所有権移転登記とは?自分でできるケースと費用・必要書類・流れを解説

監修者
吉田 宏
吉田 宏(株式会社SUMiTAS 代表取締役社長)
  • 二級建築施工管理技士
  • 宅地建物取引士
  • 測量士補
  • 賃貸不動産経営管理士

不動産の名義を変える「所有権移転登記」は、資格がなくても自分で申請できます。法務局が申請書の様式と記載例を公開していますから、そのとおりに書いて必要な書類を添えれば受け付けてもらえます。司法書士に頼んだ場合の報酬は、土地1筆と建物1棟で平均56,678円ですので、自分でやれば数万円が浮く計算になります。

ただし、売買だけは事情が違います。法律上は売主と買主が共同で申請するものですので、本人が申請すること自体はできます。それでも実務では、自分で申請する場面がほとんどありません。

私たちは仲介の立場で決済に立ち会いますが、住宅ローンを使う一般的な取引で、売主や買主が自分で登記を申請することはまずありません。理由は手続きが難しいからではなく、お金の動く順番にあります。現金で買う場合や親族間の売買であれば本人が申請する余地はありますが、その場合も名義を確実に移せるかどうかを当事者だけで見極めることになります。売主や買主が実際に自分で申請するのは、売買の前後にある別の登記、つまり相続登記・住所変更登記・抵当権抹消のほうです。

この記事では、登記の原因ごとに「自分でできるのか」を分けたうえで、費用・必要書類・手順を整理します。

この記事の要点
  • 所有権移転登記に資格は要らない。ただし住宅ローンを使う売買では実務上できない(決済でお金が動く順番の問題)
  • 売買の所有権移転登記に申請期限はない。期限があるのは相続登記(3年)・住所等変更登記(2年)・表題登記(1か月)
  • 登録免許税は原因で大きく変わる。売買は土地1.5%・建物0.3%(いずれも軽減。期限は令和11年/令和9年3月31日)、相続は0.4%
  • 司法書士報酬は売買で平均56,678円、相続で平均74,888円(日司連の2024年調査)
  • 2025年4月21日から、申請書にふりがな・生年月日・メールアドレスの記載が必要になった
登記の原因ごとに自分で申請できるかを示した判断チャート。売買は司法書士に依頼、相続・贈与・財産分与は条件つきで自分でも申請できる

目次

所有権移転登記とは。不動産の名義を書き換える手続き

所有権移転登記とは、土地や建物の所有者が変わったときに、登記簿の名義を新しい所有者に書き換える手続きです。法務局(登記所)に申請します。

登記簿は「この不動産は誰のものか」を国が記録して公開しているものですから、名義を書き換えて初めて、外から見て自分のものだと分かる状態になります。

名義を変えないと、権利を主張できない相手がいる

登記をしないまま放置すると何が起きるのか。ここは法律の条文がはっきりしています。

民法177条は、不動産の権利の移動は「登記をしなければ、第三者に対抗することができない」と定めています。対抗できないとは、当事者以外の人に対して「これは自分のものだ」と主張できないという意味です。

たとえば売主が同じ土地を二人に売ってしまった場合、先に代金を払ったほうではなく、先に登記をしたほうが、もう一方に対して自分の所有権を主張できます。実際にそこまでの事態が起きることは多くありませんが、登記が名義人を守る仕組みである以上、名義が前の所有者のままである状態は放置すべきではありません。

所有権移転登記が必要になる4つの場面

名義が移る原因は、大きく次の4つです。原因によって、税金も必要書類も、自分でできるかどうかも変わります。

原因どんな場面か誰と誰で申請するか
売買不動産を売った・買った売主と買主の共同申請
相続所有者が亡くなり、相続人が引き継いだ取得した相続人の単独申請
贈与生前に子や配偶者へ譲った贈与した人と受けた人の共同申請
財産分与離婚にともなって分けた渡す側と受け取る側の共同申請

相続だけが単独で申請できます。相手方が存在しないためで、この違いが後述する「自分でできるか」の分かれ目にもなります。

この10年で、相続が売買に迫ってきた

どの原因がどれくらいあるのかは、法務省の登記統計で分かります。2025年に完了した所有権移転登記は、全国で342万2,803件でした。原因別の内訳は次のとおりです。

原因2025年の件数所有権移転に占める割合
売買1,684,652件49.2%
相続(一般承継を含む)1,436,717件42.0%
遺贈・贈与203,973件6.0%
その他97,461件2.8%

注目したいのは、この構成比が動いていることです。

所有権移転登記の原因別件数の推移。2016年から2025年にかけて売買は横ばいの一方、相続は41%増加し、所有権移転に占める割合は売買54.0%から49.2%へ、相続33.6%から42.0%へ変化した

売買はこの10年でほぼ横ばい(2016年 1,635,540件 → 2025年 1,684,652件、3.0%増)である一方、相続は41.2%増えました(1,017,730件 → 1,436,717件)。その結果、所有権移転登記に占める売買の割合は2016年の54.0%から5割を割り込み、相続が33.6%から42.0%まで上がっています。

2024年に相続が突出しているのは、同年4月に相続登記が義務化され、申請が集中したためです。2025年は施行前の水準に戻っています。

登記の窓口で起きていることの中身が、売買中心から相続中心へ移りつつある。これが、この記事で「自分で申請する場面」を原因ごとに分けて考える理由です。

※法務省「登記統計」総括・不動産・その他 年報(2025年・2026年5月29日公開)の第4表・第5表・第8表をもとに当社で集計しました。件数は申請情報ごと・登記の目的ごとに1件と数えたもので、1つの売買取引でも土地と建物は別に計上されます。取引件数とは一致しません。

【重要】所有権移転登記に期限はあるのか

ここは誤解が多いところなので、先に整理します。売買・贈与・財産分与による所有権移転登記に、申請の期限はありません。期限を定めた条文がなく、申請しなかったことに対する罰則もありません。

一方で、期限が定められている登記は別に存在します。混同されやすいので、まとめて並べます。

登記の種類申請の期限怠った場合根拠
売買・贈与・財産分与による所有権移転登記期限の定めなしなし該当する条文がない
相続による所有権移転登記(相続登記)取得を知った日から3年以内10万円以下の過料不動産登記法76条の2、164条1項
氏名・住所の変更登記変更の日から2年以内5万円以下の過料同76条の5、164条2項
建物を新築したときなどの表題登記取得の日から1か月以内10万円以下の過料同36条、47条1項、164条1項
登記の種類ごとの申請期限の比較。売買・贈与・財産分与による所有権移転登記は期限なし、氏名住所の変更登記は2年以内、相続登記は3年以内、建物の表題登記は1か月以内

「所有権を取得してから1か月以内に登記しなければならない」という説明を見かけることがありますが、この1か月は表題登記の期限です。表題登記とは、登記簿の「表題部」(所在・地番・地目・床面積など、不動産そのものを特定する情報)を新しく作る登記のことで、建物を新築したときなどに必要になるものです。名義を書き換える所有権移転登記とは別の手続きです。

とはいえ、期限がないことと放置してよいことは別です。売買では、後述するとおり決済の当日に申請するのが実務ですから、そもそも先延ばしになりません。注意が必要なのは相続で、2024年から期限つきの義務になりました。

所有権移転登記は自分でできる?原因別の結論

結論から示します。

原因自分でできるか理由
売買住宅ローンを使う取引では実務上できない決済でお金が動く順番の問題(次項で説明)
相続できる単独で申請できる(決済のような当日の期限はないが、3年以内の申請義務はある)
贈与条件つきでできる当事者どうしが親族で、急がない場合
財産分与条件つきでできる相手方の協力が得られる場合

売買で自分で登記できない理由は、手続きの難しさではない

売買の決済がどう進むかを見ていただくのが早いと思います。当社が仲介する取引では、おおむね次のように進みます。

不動産売買の決済当日の流れ。司法書士による書類確認、融資実行、着金確認、鍵の引き渡し、当日中の登記申請までを時系列で示した図

決済は、買主が住宅ローンを借りる金融機関の一室で行うのが一般的ですが、不動産会社で行うこともあります。売主・買主・双方の不動産会社・司法書士が一堂に会するのが従来の形で、近年は売主と買主が同席せず、別々に手続きを進めることも増えました。売主は当日、着金の確認だけで済み、買主と顔を合わせないまま終わることもあります。場所や同席の有無にかかわらず、司法書士が双方の書類を確認してから融資が実行されるという順番は変わりません。

まず司法書士が、売主の本人確認と書類の確認をします。登記識別情報(かつての権利証にあたるもの)、発行から3か月以内の印鑑証明書、実印、固定資産評価証明書。買主側の書類も確認します。

司法書士が登記申請に必要な書類と条件が整っていること、書類に不備がないことを確認した時点で、はじめて金融機関が融資を実行します。買主の口座から売主の口座へ残代金が振り込まれ、着金を確認してから、鍵と関係書類を引き渡します。司法書士はその日のうちに、オンラインまたは法務局への持参で登記を申請します。

順番が重要です。登記に必要な書類が整っているという確認が先で、お金が動くのは後なのです。

この順番があるおかげで、売主は「代金を受け取れないまま名義だけ移る」ことを避けられ、買主は「代金を払ったのに名義が移らない」ことを避けられ、金融機関は「抵当権が設定されないまま融資してしまう」ことを避けられます。司法書士がこれらのリスクを保証しているわけではありませんが、本人の確認と、登記申請に必要な書類・条件が整っているかの確認を、当事者から独立した立場で行うことで成り立っている仕組みです。

ここで買主が「自分で登記します」と言った場合、この確認が誰も入らないまま進むことになります。売主から見れば、登記に必要な書類がそろっているかを誰も確かめないまま、権利証と実印の印鑑証明書を渡すことになります。金融機関から見れば、担保の設定に必要な書類がそろっているかを確かめないまま数千万円を出すことになります。ですから、売主も仲介会社も金融機関も同意しません。手続きが難しいからではなく、独立した立場で確認する人がいなくなるからです。

なお、決済は平日に行います。土日祝日は法務局が閉まっていて、その日のうちに申請できないためです。金曜日の午後遅い時間の決済も、申請が翌週に持ち越されるため避けることが多くなります。

相続・贈与・財産分与なら、自分でできる場面がある

反対に、次の条件がそろっていれば、自分で申請するのは現実的な選択肢です。

  • 急がない(決済のように、その日のうちに終える必要がない)
  • 平日の日中に法務局へ行ける(郵送やオンラインでもできますが、初めてなら窓口が確実です)
  • 対象の不動産が少ない(複数の市区町村にまたがると、管轄する法務局ごとに申請が必要になります)
  • 相続なら、相続人の間で誰が取得するかが決まっている

自分でやらないほうがよい場合

一方、次に当てはまる場合は司法書士に依頼することをおすすめします。

  • 売却の予定がある。売り出すこと自体はできますが、決済と引き渡しの日までに相続登記などを終えていなければ買主へ名義を移せません。買主が決まってから動き出すと、決済日に間に合わないおそれがあります
  • 相続の登記が何代分もたまっている。相続人が何十人にもなり、戸籍を全部たどるだけで数か月かかることがあります
  • 相続人の間で話がまとまっていない。登記の前に遺産分割の問題を片付ける必要があります
  • 住宅ローンを使う。金融機関が司法書士の関与を条件にします

所有権移転登記にかかる費用はいくら?

費用は「登録免許税」「書類の取得費用」「司法書士報酬(依頼する場合)」の3つに分かれます。

登録免許税は原因によって5倍近く変わる

登録免許税は、登記を申請するときに国に納める税金です。固定資産税評価額に税率をかけて計算します。固定資産税評価額は、毎年送られてくる固定資産税の納税通知書か、市区町村で取得する固定資産評価証明書で確認できます。

登録免許税 = 固定資産税評価額 × 税率

税率は次のとおりです。

対象原因本則の税率軽減税率軽減の適用期限
土地売買2.0%1.5%令和11年3月31日まで
土地相続0.4%
土地贈与・財産分与など2.0%
建物売買2.0%0.3%(住宅用家屋)令和9年3月31日まで
建物相続0.4%
建物贈与・財産分与など2.0%

(国税庁「登録免許税の税額表」令和8年4月1日現在法令等をもとに作成)

建物の0.3%は「住宅用家屋の軽減税率」と呼ばれるもので、床面積50平方メートル以上、取得後1年以内の登記、自己の居住用といった要件を満たす場合に適用されます。登記を申請するときに市区町村の証明書を添付する必要があり、登記が終わってから提出しても適用されません。このほか、認定を受けた住宅にはさらに低い税率があります。

区分軽減税率適用期限
特定認定長期優良住宅(一戸建て)0.2%令和9年3月31日まで
特定認定長期優良住宅(一戸建て以外)0.1%令和9年3月31日まで
認定低炭素住宅0.1%令和9年3月31日まで
特定の増改築等がされた住宅用家屋0.1%令和9年3月31日まで

軽減措置には期限があり、これまで何度も延長されてきました。上の期限は本記事の執筆時点(2026年8月)のものです。実際に登記する時点の内容は、国税庁の登録免許税の税額表でご確認ください。

実際にいくらになるか(土地1,000万円・建物500万円の場合)

固定資産税評価額が土地1,000万円、建物500万円の一戸建てを例に計算します。

原因土地建物合計
売買(軽減あり)1,000万円 × 1.5% = 15万円500万円 × 0.3% = 1万5,000円16万5,000円
売買(軽減なし)1,000万円 × 2.0% = 20万円500万円 × 2.0% = 10万円30万円
相続1,000万円 × 0.4% = 4万円500万円 × 0.4% = 2万円6万円
贈与1,000万円 × 2.0% = 20万円500万円 × 2.0% = 10万円30万円

同じ不動産でも、原因が変わると税額は5倍の開きが出ます。生前贈与を考えるときに登録免許税の差が論点になるのは、この表のとおりだからです。

なお売買では、この登録免許税と司法書士報酬は買主が負担するのが実務の慣行です。売主が負担するのは、後述する抵当権抹消と住所変更の登記にかかる分になります。法律で決まっているわけではありませんが、売買契約書にもこの前提で費用の分担が書かれるのが通常です。

書類の取得費用

自分で集める場合の実費です。市区町村によって数十円の差があります。

書類費用の目安取得場所
戸籍謄本1通450円市区町村の窓口・郵送・コンビニ
除籍謄本・改製原戸籍1通750円市区町村の窓口・郵送
住民票の写し・住民票の除票1通300円程度(コンビニは200円程度)市区町村の窓口・郵送・コンビニ
印鑑登録証明書1通300円程度(コンビニは200円程度)市区町村の窓口・コンビニ
固定資産評価証明書400円程度市区町村の窓口
登記事項証明書(登記簿謄本)490〜600円法務局の窓口・オンライン請求
代表者事項証明書(法人の場合)490〜600円法務局の窓口・オンライン請求

郵送で取り寄せる場合は、往復の切手代が別途かかります。

登記事項証明書は取得場所によって金額が変わります。詳しくは登記簿謄本とは?登記事項証明書との違いや取得方法をわかりやすく解説で説明しています。

司法書士報酬は「4万円台から6万円台」に6割が入る

司法書士の報酬には決まった基準がありません。2003年に報酬基準が撤廃され、各事務所が自由に決めています。そのため相場を知るには、実際に何円で受けているかのデータを見るしかありません。

日本司法書士会連合会が2024年3月に実施した報酬アンケートに、この数字があります。土地1筆と建物1棟(固定資産評価額の合計1,000万円)の所有権移転登記という共通の設例に対して、全国の司法書士が回答したものです。

設例有効回答数平均額
売買(登記原因証明情報の作成と申請代理)1,082件56,678円
売買(上記に加え、面識のない売主の本人確認情報を作成)999件94,887円
相続(戸籍5通の請求、遺産分割協議書と相続関係説明図の作成、申請代理)1,109件74,888円
贈与(贈与契約書等の作成と申請代理)1,062件53,902円

平均だけでは実感がつかみにくいので、回答の分布も見てみます。売買の1,082件を価格帯ごとに数え直したものが次の図です。

司法書士報酬の実際の分布。売買による所有権移転登記1,082件のうち4万円台236件、5万円台242件、6万円台168件と、3万円台から6万円台に75.7%が集中している

最も多いのは5万円台(242件)、次いで4万円台(236件)で、4万円台から6万円台の3区分に646件、全体の59.7%が入ります。3万円台まで広げると819件、75.7%です。10万円台以上は51件で4.7%にとどまります。売買で「10万円くらいかかる」と言われた場合は、何が加算されているのかを聞いてみてよいと思います。設例の2つ目のように、売主と面識がなく本人確認情報を作成する必要がある場合などは、報酬が上がります。

相続は1,109件のうち5万円台から8万円台に720件(64.9%)が集まっており、売買より少し高めです。戸籍の収集と遺産分割協議書の作成が入るためです。

※日本司法書士会連合会「報酬アンケート」(2024年3月実施)の公表資料に掲載されたヒストグラムから、当社が価格帯ごとの件数を読み取って集計しました。合計が公表されている有効回答数と一致することを確認しています。実際の報酬は不動産の数や事案の内容で変わりますので、依頼前に見積もりをご確認ください。

所有権移転登記に必要な書類と記載事項

原因ごとに必要な書類をまとめます。共通して必要なのは、自分で作成する登記申請書です。様式と記載例は法務局の不動産登記の申請書様式についてからダウンロードできます。

売買・贈与・財産分与の場合

誰が用意するか書類備考
売主(渡す側)登記識別情報または登記済証登記のときに法務局が発行したもの。再発行はできない
売主(渡す側)印鑑登録証明書発行から3か月以内のもの
売主(渡す側)固定資産評価証明書登録免許税の計算に使う
売主(渡す側)登記簿上の住所と現住所をつなぐ書類引っ越している場合。住民票や戸籍の附票
買主(受け取る側)住民票の写し新しい名義人の住所の証明
双方登記原因証明情報売買契約書など。または所定の様式で作成する
法人の場合代表者事項証明書または会社の登記事項証明書会社法人等番号を書けば省略できる場合がある
司法書士に依頼する場合委任状司法書士が用意する

登記識別情報は、12桁の英数字でできた符号です。2005年から法務局ごとに順次切り替えられたもので、それ以前は「登記済証」(いわゆる権利証)という紙が発行されていました。どちらが手元にあるかは、登記を受けた時期と場所によります。いずれも紛失しても再発行はできませんが、司法書士による本人確認情報の作成など、代わりの方法があります。詳しくは土地権利書ってなに?登記簿との違いや紛失時の対処法を紹介!で説明しています。

相続の場合

書類費用の目安取得場所
亡くなった方の出生から死亡までの戸籍謄本・除籍謄本1通450〜750円市区町村の窓口・郵送
亡くなった方の住民票の除票(本籍地の記載があるもの)300円程度市区町村の窓口・郵送
相続人全員の戸籍謄本1通450円市区町村の窓口・郵送・コンビニ
不動産を取得する相続人の住民票の写し300円程度市区町村の窓口・郵送・コンビニ
固定資産評価証明書400円程度市区町村の窓口
相続関係説明図なし自分で作成
遺産分割協議書(遺産分割をした場合)なし相続人全員で作成
相続人全員の印鑑登録証明書(遺産分割をした場合)300円程度市区町村の窓口・コンビニ
遺言書(遺言がある場合)亡くなった方が作成

集めるときの注意点が3つあります。

出生から死亡までの戸籍は、思ったより手間がかかります。転籍や婚姻のたびに戸籍が作り直されているため、本籍地を移していれば複数の市区町村の戸籍が必要になります。ただし2024年3月1日から広域交付が始まり、本人・配偶者・父母や祖父母・子や孫であれば、本籍地が全国どこにあっても最寄りの市区町村の窓口でまとめて請求できるようになりました。郵送や代理人による請求、兄弟姉妹の戸籍、コンピュータ化されていない一部の古い戸籍は対象外で、この場合は従来どおり各市区町村から取り寄せます。1通ずつ数百円でも、合計で数千円になることは珍しくありません。

相続関係説明図は、戸籍を返してもらうために作ります。これを添えると、提出した戸籍謄本の原本が返却されます。他の手続きでも戸籍を使う場合は作っておくと二度手間になりません。返却が不要なら省略できます。

封印のある遺言書は、家庭裁判所の検認を受ける前に開封しないでください。家庭裁判所で相続人またはその代理人の立会いがなければ開封できないと民法1004条3項が定めており、これに反して開封した場合は5万円以下の過料の対象になります(民法1005条)。ただし、開封してしまったからといって遺言そのものが無効になるわけではありません。公正証書遺言と、法務局の保管制度を使った自筆証書遺言は、検認そのものが不要です。

相続登記を放置した場合に何が起きるかは、不動産の相続手続きをしないとどうなる?相続登記を放置する6つのリスクで詳しく説明しています。

2025年4月から「検索用情報」の記載が加わった

見落とされやすい変更点です。2025年(令和7年)4月21日から、所有権の保存・移転の登記を申請するときは、新しく名義人になる人の「検索用情報」を申請書に書くことになりました。対象は、国内に住所がある個人です。

書くのは次の5つです。

  1. 氏名
  2. 氏名のふりがな(日本国籍がない方はローマ字表記の氏名)
  3. 住所
  4. 生年月日
  5. メールアドレス

太字の3つが新しく加わった項目です。メールアドレスを持っていない場合は、書面で申請するなら欄に「なし」と記載すれば足ります(オンライン申請の場合はその他事項欄に「メールアドレスなし」と入力します)。法務局が公開している記載例では、権利者の住所・氏名の下にそのまま続けて記載する形になっています。

これは後述する「スマート変更登記」の準備で、住所が変わったときに法務局が職権で登記を直せるようにするためのものです。手数料はかかりません。

自分で申請する場合の流れと手順

ステップ1 登記事項証明書で現在の登記内容を確認する

まず、対象の不動産の登記事項証明書を取り、現在の名義や不動産の表示を確認します。申請書には登記簿の記載どおりに書く必要があるためです。

特に確認しておきたいのが、登記簿上の住所と現在の住所が一致しているかです。引っ越していると、所有権移転登記の前に住所変更の登記が必要になる場合があります。

ステップ2 申請書を作成し、書類をそろえる

法務局のサイトから原因に合った様式をダウンロードして作成します。記載例が並んでいますので、自分のケースに近いものを選んでください。

作成上の決まりがいくつかあります。

  • A4の用紙を使い、添付書類と一緒に左とじにする
  • 黒インク・黒ボールペンで書く(鉛筆は不可)
  • マイナンバーが記載された住民票は添付できない(取得するときに「記載なし」を選ぶ)
  • 複数ページになる場合は契印(ページのつなぎ目にまたがる押印)をする

登録免許税は、収入印紙を台紙に貼って納めます。収入印紙は法務局内でも購入できますので、税額を確定させてから買うほうが確実です。

添付書類は原本を出すのが原則ですが、コピーに「原本に相違ありません」と書いて署名押印すれば、原本を返してもらえます。別途の請求書は不要です。ただし、申請の意思を確認するために添える印鑑証明書と、その登記申請のためだけに作成した委任状や登記原因証明情報は、還付を請求できません(不動産登記規則55条1項ただし書)。売買契約書のように、もともと別の目的で作られた書面であれば還付の対象になります。

ステップ3 管轄の法務局に提出する

提出先は、不動産の所在地を管轄する法務局です。自分の住所地ではありません。複数の市区町村に不動産がある場合は、管轄ごとに申請します。

提出方法は3つあります。

方法向いている場合注意点
窓口初めて自分で申請する場合その日のうちに受付が済む。書類の審査は受付の後なので、不備があれば後日連絡が来る
郵送遠方の法務局が管轄の場合書留郵便で送る。封筒に「不動産登記申請書在中」と書く
オンライン何度も申請する場合マイナンバーカードによる電子署名とICカードリーダーなどが必要

オンライン申請(登記・供託オンライン申請システム)は制度としては誰でも使えますが、電子署名の準備と専用ソフトの導入が必要で、初めての1回のためにそろえるには負担が大きいのが実情です。また、添付書類は結局のところ郵送や持参が必要になる場合があります。1回きりの申請であれば、窓口か郵送を選ぶほうが早く終わります。

申請前に相談したい場合は、法務局の登記手続案内を利用できます。予約制で、1回あたり20分以内です。窓口のほか、電話やウェブ会議でも受けられます。

ただし2つ制約があります。登記所は申請書の作成を代行することはできません。書き方を説明するところまでが範囲です。もう1つは、これが事前審査ではないことです。正式な審査は申請したあとに行われますので、案内を受けたからといって補正が出ないとは限りません。

ステップ4 完了書類を受け取る

申請してから完了までは、おおむね1週間から10日程度です。ただし法務局・時期・申請方法によって差があり、書面申請はオンライン申請より数日多くかかります。各法務局が申請日ごとの登記完了予定日をウェブサイトで公表していますので、そちらで確認できます。

完了すると、登記完了証と、新しい名義人あての登記識別情報通知が交付されます。登記識別情報は、次にこの不動産の名義を動かすときに必要になる大切な情報です。再発行はできませんので、登記識別情報が印字された部分は折り込んでのり付けされています。開かずにそのまま保管してください。

最後に、新しい登記事項証明書を取って、名義が正しく書き換わっているかを確認しておくと安心です。

売却の前に済ませておきたい登記

不動産を売るときに問題になりやすいのが、所有権移転登記そのものではなく、その手前で止まっている登記です。売り出す前に確認しておくべきものを3つ挙げます。

相続した不動産の名義が故人のままになっていないか

名義が亡くなった方のままでは、買主への所有権移転登記を完了できません。売買契約そのものは結べますが、決済と引き渡しまでに相続登記を済ませておく必要があります。そして2024年4月1日から、相続登記は義務になりました。

  • 相続で不動産を取得したことを知った日から3年以内に申請する義務があります(不動産登記法76条の2)
  • 正当な理由なく怠ると、10万円以下の過料の対象になります(同164条1項)
  • 2024年4月1日より前に発生した相続も対象です。この場合の期限は2027年(令和9年)3月31日まで(相続で取得したことを知ったのが2024年4月以降なら、その日から3年以内)です

相続人が多い、遺言の有効性が争われているなど、期限内に申請できない事情がある場合は「正当な理由」として扱われることがあります。すぐに遺産分割がまとまらない場合には、簡易な手続きで義務を果たせる「相続人申告登記」という制度もあります。ただしこれは暫定的なもので、遺産分割がまとまったら、その日から3年以内に改めて所有権移転登記を申請する必要があります。

登記簿の住所が今の住所と違っていないか

住所や氏名の変更登記も、2026年4月1日から義務になりました。売却実務では頻繁に出てくる論点です。

  • 氏名や住所が変わった日から2年以内に変更登記を申請する義務があります(不動産登記法76条の5)
  • 正当な理由なく怠ると、5万円以下の過料の対象になります(同164条2項)
  • 施行日より前に住所が変わっていた場合も対象で、こちらは2028年(令和10年)3月31日までに申請する必要があります

売却の場面では、義務かどうか以前の問題として、登記簿の住所が現住所と違っていると、先に住所変更の登記をしないと所有権移転登記に進めません。決済の日に司法書士がまとめて申請することもできますが、いずれにしても手続きは必要で、この費用は売主の負担になります。

負担を減らす仕組みも用意されています。スマート変更登記といって、氏名・ふりがな・住所・生年月日・メールアドレスを一度申し出ておけば、その後は法務局が住民基本台帳ネットワークで変更を確認し、本人にメールで確認したうえで職権で登記してくれるものです。申出は無料で、オンライン(かんたん登記申請)でも書面でもできます。詳しくは法務省の住所等変更登記の義務化をご覧ください。

完済した住宅ローンの抵当権が残っていないか

住宅ローンを完済しても、抵当権は自動的には消えません。抹消の登記を申請しないと、登記簿に金融機関の名前が残ったままになります。

抵当権が付いたままでも売買契約は結べますが、買主には担保の付いていない状態で引き渡すのが通常の条件です。そのため売却では、決済の当日に所有権移転登記と同時に抹消の登記を申請します。完済からかなり時間が経っていて書類が見当たらない、という相談は実際に少なくありませんので、売り出す前に確認しておくことをおすすめします。手続きと費用は住宅ローン完済後の抵当権抹消で詳しく説明しています。

売却の全体でどんな書類が必要になるかは不動産売却の必要書類に、売り出しから引き渡しまでにかかる期間は不動産売却の期間にまとめています。

よくある質問

所有権移転登記は自分でできますか?

できます。資格は必要ありません。売買も法律上は売主と買主の共同申請ですので、本人が申請すること自体はできます。ただし住宅ローンを使う一般的な取引では、実務上できないと考えてください。決済では、司法書士が登記できることを確認してから融資と代金の支払いが行われる順番になっているためです。相続・贈与・財産分与であれば、自分で申請している方は実際にいます。

自分でやると費用はいくらかかりますか?

登録免許税と書類の取得費用だけで済みます。固定資産税評価額が土地1,000万円・建物500万円の一戸建てを相続した場合なら、登録免許税6万円に書類代が数千円で、合計6万円台です。同じケースを司法書士に依頼すると、報酬の平均が74,888円ですので、7万円台が上乗せされる計算になります。売買の場合は登録免許税が16万5,000円(軽減適用時)、報酬の平均が56,678円です。

所有権移転登記を自分でやってもいいですか?

相続・贈与・財産分与で、急がず、平日に法務局へ行けて、不動産の数が少ないのであれば問題ありません。逆に、売却の予定がある・住宅ローンを使う・相続が何代分もたまっている・相続人の間で話がまとまっていない場合は、司法書士に依頼したほうが結果的に早く安全です。

登記を自分でするのは難しいですか?

書類をそろえる作業が中心で、法律の判断を求められる場面は多くありません。法務局が様式と記載例を公開していますし、予約すれば登記手続案内で書き方を教えてもらえます。難しいのは書類の量と、平日に動く時間の確保です。相続で戸籍を出生までさかのぼる場合は、収集だけで1か月以上かかることもあります。

所有権移転登記にはどのくらいの日数がかかりますか?

申請してから完了までは、おおむね1週間から10日程度です。これに書類をそろえる期間が加わります。売買の場合は決済当日に申請しますので、名義が正式に切り替わるのは決済から1週間から10日後ということになります。法務局や申請方法によって差がありますので、正確な日数は管轄の法務局が公表している登記完了予定日でご確認ください。なお申請した時点で受付の順位は確保されますので、同じ不動産について後から申請された登記より先に処理されます。

登記識別情報(権利証)をなくしてしまいました。どうすればいいですか?

再発行はできません。ただし代わりの方法が3つあります。司法書士や弁護士が本人であることを確認して作成する本人確認情報を添付する方法、法務局が登記名義人あてに通知を送って確認する事前通知制度を使う方法、公証人に本人確認をしてもらう方法です。売買の決済では、日程が決まっているため本人確認情報を使うのが一般的で、その分の報酬が加算されます(前掲の設例では平均94,887円)。

所有権移転登記の費用は売主と買主のどちらが払うのですか?

法律の定めはありませんが、実務では所有権移転登記の登録免許税と司法書士報酬は買主が負担し、抵当権抹消登記と住所変更登記の費用は売主が負担するのが慣行です。売買契約書にもこの前提で記載されるのが通常ですので、契約前に費用の分担がどう書かれているかを確認しておくとよいでしょう。

まとめ: 売買は司法書士に依頼するのが一般的、それ以外は自分でも申請できる

所有権移転登記は資格がなくても申請できますが、住宅ローンを使う売買では決済の仕組み上、司法書士が担うことになっています。自分で申請する場面は、相続・贈与・財産分与、そして売却の前に済ませておく相続登記や住所変更登記のほうです。

要点を整理します。

  • 売買・贈与・財産分与による所有権移転登記に申請の期限はない。期限があるのは相続登記(3年・10万円以下の過料)、住所等変更登記(2年・5万円以下の過料)、表題登記(1か月)
  • 登録免許税は原因で大きく変わる。土地1,000万円・建物500万円なら、売買(軽減適用)16万5,000円に対し相続は6万円
  • 軽減税率には期限がある。土地の1.5%は令和11年3月31日まで、住宅用家屋の0.3%は令和9年3月31日まで
  • 司法書士報酬は売買で平均56,678円、相続で平均74,888円。売買は3万円台から6万円台に75.7%が集中している
  • 2025年4月21日から、申請書にふりがな・生年月日・メールアドレスを書くことになった
  • 売却を考えているなら、相続登記・住所変更登記・抵当権抹消が済んでいるかを先に確認する

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監修者
吉田 宏
吉田 宏(株式会社SUMiTAS 代表取締役社長)
  • 二級建築施工管理技士
  • 宅地建物取引士
  • 測量士補
  • 賃貸不動産経営管理士

愛媛大学在学中に愛媛県で株式会社アート不動産を創業する。現在アート不動産では、アパマンショップ(賃貸)を5店舗、SUMiTAS(売買)を2店舗・管理センターを1店舗、売買店舗を2店舗運営。吉田 宏の詳細プロフィールはこちら