不動産を相続すると、固定資産税や管理費などの維持費がかかるため、これから相続が発生する方の中には「不動産は相続放棄できるのか」と、不安に思ってる方も多いでしょう。
そこで本記事では、相続放棄に関する次の内容を説明していきます。
- 不動産と相続放棄の関係性
- 相続放棄するデメリット
- 相続放棄の流れ
- 相続放棄をするか悩んだときの判断基準
不動産の相続放棄でお悩みの方はぜひ、参考にしてください。
目次
不動産は相続放棄できる?
不動産を相続したくないときには「相続放棄」をすれば、不動産を相続する義務はなくなります。この章では、不動産と相続放棄の関係性と、相続放棄の期限、相続方法を説明していきます。
不動産は相続放棄できる!
前述したように、不動産を相続したくないときには「相続放棄」をすれば、不動産を相続する必要はなくなります。たとえ昔暮らしていた実家であっても、親名義の不動産であれば相続放棄は可能です。
もし相続人全員が相続放棄した場合は、“民法239条第2項”で定められているように「所有者のない不動産は、国庫に帰属する」ことになり、不動産は国に継承されます。ただし国に帰属する手続きにはいくつか注意点がありますので、後ほど詳しく説明します。
相続放棄の期限は3か月
相続放棄は思い立ったときにできるものではなく、手続きの期限は「相続を知ったときから3か月以内」と定められています。もし期限以内に手続きをしないと、単純承認したとみなされるため注意が必要です。
相続方法には
- 「単純承認」
- 「限定承認」
- 「相続放棄」
の3種類あり、それぞれ相続方法が異なります。単純承認はプラスの財産とマイナスの財産を無条件ですべて相続する方法で、3種類の中でもっとも一般的な相続方法です。
限定承認はプラスの財産の範囲内で、マイナスの財産を相続する方法です。プラスの財産額を超える分のマイナス財産は、相続する必要がありません。そしてプラスの財産もマイナスの財産も関係なく、すべての財産を相続しないことを相続放棄といいます。
不動産を相続放棄するデメリットと注意点
「相続したくない財産があるのなら、相続放棄すればいい」と考える方が多いのですが、相続放棄のデメリットを考えずに手続きすると、後悔してしまうこともあります。
相続放棄の申し立てをする前に、相続放棄のデメリットを頭に入れておきましょう。
他の財産も相続できなくなる
相続放棄の申し立てをすると、不動産だけではなく現金や有価証券などの他の財産もすべて放棄することになります。不動産を放棄したいのなら他の財産を失うことになり、他の財産を失いたくないのなら、不動産を相続しなければなりません。
「不動産は放棄するけど、現金は相続する」というように、相続する財産と放棄する財産を選ぶことはできません。なお、相続放棄前後に勝手に財産を処分したり移動したりすると、単純承認したとみなされ相続放棄できなくなる点にも注意が必要です。
1度相続放棄すると撤回できない
相続放棄の申し立て後は、相続放棄を撤回できない点に注意が必要です。たとえ相続放棄後に多額の財産が見つかったとしても、相続放棄を撤回して単純承認に切り替えることはできません。
錯誤・詐欺・強迫によって相続放棄をした場合などには、相続放棄の申述を取り消せる可能性がありますが、非常に稀なケースです。
財産の見落としを防ぐためには、司法書士や行政書士、弁護士などに相続財産調査を依頼し、財産内容をすべて確認しておきましょう。
相続放棄後も一定期間は保存義務が残る場合がある
相続放棄の申し立てが受理されると、不動産は自分とは無関係のものとなり、固定資産税の納税義務や保存(管理)義務がなくなりますが、例外もあるため注意が必要です。
相続放棄時に不動産を占有していた場合は、相続人全員が相続放棄すると、後順位の相続人か相続財産清算人に引き渡すまで保存義務が続きます。実家暮らしをしていて親が亡くなった場合も、占有していたとみなされます。
保存義務の放棄によってトラブルが起こったときには、損害賠償を請求される恐れもあるため、相続放棄後に保存義務が生じそうであるか、必ず確認しておきましょう。
不動産を相続放棄する流れ
単純承認に特別な手続きは不要ですが、相続放棄をする際には書類集めや家庭裁判所への申し立てが必要です。ここでは、不動産を相続放棄する流れを見ていきましょう。
- 財産調査を行う
- 必要書類を集める
- 相続放棄の申し立てをする
手順1:財産調査を行う
本当に相続放棄をした方がいいのか検討するために、財産調査を行います。相続人自身で調べることもできますが、すべての財産を確実に把握するためには司法書士や行政書士、弁護士などの専門家への依頼をおすすめします。
手順2:必要書類を集める
財産を把握したうえで相続放棄を決めたら、申し立てに必要な書類を集めます。
相続放棄申述書、被相続人の住民票または戸籍謄本、相続放棄をする相続人の戸籍謄本、収入印紙などが必要です。
必要書類は被相続人と申述人の関係性によって若干異なるため、詳しくは最高裁判所のウェブサイトで確認してください。
最高裁判所「相続の放棄の申述」:https://www.courts.go.jp/saiban/syurui/syurui_kazi/kazi_06_13/index.html
手順3:相続放棄の申し立てをする
必要書類を用意したら、被相続人の死亡時の住所を管轄する家庭裁判所に相続放棄を申し立てます。遠方に住んでいるなどの理由で窓口での提出が難しい方は、郵送も可能です。
相続放棄申述書の提出から1週間前後で、照会書が届きます。
照会書には、
- 相続開始を知った日
- 相続放棄が自分の意思であるか
- 被相続人の財産を処分していないか
など、相続放棄に関する質問がいくつか記載されているので、回答して返送します。
回答内容に問題なければ、回答の返送から1週間〜10日ほどで「相続放棄申述受理通知書」が届き、相続放棄の手続きは完了です。
不動産を相続放棄するか悩んだときの判断基準
相続放棄のデメリットでお伝えしたように、相続放棄すると不動産だけではなく他の財産も放棄することになり、申し立てをしてしまうと撤回できません。相続と放棄のどちらがいいのか悩んだときには、どのように判断すればいいのでしょうか。
最後に、相続放棄で悩んだときの判断基準をお伝えします。
プラスとマイナスの財産の割合
不動産以外の財産もあるのなら、プラスとマイナスの財産でどちらが多いのか、割合を確認してみましょう。不動産の維持費も含めてプラスの財産の方が多いのなら、相続放棄よりも単純承認や限定承認の方がメリットが大きい可能性があります。
不動産だけで考えるのではなく、他の財産とのバランスも加味したうえで相続放棄をした方がいいのか検討しましょう。
不動産を活用できそうであるか
不動産は、必ずしもマイナスの遺産となるとは限りません。家屋が老朽化していたり、過疎地域だったりしても、適切に活用すれば収益を生み出せる可能性があります。
最近注目されている、空き家の活用方法を見てみましょう。
- リノベーション可能物件として貸し出す
- 古民家カフェにする
- レンタルスペースとして貸し出す
最近では都会から地方への移住者も増えており、古民家カフェなどの“田舎需要”が増えています。また、家屋を解体して更地にすれば、駐車場経営や太陽光発電なども可能です。
「不動産活用ができそうであるか」という点も踏まえて、相続と放棄のどちらがメリットがあるのか考えてみてください。不動産会社に相談すれば、活用方法のアドバイスをもらえるでしょう。
不動産の相続放棄でお悩みの方はSUMiTASにご相談を!
不動産を相続したくないときには、相続放棄すれば相続義務がなくなります。しかし相続放棄すると、他の財産も相続できなくなる点に注意が必要です。プラスとマイナスの財産を比較したうえで、相続と放棄のどちらのメリットが大きいのかを考えましょう。
また、空き家や土地にはさまざまな活用方法があり、収益を生み出せる可能性もあります。不動産の相続放棄で悩んでいる方は、相続放棄を申し立てる前に不動産会社に相談してみましょう。
SUMiTAS(スミタス)では不動産相続の相談はもちろん、空き家や土地活用の提案も可能ですので、お気軽にご相談ください。