所有する物件や相続した家が事故物件だったとき、売却できるのか不安になる方も多いでしょう。
結論からお伝えすると、事故物件も売却することは可能です。ただし、告知義務や売却方法、売却相場などの知っておきたいポイントがいくつかあります。
そこで本記事では、事故物件の売却に関する次のような内容を解説します。
- 事故物件の定義や売却相場
- 告知義務
- 事故物件をできるだけ早く、適正価格で売却する方法
よくある質問への回答もしておりますので、ぜひ最後までご覧になってください。
目次
事故物件を売却するときに知っておくべきこと
事故物件は“死が絡む事故や事件があった物件”というイメージがありますが、明確な定義があることをご存じでしょうか?まずは事故物件の定義や売却に関して、売却前に知っておくべきことをお伝えします。
事故物件の定義
事故物件として扱われるのは、自殺や他殺などの「心理的瑕疵(かし)」がある物件や、事故死や自然死であっても特殊清掃が行われた物件です。
少し前までは事故物件の定義は非常に曖昧でしたが、2021年10月8日に国土交通省が「宅地建物取引業者による人の死の告知に関するガイドライン」を制定したことで定義が明確化されました。
つまり事故死や自然死があったとしても、定義に当てはまらなければ事故物件ではありません。売却前に、自分が所有する物件が本当に事故物件に当てはまるのか、確認しておくことをおすすめします。
通常物件よりも買い手が見つかりづらい
事故物件を売却するときに頭に入れておきたいのが、「通常物件よりも買い手が見つかりづらい」ということです。通常物件の売却にかかる期間はおよそ3〜6か月ですが、事故物件はそれ以上に時間がかかる可能性があります。
どんなに利便性がいい場所だとしても、売却に時間がかかる可能性があることは覚悟しておきましょう。
ポータルサイトや不動産会社のウェブサイトに掲載する時点では、事故物件である旨を記載する必要はないので内見まではスムーズです。しかし売買契約書を交わす前に、事故物件であることを告知する義務があるため、ここが売却のヤマ場となるでしょう。
告知義務については、後ほど説明します。
事故物件の売却相場
事故物件の売却価格は、通常物件よりも1~5割ほど低くなる場合がほとんどです。どのくらい低くなるのか、相場を見てみましょう。
- 自然死、孤独死、事故死:1~2割
- 自殺:2~3割
- 他殺:3~5割
仮に通常物件の相場が3,000万円だとしたら、300~1,500万円ほど価格が下がることになります。ただし、上記はあくまで相場であって、事故の内容や程度によって売却価格には大きな差がでます。
また、どのような状態で売るのか、売却戦略によっても価格は変わるため、まずは不動産会社の査定を受けましょう。
事故物件を売却する際の告知義務について
事故物件に限らず、売主には物件の“瑕疵(かし)”を伝える義務があり、これを告知義務といいます。告知義務では具体的に何を伝えるのか、いつ伝えるのか、告知しないリスクなどを説明します。
告知義務とは?
告知義務は売主が「知っていたら買わなかった」と思うような、ネガティブな情報を伝える義務のことです。先ほどお伝えしたように、事故物件は心理的瑕疵に当てはまるため、告知義務があります。
事故物件はマンションであれば室内だけのイメージがありますが、場合によってはマンション全体が事故物件として扱われることもあるため注意が必要です。
エレベーターやエントランス、階段などの日常的に使用する共用部分で事故や自殺、他殺などがあった場合は告知が必要になる可能性があります。
購入希望者に告知する方法
購入希望者への告知は、売買契約締結前の重要事項説明の際に行われるのが一般的です。しかし明確に“いつ”とは決まっていないので、売買契約を結ぶ前であっても内見時に伝えることもできますし、掲載時点で事故物件である旨を記載する方法もあります。
最近では事故物件ばかりを取り扱う不動産会社やポータルサイトも増えているため、それらを利用するのもひとつの手です。どのようなタイミングで伝えればいいのか、不動産会社と相談しながら考えてみてください。
事故物件だと告知しないリスク
「事故物件であることを黙って入ればバレないだろう」と、不動産会社へ相談する際に告知をしない方もいます。しかし事故物件であることを黙って売却するのは、告知義務違反です。
売却後に違反があったとわかると、損害賠償や契約破棄などの契約不適合責任を問われるリスクがあります。実際に事故物件を黙って売却し、引き渡し後に事実が発覚して損害賠償請求が行われた例はいくつもあります。
どんなに言いづらい内容であったとしても、不動産会社には必ず事故物件である旨を伝えてください。
事故物件を早く、適正価格で売却する方法
先ほどもお伝えしたように、事故物件の売却相場は市場価格よりも1~5割ほど低くなる場合がほとんどです。しかし物件を売るのなら、できるだけ早く、適正価格で売却したいと思うでしょう。
事故物件をできるだけ高く・早く売るための方法は4つあります。
- そのままの状態で売却する
- リフォームや清掃を行う
- 更地にして売却する
- 買取で売却する
詳しく見ていきましょう。
そのままの状態で売却する
1つ目が、そのままの状態で売る方法です。
事故物件を避ける人もいれば、物件購入費用を抑えるためにあえて事故物件を探している人もいます。事故物件であることを気にしない人は、購入後に自分好みの部屋にリノベーションする場合が多いので、そのままの状態でも購入してくれます。
瑕疵の内容や室内の状態にもよりますが、そのままの状態でも売却できる可能性があるので、不動産会社に相談のうえ検討しましょう。
清掃やリフォームを行う
清掃やリフォームをしてすぐに住める状態にしておけば、買い手が見つかりやすくなる可能性があります。事故物件であることを気にしない人にとっては、安く購入できて、なおかつすぐに入居できる点がメリットになるからです。
通常物件の売却では基本的にリフォームは不要ですが、事故物件の場合は室内をきれいな状態にしておいたほうが、買い手からの印象が良くなります。もし人が亡くなったことで床や壁などが汚れているのであれば、部分的なリフォームだけでもしておいたほうが良いでしょう。
更地にして売却する
一戸建て住宅では、建物の劣化が激しい場合や、特殊清掃でもきれいにできないほど室内が汚れている場合は、建物を解体して売却したほうが買い手が見つかりやすくなる可能性があります。
しかし、更地にしたからといって、告知義務がなくなるわけではありません。事故物件であることは、更地にしても伝える義務があります。また、建物の有無も売却価格にもあまり影響しないことが多いので、本当に更地にしたほうがいいのか、自己判断せず不動産会社に相談しましょう。
買取専門業者に買い取ってもらう
すぐに事故物件を売却したいのなら、買取を検討しましょう。買取であれば室内の片づけやリフォーム、清掃などが不要で、そのままの状態で買い取ってもらえます。買取価格や条件などに納得すれば、1~2週間ほどで事故物件を現金化できる点もメリットです。
ただし事故物件の買取は、仲介売却よりも価格が低くなる場合がほとんどです。瑕疵の内容や程度によっては、市場価格の5割以下になる可能性もあります。
事故物件の売却でよくある質問
ここまで事故物件の定義や告知義務、売却方法などをお伝えしてきたので、事故物件をどのように売ればいいのか、おわかりいただけたと思います。
最後に「事故物件の売却でよくある質問」に、お答えしていきます。
事故物件だと隠してもバレる?
事故物件であることは、売却までは隠せたとしても、引き渡し後にバレると考えてください。自殺や他殺、特殊清掃が必要になる自然死や事故死は、近隣にも事故があったと知れ渡っているからです。
引き渡しまではバレなかったとしても、買主が引っ越したあとの近隣付き合いで事故物件である事実がいずれは耳に入るでしょう。
先ほどもお伝えしたように、事故物件である旨を隠して売却すると、契約不適合責任に問われます。事故物件である事実は隠していてもバレるので、必ず告知しましょう。
10年以上前の事故も対象?時効はある?
知恵袋サイトなどには「事故物件になってから10年たてば告知しなくてもいい」という“事故物件の時効10年説”が書かれていることもありますが、これは誤りです。賃貸では告知義務は“原則3年”とされていますが、事故物件の売買では“時効なし”とされているからです。
「10年たったから告知しなくてもいいだろう」と自己判断するのではなく、必ず不動産会社には事故物件であることを伝えましょう。
事故物件は売却できる!不動産会社に相談のうえ方法の検討を!
事故物件は通常物件と比べて買い手が見つかりづらいのは事実ですが、売れないわけではありません。事故の内容や程度によって異なりますが、通常物件の1〜5割ほどの価格であれば売却が望めます。
そして物件が売れるスピードや価格は、売り方によって異なるため、物件に合わせて判断しましょう。1番やってはいけないのが「事故物件の事実を黙っていること」です。もし事故物件であることを隠して売却すると、損害賠償請求や契約破棄などの契約不適合責任に問われます。
不動産会社には必ず事故の内容や時期を伝え、どのように売り出せばいいのかを考えてみてください。