不動産の売却では、査定から引き渡しまでの間に10種類を超える書類が必要になります。やっかいなのは「何が要るか」より、「いつまでに、どこで、いくらで揃うか」です。多くの書類は役所や法務局で数百円・即日で取れますが、権利証のように再発行できないもの、確定測量図のように取得へ数ヶ月かかるものが混ざっています。
先に全体像をチェックリストで示します。ご自身の物件で「手元にあるもの」と「これから用意するもの」を仕分けるところから始めてください。
| 書類 | 使う場面 | 補足 |
|---|---|---|
| 登記済権利証 または 登記識別情報通知 | 決済(所有権移転) | 再発行不可。紛失時の対処は本文で解説 |
| 実印・印鑑証明書 | 売買契約〜決済 | 印鑑証明書は発行後3ヶ月以内のもの |
| 本人確認書類・住民票 | 媒介契約〜決済 | 登記上の住所と現住所が違う場合は住民票等で連続性を示す |
| 固定資産税納税通知書・課税明細書 | 媒介契約〜決済 | 毎年春に郵送されるもの。固定資産税の精算に使う |
| 建築確認済証・検査済証(戸建て) | 売り出し〜決済 | 新築時の書類一式の中にあることが多い |
| 測量図・境界確認書(戸建て・土地) | 売り出し〜決済 | なければ取得に1〜3ヶ月。最初に確認する |
| 管理規約・長期修繕計画など(マンション) | 売り出し〜契約 | 管理会社から取り寄せ |
| ローン残高がわかる書類 | 媒介契約時 | 返済予定表など。完済と抵当権抹消の段取りに使う |
- 書類の大半は数百円・即日で揃う。律速になるのは測量図と、再発行できない権利証まわりだけ
- 登記事項証明書の手数料は2025年4月改定で書面600円・オンライン請求520円(送付)
- 権利証をなくしていても売却はできる。事前通知など法律で決められた代替手段が3つある
- 相続した不動産は、売却の前に相続登記(2024年4月から義務化)。戸籍集めの時間を見込む
目次
必要書類を「段階別」に整理する

冒頭の一覧を、実際に使う順番で3つの段階に分けます。
媒介契約(不動産会社と契約する)段階では、本人確認書類と、物件の情報がわかるもの(固定資産税の課税明細書・間取り図・建築時の書類など)があれば進められます。この段階で不動産会社は登記の内容を確認するので、権利証が手元にあるかも同時に確認されます。なくしていることが分かるのが早いほど、後の手続きに余裕ができます。
売買契約の段階では、実印と印鑑証明書、収入印紙、そして買主に引き継ぐ書類(建築確認済証・設備の取扱説明書・マンションの管理規約など)を使います。物件の状態を買主に伝える「物件状況等報告書」「設備表」はこの段階で不動産会社と一緒に作ります。
決済・引き渡しの段階が、権利証(登記識別情報)の出番です。所有権移転登記のために司法書士が確認します。印鑑証明書はここでも使うため、発行後3ヶ月以内という有効期間から逆算して取り直すのが確実です。
なお、査定の段階では書類はほとんど要りません。査定に使う書類は別の記事で解説しています。
いつまでに・どこで・いくらで揃うか
各書類の取得先・日数・費用をまとめます。登記事項証明書の手数料は2025年4月に改定されています(オンライン請求の送付が500円→520円など)。
| 書類 | 取得先 | 日数 | 費用 |
|---|---|---|---|
| 登記事項証明書 | 法務局(オンライン請求可) | 即日〜数日 | 書面600円/オンライン請求520円(送付)・490円(窓口受取) |
| 印鑑証明書 | 市区町村の窓口・コンビニ交付 | 即日 | 300円前後(自治体による) |
| 住民票 | 市区町村の窓口・コンビニ交付 | 即日 | 300円前後(自治体による) |
| 固定資産評価証明書 | 市区町村(東京23区は都税事務所) | 即日 | 300〜400円程度(自治体による) |
| 戸籍全部事項証明書(相続時) | 市区町村(本籍地以外でも広域交付可) | 即日〜数日 | 450円(全国一律)。除籍・改製原戸籍は750円 |
| ローン残高証明・返済予定表 | 借入先の金融機関 | 数日〜2週間 | 金融機関による |
| 管理規約・重要事項調査報告書 | マンションの管理会社 | 数日〜2週間 | 発行手数料は管理会社による |
| 地積測量図(法務局に備え付けのもの) | 法務局(オンライン請求可) | 即日〜数日 | 書面500円/オンライン請求470円(送付)・440円(窓口受取) |
| 確定測量図・境界確認書 | 土地家屋調査士に依頼 | 1〜3ヶ月 | 数十万円規模(条件による) |
表のとおり、ほとんどの書類は数百円・即日で揃います。例外が2つあります。
1つは確定測量図です。手元に測量図がない、あるいは古くて境界確認書がない土地・戸建ては、隣地との立ち会いを含む確定測量が必要になることがあり、これだけで1〜3ヶ月かかります。その前に、法務局で「地積測量図」の有無を確認してください。分筆や地積更正の登記をしたことがある土地なら法務局に図面が備え付けられており、500円・即日で取れます。ただしこれは過去の登記のときに提出された図面で、隣地との立ち会いを経た現在の境界を示す確定測量図とは別物です。古い図面しかない場合は、結局あらためて確定測量が必要になります。売却スケジュール全体の律速になるため、売ると決めたら最初に測量図の有無を確認してください。費用の相場と流れは別の記事で詳しく解説しています。
もう1つが、次に説明する権利証まわりです。お金では解決できず、手続きの選択になります。
権利証と登記識別情報。どちらを探せばいいか

「権利証」と呼ばれているものには、実は2種類あります。
- 登記済権利証(登記済証): 2005年ごろまでの登記で発行された書類。表紙や末尾に法務局の「登記済」の印が押されています
- 登記識別情報通知: それ以降の登記で発行される書類。アラビア数字などを組み合わせた12桁の符号が記載され、符号部分が目隠しシールや折り込みで隠された状態で交付されます(様式は発行時期・法務局により異なります)
どちらに当たるかは、その不動産をいつ取得(購入・相続登記)したかでほぼ決まります。探すべきは、購入時に司法書士や不動産会社から渡された書類一式のファイルです。登記識別情報は符号そのものが本人確認の手段なので、シールを剥がした状態で人に見せないでください。コピーでも符号が写れば同じ効力を持ちます。
登記の内容そのものを確認したいときは、法務局で登記事項証明書を取れば誰でも見られます。証明書の見方は見本つきの記事があります。
権利証がない・なくした場合の3つの対処法
権利証も登記識別情報も、再発行はできません。ただし、なくしたら売れないわけではありません。法律(不動産登記法23条)で代わりの本人確認手段が用意されています。
| 方法 | 仕組み | 費用 |
|---|---|---|
| 事前通知 | 登記申請後、法務局から本人限定受取郵便が届き、期限内に実印を押して返送することで本人確認する | 無料 |
| 資格者代理人による本人確認情報 | 登記を委任した司法書士等が、面談と証明書類で本人であることを確認した書面を作成する | 司法書士への報酬が別途かかる |
| 公証人による認証 | 公証役場で、本人であることを公証人に認証してもらう | 認証の手数料がかかる |
どれを使うかは、決済のスケジュールと合わせて司法書士・不動産会社と相談して決めます。事前通知は無料ですが郵便のやりとりを挟むため、決済日が確定している売買では、確実性を優先して本人確認情報が選ばれることが多いのが実務です。
紛失に気づいた時点でやるべきことは1つです。媒介契約のときに不動産会社へ正直に伝えること。決済直前に発覚すると、日程全体を組み直すことになります。権利証をなくした場合の詳しい対処は、こちらの記事でも解説しています。
相続した不動産を売る場合の追加書類
相続した実家や土地を売る場合、上の書類に加えて「名義を自分に変える」ための書類が先に必要です。亡くなった方の名義のままでは売買の手続きが進みません。
- 亡くなった方の出生から死亡までの戸籍一式(戸籍全部事項証明書450円・除籍/改製原戸籍750円。2024年3月から本籍地以外の市区町村でもまとめて請求できる広域交付が始まっています)
- 相続人全員の戸籍・印鑑証明書
- 遺産分割協議書(相続人が複数いる場合)
- 相続登記の申請(2024年4月から義務化。相続で取得を知った日から3年以内の申請が必要です)
戸籍集めは本籍地の移動が多い方ほど時間がかかります。売却の予定がある場合は、売り出しの前に相続登記まで終えておくのが安全です。相続登記の手順と費用は既存の記事で解説しています。
決済日から逆算する書類準備カレンダー

書類準備の順番は、取得に時間がかかるものから逆算すると迷いません。
- 売ると決めたらすぐ: 権利証(登記識別情報)の所在確認と、測量図・境界確認書の有無の確認。この2つだけが後から取り返しにくい
- 媒介契約まで: 固定資産税の課税明細書・建築時の書類・ローン返済予定表を手元に集める
- 売買契約の前: 印鑑証明書を取得(3ヶ月の有効期間を考えて契約・決済の日程に合わせる)。マンションは管理会社へ書類を発注
- 決済の前: 印鑑証明書の有効期間を再確認。住所が登記と異なる場合は住民票などを準備
売買契約から決済・入金までのスケジュール全体は、不動産売却の期間の記事で解説しています。
不動産売却の必要書類でよくある質問
家を売るとき、権利書をなくしていたら売れませんか?
売れます。権利証・登記識別情報は再発行できませんが、法律で代わりの本人確認手段が3つ用意されています(事前通知・司法書士等による本人確認情報・公証人の認証)。ただしどの方法も通常より手間や費用が増えるため、なくしていることが分かった時点で、媒介契約の際に不動産会社へ伝えておくことが重要です。
印鑑証明書はいつ取ればいいですか?
売買契約と決済で使う印鑑証明書は、発行後3ヶ月以内のものが求められます。早く取りすぎると決済までに期限が切れて取り直しになるため、売買契約の日程が見えてから取得するのが確実です。マイナンバーカードがあればコンビニ交付でも取得できます。
マンションの売却で必要な書類は何ですか?
戸建てとの違いは、管理に関する書類が加わることです。管理規約、使用細則、長期修繕計画、直近の総会資料、管理費・修繕積立金の額がわかる書類などを、管理会社から取り寄せます(重要事項調査報告書の発行には管理会社所定の手数料と数日〜2週間程度かかります)。一方で、土地の測量図・境界確認書は原則不要です。
必要書類は査定の時点で全部揃えるべきですか?
いいえ。査定の段階で必須の書類はほとんどなく、固定資産税の課税明細書や間取り図があれば精度が上がる、という程度です。全部を揃えるのは媒介契約から売買契約にかけてで問題ありません。査定時にあるとよい書類は不動産査定の必要書類の記事で解説しています。
まとめ: 先に確認するのは「権利証」と「測量図」の2つだけ
不動産売却の必要書類は種類こそ多いものの、大半は数百円・即日で揃います。段取りを狂わせるのは次の2つだけです。
- 権利証(登記識別情報): 再発行できない。なくしていたら早めに申告し、代替手段を司法書士と相談する
- 測量図・境界確認書: なければ取得に1〜3ヶ月。売却を決めた時点で有無を確認する
この2つを最初の1週間で確認しておけば、残りの書類は売却の進行に合わせて集めれば間に合います。
書類の確認と並行して、物件の相場観も早めに持っておくと計画が立てやすくなります。SUMiTASの10秒査定は、住所と物件情報を入れるだけで匿名・電話なしで概算価格を確認できます。最初の材料としてお使いください。
本記事の手数料は次の公的情報によります。登記事項証明書は法務省「登記手数料について」(2025年4月1日改定・2026年8月16日確認)、権利証を紛失した場合の手続きは法務局「不動産登記のよくあるご質問」(情報番号1329)および不動産登記法23条、登記識別情報の性質は法務局の公表Q&A、戸籍関係の手数料は全国一律の法定額です。印鑑証明書・住民票・固定資産評価証明書の手数料は自治体により異なるため幅で記載しています。マンションの管理書類の発行条件は管理会社により異なります。相続登記の義務化は2024年4月施行の改正不動産登記法によります。
不動産売却ガイド
