「旗竿地だから売れない」「相場よりずっと安くなる」。旗竿地の売却を考え始めると、たいていこの言葉に突き当たります。ところが「では実際にいくらで売れているのか」を、実際の取引データで示した情報はほとんど見当たりません。
先に結論をお伝えします。全国の取引データを集計すると、旗竿地を含む路地状の土地の成約価格は、同じ市区町村の整形地(道路にまっすぐ接した長方形などの土地)と比べて中央値で66%でした。ただし52〜85%と幅が大きく、分かれ目になっているのが通路(竿の部分)の幅、つまり間口です。間口が2〜2.5mの土地は整形地の半分近くまで下がる一方、2.5mを超えると7〜8割まで戻ります。
つまり旗竿地は「一律に安い土地」ではありません。自分の土地が幅のどちら側にいるのかを確かめ、境界と間口を測って証明できるようにすることが、そのまま価格に跳ね返る土地です。この記事では、実測データで価格の実像を示したうえで、売れにくいと言われる本当の理由と、高く売るための実務の手順を解説します。
- 実際の取引では、路地状の土地の価格は整形地の66%が中央値。ただし幅が大きい
- 分かれ目は間口。2〜2.5mでは整形地の56%、2.5mを超えると7〜8割まで戻る
- 価格を左右するのは「建て替えできるか」と「車が停められるか」。どちらも間口で決まる
- 境界確定測量と通路の使い方の証明が、旗竿地で価格を上げられる数少ない打ち手
目次
旗竿地の価格は、実際どれくらい下がるのか
旗竿地とは、道路に接する細い通路(竿)の先に、まとまった敷地(旗)が広がる形の土地です。都市部で1つの土地を2つに分けて売るときに生まれやすく、路地状敷地や敷地延長(敷延)とも呼ばれます。
その価格について、よく言われるのは「相場の7〜8割」という目安です。ただ、この数字の根拠が示されることはほとんどありません。そこで当社は、国土交通省が公開している全国の不動産取引価格情報167,876件(宅地・2024年1月〜2025年12月)を使い、形状が「袋地等」(旗竿地のような路地状の敷地など)と記録された取引2,397件を、同じ市区町村の整形地(長方形・正方形など)の価格と1件ずつ突き合わせました。地域による地価の違いを取り除くためです。

結果は、中央値で整形地の66%。よく言われる「7〜8割」より一段低い水準でした。そして重要なのは、半数の取引が52〜85%の間に散らばっていたことです。9割近い価格で売れた旗竿地もあれば、半値を割った旗竿地もあります。
「旗竿地だから何割」という一律の答えは、実際の市場には存在しません。では何が価格を分けているのか。データを間口(通路の幅)で切り直すと、はっきりした境目が見えました。
分かれ目は間口2.5m。価格は段階的に変わる
同じ集計を間口の幅ごとに分けると、次のようになりました。

| 通路(間口)の幅 | 整形地に対する価格の中央値 |
|---|---|
| 2m未満 | 大きく下落(後述。建て替え不可のため) |
| 2〜2.5m | 56% |
| 2.5〜3m | 83% |
| 3m以上 | おおむね7〜8割 |
※国土交通省・不動産取引価格情報(2024年1月〜2025年12月)をもとに当社作成。同じ市区町村の整形地の中央値と比較
間口2〜2.5mと、2.5m以上の間に大きな段差があります。この境目は、買い手の立場で考えると理由がはっきりします。
- 2mは、建築基準法で定められた最低ラインです。建物の敷地は、幅4m以上の道路に2m以上接していなければ、建て替えができません(建築基準法43条)。2mを切ると原則として再建築不可となり、価格は別次元まで下がります
- 2〜2.5mは、建て替えはできるものの、車の出し入れに苦労する幅です。普通車の車幅は約1.7〜1.8mあり、ミラーを含めると2mの通路では乗り降りも切り返しも困難です。「駐車場のない家」として買い手が絞られます
- 2.5mを超えると、通路への駐車が現実的になり、工事車両や重機の進入も楽になります。買い手にとって「普通に住める土地」に近づくため、価格が整形地の7〜8割まで戻ります
つまり旗竿地の価値は、旗の部分(奥の敷地)の広さより先に、竿の部分の幅で決まります。そして自分の土地の間口が「2mギリギリ」なのか「2.1mあるのか」「2.5mを超えるのか」は、感覚ではなく測量でしか確定できません。ここが次の章につながります。
なお、売り出す前におおよその相場観を持ちたい場合は、当社の10秒査定のように匿名・電話番号の入力なしで概算価格を確認できる道具を使うと、この後の査定や打診を冷静に進められます。土地の相場を自分で調べる方法はこちらの記事にまとめています。
旗竿地が売れにくいと言われる理由
価格の実像を押さえたうえで、売れにくいと言われる理由も整理しておきます。買い手が値引きを求めてくる根拠でもあるため、事前に知っておくと交渉で慌てずに済みます。
| 理由 | 内容 |
|---|---|
| 建て替えの制約 | 間口が2m未満だと原則再建築不可。2m以上でも、通路が長いと工事の資材運搬に手間がかかる |
| 駐車の問題 | 間口2.5m未満では通路への駐車が現実的でなく、車社会の地域では買い手が大きく絞られる |
| 解体・建築コストの増加 | 重機が奥まで入れない場合、手作業や小型機械での施工となり費用がかさむ(解体費用の記事参照) |
| 日当たり・視界 | 周囲を建物に囲まれやすく、1階の採光が取りにくい |
| 住宅ローンの担保評価 | 金融機関の担保評価が低く出やすく、買い手の借入額が伸びないことがある |
| 境界・通路の権利関係 | 通路部分の境界が曖昧なままだと、買い手も金融機関も敬遠する |
見てのとおり、理由の大半は「間口の幅」と「境界の明確さ」に行き着きます。日当たりのように変えられない要素もありますが、境界と間口は売主の手で確定できます。だからこそ、次の実務が価格に直結します。
売れる旗竿地に変える、3つの実務
当社が旗竿地の売却で重視しているのは、次の3つです。いずれも「買い手の不安を、証明できる事実に置き換える」作業です。

1. 境界確定測量で「間口の実寸」を確定する
旗竿地の価格が間口2.0mと2.5mの間で大きく変わる以上、「実測で何cmあるのか」を公的に確定させることが、そのまま値付けの根拠になります。境界が曖昧な土地は、買い手だけでなく金融機関も避けるため、測量前と後では売りやすさが変わります。
費用の目安として、境界確定を伴う測量と登記(土地地積更正登記)の全国平均は約44万円です(日本土地家屋調査士会連合会「土地家屋調査士報酬ガイド」令和7年度版・2025年度アンケートのモデルケース・税別)。数十万円の出費に見えますが、間口が「2mあるかないか」の土地では、この測量が再建築の可否、つまり価格の桁を左右します。測量の進め方と費用の詳細は確定測量の記事で解説しています。
2. 通路の「使えること」を実物で示す
間口2.5m前後の土地なら、実際に車を停めた状態を内覧で見せる、通行や搬入の動線を写真で示すなど、通路が使える事実を実物で証明します。「図面の寸法だけでは不安だったが、現物を見たら納得した」という形で決まる旗竿地は少なくありません。塀の撤去などで通路の有効幅を数十cm広げられるケースもあります。
3. 隣地の所有者に打診する
旗竿地の竿部分は、隣地の所有者にとっては自分の土地と合わせると整形地になる特別な土地です。市場の買い手には66%の土地でも、隣地所有者にとってはそれ以上の価値を持つことがあります。売り出しの前に一声かける価値は十分にあります。ただし、価格の相場観がないまま打診すると足元を見られるため、査定で相場を固めてからにしてください。
不動産会社が旗竿地を嫌がる、本当の理由
検索すると「不動産屋が一番嫌がることは何ですか?」という質問が表示されるほど、「旗竿地は不動産会社に歓迎されない」と感じている方は多いようです。実際に嫌がられるのか。仲介の内側から、構造をそのままお話しします。
嫌がられることは、あります。ただしそれは悪意ではなく、費用と手間の構造の問題です。
- 買い手の母数が少ない: 整形地なら10組に紹介できる物件が、旗竿地では駐車や日当たりの条件で3組に絞られる、ということが起きます。広告費をかけても反響が伸びにくく、販売期間が読みにくい
- 調査の手間が重い: 通路の権利関係、境界、再建築の可否など、確認すべき項目が整形地より多く、担当者の工数がかかります
- 価格の説明が難しい: 根拠を示せる資料がないまま「相場より安くなります」と伝えると売主との信頼関係が崩れるため、経験の少ない担当者ほど扱いを避けます
裏を返すと、旗竿地の売却は「どの会社に頼んでも同じ」ではありません。境界と間口の実務を理解し、価格の根拠を説明できる会社かどうかで、結果が分かれます。査定の場で「この間口だと価格はどう変わりますか」と聞いてみてください。この記事に書いた程度のことを自分の言葉で説明できるかが、任せてよい会社かの試金石になります。
買取を選んだほうがよいケース
仲介での売却が基本ですが、次に当てはまる場合は買取(不動産会社が直接買い取る方式)も比較する価値があります。
- 間口が2m未満で再建築不可: 一般の買い手はローンが組みにくく、市場での売却は長期戦になりがちです
- 期限が決まっている: 相続税の納付期限など、動かせない期限がある場合
- 市場で売り出したが長引いている: 売れないまま持ち続けるコストと比べる段階です。持ち続けた場合の年間コストの計算は土地が売れないときの記事で解説しています
買取価格は市場価格より低くなりますが、旗竿地の場合は「そもそもの市場価格に幅がある」ため、仲介の査定と買取の提示を同じテーブルに並べて比べるのが実務的です。当社では両方の窓口があるため、並べたうえでどちらが得かをそのままお伝えできます。
旗竿地の売却でよくある質問
Q. 旗竿地を売却する価格は、結局いくらですか?
実際の取引データでは、同じ市区町村の整形地の66%が中央値です(当社集計・2024〜2025年の全国167,876件の宅地取引より)。ただし半数の取引は52〜85%に散らばっており、間口2.5m以上なら7〜8割、2〜2.5mなら5〜6割が目安になります。自分の土地の位置づけは、間口の実寸と再建築の可否を確認したうえで査定を受けると正確にわかります。
Q. 旗竿地は再建築不可と言われました。売却できますか?
売却自体は可能です。ただし買い手が現金購入の投資家や隣地所有者などに絞られるため、価格は大きく下がります。間口が2mにわずかに足りない場合は、隣地から通路部分を数十cm買い増して再建築可能にしてから売る方法もあり、その費用対効果は測量と査定で判断できます。
Q. 間口が2mギリギリです。何から始めればいいですか?
境界確定測量が最優先です。登記上2mでも、実測で2mを切っていれば再建築不可となり、逆に実測で2mを確保できれば建て替え可能な土地として売れます。数cmの差が価格の桁を変えるのは、旗竿地の間口だけです。
Q. 相続税の評価額と売却価格は同じですか?
別物です。相続税の評価は路線価に不整形地などの補正率を掛けて計算しますが、それは税金の計算のための数字で、市場で売れる価格ではありません。売却の検討では、評価額ではなく実際の取引に基づく査定を使ってください。
まとめ: 旗竿地は「測って、証明して、比べて」売る
旗竿地の売却は、「安くなる」と嘆く土地ではなく、打ち手の効果が実測で見えている土地です。
- 測る: 境界確定測量で間口の実寸を確定する。2mと2.5mの境目が価格を分けます
- 証明する: 通路が使えることを、駐車の実演や写真で買い手に示す
- 比べる: 仲介の査定・買取の提示・隣地への打診を同じテーブルに並べる
まずは自分の土地がどの位置にいるのかを知ることからです。当社の10秒査定なら、匿名・電話番号の入力なしで、住所と物件情報を入れるだけで概算価格を確認できます。旗竿地の実務に慣れた担当者への相談は、そのあとで十分です。
※本文中の取引データは国土交通省「不動産取引価格情報」(2024年1月〜2025年12月・宅地(土地)167,876件)をもとに当社作成。形状の区分は同データの記録による。同データは四半期ごとに更新されており、本集計は2025年12月までの取引が対象。測量費用は日本土地家屋調査士会連合会「土地家屋調査士報酬ガイド」令和7年度版(2025年度アンケート・全国平均441,391円・税抜)による
不動産売却ガイド
