不動産相続に関する基礎知識|手続きや登記の申請方法も紹介

不動産相続に関する基礎知識|手続きや登記の申請方法も紹介

監修者
吉田 宏
吉田 宏(株式会社SUMiTAS 代表取締役社長)
  • 二級建築施工管理技士
  • 宅地建物取引士
  • 測量士補
  • 賃貸不動産経営管理士

相続によって不動産を取得することになった場合は、権利をはっきりさせるために、早めに不動産登記をしておきましょう。

登記をしないと権利関係が曖昧になり、トラブルに発展することも多いため注意が必要です。円満に不動産を相続するためにも、相続時にやるべきことや、知っておくべき基礎知識などを把握しましょう。

不動産の相続が発生した場合にまずやるべき2つの手続き

親族が亡くなり、不動産を相続することになった場合は、まずは次の2つの手続きを行う必要があります。

  1. 7日以内に死亡届を提出する
  2. 遺言書の有無を確認する

これらの手続きを終えてから、相続する内容がどのようなものになるのか、詳細を確認していきます。

7日以内に死亡届を提出する

国内で死亡した場合は事実を知った日から7日以内に、国外で死亡した場合は、その事実を知ってから3カ月以内に死亡届を提出しなければなりません。死亡届は市区町村の役場で提出しますが、24時間受け付けています。理由なく期限を超過してしまうと、50,000円以下の過料に処せられるため注意しましょう。

遺言書の有無を確認する

人によっては、相続内容について遺言書を残していることもあるため、この有無は確認しておきましょう。遺言書の記載事項次第では、相続の内容が違ってくることもあります。

また、遺言書が残されていてもすべてが有効とは限らないため、弁護士に相談して、どこまで効力が発揮されるのかも聞いておく必要があります。遺言書がない場合は、法律での取り決め通りに相続を行うため、遺言書がなくても相続は可能です。

不動産の相続に関する税金

不動産を相続する際には税金が発生しますが、どのように不動産を扱うかによって別途税金がかかることもあります。

  • 相続税
  • 登録免許税
  • 固定資産税
  • 譲渡所得税

不動産にまつわる税金はこれら4つが代表的で、それぞれで課税の要件は異なります。

相続税:相続する場合にかかる

相続時には相続する内容に合わせて、相続税が発生します。不動産は、購入価格ではなく評価額を基準に考えるため、現金のまま相続するよりも税金は安いです。相続税には基礎控除があり、「3,000円+600万円×法定相続人の数」で計算します。

法定相続人が1人の場合は3,600万円、2人の場合は4,200万円と順に控除額は上がります。相続した全体の金額から基礎控除額を差し引き、プラスになっている場合は相続税を納付する必要があります。

相続税評価額よりも基礎控除額のほうが上回る場合は、相続税は非課税となります。相続税は、被相続人の死亡を知った日の翌日から10カ月以内に納付しなければならず、超過するとペナルティを課せられるため注意しましょう。

登録免許税:登記申請時にかかる

相続した不動産の所有権を変更するためには、登記申請を行わなければなりません。このときにかかる費用が登録免許税で、相続登記では固定資産税額証明書に記載されている金額に、税率の0.4%をかけたものが費用になります。

登録免許税は、不動産売買などで所有権が変更する際にもかかりますが、このときと相続時では税率が異なるため、混同しないように注意しましょう。また、2021年の3月31日までに相続登記をする場合で、前の所有者が相続取得時に登記登録をしていなかった場合は、登録免許税は非課税になります。

例えば、自身の親から不動産を相続した場合に、親は自分の親、つまり自身からすると祖父母から不動産を相続したとします。親が祖父母から不動産を相続したものの、登記登録をしておらず、そのまま死亡して子が相続した場合は、特例によって登録免許税は非課税です。

まれなケースではありますが、不動産を活用せずに放っておいた場合は、親が登記申請をしていない可能性もあるため、登録前の権利状況も確認しておくとよいでしょう。

固定資産税:相続した翌年からかかる

不動産を所有していると毎年1月1日現在の所有者に固定資産税の納税義務が生じ、不動産を相続した場合は、相続人が納税義務も引き継ぎます。

また、地域によっては固定資産税に付随して、都市計画税が課税されることもあり、不動産の価値によって税額は変動します。

譲渡所得税:相続した不動産を売却した時にかかる

不動産を相続するだけでなく売却した場合には、利益に応じて譲渡所得税がかかります。譲渡所得税は、売却時の利益に対してかかるもので、売っても売却益が出なかった場合は非課税になります。売却益に対して課税される税金は、他にも住民税や復興特別所得税があり、これらも売却益が出ない場合は非課税です。

売却益は、売却価格から不動産の取得費や売却にかかった費用などを、差し引いて計算します。課税対象になった場合は、所有期間によって譲渡所得税と住民税の税率が決まります。5年を超えていると税率が低く、それ以下の所有期間だと税率が高くなります。

相続税を減額したい場合は小規模宅地の特例を利用する

基礎控除額を差し引いても相続税が発生した場合、高額になるなら小規模宅地の特例を利用して、相続税の減額を行うことがおすすめです。この特例を利用することで、宅地の評価額を最大80%まで下げられるので、相続税を安く抑えられます。小規模宅地の特例を適用するためには、次の条件を満たさなければなりません。

  • 相続前から被相続人と生活を共にしていた居住用の宅地であること
  • 相続開始から相続税の申告期間(相続後10カ月)の間、相続した宅地を継続して利用すること

これらの条件に該当する場合は、330m²までの部分の評価額を下げられます。330m²を超える部分は、通常の評価額で考える必要があり、計算が複雑になるため注意しなければなりません。

また、他にも事業用や賃貸利用などでも、特例が適用できる場合がありますが、それぞれで条件や評価額の減額率が違うことは覚えておきましょう。

不動産を相続する流れ

スムーズに相続するには、不動産を相続する際の流れを知っておくことが大切です。

  1. 相続する不動産の確認
  2. 遺言書の有無と内容確認
  3. 法定相続人の確定
  4. 遺産分割協議を行う
  5. 不動産の相続登記を行う

不動産の相続は、これら5つの手順で進めていきます。

1. 相続する不動産の確認

不動産を相続する際には、まずは何を相続することになるのか、内容をチェックしておきましょう。被相続者の所有状況によって相続する内容は異なり、大量の不動産が遺産として残される場合もあれば、不動産はほとんどなく、現金での相続になることもあります。

ケースバイケースで相続内容は異なるため、土地や建物、田畑など、何を取得することになるのか、その内容と数は必ず確認しておきましょう。また、それらの不動産は誰が名義者であるかもチェックしておき、権利の所在は明らかにしておきましょう。

2. 遺言書の有無と内容確認

相続の内容は、遺言書の有無によって変わることが多いため、まずは遺言書が残されているかどうかを確認します。遺言書がない場合は法定相続人で相談し、相続内容を決定します。遺言書がある場合は、記載内容が有効な範囲内に限り指示に従い、相続内容を決めていきましょう。

3. 法定相続人の確定

遺言書がない場合は、法定相続人のみで相続をすることになるため、これが誰になるかを確定しておきます。例えば、隠し子などがいた場合は、これが法定相続人に加わることもあるため、注意しましょう。

また、遺言書がある場合でも、法定相続人に相続の権利は残されているので、どちらにしても一度集まり、全員で相続内容を相談する必要があります。

4. 遺産分割協議を行う

法定相続人が複数人いる場合は、誰がどれだけの遺産を相続するのか、協議によって決める必要があります。相続人が一人の場合や、現金のみの相続なら協議なしで相続が可能ですが、不動産は単純に頭数で割ることが難しいため、協議をしてそれぞれの相続分を決める必要があります。

話し合った結果、決まった相続分については、遺産分割協議書を作成して書面に残し、明確に分割分を定めていきます。口頭での取り決めは、あとでトラブルになることも多いので、決定事項は必ず書面に残すようにしましょう。

スムーズに協議を行うためには、第三者を交えることがおすすめです。トラブルを防ぐためにも弁護士を交えて協議しましょう。

5. 不動産の相続登記を行う

それぞれの相続分が決定したら、不動産を相続した人が登記申請を行います。現金とは違って、不動産は権利者の変更が必要であるため、法務局にて相続登記をしておきましょう。相続登記をしておかないと権利関係が曖昧になったり、売却時にスムーズに手続きを進められなかったりするため注意が必要です。

相続税の支払いなどは期限がありますが、相続登記に明確な申請期限がありません。そのため、相続に関する事柄が落ち着いてからの申請でも構いませんが、忘れないようにできるだけ早めに申請しておいたほうがよいでしょう。

不動産の分割相続の4つの方法

遺産を分割相続する方法は、次の4つがあげられます。

分割方法特徴
現物分割・相続人によって相続内容が異なる(一方は不動産、もう一方は現金など)
・広い土地なら分筆して均等にわけることも可能
・相続物の価値で揉めることがある
代償分割・もっとも高い価値のものを相続した人が、差額を他の相続者に対して支払う
・支払いを行うものに高い経済能力が求められる
換価分割・不動産を売却して、現金を分割して相続する
相続人での共有・不動産を共有名義で相続する
・子や孫の代で権利関係が複雑になりやすい

相続人全員が集まる必要はありませんが、分割相続の方法や内容の決定には、全員の同意が必要です。誰か一人でも反対する者がいると相続ができないため、一度全員で集まって話し合ったほうがよいでしょう。

現物分割

相続できる遺産の種類が豊富な場合は、一方が不動産、もう一方が現金のように、内容を変えて相続する現物分割が可能です。一人が土地、もう一人が建物のように明確な分割がしやすいですが、それぞれの価値の差で揉めることも多いため、その点には注意しましょう。

また、複数種類の遺産がないと現物分割自体が難しく、相続内容次第ではこの方法が用いられないこともあります。ただし、土地ひとつしか相続しない場合でも、それが広大であれば人数分で均等に分割して相続することも可能で、相続人の数と遺産が割り切れるなら分割分を決めやすい方法といえます。

代償分割

相続人のうち、誰か一人が高い経済能力を持っているなら、代償分割という方法もおすすめです。代償分割では、相続した不動産などの価値がもっとも高い人が、他の相続者に対して、相続価値の差額を金銭で支払うことでバランスを取ります。

例えば、Aさんが1,000万円の価値がある不動産を相続し、Bさんが700万円の価値の不動産を取得したとすると、残りの300万円分をAさんがBさんに現金で支払うと考えましょう。

特定の誰かが多くの資産を持っている必要がありますが、金額差を金銭の授受で解消できるため、トラブルが起きづらい方法といえます。

換価分割

相続人全員が不動産は不要と考えているなら、相続する不動産をすべて売却し、現金を均等にわけて相続人に分配するという方法があります。これは「換価分割」と呼ばれており、不動産を手放すことになるものの、それぞれの取り分がわかりやすく、トラブルも少ないでしょう。

住居や別荘など使用頻度が高いものを相続する場合は、全員の合意が取りづらいこともありますが、遠方の田畑や空き家など、使わない可能性が高い不動産なら、換価分割でも全員の合意が得やすいです。

相続人での共有

相続分をうまく分割できない場合は、全員の共有名義として、相続人で不動産を共有することも可能です。遺産分割協議で難航する場合に用いられることが多く、最終的な落としどころとして利用するには便利です。

ただし、相続人で共有していると不動産を手放したり、何らかの方法で活用したりする際には名義者全員から同意を得なければなりません。また、子や孫の代が相続する頃には多くの人が権利関係者になり、所有権が複雑になりやすいです。

したがって、将来的なトラブルを引き起こさないためにも、共有名義はどこかの段階で解消しておいたほうが無難でしょう。

分割方法が決まれば遺産分割協議書を作成

相続人全員の合意が取れる方法で分割内容を決めたら、遺産分割協議書を作成します。これは、法的な効力を持つもので、相続者全員の同意と捺印が必要です。

遺産分割協議書は相続登記の際に必要なため作成が必須です。不動産に限らず遺産の分割の際には、必ず作成しなければなりません。基本的には、一度作成するとその内容で確定ですが、あとで相続人が現れた場合は再度協議を行い、書類も作り直す必要があります。

不動産の相続登記(名義変更)をする方法

不動産の所有権を自身に確定させるためには、相続登記を行い、名義変更をしておかなければなりません。相続登記の申請期限はありませんが、早めに名義変更をしていないと、他者に対して所有権を主張できなかったり、売却の手続きが進められなかったりと不便も多いです。

  1. 必要書類を集める
  2. 法務局へ申請を行う
  3. 司法書士へ依頼する場合の費用

これら3つのポイントを押さえることで相続登記ができるため、相続後は素早く申請をするようにしましょう。

1. 必要書類を集める

まずは、相続登記に必要な書類を集めましょう。必要な書類は死亡した人についてのものと、相続人についての書類、相続する不動産についての書類の3つの種類があります。

区分必要書類書類取得先
死亡した方に関する書類戸籍謄本出生から死亡までの本籍ごとの市区町村役場
死亡した方に関する書類住民票の除票または戸籍の附票の除票死亡した方の最終住所の市区町村役場
相続人に関する書類戸籍謄本(法定相続人全員分)現在の本籍地の市区町村役場
相続人に関する書類印鑑証明書(法定相続人全員分)現在の本籍地の市区町村役場
相続人に関する書類遺産分割協議書相続人で作成
相続人に関する書類住民票(不動産相続人のみ)市区町村役場
相続する不動産に関する書類固定資産評価証明書不動産住所の所在する市区町村役場
相続する不動産に関する書類登記簿謄本法務局

それぞれで取得場所が異なるため、早めに動き出してスムーズに用意できるようにしておきましょう。

2. 法務局へ申請を行う

必要な書類を集めたら、法務局で申請を行います。申請方法は法務局の窓口での直接申請や、郵送での書類の提出、オンラインでの申請などがあります。

申請後から1~2週間程度で登録が完了となります。申請するときには、特例の適用がない限りは登録免許税の納付が必要であるため、お金を用意しておきましょう。

参考:登記・供託オンライン申請システム

3. 司法書士へ依頼する場合の費用

相続登記は自分で行うだけではなく、司法書士に依頼して代行してもらうことも可能です。業者によって費用は異なりますが、手続きを代行してもらうと、数万円から高い場合で10万円程度かかることが多いです。相続登記の申請は、複雑でわかりづらいことも多いため、難しいと感じるなら司法書士に依頼する方がよいでしょう。

また、手続きの代行だけではなく、申請に必要な書類の取得を代理で行ってもらうことも可能です。できるだけ手間をかけずに申請し、かつコストも抑えたいなら、書類の取得のみえお司法書士に依頼してもよいでしょう。書類の取得のみを依頼する場合は、10,000~50,000円程度が相場です。

相続した不動産を売却するなら査定サイトがおすすめ

相続した不動産を売却したいなら査定サイトの利用がおすすめです。売却の際には査定を依頼しますが、査定額は不動産会社によって異なることも多いです。

また、実際の売却価格も変動することがあるため、高値で売りたいなら好条件で売却できそうな業者を探さなければなりません。依頼する業者の選定は、査定結果とその根拠を比較することが早いです。

適正価格でスムーズな売却をするには、より良い不動産会社に依頼することが大切です。SUMiTASなら、ネットで簡単に査定が依頼でき、適正な価格で査定してくれます。さらに、売却活動の際も全国ネットワークによりいち早く買主を見つけることができます。また、売却活動を家族などに知られたくないという人も、世に情報を公開しない秘密厳守の売却活動も可能です。

きちんと準備して不動産相続を円満に進めよう

遺産の相続はトラブルになることが多いため、事前に対処法を考えてトラブルを回避することが大切です。準備を徹底して行うことで、よりスムーズに不動産の相続はできます。相続時の割り振りや、その後の手続きなどもシミュレーションしておき、不動産の相続を円満に行いましょう。

監修者
吉田 宏
吉田 宏(株式会社SUMiTAS 代表取締役社長)
  • 二級建築施工管理技士
  • 宅地建物取引士
  • 測量士補
  • 賃貸不動産経営管理士

愛媛大学在学中に愛媛県で株式会社アート不動産を創業する。現在アート不動産では、アパマンショップ(賃貸)を5店舗、SUMiTAS(売買)を2店舗・管理センターを1店舗、売買店舗を2店舗運営。吉田 宏の詳細プロフィールはこちら