遺産分割を進めていくにあたり、「遺産分割協議書は必要なのか?」「遺産分割協議書はどうやって作成すれば良いのか?」という疑問や不安を持つ方は少なくありません。
遺産分割協議書は必須書類ではありませんが、遺産分割協議書を作成すれば相続トラブルを防ぐことができる場合もあるため、特別な理由がないのであれば作成することをおすすめします。
とはいっても、相続の手続きは難しく、遺産協議書の知識をあまり持っておらず、作成方法も分からないという方が多いでしょう。
この記事では、遺産分割協議書の基本的な知識や作成方法について詳しく解説するので、遺産分割や遺産分割協議書について悩んでいる方はぜひ参考にしてください。
目次
遺産分割協議書とは?遺産分割協議書の目的・使用用途
遺産分割協議書とは、被相続人の遺産の分割方法について相続人全員で話し合って、遺産分割協議の内容をまとめた書類のことです。話し合いによって合意した相続財産の分割方法を記載するため、将来的な相続トラブルを防ぐ効果があります。
例えば、遺産分割協議で一度は全員が納得して合意したのちに、「実は分割方法に納得していなかった」などの異論を唱えられた場合、遺産分割協議書を作成していれば、トラブルの解決が長引く事態を避けることが可能です。
このため、相続トラブルを防ぐためにも、法定相続分以外で遺産分割する場合は、「遺産分割協議書」を作成することをおすすめします。
なお、遺産分割協議書を作成することは義務ではありませんが、法務局から提出を求められる場合もあります。具体的には、法定相続分と違った割合で不動産を遺産分割して相続登記する場合に提出を求められるので、該当する方は、あらかじめ作成しておくようにしましょう。
遺産分割協議書が必要なケース
遺産分割協議書が必要なケースは、以下になります。
- 遺産を法定相続分で相続しない場合
- 法定相続しない状態で相続財産に不動産が含まれている場合
- 被相続人の預貯金を引き出す場合
- 相続税を申告する場合
- 将来の相続トラブルを防ぎたい場合
遺産分割協議書が不要なケース
一方、遺産分割協議書が必要ないケースは、以下になります。
- 相続人が1人だけしかいない場合
- 残されていた遺言書のとおりに相続財産を分割する場合
- 法定相続分のとおりに相続財産を分割する場合
- 相続財産が現金・預金だけの場合
上記のケースでも、相続財産についてもめる可能性がある場合は、遺産分割協議を行って遺産分割協議書を作成することをおすすめします。
遺産分割協議書の作成期限
2022年現在、遺産分割協議には法律上の期限がないため、相続を開始してから10年以上経過していたとしても協議を行うことが可能です。それに伴って、遺産分割協議書にも、法律上の作成期限は現時点で設けられていません。
しかし民法改正により、2023年4月から特別受益や寄与分を主張できる期間に、相続開始から10年以内という制限が設けられることが決まりました。遺産分割が行われないまま時間が経過してしまうことで、所有者がわからないという土地が多発したためです。
出典:所有者不明土地の解消に向けた民事基本法制の見直し:法務省
民法改正後も遺産分割協議の期限が設けられませんが、実質的に10年以内に行う必要性が出てきています。
とはいえ、そもそも遺産分割協議書を作成していないために起こる問題が出てくる可能性があるため、できるだけ早く遺産分割協議を行い、遺産分割協議書を作成すべきです。特に上記で説明した「遺産分割協議が必要なケース」に該当する場合はなるべく早く作成しましょう。
遺産分割協議書の効力
遺産分割協議書は、被相続人が亡くなられた時点までさかのぼって効力が生じます。つまり、遺産分割協議書を作成した日ではなく、相続開始時を起点として、被相続人から直接承継して相続人個々の財産になったと扱われるのです。
例えば、遺産分割により相続登記する際の登記の原因となる日付は、遺産分割協議書が作成された日ではなく、相続開始日になります。なお、遺産分割協議書は前述したように、相続トラブルを防ぐことや相続した不動産を相続登記するのに必要な書類です。
しかし、作成するのには遺産分割協議で相続人全員の同意を得る必要があり、特に不動産を相続した場合には、分割方法でもめて合意できないケースも少なくありません。
SUMiTAS(スミタス)では、税務の専門家との連携によって、相続した不動産の分割方法や遺産分割協議書、相続登記についてのご相談にも対応しているので、遺産分割協議書などについて不安を抱えている方は、一度相談してみてください。
遺産分割協議書の作成方法・流れ
遺産分割協議書を作成するための流れは下記の通りです。
まずは相続人を確定させます。被相続人の戸籍謄本を取り寄せることで、法定相続人となりうる人を確認することが可能です。
その次に、被相続人が所有している財産・金額を確定させます。その際、遺言書がないかどうかを改めて確認してください。遺言書がある場合は遺言書にしたがって財産を分与させます。遺言書がない場合遺産分割協議に進みます。
相続金額が確定したら遺産分割について協議します。
遺産分割協議では、被相続人の財産をどのように分配するかを話し合います。多くの場合、遺産相続の協議には時間がかかります。相続人が少ない場合は問題ありませんが、相続人が多いとさまざまな意見や要求が出てくるので、遺産分割協議には長い時間がかかることを事前に想定しておくべきです。
遺産分割協議で被相続人の財産の分割方法が確定したら、遺産分割協議書を作成します。遺産分割協議書を作成し、署名・捺印した時点で効力が生じますので、進め方や取り扱いには十分に注意してください。
遺産分割協議書に必要な項目
遺産分割協議書を作成する際に必要な項目は、以下の通りです。
- 被相続人の名前と死亡日
- 相続人全員が遺産分割内容に合意した旨
- 各相続人が承継する相続財産・債務の内容
- 遺産分割協議書作成後に判明した財産・債務の取り扱い
- 協議成立年月日
- 相続人の署名・捺印
次の章からは、遺産分割協議書を作成する際に必要な項目について例文を交えながら、詳しく解説します。
なお、法務局のホームページに遺産分割協議書の記載例がありますので、詳細を確認したい方は法務局も参考にしてください。
被相続人の名前と死亡日
必要な項目として、「被相続人の名前と死亡日」が挙げられます。
例えば、以下のような内容です。
被相続人
相続 太郎(令和◯年◯月◯日 死亡)
最後の住所地 東京都渋谷区◯◯丁目◯番地◯
本籍地 東京都渋谷区◯◯丁目◯番地◯
登記上の住所 東京都渋谷区◯◯丁目◯番地◯
上記のように住民票や、戸籍謄本などを参考にしながら、記載をするようにしてください。
相続人全員が遺産分割内容に合意した旨
「相続人全員が遺産分割内容に合意した旨」の内容も記載します。
例えば、以下の内容です。
令和◯年◯月◯日、東京都渋谷区◯◯丁目◯番地◯
相続太郎の死亡によって開始した相続の共同相続人である相続花子、相続一郎および相続温子は、本日その相続財産について、相続人全員で遺産分割協議を行い、次のとおりに遺産分割の協議が成立した。
上記のように、相続人全員の名前を記載して、遺産分割協議の内容に合意したことを記載する必要があります。
各相続人が承継する相続財産・債務の内容
各相続人が承継する相続財産・債務の内容についても、記載する必要があります。
例えば、以下のような内容です。
1.相続花子
(1)土地 東京都渋谷区◯◯丁目◯番地◯号
宅地 ◯◯◯.◯◯平方メートル
(2) 建物 同所同番地
木造瓦葺2階建て/床面積1階部分 ◯平方メートル 2階部分◯平方メートル
2.相続一郎
(1)預貯金
東京都東京支店 普通預金 口座番号01234567 口座名義人:相続 太郎のすべて
3.相続温子
(1)有価証券
東京証券東京支店 口座番号1234 保護預かりの以下の有価証券
東京株式会社 株式1,000株・渋谷株式会社 株式1,500株
上記のように、相続人それぞれが相続する財産の内容を、詳細に記載します。
遺産分割協議書作成後に判明した財産・債務の取り扱い
遺産分割協議書作成後に判明した財産・債務の取り扱いについても、記載する必要があります。
例えば、以下のような内容です。
すべての相続人は、上記に記載した以外の被相続人の財産または債務があった場合、相続花子が相続し、取得することに異議がないものとする。
上記の一文を入れることで、後日財産や債務が見つかった際のトラブルにならないようにしておくことが重要です。
協議成立年月日
協議成立年月日について、以下のように記載する必要があります。
令和◯年◯月◯日
当然ですが、上記の日付は遺産分割協議を行った日を記載します。
相続人の署名・捺印
最後に相続人全員の署名・捺印を記載します。
例えば、以下のような内容です。
東京都渋谷区◯◯丁目◯番地◯号 相続花子 実印
東京都新宿区◯◯丁目◯番地◯号 相続一郎 実印
京都市左京区◯◯丁目◯番地◯号 相続温子 実印
捺印をする印鑑は、実印で行う必要があるので、間違えないようにしましょう。
遺産分割協議書で注意すべきこと
遺産分割協議書で注意すべきことは、以下の内容です。
- 後に見つかった遺産の扱いを記載しておく
- 人数分の遺産分割協議書を用意する
- 相続人全員が実印で捺印する
一つ目は後に見つかった遺産の扱いを記載しておくことです。遺産分割協議が終了した後に、被相続人の財産が新たに発見されることが少なくありません。
新たに見つかった財産は、原則、新たに見つかった財産のみを相続人全員で決めることとなりますが、再度遺産分割協議を行うことは大変です。遺産分割協議時に、事前に新しく発見した財産を「誰にどのような条件でどれくらい相続するか」を決め、遺産分割協議書に記しておけば、新しく見つかった財産に対して再度遺産分割協議を行う必要がなくなります。
二つ目に注意すべきことは、人数分の遺産分割協議書を用意することです。遺産分割協議書の部数に決まりはありませんが、特に事情がない場合は人数分用意しましょう。遺産の移動において銀行等の手続きを行う際に、1通の遺産分割協議書のみでやりとりを行うのは不便です。なお、必ず全ての遺産分割協議書に、相続人全員で署名・捺印を行うようにしてください。
三つ目に注意すべきことは、相続人全員が実印で捺印することです。仮に署名や捺印していない相続人がいると、遺産分割協議に相続人全員が参加した証明にならないため、遺産分割が無効になってしまう可能性が高くなります。ただし、相続開始後に認知された相続人の場合は、遺産分割協議に該当する相続人が参加していなくても無効にならず、後に金銭で調整できます。
相続を放棄したい場合は?
相続財産の相続を放棄したい場合は、被相続人の最後の住所地にある家庭裁判所に申し出ます。放棄の申し出は、相続があったことを知ってから「3か月以内」に行う必要があるため、注意するようにしましょう。
なお、相続放棄を申し出るには、以下の書類が必要です。
- 相続放棄申述書
- 戸籍謄本など被相続人と相続放棄する人の関係を示す書類
上記の書類を準備して家庭裁判所に申し出るようにしてください。
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遺産分割の手続きは複雑なうえに必要な書類も多く、トラブルが生じることも少なくありません。また、ご自身で全てやろうとすると、時間的・精神的コストが大きくかかることも事実です。
これらを専門家に任せることで、適切なアドバイスとともに、書類の収集や作成の事務手続きを全て行ってくれるので、時間的な負担も精神的な負担も軽減できます。
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