所有権移転登記とは?手続きの流れと必要な費用や書類を解説

不動産売買の所有権移転登記とは?費用と必要書類を解説!

監修者
天池 篤哉
天池 篤哉(株式会社SUMiTAS 取締役)
  • 宅地建物取引士
  • 管理業務主任者
  • 賃貸不動産経営管理士

「所有権移転登記って、どんなときに必要?」「不動産売買で所有権移転登記する場合には、いくらかかるの?」
不動産売買を検討している方は、こういった疑問をもっているのではないでしょうか。

「所有権移転登記」は不動産の所有権を証明するために、非常に重要な手続きです。

すぐに登記を行わず放置していると、購入した不動産の所有権を第三者に主張されると言ったトラブルが起こりうる可能性があります。このようなトラブルを防ぐためにも登記は正確に、かつ迅速に行わなければなりません。そして、正確に登記するためには「所有権移転登記」について詳細に理解しておく必要があります。

そこで本記事では、所有権移転登記の手続きや費用、必要なタイミングについて解説します。最後まで読んで、所有権移転登記を行う際の参考にしてください。

所有権移転登記とは?

所有権移転登記とは、土地や建物の所有権が移ったときに所有権を明確にするために行う登記です。例えば、不動産を売却した際に、買主に所有権が移ったことを証明するために行います。このように不動産の所有権の移動を登録することで、不動産の権利が誰にあるのかが明示されるのです。

所有権移転登記はいつ必要?

所有権移転登記を行う必要があるときは、不動産の所有権が移動したときです。
登記が必要になる主な理由は以下の3つです。

  1. 不動産の売買を行ったとき
  2. 不動産を生前贈与などで贈与されたとき
  3. 不動産を相続したとき

それぞれについて説明します。

不動産の売買を行ったとき

不動産の売買によって所有権が売主から買主に移ったときに、不動産移転登記を行わなければなりません。登記の際、手続き業務は売主と買主が共同で申請を行います。

また、所有権移転登記の手続きは、所有権を得たあと1ヶ月以内に行わなければならないと定められています。

不動産を生前贈与などで贈与されたとき

不動産を贈与する場合にも、所有権移転登記は必要です。
贈与契約は法律上、口頭でも成り立ちますが、贈与されたことを明確にするために所有権移転登記を行う必要があります。

不動産を相続したとき

遺言や遺産分割協議によって不動産を相続した場合にも、所有権移転登記が必要です。所有権移転登記を行っていないと、相続した不動産を勝手に売却されるなどのトラブルの原因になりかねません。
トラブルを防ぐためにも、不動産を相続したら即座に登記することをおすすめします。

所有権移転登記を行う理由

所有権移転登記を行う理由は、登記簿に不動産の権利を登録して権利が誰にあるのかを証明するためになります。権利が証明されていないと、多くの問題が発生する可能性があるからです。

例えば、不動産を購入したときに売主が他の買主にも売却してしまっており、先に購入した人が登記してしまい、後から購入した人の所有権が認められないなどの事例が実際にありました。

このような場合には、後から購入した買主が不動産を手に入れられず、さらには現金も返ってこない事態になり損害だけを被ってしまいます。

このように不動産の所有権を巡ってトラブルになることは珍しくありません。トラブルにならないためにも、所有権移転登記を行うことは非常に重要なのです

所有権移転登記にかかる費用はいくら?

所有権移転登記にかかる費用は以下の2つです。

  • 登録免許税
  • 手続きにかかる費用

それぞれについて説明します。

登録免許税

登録免許税は土地や建物の所有権移転登記を行うときに、国に納める税金になります。
土地と建物の両方の登記を行う場合には、土地の登録免許税と建物の登録免許税が必要です。
土地と建物に課税される税率は以下の内容になります。

土地の登録免許税

内容課税標準税率軽減税率など
売買固定資産税評価額2%軽減率1.5%(2023年3月31日まで)
相続や法人の合併、共有分割固定資産税評価額0.4%
贈与や遺贈、競売など固定資産税評価額2%

建物の登録免許税

内容 課税標準 税率 軽減税率
売買固定資産税評価額2%軽減率0.3%(2022年3月31日まで)
相続や法人の合併、共有分割固定資産税評価額0.4%
贈与や遺贈、競売など固定資産税評価額2%

上記の表の中であなたの状況が該当する税率を確認しておいてください。

登録免許税の計算式

登録免許税の計算式は以下の内容です。

登録免許税=固定資産税評価額×税率

上記の計算式で必要な固定資産税評価額は、自分が所有している不動産なら固定資産税の課税証明書で確認できます。また、役所などで固定資産評価証明書を手に入れるか、固定資産税台帳を閲覧することでも確認することが可能です。

例えば、相続で土地の固定資産税評価額が3,000万円、建物の500万円の場合の計算は以下のようになります。

3,000万円 × 0.4% = 12万円
500万円 × 0.4% = 2万円
12万円 + 2万円 = 14万円

土地の登録免許税が12万円、建物の登録免許税が2万円かかる計算です。

登録免許税の軽減措置

所有権移転登記の登録免許税には、5つの軽減措置があります。

  • 土地の売買による所有権移転登記の軽減措置
  • 住宅用家屋の所有権移転登記の軽減措置
  • 特定認定長期優良住宅の軽減措置
  • 認定低炭素住宅の軽減措置
  • 特定の増改築された住宅家屋の軽減措置

建物の軽減措置を受けるためには、以下の要件を満たす必要があります。

名前 主な要件 軽減税率
住宅用家屋の所有権移転登記2022年3月31日までに売買や競売で取得した住宅取得から1年以内の登記床面積50平方メートル以上3.00%
特定認定長期優良住宅2022年3月31日までに売買や競売で取得した住宅取得から1年以内の登記床面積50平方メートル以上特定認定長期優良住宅に該当1.00%
認定低炭素住宅2022年3月31日までに売買や競売で取得した住宅取得から1年以内の登記床面積50平方メートル以上認定低炭素住宅に該当1.00%
特定の増改築された住宅家屋 2022年3月31日までに売買や競売で取得した住宅取得から1年以内の登記床面積50平方メートル以上宅地建物取引業者が一定の要件を満たした増改築やリフォームを行った住宅新築後10年以上経過した住宅20年以内に建築された住宅で耐震構造の住宅 1.00%

このように、条件を満たした場合には、軽減税率を適用することができます。

手続きにかかる費用

手続きにかかる費用とは、書類を揃えるためにかかる費用と司法書士の依頼料を指します。ただし、自分で書類を揃える場合は、数千円の費用で手続きが可能です。

しかし、手続きが複雑で時間もかかるため、大抵は司法書士に委託します。その際は司法書士に依頼する費用が別途2〜4万円程度必要です。

所有権移転登記に必要な書類

所有権移転登記で必要になる書類は売買や贈与、相続によって違います。
また、登記手続きを司法書士に委託する場合には、委任状が必要です。

主なケースは以下の3つになります。

  • 相続の場合
  • 売買や贈与の場合
  • 司法書士に依頼する場合

それぞれについて説明します。

相続の場合

相続によって所有権移転登記をする場合に必要な書類は以下の通りです。

相続の場合

名称取得費用取得場所
相続人全員の戸籍謄本1通450円程度郵送の場合の送料164〜280円(往復の切手代)市区町村の役所
死亡した方の出生から死亡までの戸籍謄本または除籍謄本1通450円程度1通750円程度(除籍謄本)郵送の場合の送料164〜280円(往復の切手代)市区町村の役所
死亡した方の住民票の除票(本籍地が載っているもの)1通300円程度郵送の場合の送料164〜280円(往復の切手代)1通200円程度(コンビニ)市区町村の役所
相続人の全員の住民票の写し1通300円程度郵送の場合の送料164〜280円(往復の切手代)1通200円程度(コンビニ)市区町村の役所
固定資産評価証明書400円程度市区町村の役所
相続関係説明図なし自分で作成
登記申請書なし法務局

書類を集める際の注意点として、以下の3つがあります。

  • 死亡した方の出生から死亡までの戸籍謄本または除籍謄本は死亡した方の過去の戸籍を辿る必要があるため、場合によっては数千円必要になる
  • コンビニで住民票や印鑑証明を取得する場合には、マイナンバーカードが必要になる
  • 相続関係説明図は戸籍謄本などを返却してもらうために必要になる書類(ただし、返却が必要ない場合には、提出しなくても問題ありません)

上記の3つのポイントに気をつけて、必要な書類を集めるようにしてください。

遺産分割の場合

遺産を分割して相続する場合には、先程の書類と併せて、以下の2つの書類が必要です。

名称取得費用取得場所
相続人全員の印鑑登録証明書1通300円程度郵送の場合の送料164〜280円(往復の切手代)1通200円程度(コンビニ)市区町村の役所
遺産分割協議書5〜30万円(司法書士に依頼した場合の費用)自分たちで作成司法書士によって作成

書類を集める際に、以下の2つの注意点があります。

  • 印鑑登録証明書は相続人が1人の場合は必要ない
  • 遺産分割協議書には相続人全員の署名と実印が必要

上記の注意点に気をつけて書類を準備するようにしてください。

遺言書の場合

亡くなった方が遺言書を残していた場合には、以下の2つの書類が必要です。

名称取得費用取得場所
遺言書なし亡くなった方が作成
検認証明書800円(検認の申立て費用)150円(検認証明書発行の手数料)家庭裁判所

遺言書が公正証書遺言の場合だけは、検認証明書が必要ありません。
一方、公正証書遺言以外の遺言書の場合は、家庭裁判所で検認を受ける必要があります。

この検認を受けるための注意点は、家庭裁判所で遺言書を開封する必要があるので事前に開封しないことです。検認を受けずに開封してしまうと、遺言書の効力がなくなってしまいます。

売買、贈与、遺贈の場合

売買や贈与、遺贈の場合で所有権移転登記を行うために必要な書類は以下の通りです。

売主の場合

名称取得費用取得場所
登記識別情報または登記済証 ー登記時に法務局が発行
印鑑登録証明書(発行後3カ月以内)1通300円程度郵送料164〜280円(往復の切手代)1通200円程度(コンビニ)市区町村の役所
固定資産評価証明書400円程度市区町村の役所
代表者事項証明書または会社登記簿謄本600円(窓口)500円(オンライン申請で送付)480円(オンライン申請で窓口受け取り)法務局

買主の場合

名称取得費用取得場所
住民票1通300円程度郵送の場合の送料164〜280円(往復の切手代)市区町村の役所
代表者事項証明書または会社登記簿謄本600円(窓口)500円(オンライン申請で送付)480円(オンライン申請で窓口受け取り)法務局

書類を集める際には、以下の2つの注意点があります

  • 2004年以前に登記をした不動産の場合は登記済証証明書が必要で、2004年以降の場合は登記識別情報が必要
  • 法人の場合のみ代表者事項証明書または会社登記簿謄本が必要

上記の注意点に気をつけて書類を集めるようにしてください。

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司法書士に依頼する場合

司法書士に依頼する場合に必要な書類は上記の書類に加えて、委任状が必要です。そして、その委任状は、売買や贈与、遺贈の場合は、双方の委任状を集める必要があります。

名称取得費用取得場所
委任状なし司法書士が用意

委任状の用紙は司法書士が用意してくれるので、確認してから署名・捺印をするようにしてください。

所有権移転登記までの流れ

不動産を売却して所有権移転登記を行うときの手順は以下の5つです。

  1. 不動産屋に相談をする
  2. 売買契約を結ぶ
  3. 売買額の決済と引き渡し
  4. 所有権移転登記

それぞれについて説明します。

① 不動産会社に売却の相談をする

不動産売買を行うときに最も重要なのが、信頼できる不動産会社に相談することです。

業者の中には、不当な査定や営業の電話をしつこくかけてくるといった悪質な業者が存在します。こういった業者に依頼しないためにも、複数の業者を比較して依頼することが重要です。

比較するときのポイントは、「実績の確認」と「売買の目的やニーズを聞き出してくれること」の2点が重要になります。豊富な売買実績がある業者は信頼できる可能性が高いからです。
また、希望を正確に聞き出しくれることで、自分のニーズにあった不動産売買ができる可能性が高くなります。

このように、信頼できる業者に依頼するためにも、複数の業者を比較することは重要です。

② 売買契約を結ぶ

買主が見つかって条件に合意をしたら、売買契約を結びます。
売買契約を結ぶ際の注意点は、契約書の内容をよく確認することです。

もし、契約書に自分にとって不利な内容が入っていた場合でも、契約をしてしまうと取り消すことができません。このような事態を防ぐためにも、不利な条件が記載されていないかを慎重に確認することは重要です。

③ 残代金の決済と引き渡し

金融機関などに連絡を入れて、残代金の決済と引き渡しを行います。
この引き渡しは平日に行うことがポイントです。その理由は、休日(土日祝日)だと法務局が開いていないため、すぐに所有権移転登記が行えないためです。

先ほども述べたとおり、すぐに所有権移転登記が行えないことで第三者が所有権を主張するようなトラブルが発生することは珍しくありません。高額が動く不動産だからこそ、このようなトラブルがおきないよう細心の注意を払う必要があるのです。

④ 所有権移転登記の仕方

最後に行うのが所有権移転登記です。
トラブルを防ぐためにも、すぐに所有権移転登記を行うようにしてください。

もし、所有権移転登記を自分で行おうと考えているなら、迅速に手続きを行うために以下の手順を理解しておくことが重要です。

  1. 登記申請書の作成と必要書類を集める
  2. 必要書類と申請書を法務局に提出
  3. 登記所で不備がないかを確認
  4. 登記識別情報と登記完了書を受け取る

上記の手順に沿って所有権移転登記を行うことで、引き渡した当日に所有権移転登記の申請ができます。ただし、申請してから完了までは7日〜10日程度の日数が必要です。

このように、不動産売却や所有者移転登記は手続きが複雑なため、説明を正確に行ってくれる安心できる不動産会社に依頼することが重要になります。不動産会社をお探しの際は、豊富な売買実績があるSUMiTAS(スミタス)にご相談ください。

まとめ

所有権移転登記は不動産を引き渡されてから、即時に行うことが非常に重要です。迅速に手続きを行わないと不動産の所有権を巡ってトラブルになりかねません。こういったトラブルを防ぐためにも、所有権移転登記について詳細に理解することが重要です。

この記事では所有権移転登記の手続きや費用、必要なタイミングを詳しく説明しました。最後まで読むことで、あなたの所有権移転登記に関する疑問を解消できたのではないでしょうか。

この記事を書いた人

米澤昭人

米澤昭人

宅建士 / FP1級技能士(AFP)。学部を卒業後、大手建築会社に勤める。その後、大手コンサルタント会社に転職。これまでの経験で培った資格や経験を元にライターとして活動。不動産・建築・法律のような専門分野を「中学生でも分かる文章で伝える」を心掛けて執筆。

不動産の売却査定・賃貸査定ならSUMiTAS

監修者
天池 篤哉
天池 篤哉(株式会社SUMiTAS 取締役)
  • 宅地建物取引士
  • 管理業務主任者
  • 賃貸不動産経営管理士

2005年から不動産賃貸仲介営業で不動産業のキャリアをスタート。
物件マニアで、『従事している期間毎日10件内見する』という裏目標を立て、6年間実施。札幌市内の賃貸物件約18,000件を内見した。
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