一戸建てを売るか貸すかは、「貸している間に下がる売値」を家賃で取り返せるかで決まります。
戸建ての売値は、築年が10年違うと2〜3割安くなっています。国土交通省の取引価格情報(2024〜2025年・全国の戸建て12万4,346件)を当社で集計すると、取引価格の中央値は、築5〜9年の3,200万円に対して築15〜19年は2,400万円でした。10年貸してから売るなら、この差(800万円)を目安にした値下がりと、貸している間の維持費を、家賃で取り返す必要があります。維持費を仮に年20万円とすると、必要な家賃は月9.6万円前後です(空室を年1か月、管理の委託料を家賃の5%と仮定した場合)。
もう1つ、先に確かめておく期限があります。住まなくなってから3年を経過する日の属する年の12月31日を過ぎて売ると、自宅を売ったときの3,000万円の特別控除が使えません(国税庁 No.3302)。
この記事では、計算の前提をすべて開示したうえで、戸建てを貸すときの負担、戻れるかどうかを決める契約の形、貸してから売る出口まで書きます。
- 戸建ての売値は、築5〜9年と築15〜19年の取引を比べると2〜3割低い(首都圏−23%、地方圏−30%)
- 貸すなら、その値下がりと維持費を家賃で取り返せるかで決める。全国の中央値で、維持費が年20万円、空室が年1か月、管理の委託料が家賃の5%と仮定すると、月9.6万円前後の家賃が必要
- 3,000万円の特別控除は、住まなくなってから3年を経過する日の属する年の12月31日までに売らないと使えない
- 戻って住む予定があるなら、定期借家で貸すか空き家のまま残す。普通借家では、戻りたいという理由だけでは出てもらえないことがある
目次
一戸建てを売るか貸すかで変わること。お金・手間・戻れるか
売る場合と貸す場合の違いを、お金・手間・戻れるかで並べると次のとおりです。
| 比べる点 | 売る | 貸す |
|---|---|---|
| 入るお金 | 売った代金が一度に入る | 家賃が毎月入る。空室の月は入らない |
| 出るお金 | 仲介手数料などの売る費用(一度だけ) | 固定資産税・保険・修繕・管理の委託料(貸している間ずっと) |
| 家の値段 | 売った時点で決まる | 貸している間も古くなり、相場が変わらなければ下がっていく |
| 手間 | 売れるまで | 貸している間ずっと(管理会社に任せても、修繕の判断と費用は貸主に残る) |
| 戻って住めるか | 戻れない | 契約の形による。定期借家なら、契約書とは別の書面での説明や満了前の通知といった手続きを踏めば、期間の満了で戻れる |
| 税金 | 利益が出れば譲渡所得税。3,000万円の特別控除がある | 家賃は不動産所得として課税される。貸してから売るなら、3,000万円の特別控除には期限がある |
「家賃が入り続けるから貸すほうが得」とは限りません。貸している間も家は古くなり、相場が変わらなければ、最後に売るときの価格は築年が進むぶん下がっていきます。家賃の収入と、その値下がりを並べて比べるのが、この記事の考え方です。
一戸建ての売値は、築年が10年違うと2〜3割安い

国土交通省の不動産取引価格情報から、2024年1月〜2025年12月に取引された戸建て(住宅地・延床面積60〜250㎡・特殊な事情のない取引)12万4,346件を、建物の築年数の帯ごとに集計しました。取引価格の中央値は次のとおりです。
| 圏域 | 築5〜9年 | 築15〜19年 | 10年の差 | 築25〜29年 |
|---|---|---|---|---|
| 全国 | 3,200万円 | 2,400万円 | −800万円(−25%) | 1,600万円 |
| 首都圏 | 4,100万円 | 3,150万円 | −950万円(−23%) | 2,400万円 |
| 近畿圏 | 3,300万円 | 2,500万円 | −800万円(−24%) | 1,900万円 |
| 中京圏 | 3,100万円 | 2,400万円 | −700万円(−23%) | 1,500万円 |
| 地方圏 | 2,700万円 | 1,900万円 | −800万円(−30%) | 1,300万円 |
(首都圏=東京・神奈川・埼玉・千葉、近畿圏=大阪・京都・兵庫・奈良、中京圏=愛知・岐阜・三重、地方圏=それ以外)
築15〜19年の中央値は、築5〜9年と比べて首都圏で23%、地方圏で30%低くなっています。今の相場のまま築年だけが進むとすれば、築5〜9年の家を10年貸してから売る場合も、この程度の値下がりを見込むことになります。築15〜19年と築25〜29年を比べても、全国で33%(3割強)低くなっています。貸していれば家の価値が保たれる、ということはありません。
地方圏は、値下がりの額は全国と同じ800万円でも、元の価格が低いぶん、下がる割合は大きくなります。
注意点が2つあります。1つは、同じ家を追いかけた価格ではないことです。その年に取引された、築年数の違う家どうしの中央値を比べているため、立地や広さの違いが混ざります。もう1つは、10年後の相場の上げ下げは入っていないことです。今の相場のまま築年だけが進んだ場合の目安として読んでください。
このほか、取引価格情報は、国土交通省が取引をした人へのアンケートの回答をもとに作っています。国土交通省は、公表する価格について「数値の丸め以外は一切補正を行っておりません」としています。回答の記入の誤りがそのまま含まれることもあるため、この記事では、外れた値に引っ張られにくい中央値で比べています。
一戸建てを売るか貸すかの判断式。取り返すのに必要な家賃

売るか貸すかは、次の2つを比べれば決まります。
- 今売る: 今の売値
- 10年貸してから売る: 10年分の家賃の手取り − 10年分の維持費 + 10年後の売値
貸すほうが上回るには、10年分の家賃の手取りが、「値下がりの額」と「10年分の維持費」の合計を上回る必要があります。ここから、必要な家賃(月額)を逆算できます。
計算の前提は次のとおりです。戸建ての家賃は立地・広さ・築年数で大きく変わり、全国の平均では自分の家の目安になりません。そこで、家賃は仮定せず、「いくらの家賃が必要か」を出す形にしています。
| 前提 | 置いた値 | 扱い |
|---|---|---|
| 値下がりの額 | 全国800万円・首都圏950万円・地方圏800万円 | 「一戸建ての売値は、築年が10年違うと2〜3割安い」の章の表にある「10年の差」(国交省データの当社集計) |
| 空室 | 1年に1か月(家賃が入るのは年11か月) | 仮定 |
| 管理の委託料 | 家賃の5% | 仮定 |
| 維持費 | 年0円・20万円・40万円の3通り | 仮定。固定資産税・火災保険・修繕などの合計で、家によって大きく違うため、今回は仮に3通りを置いて計算 |
空室と委託料の仮定は、当社の担当者の感覚とも大きくずれていません。担当者によれば、管理の委託料は家賃の5%が一般的です。空室については、戸建ての入居はアパートより長く4〜5年ほど続くことが多い一方、退去すると次の入居者が決まるまで3〜6か月ほどかかるという感覚です。入居と空室を合わせた1回りを1年あたりにならすと0.6〜1.3か月ほどで、年1か月はその中ほどです。
必要な家賃(月額)=(値下がりの額÷10年 + 年間の維持費)÷(11か月 × 95%)
| 維持費(年) | 全国・地方圏(値下がり800万円) | 首都圏(値下がり950万円) |
|---|---|---|
| 0円(値下がりだけを取り返す) | 月7.7万円 | 月9.1万円 |
| 20万円 | 月9.6万円 | 月11.0万円 |
| 40万円 | 月11.5万円 | 月12.9万円 |
全国の中央値で、維持費を仮に年20万円とすると、月9.6万円の家賃で、10年分の手取りは約1,003万円、維持費を引いて約803万円になり、800万円の値下がりとほぼ並びます。これより低い家賃しか取れないなら、10年貸してから売るより、今売るほうが手元に多く残る計算です。
この式に入れていないものもあります。どれも、入れると必要な家賃はさらに上がる方向です。
- 家賃にかかる税金。家賃は不動産所得(総収入金額から固定資産税・損害保険料・減価償却費・修繕費などの必要経費を引いた額)として所得税がかかり(国税庁 No.1370)、住民税もかかります。式は税引前です
- 入居者を募集する費用と、退去のときの原状回復で貸主が負担する費用
- 住宅ローンの利息。ローンが残っている場合、売れば止まる利息を、貸している間は払い続けます
- 今お金を受け取ることの価値。今売った代金は、10年間ほかに使えます
逆に、10年後に売るときは売値が下がるぶん仲介手数料も少し下がりますが、差は小さいので式から外しています。
自分の家で計算するときは、全国の中央値ではなく、自分の家の今の査定額と、取れる家賃の見込みを入れてください。家賃は、募集に出ている家賃ではなく、実際に決まった家賃(成約賃料)を不動産会社に聞くのが確実です。
3,000万円控除の期限は、一戸建てに住まなくなった日から数える
自宅を売って利益が出たときは、3,000万円の特別控除が使えます。国税庁 No.3302 は、対象の1つを「以前に住んでいた家屋(住まなくなってから3年を経過する日の属する年の12月31日までに売る場合に限ります。なお、その家屋は、住まなくなった日以後、どのような用途に使用してもかまいません。)」としています。
つまり、貸していても控除は使えますが、期限までに売った場合に限られます。たとえば2026年9月に住まなくなった場合、3年を経過するのは2029年9月で、期限は2029年12月31日です。期限のほかにも、売った年の前年と前々年にこの特例などを受けていないこと、親子や夫婦など特別の関係がある人に売ったものでないこと、などの要件があります(No.3302)。
| 住まなくなった時期 | 3年を経過する時期 | 売る期限 |
|---|---|---|
| 2026年9月 | 2029年9月 | 2029年12月31日 |
| 2027年3月 | 2030年3月 | 2030年12月31日 |
期限が効いてくるのは、売ると利益が出る家です。昔に安く買った家や、買ったときより相場が上がった地域の家は、期限を過ぎて売ると、利益に税金がかかります。また、建物の取得費(買ったときの代金など)は、持っていた期間の減価償却費に相当する額を引いて計算するため(国税庁 No.3202)、買ったときより安く売っても利益が出ることがあります。
売ると損が出る家にも、期限があります。損をほかの所得と相殺できる特例(新しい家に買い換えた場合の No.3370、住宅ローンの残高を下回る価額で売った場合の No.3390)についても、国税庁は、以前に住んでいた家屋は「住まなくなった日から3年を経過する日の属する年の12月31日までに売る場合に限ります」としています。この2つの特例には、ほかにも要件があります。どちらも売った年の1月1日で所有期間が5年を超えていることが必要で、No.3370は売った年の前年1月1日から翌年12月31日までに新しい家(床面積50平方メートル以上)を買い、その家に返済期間(償還期間)10年以上の住宅ローンがあること、No.3390は売買契約の前日に返済期間10年以上の住宅ローンの残高があることなども要件です。
さらに、この2つの特例は、どちらも令和9年(2027年)12月31日までの売却が対象です(令和8年4月1日現在法令等)。2026年9月に住まなくなった場合、3,000万円の特別控除は2029年12月31日まで使えますが、損失の特例は、制度が延長されない限り2027年12月31日が先に来ます。
新しい家を住宅ローンで買い、住宅ローン控除(住宅借入金等特別控除)を受ける人は、もう1つ確かめてください。新しい家に入居した年とその前年・前々年、または入居した年の翌年から3年目までのいずれかの年に、前の家を売って3,000万円の特別控除を受けると、新しい家の住宅ローン控除は受けられません(国税庁 No.3302)。住まなくなった年に新しい家へ入居した場合、3,000万円の特別控除の期限までに売れば、どの年に売ってもこの期間に入るため、2つの控除のどちらかを選ぶことになります。損失の2つの特例(No.3370・No.3390)は、住宅ローン控除と併用できます。
期限を過ぎてから売るかどうかは、判断式の章の式に「期限を過ぎた場合の税金」を足して比べます。貸すと決める前に、期限の日と、売ったら利益が出るかどうかを書き出してください。税額の計算と特例の適用の判断は、税務署か税理士に確認してください。
空いている貸家のうち、戸建ては4.8%と少ない

総務省の令和5年住宅・土地統計調査によると、賃貸するために空き家になっている住宅(賃貸用の空き家)は全国に443万6千戸あります。建て方別に見ると、共同住宅が394万7千戸(89.0%)、長屋建が27万1千戸(6.1%)で、一戸建は21万3千戸(4.8%)でした。人が住んでいる住宅5,566万5千戸では一戸建が52.7%を占めるのと比べると、空いている貸家に戸建てがいかに少ないかが分かります。
借りる側から見ると、空いている貸家の中で戸建ての選択肢は少ない、ということです。貸す側から見ると、全国では競い合う空いた戸建ての貸家が少ない、とも言えます。
ただし、この数字は空いている貸家の数で、戸建てを借りたい人の数ではありません。空きが少ないのが、戸建ての貸家そのものが少ないためか、すぐに埋まるためかも、この数字からは分かりません。借り手が付くかどうかは、立地や家賃、家の状態などで大きく変わります。また、比べられる戸建ての貸家が少ない地域では、家賃の見込みが立てにくくなります。家賃の見込みは、1社だけでなく複数の不動産会社に聞いて、判断式に入れてください。
一戸建てを貸すときの負担。修繕と原状回復
戸建てを貸すと、建物のすべてを、貸主が持ち主として維持することになります。マンションのように、外壁や屋根を管理組合が計画的に直してくれるわけではありません。
修繕は、貸主の義務です。民法606条は「賃貸人は、賃貸物の使用及び収益に必要な修繕をする義務を負う」と定めています(借主の責任で必要になった修繕は除く)。給湯器の故障や雨漏りのように、住むのに支障が出る不具合は、貸主が直すのが原則です。戸建てでは次のような箇所が、貸している間に貸主の負担になりえます。
- 屋根と外壁(雨漏りや塗装の劣化)
- 給湯器・キッチン・浴室・トイレなどの設備
- 給排水管
- 塀や門扉、庭木(手入れの分担は契約で決める)
退去のときの原状回復も、すべてを借主に求められるわけではありません。民法621条は、借主が直す義務を負う損傷から「通常の使用及び収益によって生じた賃借物の損耗並びに賃借物の経年変化」を除いています。壁紙の日焼けや家具の置き跡のような、普通に住んでいて生じる傷みは、貸主の負担になるのが原則です。また、借主の責任ではない理由で生じた損傷も、借主が直す義務はありません(同条のただし書)。
修繕の費用は、判断式の「維持費」に入ります(退去のときの原状回復で貸主が負担する費用は、判断式の章で書いたとおり式に入れておらず、入れると必要な家賃はさらに上がります)。判断式の章の表で仮に置いた年0円・20万円・40万円のどれに近いかは、家の築年数と状態で大きく変わります。貸す前に、修繕が必要な箇所を不動産会社や工事会社に見てもらうと、見込みが立てやすくなります。
一戸建てを普通借家と定期借家のどちらで貸すか。戻れるかはここで決まる
戻って住む予定があるかどうかで、選ぶ契約の形が変わります。
| 比べる点 | 普通借家 | 定期借家 |
|---|---|---|
| 契約の更新 | 更新するのが基本 | 更新しない定めができる |
| 貸主から終わらせるには | 正当の事由が必要 | 期間の満了で終わる。期間1年以上なら、満了の1年前から6か月前までに終了を通知する(遅れた場合は、通知の日から6か月が経ってから終了) |
| 始めるときの手続き | 定期借家のような決まりはない | 書面(電子契約を含む)で契約し、更新がないことを、契約書とは別の書面を渡して説明する。借主の承諾があれば、説明の書面は電子メールなどで提供できる |
| 戻って住めるか | 戻りたいという理由だけでは、出てもらえないことがある | 期間の満了に合わせて戻れる |
どちらも借地借家法の定めです。普通借家で貸主が更新を断るときの要件は28条、定期借家の決まりは38条にあります(1項が更新しない定め、2項が電子契約(電磁的記録)での契約、3項が始める前の書面での説明、4項がその書面に代わる電子メールなど(電磁的方法)での提供、6項が終了の通知の定め)。
普通借家では、貸主から契約を終わらせるには、借地借家法28条の「正当の事由」が必要です。正当の事由があるかは、貸主と借主がそれぞれ建物を必要とする事情や、これまでの経過、建物の状態、立ち退きと引き換えに払うお金(立退料)の申し出などを考えて判断されます。戻って住みたいという事情だけで、認められるとは限りません。
定期借家は、更新がないことを定めた賃貸借で、期間が来れば終わります。ただし、始めるときに更新がないことを書面を渡して説明しないと、更新がないという定めは無効になります。38条5項の定めです。この説明の書面は契約書とは別の書面でなければならず、契約書に更新がないと書いてあるだけでは足りません(最高裁判所 平成24年9月13日判決)。定めが無効になると、普通借家と同じく契約が更新されるため、戻りたいという理由だけでは出てもらえないことがあります。
定期借家にも、貸主が知っておくべき決まりがあります。床面積200㎡未満の住まいでは、転勤・療養・親族の介護などのやむを得ない事情で住めなくなった借主は、途中で解約を申し入れることができ、申し入れから1か月で契約が終わります。38条7項の定めです。期間中の家賃が入り続けるとは限りません。
戻る予定がある場合の手続き(住宅ローンが残っているときの金融機関への相談など)は、住宅ローンがあるけど引っ越したいときの記事で書いています。
貸している一戸建てを売る出口。空室で売るか、入居者付きで売るか

貸した家を最後に売るときの形は、2つあります。
1. 空室にしてから売る
定期借家なら、期間の満了に合わせて退去してもらい、空室にしてから売ります。流れは次のとおりです。
- 期間の満了の1年前から6か月前までに、終了を通知する(期間1年以上の場合。この時期を過ぎて通知すると、終了を主張できるのは通知の日から6か月が経ってから)
- 期間の満了で退去してもらう
- 原状回復をする(借主の責任でついた傷は借主、普通に住んで生じた傷みは貸主の負担)
- 空室で売り出す
空室で売れば、自分で住むために家を探している人も買主になります。築年数の古い家では、リフォームなどをしてから売ったほうが高くなる場合もあります。ただし、かけた費用をそのまま売却価格に上乗せできるとは限らないため、手を入れる前に不動産会社に相談してください。売り出しから成約までは、首都圏の中古戸建てで平均100.9日かかっています(東日本不動産流通機構「首都圏不動産流通市場の動向(2025年)」)。これは首都圏の平均で、地域や物件によって日数は大きく変わります。3,000万円の特別控除の期限までに売りたいなら、契約の期間は、期限から売却にかかる日数を逆算して決めます。売却全体の日数は不動産売却の期間の記事で整理しています。
2. 入居者が住んだまま売る
入居者がいる状態のまま、貸主の立場ごと家を売る方法です(オーナーチェンジと呼ばれます)。買主はすぐには自分で住めないため、主に家賃収入を目的にする人になります。
家賃が入り続けるぶん、入居者付きのほうが高く売れそうに見えますが、当社の担当者の見方では、基本的には空室で売るほうが高く、入居者付きでは多少価格が下がる可能性があります。空室なら、自分で住む人に向けて、土地と建物それぞれの価値を積み上げた価格(積算価格)で値段を付けられるためです。普通借家で貸していて、退去してもらう見込みが立たない場合は、この形になりやすくなります。
どちらの形でも、貸し始める前に出口を決めておくことが大切です。普通借家で貸してから「やはり空室で売りたい」と考えても、思いどおりに退去してもらえるとは限りません。すぐに現金化したい場合は、不動産会社による買取もあります。仕組みは不動産買取の流れの記事で解説しています。
一戸建てを売るか貸すかの判定フロー

ここまでの内容を、3つの問いにまとめます。
- 戻って住む予定はあるか。あるなら、定期借家で貸すか、空き家のまま残すかを考えます。戻る時期に合わせて契約の期間を決めます。貸すなら、3つ目の問い(修繕や入居者の対応を続けられるか)も確かめます
- 取れる家賃は、必要な家賃以上か。賃料の査定を取り、判断式の「必要な家賃」と比べます。下回るなら、売るほうが手元に多く残ります
- 修繕や入居者の対応を、貸している間ずっと続けられるか。管理会社に任せる場合も、修繕の判断と費用は貸主に残ります。続けられないなら、売るほうが向いています
3つとも「貸す」に当てはまっても、売ると利益が出る家は、3,000万円の特別控除の期限を先に確認してから決めてください。
一戸建てとマンションで、売るか貸すかの考え方はどう違うか
マンションを売るか貸すかも、判断式の考え方は同じです。違うのは、維持費の中身と、貸すときの決まりです。
- 管理費と修繕積立金は、貸していても所有者が払い続ける。判断式の維持費に入ります
- 建物の共用部分の修繕は、管理組合が計画的に行う。戸建てのように、屋根や外壁の工事を自分で手配することはありません
- 管理規約で、貸すときの届出などを定めていることがある。貸す前に規約を確認します
この記事の値下がりのデータは戸建てだけを集計したもので、マンションには当てはまりません。マンションの売却全体はマンション売却の記事で扱っています。
一戸建てを売るか貸すかのよくある質問
家を貸すのと売るのではどちらがいいですか?
戻って住む予定がないなら、「取れる家賃」が「値下がりと維持費を取り返すのに必要な家賃」を上回るかで決まります。国土交通省の取引データを当社で集計すると、戸建ての売値は築年が10年違うと2〜3割安く、全国の中央値では築5〜9年と築15〜19年で800万円の差があります。維持費を仮に年20万円とすると、取り返すには月9.6万円前後の家賃が必要です(空室を年1か月、管理の委託料を家賃の5%と仮定)。これより低い家賃しか取れないなら、売るほうが手元に多く残ります。戻って住む予定があるなら、定期借家で貸すか空き家のまま残すのが基本です。
家を売るときのNG行為は?
売るか貸すかで迷っている段階では、次の3つを避けてください。1つ目は、出口を決めずに普通借家で貸すこと。あとで空室にして売りたくなっても、退去してもらえるとは限りません。2つ目は、3,000万円の特別控除の期限を知らずに貸すこと。3つ目は、募集に出ている家賃で収支を計算することです。売却の段階ごとの注意点は家の売却でやってはいけないことの記事にまとめています。
一戸建てを貸すと、どれくらいの家賃になりますか?
立地・広さ・築年数で大きく変わるため、全国の平均では目安になりません。募集に出ている家賃ではなく、実際に決まった家賃(成約賃料)を、複数の不動産会社に聞いてください。空いている貸家のうち一戸建ては4.8%と少なく(総務省 令和5年住宅・土地統計調査)、比べられる物件が少ない地域では、1社の見込みだけでは判断しにくいためです。
住宅ローンが残っていても一戸建てを貸せますか?
貸せる場合はありますが、貸す前に、借りている金融機関への相談と手続きが要ります。住宅ローンは、本人や家族が住む家のためのお金として借りているためです。転勤などのやむを得ない事情で一時的に貸す場合の扱いや手続きは、住宅ローンがあるけど引っ越したいときの記事で書いています。残っているローンを売却代金で返せるかは住宅ローン返済中の売却の記事で確かめられます。
貸している一戸建てをそのまま売ることはできますか?
できます。入居者が住んだまま、貸主の立場ごと売る方法(オーナーチェンジ)です。ただし、買主はすぐには自分で住めないため、主に家賃収入を目的にする人になります。当社の担当者の見方では、基本的には空室で売るほうが高くなる傾向にあり、入居者付きでは多少価格が下がる可能性があります。定期借家で貸しているなら、期間の満了に合わせて空室にしてから売る方法も選べます。
一戸建てを貸してから何年以内に売れば、3,000万円の控除が使えますか?
住まなくなってから3年を経過する日の属する年の12月31日までに売れば、貸していても使えます(国税庁 No.3302)。数え始めは貸した日ではなく、住まなくなった日です。2026年9月に住まなくなった場合、期限は2029年12月31日です。新しい家で住宅ローン控除を受ける人は、売る年によっては、この控除と住宅ローン控除のどちらかしか使えません。ほかの要件もあるため、使えるかどうかは税務署か税理士に確認してください。
マンションでも、一戸建てと同じ考え方で決められますか?
判断式の考え方は同じです。ただし、マンションは管理費と修繕積立金を貸していても払い続けるため、その額も維持費として式に入れます。管理規約で、貸すときの届出などを定めていることもあります。この記事の値下がりのデータは戸建てだけのもので、マンションには当てはまりません。
一戸建てを売ったあとも住み続ける方法はありますか?
家を売ったあとも、借りて住み続けるリースバックという方法があります。売るか貸すかとは別の選択肢で、家賃や契約の期間に注意点があります。リースバックの記事で解説しています。
まとめ: 一戸建てを売るか貸すかは、必要な家賃と期限で決める
一戸建てを売るか貸すかは、貸している間に下がる売値を、家賃で取り返せるかで決まります。国土交通省の取引データを当社で集計すると、戸建ての売値は築年が10年違うと2〜3割安く、全国の中央値では築5〜9年と築15〜19年で800万円の差があります。同じ家を追いかけた価格ではなく、築年の違う取引どうしの比較です。維持費を年20万円、空室を年1か月、管理の委託料を家賃の5%と仮定すると、取り返すには月9.6万円前後の家賃が必要です。
貸すなら、3,000万円の特別控除の期限(住まなくなってから3年を経過する日の属する年の12月31日)と、最後にどう売るかを、貸し始める前に決めてください。戻って住む予定があるなら定期借家で貸すか空き家のまま残し、ないなら取れる家賃と必要な家賃の比較で決めます。
判断に必要なのは、今の売値と、取れる家賃の2つです。当社の売却・賃貸W査定なら、売った場合と貸した場合の査定をまとめて依頼できます。売却の流れは不動産売却の流れの記事、売るときの費用は不動産売却の費用の記事で確かめられます。
築年数ごとの価格は、国土交通省「不動産情報ライブラリ」の不動産取引価格情報(2024年1月〜2025年12月・宅地(土地と建物)・住宅地・用途が住宅・延床面積60〜250㎡・取引の事情等の記載がないもの・取引価格100万円以上・建築年が分かるもの・124,346件)をもとに当社で集計したものです。築年数は取引の年から建築の年を引いて求めたため、1年程度の誤差があります。同じ家を追いかけた価格ではなく、その期間に取引された家の中央値どうしの比較です。必要な家賃の計算は、維持費を年0円・20万円・40万円と仮に置き、空室を年1か月、管理の委託料を家賃の5%とした仮定によるもので、税金・募集の費用・原状回復・ローンの利息は含みません。賃貸用の空き家の数と住宅の建て方別の数は、総務省「令和5年住宅・土地統計調査」(2023年10月1日現在)の表2-2・表3によります。税金の扱いは国税庁タックスアンサーNo.3302・No.3370・No.3390・No.3202・No.1370(令和8年4月1日現在法令等)、契約の決まりは借地借家法28条・38条と最高裁判所平成24年9月13日判決、修繕と原状回復は民法606条・621条によります。売り出しから成約までの日数は、公益財団法人東日本不動産流通機構「首都圏不動産流通市場の動向(2025年)」によります。税額の計算と特例の適用の判断は、税務署か税理士にご確認ください。本記事の内容は2026年9月時点の法令・制度にもとづきます。制度と税制は改正されることがあるため、実行の前に最新の情報をご確認ください。
不動産売却ガイド
