「再建築不可の物件は、相場の5〜7割でしか売れない」。検索すると、多くの記事にそう書かれています。ところが、上位に並ぶ記事を一通り読んでも、この数字を実際の取引データで確かめたものは見当たりませんでした。そして、買取業者に問い合わせたら断られた、という相談も少なくありません。
先に、この記事の立場をお伝えします。再建築不可物件の売却で最初にやるべきことは、売り先探しではなく「なぜ再建築不可なのか」の特定です。原因は大きく3タイプに分かれ、タイプによって「再建築可能にできるか」「いくらで売れるか」「誰が買うか」が全部変わります。原因を特定しないまま動くと、直せたはずの物件を安く手放したり、逆に直せない物件に時間とお金を使ったりすることになります。
この記事では、原因3タイプの見分け方から、実際の取引データによる価格の実測、タイプ別の解消方法と費用、そのまま売る場合の買い手の実像、買取に断られたときの選択肢までを、仲介の実務から解説します。
- まず「なぜ再建築不可か」を特定する。原因は3タイプで、取れる手段が変わる
- 実際の取引データでは、前面道路4m未満の土地は4m以上の52%。道路も間口も足りない土地は33%まで下がる
- 「相場の5〜7割」は一律には成り立たない。再建築可能にできるかで価格の桁が変わる
- 2025年4月から建築確認の審査が厳しくなり、再建築不可物件のリフォーム活用も従来どおりではなくなった
目次
なぜ「建っているのに、建て替えられない」のか
再建築不可物件とは、今ある建物を取り壊すと、新しい建物を建てられない物件のことです。原因のほとんどは接道にあります。建築基準法は「建物の敷地は、幅4m以上の道路に2m以上接していなければならない」と定めています(43条)。
「今、家が建っているのに?」と思われるかもしれません。これは、接道のルールができた1950年(建築基準法の制定)や都市計画法の1968年より前に建てられた家が、今の基準に合わないまま残っているためです。当時は適法に建てられた家が、法律の側が変わったことで「次は建てられない」状態になっています。あなたの物件が悪いのではなく、時代のずれの問題です。
まず、自分の物件の「原因タイプ」を特定する
同じ再建築不可でも、原因によって出口がまったく違います。次の3タイプに分かれます。

| タイプ | 状態 | 主な解消手段 |
|---|---|---|
| A. 道路の幅が足りない | 幅4m未満だが、特定行政庁が指定した道(42条2項道路)に接している | セットバック(敷地を後退させて道路の幅4mを確保する) |
| B. 道が「道路」と認められていない | 通路はあるが、建築基準法上の道路ではない(位置指定を受けていない私道など) | 43条2項の認定・許可、または位置指定道路の申請 |
| C. 間口が足りない・無接道 | 道路に接する幅が2m未満、または全く接していない(袋地) | 隣地の買い増し、隣地所有者への売却 |
タイプAに出てくるセットバックは、この先で何度も出てくる言葉なので、先に説明しておきます。セットバックとは、自分の敷地を道路側から後退させて、その道の幅が将来4mになるようにすることです。道路の中心線から2mの位置まで下がり、後退した部分には建物も塀も置けなくなります(所有権は原則として自分のままですが、扱いは道路になります)。なお自治体によっては、後退用地の寄付や自治体への移管を受け付けている場合があり、そのときは所有権が自治体へ移ります。使える敷地はその分だけ狭くなりますが、代わりに建て替えができるようになる。これがセットバックです。
そのうえで重要なのは、セットバックで再建築可能になるのはタイプAだけだということです。「下がれば建て替えられる」は、その道がすでに42条2項道路として指定されている場合の話です。タイプBの通路は、いくら下がっても建築基準法上の道路にはならないため、再建築可能にはなりません。ここを混同したまま建物を解体してしまう事故が実際に起きています。
自分の物件がどのタイプかは、市区町村の建築指導課(建築課)で前面道路の扱いを聞けば確定します。「この道は建築基準法上の道路ですか。42条何項のどれですか」と聞いてください。多くの自治体はWebの指定道路図でも公開しています。

相談に来られる方の多くは、ご自身の物件がなぜ再建築不可なのかを確認しないまま『売れない物件だ』と思い込んでいます。役所で道路種別を聞くだけで、実は2項道路でセットバックすれば建て替えられた、というケースは珍しくありません
価格は実際、どこまで下がるのか
「相場の5〜7割」という通説を、実際のデータで確かめます。当社は国土交通省が公開している全国の不動産取引価格情報167,876件(宅地・2024年1月〜2025年12月)から、接道条件別の成約単価を同じ市区町村内で突き合わせました。

- 前面道路が4m未満の土地(セットバック対象を含む・17,267件): 4m以上の土地の52%が中央値(半数は31〜73%に分布)
- 前面道路4m未満かつ間口2m未満の土地(再建築不可に最も近い条件・78件): 33%
この集計は再建築の可否そのものを識別したものではなく、接道条件による近似です。それでも言えることは明確で、「5〜7割」は接道に問題を抱えた土地全体の上側の水準であり、道路も間口も足りない土地は3分の1まで下がるのが実際の市場です。逆に、幅の上側(7割超)で売れている土地も現実にあります。
この幅のどちら側になるかを分けるのが、前章のタイプです。再建築可能に「できる」物件は、できる状態にしてから(あるいは、できると証明してから)売ることで、幅の上側に移れます。次章がその方法です。
なお、自分の物件の現在地を知るには査定が早道です。当社の10秒査定は匿名・電話番号の入力なしで概算価格を確認できます。
タイプ別: 再建築可能にする方法と費用

タイプA: セットバック(42条2項道路)
道路の中心線から2m(向かいが崖や川なら反対側から4m)まで敷地を後退させれば、建て替えが可能です。後退部分は敷地面積に算入されなくなるため、建ぺい率・容積率が下がる点は織り込んでください。工事費そのものの公的な相場はありませんが、自治体によっては後退用地の寄付への奨励金や、塀の撤去・測量への助成があります(例: 世田谷区・富士市・栃木市など。金額と条件は自治体ごとに異なります)。
売却の場面では、実際にセットバックを済ませる必要は必ずしもありません。「セットバックすれば建て替え可能」であること自体が価格の根拠になるため、道路種別の確認と測量で条件を証明できれば、買い手はその前提で値段を付けられます。
タイプB: 43条2項の認定・許可
建築基準法上の道路に接していなくても、一定の基準を満たせば建築が認められる制度があります。2つあり、実務では区別が重要です。
- 1号の認定: 幅4m以上の農道などの「道」に2m以上接する小規模な建築物が対象。特定行政庁の認定で、建築審査会は通しません。手続きが軽い
- 2号の許可: 敷地の周囲に広い空地があるなどの場合。特定行政庁が建築審査会の同意を得て許可します。申請手数料は例として33,000円前後の自治体が多く(東大阪市・兵庫県など)、多くの特定行政庁は「こういう条件なら同意を得られる」という基準(包括同意基準・一括審査基準)を公表しています
つまりタイプBは、その自治体の基準に自分の物件が乗るかどうかの勝負です。基準は建築指導課で確認できます。過去にその通路沿いで建て替えの許可が出た実績があるかも、有力な手掛かりになります。私道の場合は、位置指定道路の指定を申請する道もあります(申請手数料の例: 横浜市50,000円。道路として整備する工事費・関係者の同意が別途必要)。
タイプC: 隣地の買い増し・隣地への売却
間口が2mにわずかに足りない場合、隣地から通路部分を数十cm買い増すことで、必要な接道条件を満たせる場合があります。満たせれば再建築可能になります(前面道路が建築基準法上の道路であることが前提です。道そのものが道路と認められていないタイプBでは、買い増しでは解消しません)。買い増しには、境界確定測量と登記(測量と地積更正登記の全国平均は約44万円。日本土地家屋調査士会連合会「土地家屋調査士報酬ガイド」令和7年度版・2025年度アンケート・税別。進め方は確定測量の記事参照)、所有権移転登記の登録免許税(土地は固定資産税評価額の1.5%。2029年3月31日登記分まで)がかかりますが、再建築不可が解消したときの価格の戻りはそれを大きく上回るのが通常です。
逆に、隣地の所有者にとってあなたの土地は「買えば自分の敷地が広く・整形になる」特別な土地です。買い増しの交渉と売却の打診は、同じ相手に対する表裏の選択肢として、両にらみで進めます。

隣地との交渉は、価格の前に『誰が測量費を持つか』で止まることが多い部分です。数十cmの買い増しで数百万円の価値が戻るなら、測量費を売主側が持ってでも成立させる価値があります。そういう損得の全体像を先に示すのが仲介の仕事です
そのまま売る場合、買っているのは誰か
再建築可能にできない、あるいは費用をかけたくない場合は、現況のまま売ることになります。このとき「誰が買うのか」を知っておくと、値付けと売り方を間違えません。
| 買い手 | 買う理由 | 価格の傾向 |
|---|---|---|
| 隣地の所有者 | 併合すれば敷地が広がり、自分の土地の価値が上がる | 市場価格を超える値が付き得る、数少ない相手 |
| 現金の投資家 | リフォームして賃貸に回す(再建築不可でも賃貸はできる) | 利回りから逆算するためシビア |
| 再販業者(買取) | 再生・転売のノウハウを持つ | 再販価格から経費と利益を引いた水準 |
共通するのは、住宅ローンをあてにしない買い手だということです。再建築不可物件は担保評価がつきにくく、一般の住宅購入者は住宅ローンを組みにくいため、買い手の中心から外れます。だからこそ、隣地→投資家・買取の順で、現金で動ける相手に絞って当たるのが実務です。
なお、2025年4月に施行された建築基準法の改正で、木造2階建てなどの大規模リフォームにも建築確認が必要になりました(いわゆる4号特例の縮小)。再建築不可物件は建築確認が下りないため、「建て替えずに大規模リフォームで再生する」という従来の活用にも制約が生まれています。投資家側の値付けが以前より慎重になっているのは、この影響です。
買取を断られたときの選択肢
「専門業者なら買い取ってくれるはず」と問い合わせたのに断られた。実はこの相談は珍しくありません。買取業者は再販できる物件しか買えないため、再販の見込みが立たない物件(無接道で解消の手立てがない、隣地との関係が難しい、エリアの賃貸需要が乏しいなど)は断られます。
その場合の選択肢は次の順で検討します。
- 原因タイプに立ち返る: 断られた理由がタイプの誤認にあることがあります。2項道路や43条の基準を確認しないまま「再建築不可だから」と一括りに断る業者もいます
- 隣地にもう一度: 買取業者が買えない物件でも、隣地所有者には価値があるのが再建築不可の特徴です
- 持ち続けるコストと比べる: 年間の固定資産税・管理費・老朽化リスクを並べ、値下げしてでも売る水準を決めます。計算のやり方は土地が売れないときの記事で解説しています
- 建物の状態が悪いなら: 空き家のまま放置すると特定空家の指定リスクが出てきます。空き家が売れない理由の記事と古家付き土地の記事もあわせてご覧ください

買取を断られた物件でも、道路種別の確認からやり直すと出口が見つかることがあります。『どこに断られたか』より『何を確認済みか』を教えていただく方が、次の一手を出しやすいです
持ち続けるコストも計算に入れる
売却を先延ばしにする選択にも、コストがあります。固定資産税・都市計画税は建物が建っている限り住宅用地の特例で抑えられていますが、老朽化が進んで特定空家に指定され勧告を受けると、この特例が外れます。2023年12月に施行された改正空家法では、その手前に「管理不全空家等」という段階が設けられ、こちらも勧告を受けた時点で特例が外れます。危険な状態まで進んでいなくても、放置したままなら税負担が上がる道があるということです(特定空家と管理不全空家の違いの記事で解説しています)。加えて、再建築不可物件は建物の価値が年々下がる一方、土地の価値はタイプが変わらない限り戻りません。「いつか売る」なら、建物がまだ使えるうちが最も条件の良い売り時です。
再建築不可物件の売却でよくある質問
再建築不可かどうかは、どうやって調べればいいですか?
市区町村の建築指導課で、前面道路が建築基準法上の道路かどうか(42条の何に当たるか)と、敷地の接道の長さを確認します。多くの自治体は指定道路図をWebで公開しています。登記簿や現地の見た目だけでは判定できません。
カミソリ地とは何ですか。売れますか?
隣地との間に残った、幅が数十cmしかない細長い土地の通称です。単独ではほぼ利用できないため市場では売れませんが、隣接する土地の所有者にとっては境界を整えられる意味があります。逆に、自分の敷地と道路の間に他人のカミソリ地がはさまっていて接道が切れているケースでは、その買い取りが再建築不可の解消に直結します。いずれも相手は隣地所有者に絞られるため、仲介会社を通じた交渉が現実的です。
2025年4月の法改正で、再建築不可物件はどうなりましたか?
建築確認の審査省略(いわゆる4号特例)が縮小され、木造2階建てと延べ面積200㎡超の平屋は、大規模なリフォームにも建築確認が必要になりました。再建築不可物件は確認が下りないため、大規模リフォームによる再生が難しくなっています。売却を考えているなら、この改正は「待つほど活用の選択肢が狭まる」方向に働いています。
再建築不可でも住宅ローンは使えますか?
一般的な住宅ローンでは融資を受けにくく、利用できる金融機関・商品が限定されます。担保評価が出にくいためです。買い手は現金か、再建築不可を扱う金融機関・ノンバンクのローンに絞られ、これが価格が下がる最大の構造要因です。売主側でできる対策は、再建築可能にする(またはできると証明する)ことに尽きます。
まとめ: 「診断→証明→売り先」の順番で
再建築不可物件の売却は、次の順番で進めます。
- 診断する: 建築指導課で道路種別と接道を確認し、原因3タイプのどれかを特定する
- 証明する: セットバック可能・43条の基準に適合・買い増しで解消可能など、「再建築可能にできる」条件を資料で示す
- 売り先を選ぶ: 隣地→現金の買い手→買取の順に、物件のタイプに合った相手へ当たる
当社の10秒査定なら、匿名・電話番号の入力なしで概算価格を確認できます。再建築不可の判定には道路種別の確認が欠かせないため、査定のあとは物件所在地の役所確認とセットで進めてください。
※本文中の取引データは国土交通省「不動産取引価格情報」(2024年1月〜2025年12月・宅地(土地)167,876件)をもとに当社作成(接道条件による近似・同一市区町村内の中央値比)。同データは四半期ごとに更新されており、本集計は2025年12月までの取引が対象。測量費用は日本土地家屋調査士会連合会「土地家屋調査士報酬ガイド」令和7年度版(2025年度アンケート・全国平均441,391円・税抜)、申請手数料は各自治体の手数料条例(2026年8月確認)、登録免許税の軽減税率は2029年3月31日までに登記する場合
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