不動産の売却は、大きく5つの段階で進みます。売る準備を始めてから、代金を受け取って引き渡すまで、全体で半年前後を見ておくと現実に近く、一般に「3〜6か月」といわれるのもこの範囲です。
ただ、この目安には大事な情報が抜けています。半年のうち、自分の判断で縮められる区間と、ほとんど動かせない区間があることです。
東日本不動産流通機構(レインズ)が公表している2025年の実測では、首都圏でレインズに登録されてから成約するまでの日数は、中古マンションが82.5日、中古戸建住宅が100.9日、土地が89.8日でした。売却期間の大部分を占めるのは、この「売り出してから買い手が決まるまで」の区間です。
つまり、売却を早く終わらせたいときに手を入れるべきなのは、売り出したあとの粘りではなく、売り出す前の準備と価格の決め方です。この記事では5段階の全体像を示したうえで、実測データでどこが延びるのかを分解し、3か月売れなかったときの動き方まで説明します。
- 不動産売却は5段階。準備から引き渡しまでの目安は半年前後
- レインズ実測では、登録から成約まで中古マンション82.5日・中古戸建住宅100.9日・土地89.8日(2025年・首都圏)
- 期間の大部分を占めるのは「売り出してから買い手が決まるまで」。前後の手続きは書類がそろえば振れ幅が小さい
- 3か月動かないときは、価格・売り方・売り先の順で見直す
目次
不動産売却の流れ。5段階の全体像

各段階でやることと、そのときに必要な書類を1つの表にまとめます。書類は「段階が来てから探す」と待ち時間になるため、前の段階のうちにそろえておくと全体が短くなります。
| 段階 | やること | 期間の目安 | この段階で要る主な書類 |
|---|---|---|---|
| 1. 準備と相場調べ | 売る理由と期限を決める/相場を調べる/権利関係を確認する | 2週間〜1か月◯ | 登記識別情報(権利証)、固定資産税の納税通知書 |
| 2. 査定と会社選び | 机上査定・訪問査定を複数社に依頼する/担当者を選ぶ | 1〜2週間◯ | 間取り図、測量図、購入時の売買契約書 |
| 3. 媒介契約と売り出し | 媒介契約を結ぶ/レインズに登録される(専任・専属専任の場合)/内覧に対応する | 82.5〜100.9日★ | 管理規約・議事録(マンション)、設備の取扱説明書 |
| 4. 売買契約から引き渡し | 条件を交渉する/売買契約/決済と登記/鍵の引き渡し | 1〜2か月◯ | 実印と印鑑証明書、住民票、ローン残債の抹消書類 |
| 5. 売却後の手続き | 利益が出た場合は確定申告をする | 翌年2月中旬〜3月中旬 | 売買契約書の写し、費用の領収書 |
★はレインズが公表している実測値です。◯を付けた期間には公的な統計がなく、当社の実務上の目安です。この記事で数字を分解できるのは3段階目だけで、それ以外は「だいたいこのくらい」でしか言えない、というのが正直なところです。必要書類の全体像は売却に必要な書類の記事にまとめています。
段階1: 準備と相場調べ。ここが全体の長さを決める
最初にやることは、物件を調べることではなく、売る理由と期限をはっきりさせることです。住み替えの入居日が決まっているのか、相続の手続きに期限があるのか、それとも急がないのか。ここが決まらないまま査定に進むと、価格を決める段階で判断がぶれます。
並行して次の3つを確認します。
- 名義: 登記簿で所有者が誰になっているか。相続した不動産は、名義が亡くなった方のままだと買主へ所有権を移す登記ができないため、先に相続登記を済ませる必要があります。相続登記は2024年4月1日から義務化されており、相続の開始と所有権の取得を知った日から3年以内に申請しなければなりません(不動産登記法76条の2)
- 権利証: 登記識別情報通知(または登記済証)が手元にあるか。紛失していても売却はできますが、司法書士による本人確認情報の作成が必要になり、費用と日数が増えます
- ローンの残債: 残高証明書か返済予定表で、いま残っている金額を確認します
相場は、売り出し価格ではなく成約価格で調べます。国土交通省の不動産情報ライブラリで実際の取引価格を、レインズ・マーケット・インフォメーションで成約価格を、それぞれ無料で見られます。土地の相場の調べ方は土地の相場を調べる方法の記事、相続税路線価から水準を見積もる方法とその限界は路線価と実勢価格の違いを検証した記事で解説しています。
段階2: 査定と不動産会社選び
査定には、現地を見ずに資料と取引事例から算出する机上査定と、実際に物件を見て出す訪問査定があります。売り出し価格を決める段階では、精度を上げるために訪問査定を受けるのが一般的です。
査定額は「その金額で売れる保証」ではなく、その会社が売れると考える価格です。したがって比べるべきは金額の大きさではなく、その金額になった理由を説明できるかどうかです。近隣の成約事例のどれを根拠にしたのか、この物件のどこを加点・減点したのかを聞いてみてください。
複数社に依頼したあと、頼まなかった会社への断り方に悩む方は多いのですが、断ること自体は普通のことです。角の立たない伝え方は査定の断り方の記事にまとめました。査定の前にそろえておく書類は査定に必要な書類の記事を参考にしてください。
段階3: 媒介契約と売り出し
不動産会社に仲介を依頼する契約が媒介契約で、一般・専任・専属専任の3種類があります。違いは「複数社に頼めるか」「レインズへの登録義務があるか」「報告の頻度」の3点です。詳しくは媒介契約の3種類を比較した記事で解説しています。
専任媒介契約または専属専任媒介契約を結んだ場合、不動産会社にはレインズ(指定流通機構)へ物件を登録する義務があります(宅地建物取引業法34条の2第5項)。登録されると、全国の不動産会社が物件情報を見られる状態になります。一般媒介契約には、この登録義務がありません。
ここから買い手を探す期間が始まり、この記事の冒頭で示した82.5日から100.9日は、この区間の日数です。
売り出し中に売主がやることは、内覧の対応がほとんどです。内覧は成約に直結する場面なので、準備の仕方は内覧の記事にまとめています。
なお、自社で買主を見つけるために物件情報を他社に流さない「囲い込み」という行為があります。売主にとっては買い手の候補が減る不利益になります。専任媒介契約と専属専任媒介契約では、不動産会社は登録を証する書面を遅滞なく売主へ引き渡す義務があります(同条6項)ので、これを受け取って登録状況を確認してください。仕組みと確認方法は囲い込みの記事で説明しています。
段階4: 売買契約から引き渡しまで
買主から購入申込書が出たら、価格や引き渡し時期を交渉し、条件がまとまれば売買契約を結びます。
契約当日の流れは次のとおりで、所要はおおむね1〜2時間です。
- 宅地建物取引士が買主に重要事項説明をする
- 売買契約書を読み合わせ、売主・買主が署名押印する
- 買主から手付金を受け取る
- 契約時に仲介手数料の一部を支払う場合もある(契約時と決済時に分けて支払う場合と、決済時にまとめて支払う場合があります。支払いの時期は媒介契約のときに確認してください)
契約から引き渡しまでは1〜2か月空きます。主な理由の一つは買主の住宅ローン本審査に時間がかかることで、ほかにも残代金の準備、抵当権抹消の準備、引っ越しの日程などで期間が決まります。買主が現金で購入する場合は短くなることもありますが、売主側だけで短縮できる余地は限られます。この間に引っ越しと、ローンが残っている場合は金融機関への一括返済の手配を進めます。
決済日には、残代金の受け取り、抵当権の抹消登記、所有権移転登記、鍵の引き渡しを同じ場で行います。登記は司法書士が担当します。手続きの詳細は所有権移転登記の記事と抵当権抹消の記事を参考にしてください。
段階5: 売却後にやること
引き渡しが終わっても、売却して利益が出た場合は確定申告が必要です。申告の時期は売却した翌年の2月16日から3月15日までです。
利益が出ていない場合、通常は所得税の申告義務は生じません。ただし、損失が出たときの特例で税負担を軽くする場合など、特例を使うには確定申告が必要です。税額の計算や特例が使えるかどうかの判断は税務署または税理士へご相談ください。売却にかかる税金の全体像は土地売却の税金の記事で扱っています。
実測: 時間がかかるのはどの区間か
冒頭で示した日数を、もう少し詳しく見ます。東日本レインズの2025年の集計では、登録から成約に至る日数は次のとおりでした。
| 種別 | 2025年 | 2024年 | 2020年 |
|---|---|---|---|
| 中古マンション | 82.5日 | 85.3日 | 88.3日 |
| 中古戸建住宅 | 100.9日 | 97.3日 | 111.3日 |
| 新築戸建住宅 | 103.4日 | 103.9日 | 95.3日 |
| 土地 | 89.8日 | 89.4日 | 111.0日 |
東日本不動産流通機構「首都圏不動産流通市場の動向(2025年)」をもとに作成
ここから読み取れることは3つあります。
1つ目は、種別によって20日近い差があること。 中古マンションは82.5日、中古戸建住宅は100.9日で、戸建てのほうが2割ほど長くかかっています。マンションは同じ建物内の成約事例が多く、買主が相場を判断しやすいことが影響していると考えられます。
2つ目は、年によって振れること。 中古戸建住宅は2020年に111.3日まで延びたあと2022年に81.2日まで縮み、2025年は100.9日に戻っています。「いまは何日くらいか」は年ごとに変わるので、数年前のデータをそのまま当てにしないほうが安全です。
3つ目は、この日数がレインズに登録されてから成約するまでの期間であること。 売ろうと決めた日からでも、媒介契約の日からでもありません。実際の売却はこの前後に、準備の期間と引き渡しまでの期間が加わります。
前後の区間には公的な統計がありません。当社の実務では準備から媒介契約まで2週間から1か月、売買契約から引き渡しまで1〜2か月を見ていますが、これは目安です。ただし前の区間は、書類がそろっているかどうかで実際に変わります。権利証が見つからない、相続登記が終わっていない、境界が確定していないといった事情があると、査定より前の段階で数週間から数か月が過ぎます。売却期間の全体像と種別ごとの詳しい分解は不動産売却の期間の記事で扱っています。
費用は売却価格の3〜6%。出ていくタイミングは2回
売却にかかる費用の目安は、売却価格の3〜6%です。このうち、ほとんどの売却で必ずかかるのは仲介手数料と印紙税の2つで、3,000万円で売れた場合は次のようになります。
| 項目 | 3,000万円で売却した場合 | 支払うタイミング |
|---|---|---|
| 仲介手数料(法律上の上限) | 105.6万円 | 決済時にまとめて、または契約時と決済時に分けて(媒介契約で確認) |
| 印紙税 | 1万円 | 売買契約時 |
| 合計 | 106.6万円 |
印紙税は2027年3月31日までの軽減税率による金額です(国税庁タックスアンサーNo.7108)。これ以外に、抵当権抹消の登記費用、測量費、解体費などが物件と状況によって加わります。価格帯別の早見表と手取りの計算は不動産売却の費用の記事、仲介手数料の上限の仕組みは仲介手数料の上限の記事にまとめました。
費用の多くは決済時に売買代金から精算されるため、手元から先に大きな現金を出す場面は多くありません。ただし測量や解体を売却前に行う場合は、その分だけ先払いになります。
3か月動かないときの3つの見直し

登録から成約までの日数が中古戸建住宅で平均100.9日ということは、3か月を過ぎても決まらない売却は珍しくないということでもあります。平均より時間がかかっているからといって、何かを間違えたわけではありません。
そのときに見るべき順番があります。最初に確認するのは価格ではなく、内覧が入っているかどうかです。
内覧が入っているのに決まらない場合は、価格と物件の見え方の問題です。内覧した人が他の物件と比べて選ばなかったということなので、価格の見直しか、内覧時の見せ方の改善が効きます。
そもそも内覧が入らない場合は、情報が届いていないか、条件で候補から外れています。候補から外れる原因としてよくあるのが価格で、相場より高かったり、買主がポータルサイトで検索する価格帯から外れていたりすると、物件を見てもらう前に選択肢から落ちます。まず近隣で売り出されている物件と比べて価格を見直す余地がないかを確かめ、あわせてレインズの登録状況、写真の枚数と質、間取り図の有無、広告の掲載範囲を確認してください。ここで囲い込みが起きていないかも合わせて確認します。
そのうえで、次の3つを順に検討します。
- 価格の見直し: 売り出し後に出た近隣の成約事例をもとに、根拠のある金額へ直します。小刻みに何度も下げると「まだ下がる」と見られやすいため、下げ幅と時期は担当者と決めます
- 売り方の見直し: 媒介契約の種類を変える、担当者を変える、契約期間の満了で会社を変える。専任媒介契約と専属専任媒介契約の有効期間は3か月を超えられないと決まっている(宅地建物取引業法34条の2第3項)ため、更新のタイミングが判断の区切りになります
- 売り先の見直し: 期限が迫っているなら、不動産会社による買取に切り替える選択肢があります。価格は市場相場より低くなるのが一般的ですが、買主を探す期間がなくなります。仕組みは不動産買取の流れの記事で解説しています
土地が長く売れない場合の原因と対処は土地が売れないときの記事に、売却で避けたい行動は家の売却でやってはいけないことの記事にまとめています。
売り出す時期を待つより、書類を先にそろえる
「売り出すのに良い時期はありますか」は、査定のご相談でよく受ける質問です。

当社が運営する10秒査定に寄せられた依頼を月別に見ると、最も多いのは8月から9月で、少ないのは2月から4月でした(2025年7月から2026年7月の81,859件のうち、数分間に数十件が連続する機械的なアクセスを除いた56,825件で集計)。一般に不動産の繁忙期といわれる1月から3月とは、ずれています。
ただし、これは査定を依頼した人の数であって、売れやすい月を示すデータではありません。売却が決まるかどうかは、その時期に同じ条件の物件を探している買い手がいるかどうかで決まります。
そのため当社では、時期を待つことはおすすめしていません。それよりも、権利証の所在、相続登記の要否、境界の状態の3つを先に確認しておくほうが、結果として早く売れます。前章のとおり、この区間は売主の準備しだいで実際に縮む区間だからです。市況そのものの見通しについては不動産価格の今後の記事で扱っています。
不動産売却の流れでよくある質問
不動産売却で最初にやることは何ですか?
売る理由と期限をはっきりさせることです。そのうえで、名義(相続した不動産なら相続登記が済んでいるか)、権利証の所在、ローンの残債の3つを確認します。査定はそのあとで問題ありません。
不動産売却にはどのくらいの期間がかかりますか?
レインズに登録してから成約するまでは、2025年の首都圏で中古マンションが82.5日、中古戸建住宅が100.9日、土地が89.8日でした。これに準備の期間と、契約から引き渡しまでの1〜2か月が加わるため、全体では半年前後を見ておくと現実に近くなります。
司法書士は売却のどの場面で必要になりますか?
決済の日です。買主から残代金を受け取るのと同時に、抵当権の抹消登記と所有権移転登記を行うため、司法書士が立ち会って書類を確認します。権利証を紛失している場合は、本人確認情報の作成でも司法書士が必要になります。
家を売るときにやってはいけないことは何ですか?
査定額の高さだけで不動産会社を決めること、相場を調べずに売り出し価格を決めること、設備の不具合を伝えずに引き渡すことの3つは、あとで金銭的な不利益につながりやすい行動です。詳しくは家の売却でやってはいけないことの記事にまとめています。
マンションと戸建てで流れは違いますか?
5段階の流れは同じです。違うのは必要書類で、マンションでは管理規約、長期修繕計画、直近の総会議事録、管理費と修繕積立金の金額がわかる書類が加わります。売却にかかる日数も、実測では中古マンションのほうが2割ほど短くなっています。
まとめ: 縮められるのは、売り出す前の区間
不動産売却は5段階で進み、準備から引き渡しまで全体で半年前後かかります。このうちレインズの実測で数字がわかっているのは「売り出してから成約するまで」の区間で、2025年の首都圏では中古マンション82.5日、中古戸建住宅100.9日、土地89.8日でした。
この区間は、売り出したあとに粘って縮むものではありません。縮められるのは、その前にある準備の区間です。権利証の所在、相続登記の要否、境界の状態を先に確認しておけば、査定から売り出しまでが滞りません。
そして3か月動かないときは、内覧が入っているかどうかで原因を切り分け、価格、売り方、売り先の順に見直します。売れないまま同じ条件で待ち続けることが、いちばん時間を使う選択です。
まずはご自身の物件がいくらで売れそうかを把握するところからで構いません。当社の10秒査定は、匿名で、電話番号の入力もなくお使いいただけます。
不動産売却ガイド
