中古マンションを売ろうと決めたとき、多くの方がまず相場を調べます。それは自然な順番ですが、マンションの場合、相場より先に確かめたほうがよいものが2つあります。
ひとつは、同じ建物の他の住戸が売りに出ていないかです。
当社の10秒査定に、2025年7月からの13か月で寄せられたマンションの査定依頼のうち、建物名まで入力されたものは18,722件ありました。この依頼を建物ごとにまとめて調べたところ、6,362棟のうち1,535棟、およそ4棟に1棟で、90日以内に同じ建物の別の住戸からも査定依頼が入っていました。
同じ棟の別の住戸が、同じ時期に動いている。これはマンションでは珍しいことではありません。
もうひとつは、管理情報です。修繕積立金がいくらで、これから上がる予定があるか、大規模修繕はいつか、管理費・修繕積立金の滞納が建物全体にないか。買主はこれを書面で確認してから契約します。ここが弱いと、価格を下げても決まらないことがあります。
この記事では、この2つを軸に、中古マンションの売却をどう進めるかを説明します。
なお、この記事は借主がいない住戸を売る場合を前提にしています(自分が住んでいる場合と、空室の場合)。賃貸に出したまま売る場合(オーナーチェンジ)は、室内を見せられない、賃貸借契約と敷金を買主へ引き継ぐなど、進め方が変わります。
- 4棟に1棟は、同じ建物の別の住戸も同じ時期に動いている(当社実測)
- 買主が見るのは相場より管理情報。修繕積立金・大規模修繕・管理費等の滞納は書面で伝わる
- 築年数別の㎡単価は、築25〜29年でおよそ半分(国交省データの当社集計)
- ただしこれは断面の比較で、「買った値段の半分になる」という意味ではない
目次
同じ棟の別の住戸が、同じ時期に動いている

戸建てや土地と違い、マンションには同じ建物の中に、条件の近い物件が何十戸もあります。買主から見れば、同じ棟の別の部屋はもっとも直接の比較対象です。立地も、建物としての管理状態も同じだからです。違うのは階数・向き・間取りのタイプと、室内の状態です。
冒頭の数字をもう一度置きます。当社の査定依頼を建物ごとに集計すると、6,362棟のうち1,535棟(24.1%)で、90日以内に同じ建物の別の住戸からも依頼が入っていました。集計の条件は次のとおりです。
- 対象は2025年7月1日から2026年7月28日までの10秒査定の利用履歴のうち、物件種別がマンション(居住用)で建物名まで入力された18,722件(投資用として登録されたマンションは含まない)
- 同じ住戸からの再依頼を数えないよう、専有面積と所在階が同じものは1住戸として扱った
- 1棟から20件を超える依頼があった87棟は、実際の所有者とは考えにくいため除いた
- 依頼した人までは特定していないため、同じ方が同じ建物に複数の住戸を持っている場合も含まれる
期間を30日にすると22.9%、1年にすると28.3%になります。数え方を変えても、おおよそ4棟に1棟という結果は動きませんでした。
同じ棟に売り出しが出ていたら
まず調べます。SUUMOやアットホームなどのポータルサイトで、マンション名で検索すれば分かります。売り出し中の住戸があれば、価格・階数・広さ・向き・リフォームの有無が出ています。
そのうえで、値下げの前に見る点が3つあります。
1. 条件が本当に同じか
階数、向き、角部屋かどうか、リフォーム済みか、眺望。同じ棟でも、これらが違えば価格差は当然つきます。相手が高層階の角部屋で、自分が低層階の中住戸なら、同じ価格では並べません。逆もまた同じです。
2. 相手がどのくらい前から出ているか
出てすぐの物件と、半年動いていない物件では意味が違います。長く残っている物件があるなら、その価格が市場に受け入れられていないという情報です。同じ価格帯に自分も並べる必要はありません。
3. 時期をずらせるか
急いでいないなら、相手が決まるのを待つ選択があります。同じ棟から2戸が同時に出ていると、買主は両方を見比べて値引き交渉の材料にします。1戸ずつなら、その比較が起きません。
見る点のほかに、見せ方で差をつける方法もあります。買主に向けてリフォーム後のプランや費用の目安を示し、住んだあとの姿を想像しやすくすることで、同じ棟の売り出しと差別化した例が当社にもあります。室内の状態で見劣りするときの、値下げの前の一手です。
値下げは、この3つを見たうえで最後に検討する手です。先に下げると、同じ棟の相手も下げて、両方が下がるだけになります。
売り出し価格の決め方はマンション売却の相場の記事で詳しく扱っています。
買主が見ているのは、管理情報

マンションの売買では、契約の前に重要事項調査報告書という書面を管理会社から取り寄せます。ここに、その建物の管理の状態が書かれています。買主は、この書面を見て判断します。
国土交通省の「令和5年度マンション総合調査」から、押さえておきたい数字を挙げます。全国の4,270管理組合への調査です。
修繕積立金は、上がる前提になっている建物が半分近い
現在の修繕積立金の積立方式は、均等積立方式が 40.5%、段階増額積立方式が 47.1%となっている
段階増額積立方式は、将来の値上げが計画に組み込まれている方式です。買主が重要事項調査報告書を見れば、これから月々いくらになるかが分かります。「今は月1万円です」と伝えても、書面に将来の増額が書かれていれば、そちらで判断されます。
計画に対して積立が足りていない建物が3分の1以上ある
現在の積立額が計画に比べて不足しているマンションが 36.6%となっており、不足がある割合が 20%超のマンションが 11.7%になっている
積立が足りなければ、大規模修繕のときに一時金を集めるか、借入をするか、工事を先送りします。買主にとっては、買った後の出費に直結する話です。
3割の建物に、3か月以上の管理費・修繕積立金の滞納がある
管理費・修繕積立金を3ヶ月以上滞納している住戸があるマンションは 30.1%である。また、完成年次別では、築年数が古いマンションの方が割合は高くなる傾向である
ここでいう滞納は、区分所有者が管理組合に払う管理費と修繕積立金の滞納です。借主が払う家賃のことではありません。
読み方にも注意してください。これは「滞納している住戸が1戸でもあるマンション」の割合であって、所有者の3割が滞納しているという意味ではありません。
そのうえで、滞納には性質の違う2つがあります。
ひとつは、建物全体の滞納です。管理組合にお金が入ってきているかどうかの話で、売主に支払いの義務はありません。ただし買主は、管理が回っている建物かどうかをここで見ます。売れやすさと価格には効きます。
もうひとつは、自分の住戸の滞納です。心当たりがなければ読み飛ばして構いませんが、あると売却に直接効きます。区分所有法8条により、管理費や修繕積立金の未払いは、部屋を買った人に対しても請求できるためです(売主の支払い義務が消えるわけではありません)。買主も負担を負う立場になりますので、滞納があるまま売ろうとすると、その分を価格から引かれるか、決済時に精算することになります。査定の前に管理会社へ残高を確認してください。
重要事項調査報告書は、売る側も先に見ておく
この書面は管理会社に依頼して取得します。実務では不動産会社が代わりに取り寄せることが多いのですが、売主自身が売り出しの前に中身を見ておくと、話が早くなります。
発行の費用と日数は、管理組合や管理会社によって異なります。当社の担当者がこれまでに取得したなかでは、費用は高いもので4万4,000円でした。取得までの日数も、1週間以内のこともあれば1か月近くかかることもあり、2週間ほどが目安です。売り出しの前に中身を見ておくなら、早めに依頼しておくと安心です。
見るのは5点です。
| 見る項目 | 何が分かるか |
|---|---|
| 修繕積立金の残高 | 大規模修繕に足りているか |
| 値上げの予定 | 段階増額なら、いつ・いくらになるか |
| 大規模修繕の時期 | 直前なら一時金の有無、直後なら安心材料 |
| 管理費等の滞納(建物全体) | 管理組合にどれだけ滞納があるか。管理が回っているかの材料 |
| 管理費等の滞納(自分の住戸) | あれば決済で精算する。心当たりがなければ確認だけでよい |
滞納が2つに分かれているのは、書面がそう作られているためです。国土交通省の「マンション標準管理委託契約書」は、管理会社が開示する項目として、売主本人が負担する管理費等(滞納があればその額)と、管理組合全体の管理費等滞納額を別々に挙げています。
大規模修繕の直後は、工事の内容と資金計画が良好であれば、売却の安心材料になります。工事が済んでいることを説明できるからです。ただし、工事費の借入の返済や積立金の不足、次の修繕に向けた値上げが予定されていることもあるので、総会の資料で確かめておきます。逆に直前であれば、一時金の徴収予定があるかどうかを確認しておく必要があります。
なお、築40年以上の分譲マンションは2024年末で約148万戸あり、国土交通省は10年後に約2.0倍、20年後に約3.3倍になると見込んでいます。管理情報が売却を左右する場面は、これから増えていきます。
実測: 築年数で㎡単価はどう変わるか

国土交通省が公表している不動産の取引価格・成約価格の情報から、中古マンション173,208件(2025年第1四半期から2026年第1四半期)を当社で集計しました。
取引価格を専有面積で割って㎡単価を出し、市区町村ごとに「築0〜4年の中央値」を1.00として比を取り、その中央値を並べたものが上の図です。
| 築年帯 | 築0〜4年を1.00としたときの比 |
|---|---|
| 築0〜4年 | 1.00 |
| 築5〜9年 | 0.88 |
| 築10〜14年 | 0.78 |
| 築15〜19年 | 0.66 |
| 築20〜24年 | 0.58 |
| 築25〜29年 | 0.50 |
| 築30〜39年 | 0.36 |
| 築40〜49年 | 0.28 |
| 築50年以上 | 0.21 |
築25年から29年のあたりで、ちょうど半分になります。
市区町村ごとに比を取っているのは、そうしないと結果が狂うためです。全国の数字をそのまま並べると、築30〜39年の㎡単価が築40〜49年を下回るという逆転が起きます。築40〜49年のマンションは都心部に多く残っているため、地価の高い地域の物件が多く混じるからです。同じ市区町村の中で比べれば、この逆転は消えます。
この数字は断面の比較である
これは同じ時点で、築年数の違う別々の物件を比べたものです。1つの住戸が年を追ってどう値下がりするかを示したものではありません。
「3,000万円で買ったマンションは、築25年で1,500万円になる」という読み方は誤りです。正しくは、いま同じ市区町村で取引されている築0〜4年の㎡単価と比べて、築25〜29年の物件は約半分、という意味です。
買った当時の価格と、いま取引されている築0〜4年の価格は違います。近年のマンション価格は上昇しているため、購入価格に0.50を掛けても実勢にはなりません。ご自身の住戸がいくらかは、同じ建物・同じエリアの直近の成約を見た査定でしか分かりません。
地域別の相場や価格の推移はマンション売却の相場の記事で扱っています。築古の物件については築年数が古いマンションの記事を参考にしてください。
売却の流れと、かかる期間
流れは戸建てや土地と大きくは変わりません。
| 段階 | やること |
|---|---|
| 1. 準備 | 相場を調べる/管理情報を確認する/必要書類をそろえる |
| 2. 査定 | 複数社に依頼して比べる |
| 3. 媒介契約 | 依頼する会社と契約を結ぶ |
| 4. 売り出し | 価格を決めて公開/内覧に対応する |
| 5. 契約 | 買主と売買契約を結ぶ |
| 6. 引き渡し | 決済・登記・鍵の引き渡し |
期間の目安は、レインズ(不動産流通機構)が公表している2025年の統計が参考になります。首都圏の中古マンションで、登録から成約までの平均は82.5日でした。中古戸建住宅の100.9日より短く、種別の中では早いほうです。ただしこれは登録から成約までで、準備と引き渡しを含めた全体はもっと長くなります。
売却全体の流れは不動産売却の流れの記事、期間の考え方は売却期間の記事、媒介契約の選び方は媒介契約の記事にまとめています。内覧の準備は内覧の記事を参考にしてください。
マンションならではの必要書類
一般的な売却書類に加えて、マンションでは管理に関する書類が必要になります。
| 書類 | 入手先 |
|---|---|
| 重要事項調査報告書 | 管理会社(発行手数料がかかるのが一般的で、金額は管理会社により異なる。取得まで2週間ほどが目安。不動産会社が代行することが多い) |
| 管理規約・使用細則 | 手元になければ管理会社 |
| 長期修繕計画 | 管理会社・管理組合 |
| 総会議事録 | 管理組合 |
| マンションのパンフレット・間取り図 | 購入時の資料 |
登記済権利証や身分証明書など、種別を問わず必要な書類は売却に必要な書類の記事に一覧があります。
費用と手取り
売却にかかる費用は、種別によって仕組みが変わるわけではありません。
| 項目 | 目安 |
|---|---|
| 仲介手数料(法律上の上限) | 3,000万円で売却した場合105.6万円(売買価格の3%+6万円に消費税) |
| 印紙税 | 3,000万円の契約書で1万円(2027年3月31日までの軽減) |
| 抵当権抹消の登録免許税 | 不動産1個につき1,000円(マンションは建物1個と敷地の筆数で数える。敷地が1筆なら2,000円) |
マンションで気をつけるのは、管理費と修繕積立金を引き渡しの日を基準に精算する点です。法律で決まった方法ではなく契約によりますが、引き渡し月の分を売主と買主で日割りにするのが一般的です。
手取りの計算と費用の全体像は不動産売却の費用の記事にまとめています。税金は、売って利益が出た場合に譲渡所得への課税があります。マイホームを売った場合の3,000万円の特別控除など、要件に当てはまれば使える特例がありますが、適用の可否は個別の事情で変わります。税額の計算と特例の判断は税務署または税理士へご相談ください。
査定で迷ったとき、売れないとき
査定額は会社によって差が出ます。高い金額を出した会社が、その金額で売ってくれるわけではありません。査定はあくまで見立てで、実際の成約価格は市場が決めます。
複数社の査定を比べるときは、金額だけでなくその金額の根拠を聞いてください。同じ建物の直近の成約事例を挙げられるか、階数や向きの差をどう見ているか。ここが説明できる会社は、売り出し後の対応も見通しが立ちます。査定の見方はマンション査定の記事、査定額が高すぎる場合の考え方は査定額が高すぎるときの記事、一括査定の注意点は査定のデメリットの記事で解説しています。
売り出しても動かない場合は、価格・売り方・時期のどれを変えるかを決めます。急ぐなら買取という選択もあります。買取は市場価格より低くなるのが一般的ですが、買主を探す期間が要りません。マンション買取の記事、売れないときの記事を参考にしてください。
避けたい進め方はマンション売却の注意点の記事にまとめています。
中古マンションの売却でよくある質問
3,000万円で買ったマンションはいくらで売れますか?
購入価格から一律の割合を掛けて求めることはできません。当社が国交省のデータを集計したところ、同じ市区町村の築0〜4年と比べた㎡単価は築25〜29年でおよそ半分でしたが、これはいま取引されている築0〜4年と比べた場合の値です。買った当時の価格に掛ける数字ではありません。近年はマンション価格が上昇しているため、購入時より高く売れる例もあります。同じ建物・同じエリアの直近の成約を見た査定で確かめてください。
中古マンションを売るとき、まず何をすればいいですか?
管理情報の確認からで構いません。修繕積立金の残高、値上げの予定、大規模修繕の時期、管理費等の滞納(建物全体)、管理費等の滞納(自分の住戸)の5点です。ここでいう滞納は家賃ではなく、区分所有者が管理組合に払う管理費と修繕積立金のことです。管理会社に問い合わせれば分かります。これを把握してから査定に進むと、査定の根拠も理解しやすくなります。
同じマンションの別の部屋が売りに出ています。値下げすべきですか?
すぐに下げる必要はありません。まず、階数・向き・広さ・リフォームの有無が本当に同じかを確認してください。条件が違えば価格差はつきます。相手が長く売れ残っているなら、その価格が受け入れられていないという情報です。先に下げると、相手も下げて両方が下がります。
修繕積立金が値上がりする予定です。売却に不利ですか?
不利になり得ますが、隠すことはできません。買主は重要事項調査報告書で必ず確認します。国交省の調査では、修繕積立金の積立方式は段階増額積立方式が47.1%を占めており、値上げが計画に入っていること自体は珍しくありません。値上げの時期と金額を把握したうえで、価格に織り込んで売り出すのが現実的です。
マンションは築何年まで売れますか?
年数で売れなくなる線はありません。ただし、築年数が進むほど売れにくくなる可能性は上がり、価格や建物の状態によって結果は変わります。当社の査定依頼でも築50年以上のマンションが6.1%あり、売却を検討する人自体は珍しくありません(査定依頼の数であって、成約の数ではありません)。築年数が上がると価格は下がりますが、立地と管理状態が良ければ買い手がつく余地はあります。建て替えや大規模修繕の計画がある場合は、その情報も含めて伝えることになります。
まとめ: 相場を調べる前に、同じ棟と管理情報を確かめる
中古マンションの売却で、相場を調べるのは間違いではありません。ただ、その前に確かめておくと結果が変わるものが2つあります。
ひとつは同じ建物の他の住戸です。当社の査定データでは、4棟に1棟で同じ建物の別の住戸からも同じ時期に依頼が入っていました。売り出しが重なっているなら、値下げの前に条件の違いと相手の経過期間を見てください。
もうひとつは管理情報です。修繕積立金の残高、値上げの予定、大規模修繕の時期、そして管理費・修繕積立金の滞納(建物全体の分と、自分の住戸の分)。買主はこれを書面で確認して判断します。売主が先に把握しておけば、聞かれてから慌てることがなくなります。
築年数別の㎡単価は、同じ市区町村の築0〜4年と比べて築25〜29年でおよそ半分でした。ただしこれは断面の比較で、買った値段に掛ける数字ではありません。ご自身の住戸がいくらかは、同じ建物とエリアの直近の成約を見た査定で確かめるのが確実です。
当社の10秒査定は、匿名で、電話番号の入力もなくお使いいただけます。管理情報を調べる前の、おおよその見当をつけるところからで構いません。
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