評価額×税率(3%) | |
印紙税 | 1,000円~6万円 | |
登記費用 | 購入費用に準ずる | |
アパートローンの諸費用 | 借入額の1~3% | |
保険料 | 50万円程度 | |
外注費 | 内容による | |
維持費 | 内容による |
費用については、土地の場所や規模、建物の施工方法、設備の選定などによって大きく異なります。上記の金額はあくまで目安と考え、余裕のある資金計画を立てましょう。
2023年(令和5年)10月1日から導入される「インボイス制度」への登録を心配される方も多いかもしれませんが、アパートやマンションの家賃は非課税です。住宅のみ賃貸経営しているオーナーは、基本的にインボイス制度による影響はなく、課税事業者になる必要もありません。
アパートの建築にかかる費用
アパート経営において、新しくアパートを建てる場合は建築費が大きな割合を占めます。
建築費にはどのような項目が含まれるのか、ここではアパートの建築にかかる費用を確認しておきましょう。
本体工事費用
アパートの本体工事費用に含まれるのは、建築材料、人件費、建築業者の手数料などの建物の建設作業にかかる費用です。建築費は「坪単価 × 延べ床面積」で計算できますが、どの構造で建てるかによって総額に大きな差が出ます。
建築費のおおよその費用を、構造別に見てみましょう。
木造アパート(2~3階建て) | 1坪あたり約50~100万円 |
鉄骨造アパート(2~4階建て) | 1坪あたり約60~120万円 |
鉄筋コンクリート造(RC造) | 1坪あたり約80~120万円 |
表を見ると、木造が1番安価で鉄筋コンクリート造が最も費用がかかることがわかります。
けれどアパートで鉄筋コンクリートが使われることは少なく、アパートの構造で多く使われるのは木造なので、建築費は「50〜100万円/坪」で考えておくといいでしょう。
仮に90坪の土地に木造2~3階建てのアパートを建てるとしたら、建築費用は約4,500〜9,000万円が相場になります。
ただし、ニュースで話題にもなっているように物価高が止まらない今、アパートの建築費も高騰している点に注意が必要です。パンデミックが原因で起こったウッドショックをはじめ、アイアンショック、世界情勢などのさまざまな要因が重なり、建築費の高騰は今も続いています。
建築費はこれからも上昇していくことを念頭に置き、アパートの建築費の予算を考えてみてください。
別途工事費用
アパート本体工事費以外では、次のような別途工事費用や付帯工事費用がかかります。
- 地盤改良
- 給排水
- 空調、電気、ガスなど設備関係
- フェンスや造園など外構
これらの費用の目安は、本体工事費用の1〜2割程度とされています。
地盤改良は、地盤が軟弱な場合や地震や地盤沈下のリスクがある場合に、地盤の強度や安定性を向上させるために行われる工事です。
給排水は建物内部の水の供給と排水を管理するための工事で、水道管や給湯器など給水設備と下水管や浄化槽など排水設備の設置が含まれます。
また、アパートを建てる前に空き地だった場合は、空調・電気・ガスなどのライフラインの整備も必要です。
外構工事も、アパートでは欠かせません。入居者を募る前に、道路や駐車場の整備、庭の造成、フェンスや門の設置、照明設備の設置など外構全体を整えておく必要があります。
アパートの建築以外にかかる費用
アパート経営の初期費用は建築費が大きな割合を占めますが、建築費以外にもローン関連費用、登記費用、不動産所得税、火災・地震保険料などさまざまな費用が発生します。1つずつ確認していきましょう。
土地購入費用
土地を購入してアパートを建てる場合は、土地購入費用がかかります。土地の価格は地域や立地条件によって大きく異なるため、具体的な相場はなく、予算に合わせた土地を選ぶことが大切です。
また、土地の購入は不動産会社を通じて行うのが一般的ですが、その際は仲介手数料がかかります。仲介手数料は、上限額が宅建業法で次のように定められています。
売買金額 | 上限額 |
---|---|
200万円超400万円以下 | 売買価格×4%+2万円+消費税 |
400万円超 | 売買価格×3%+ 6万円+消費税 |
仮に5,000万円の土地を購入するとしたら、最大で171万6,000円(税込)の仲介手数料がかかります。土地価格が高くなるほど仲介手数料も高くなるため、仲介手数料の予算も別途考えておきましょう。
不動産取得税
不動産取得税は、土地や建物を取得したときにかかる税金で、不動産の取得後に1度だけ課税されます。税額は「固定資産税評価額 × 3%」で算出され、固定資産税評価額はアパート建築費の5~6割が目安です。
不動産取得税は不動産の取得後、半年〜1年半程度経った頃に請求されるため、忘れないように覚えておきましょう。
印紙税
印紙税は、契約書に添付する収入印紙の代金です。
契約する金額によって、収入印紙の代金は以下のように変わります。
契約金額 | 本則税率 | 軽減税率 |
---|---|---|
500万円を超え1,000万円以下 | 1万円 | 5,000円 |
1,000万円を超え5,000万円以下 | 2万円 | 1万円 |
5,000万円を超え1億円以下 | 6万円 | 3万円 |
なお、令和6年3月31日までは、表右列の軽減税率が適用されます。
登記費用
不動産を取得したときは、最大で4つの登記手続きと登録免許税がかかります。
登録免許税 | |
---|---|
所有権保存登記 | 固定資産税評価額(建築費の5~6割程度)× 0.4% |
表示登記 | なし |
所有権移転登記(土地) | 土地の価格 × 1.5% |
抵当権設定登記 | 債権金額(借入金額)× 0.4% |
アパートを新築した場合は、建物が自分の持ち物であることを登記する「所有権保存登記」と「表示登記」が必要で、土地を購入した場合は「所有権移転登記」もしなければなりません。
銀行でアパート用のローンを組んだ場合は、アパートに抵当権を設定する「抵当権設定登記」が必要ですが、これは司法書士が代理で手続きします。
アパートローンの諸費用
アパートローンを組んでアパート経営をスタートする場合、利息だけではなく「保証料+事務手数料」の諸費用が発生 する場合があります。
アパートローンは住宅ローンなどと異なり各金融機関で融資制度が大きく異なります。保証料が不要の金融機関もありますし、保証料が不要だけれど事務手数料が高額な場合や、保証料・事務手数料が共に不要だけれど、貸出金利自体が高く設定されている場合もあります。各金融機関の特徴を理解して融資を受けることが最も重要です。
保険料
アパートを建築したら、火災保険や地震保険に加入します。
保険への加入は義務ではありませんが、いつ起きるかわからない災害から大切な資産を守るためにも加入しておくほうが安心です。アパートローンを組む場合は、火災保険への加入が義務化されている場合(火災保険に金融機関が質権設定を行う)もありますので、ローンを組む予定の方は保険費用も初期費用の1つとして考えておきましょう。
火災保険料の目安はアパートの規模や構造によって料金は異なりますが、10年契約で50万円前後です。
外注費
アパート新築時の外注費には、次のような費用が含まれます。
司法書士への報酬(登記委任に関わる費用) | アパート新築時は6~10万円 |
土地家屋調査士への報酬(表示登記に関わる費用) | アパート新築時は6~15万円 |
不動産仲介会社の仲介手数料(土地) | 土地価格が500万を超える場合は最大「売買価格×3%+ 6万円+消費税」 |
登記手続きを司法書士登記委任に関わる費用は、新築時なら報酬として6〜10万円ほどかかります。登記を行う土地の筆数、担保設定登記を行う設定数などで金額が変わります。報酬の内訳に登録免許税や書類取得費用が含まれているか、いないかによって見積に差が出るため相談時の確認が必須です。
建物を新築した場合には、建物を登記する為の図面作成を土地家屋調査士に依頼する必要があり、この為の費用が6~15万が目安となります。建築面積で変動致します。
また、土地を購入する場合は先ほどもお伝えしたように、土地価格に応じた仲介手数料がかかります。
維持費
アパート経営において、物件の維持費用も忘れてはいけない重要項目です。毎月必要なものと、必要に応じてかかるものがあります。
- 光熱費
- 維持費、租税公課
- 修繕費
- リフォーム費
- 管理費
アパート経営における光熱費は、エントランスやエレベーター、廊下などの共用部分で利用する光熱費です。大きな金額にはなりませんが、毎月必ず発生します。
維持費としては、建物の建築方法および地域で異なります。主なものは共用部の定期清掃・ゴミ回収分・消防点検・エレベーター管理・貯水槽清掃・町内会費などがあります。
租税公課に関しては、固定資産税・都市計画税が発生します。利益に応じて法人税又は所得税が発生しますので、納税を考慮した資金計画が重要となります。
また、築年数が経過したときには、リフォームや設備の入れ替えなど、建物を維持するための修繕が必要です。修繕費用は賃料の管理費に含まれますが、高額になるため自分でも積み立てておかなければなりません。
新規の入居者募集やアパート管理などを委託するための管理費も、毎月の維持費としてかかります。賃料に対して割合を決めることが多く、目安は賃料の5%前後です。
アパート経営をはじめるときに自己資金は必要?
アパート経営にはアパートの建築費だけではなく、さまざまな費用がかかることがわかりました。ではアパート経営をはじめるにあたって、自己資金はどのくらい用意すればいいのでしょうか。
アパート経営における自己資金の目安は初期費用の1~3割といわれているので、仮に初期費用に8,000万円かかるとしたら、自己資金は800~2,400万円必要です。
ただし、アパートローンは融資率を初期投資の7〜8割とする金融機関が多く、初期費用の2〜3割の自己資金を用意しなければローンに通らない場合もあります。
自己資金がどれだけあれば融資が受けられるか、最低ラインの判断が難しいのです。
審査では返済能力や収益性の見込みなども考慮されるので、自己資金が2〜3割用意できない場合でも、収益性の見込みがあれば審査に通ることもあります。
不動産会社や建設会社、金融機関と相談しながら、自己資金の割合を考えてみてください。
アパート経営のメリット・デメリットは?経営の流れや収入リスクは?アパート経営の初期費用を抑える方法と注意点
アパート経営にかかる初期費用の項目の多さに敷居の高さを感じるかもしれませんが、費用を抑える方法もあります。
ここからは、初期費用を抑える方法とその注意点を解説していきます。
間取りや外観をシンプルにする
アパートの建築費用を抑えるためには、アパートの間取りや外観をシンプルにしましょう。
イレギュラーな間取りや変わった外観は、建築や設備のコストを増加させる傾向があります。専門家のアドバイスを受けながら、シンプルで需要のある間取りや外観にすると良いでしょう。
ただし、建物や内装材、設備のグレードを下げると入居率や賃料の引き下げが必要になるので、あまりおすすめはできません。
シンプルながらもオシャレに見えるよう、建設会社と相談しながら間取りや内装、外観を考えてみてください。
複数の建築会社で相見積もりをする
アパートの建築を行う際は、複数の建築会社から見積もりを取ることが大切です。複数の建築会社の見積もりを比較すれば、最も費用を抑えられる業者を選べます。
ただし、見積もりの単価だけでなく、品質や信頼性も考慮することを忘れてはいけません。安価な見積もりだけで業者を選ぶと、後に品質の問題や工期の遅延などが生じる心配があるからです。
費用・品質・信頼性のバランスが良い建設会社に依頼しましょう。
アパート経営の初期費用でお悩みの方はSUMiTASに相談を!
アパート経営にはさまざまな費用がかかります。初期費用を少しでも抑えるためには、間取りや外観をシンプルにすることや複数の建築会社で相見積もりをすることが重要です。
だからといって費用削減を意識しすぎて、品質を低下させたり入居者のニーズに合わなかったりしたら、経営がうまくいかず元も子もありません。
アパート経営を成功させるためには、不動産会社や建設会社と相談しながらしっかりとした経営戦略を立て、入居者の要望に合わせた質の高いアパートを提供することが大切です。
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