家や土地などの不動産は生前贈与と相続のどちらがいい?税金やメリット、状況から解説

家や土地などの不動産は生前贈与と相続のどちらがいい?税金やメリット、状況から解説

監修者
天池 篤哉
天池 篤哉(株式会社SUMiTAS 取締役)
  • 宅地建物取引士
  • 管理業務主任者
  • 賃貸不動産経営管理士

親族の相続財産に家や土地などの不動産がある場合、生前贈与と相続のどちらがいいのかと悩んでいる方も多いでしょう。不動産の生前贈与と相続のどちらが適しているのかは、不動産の状況によって異なります。

そこで本記事では、

  • 生前贈与と相続の違いとメリット
  • 生前贈与が適しているケース
  • 相続が適しているケース

を解説していきます。

不動産を生前贈与してもらうか、相続するか悩んでいる方は参考にしてください。

不動産の生前贈与と相続の違い

生前贈与と相続には、次のような違いがあります。

  • 不動産を引き継ぐタイミング
  • 税金
  • 基礎控除や特例制度

生前贈与と相続の大きな違いは“財産を引き継ぐタイミング”です。生前贈与では財産を贈る側(贈与者)が生きているうちに財産を引き継ぎ、相続では財産の保有者(被相続人)が亡くなってから財産を引き継ぎます。

不動産の生前贈与と相続の違い
不動産の生前贈与と相続の違い

そして相続には基礎控除や特例制度がありますが、生前贈与には基礎控除がありません。不動産を引き継ぐタイミングによって、税金や控除も異なるため注意が必要です。

生前贈与と相続の違いを説明した記事と相続税に関する記事がありますので、生前贈与と相続の違いを詳しく知りたい方は、こちらも参考にしてください。

不動産を生前贈与してもらうメリット

生前贈与と相続のどちらがいいのか悩んだときには、両者のメリットから比較してみましょう。まずは、不動産を生前贈与してもらうメリットをお伝えします。

不動産を確実に引き継げる

生前贈与の大きなメリットは、不動産を確実に引き継げることです。生前贈与は贈与者(財産を贈る人)と受贈者(財産を受け取る人)の双方の合意で贈与が成り立ち、特定の相手に確実に財産を贈ることができます。

しかし相続では、遺言書がない限りは法定相続人の法定相続分に合わせて財産が振り分けられます。そのため不動産を単独名義で相続したいのなら、代償分割や他の法定相続人に相続放棄をしてもらうなど、相続人間での話し合いが必須です。

他の親族(後の相続人)の意思は関係なく、確実に不動産を引き継げるのは、生前贈与を選択する大きなメリットと言えるでしょう。

不動産から得られる収益が自分に入ってくる

不動産が収益物件になっている場合、贈与後に不動産から得られる収益はすべて自分(受贈者)の収入になります。不動産が利益を生んでいるのなら、生前贈与を受けることで収入を増やせる点がメリットです。

また、不動産から得た収益が積み重なると、相続時に現金の財産が増える可能性がありますが、生前贈与を受けておけば相続時に不動産の収益が加算されることはありません。収益物件の生前贈与には、現金財産が増えないという税制面でのメリットもあります。

不動産を相続するメリット

続いて、不動産を相続するメリットを見ていきましょう。不動産を相続するメリットは、主に“税金面”でのメリットです。

基礎控除内であれば相続税がかからない

相続には「基礎控除」があり、遺産総額が基礎控除内であれば相続税の納税義務が生じることはありません。まずは、基礎控除の計算式を見てみましょう。

  • 3,000万円 +(600万円 × 法定相続人)

たとえば、被相続人に配偶者と子が2人いた場合「3,000万円 +(600万円 × 3人)=4,800万円」となり、遺産総額が4,800万円以内であれば相続税はかかりません。

国税庁が調査した「令和3年分 相続税の申告事績の概要」によると、令和3年度の相続税の課税割合はわずか9.3%と、相続税の納税義務が生じたのは10人に約1人の割合でした。データから見ても、基礎控除によって多くの相続で相続税が非課税になっていることがわかります。

参考:国税庁「令和3年分 相続税の申告事績の概要」https://www.nta.go.jp/information/release/kokuzeicho/2022/sozoku_shinkoku/pdf/sozoku_shinkoku.pdf

贈与税よりも税金が低くなることが多い

財産総額が同じ場合、贈与税よりも相続税の方が税金が低くなります。先ほどもお伝えしたように、相続税には基礎控除があるからです。

生前贈与で節税対策をするためには「暦年贈与」が有効ですが、不動産の暦年贈与では登記費用や司法書士への報酬によって、節税効果が薄れてしまいます。

基礎控除や特例制度によって税負担を抑えられるのは、相続のメリットと言えそうです。

不動産を生前贈与してもらう方がいいケース

不動産の生前贈与と相続のメリットをお伝えしてきましたが、生前贈与の方がいいのは具体的にどのような状況のときなのでしょうか。生前贈与が適している2つのケースをお伝えします。

不動産が収益物件になっている場合

生前贈与のメリットでお伝えしたように、不動産が収益物件になっている場合は、相続よりも生前贈与の方が贈与の利点を活かせる可能性があります。

生前贈与のメリットで説明した、

  • 贈与後に収益物件から得られた利益は受贈者のものになる
  • 間接的に相続税を節税できる

これらの2つは、「収入の柱を増やしたい」「他の財産によって相続税が発生する可能性がある」という方にとって、メリットとなるからです。

相続時精算課税制度

さらに最大2,500万円までの贈与税を相続税に精算する「相続時精算課税制度」を利用すれば、贈与を受けたときに贈与税がかからなくなる可能性があります。

不動産が収益物件になっているのなら、生前贈与を検討してみてください。

不動産の評価額が上がる可能性がある場合

将来的に地価が上昇しそうな不動産があるのなら、相続よりも生前贈与にした方が税金を抑えられる可能性があります。相続税を決める要因となる不動産の相続税評価額は、相続発生時の基準で算出されるからです。

相続時に地価が上昇していると、相続税評価額の計算に用いる路線価も上がるため、相続税が発生したり、税額が高くなったりする可能性があります。

地価の急上昇は稀なケースではありますが、もし不動産の所在地付近で都市開発が行われる予定がある、またはすでに開発が始まっているのなら、生前贈与することで税金を抑えられるかもしれません。

不動産を相続した方がいいケース

続いて、不動産を相続した方がいいケースを見ていきましょう。

不動産を含む財産総額が基礎控除より低い場合

贈与で非課税になるのは年間110万円までなので、110万円を超える額に対しては贈与税が発生します。さらに定期的に土地を贈与していると、暦年贈与ではなく「定期贈与」とみなされて、贈与税が課税される可能性もあります。

そのため、不動産を含む財産総額が基礎控除を下回るのならば、贈与よりも相続が適しているでしょう。ただし、不動産の相続は分割が難しく、相続登記を行う際にも他の相続人の協力が必要なので、非協力的な相続人がいると相続が難航する可能性もあります。

そのため、相続人の関係性によっては、贈与者と受贈者の双方の合意で手続きが進む贈与の方が適しているケースもあるでしょう。相続人との関係性も考慮したうえで、相続と贈与のどちらがいいのか検討してみてください。

特例を利用して節税効果を得たい場合

相続時には基礎控除以外に「小規模宅地等の特例」といって、自宅や事業用の相続税評価額が最大80%減額される制度があります。

「小規模宅地等の特例」は、居住用の土地は330㎡までの部分が80%減額される、節税性の高い制度です。330㎡を超えると特例が使えなくなるのではなく、330㎡を超える部分に対しては本則税率が課税されます。

小規模宅地等の特例の対象となるのは、次のような人です。

  • 被相続人の配偶者
  • 被相続人の同居親族
  • 被相続人の別居親族(家なき子)

配偶者は無条件で対象となり、同居親族については同居期間の制約はなく、亡くなる前に同居しておけば対象となります。また、被相続人に配偶者や同居相続人がいないなど、一定の要件を満たせば同居していない親族でも特例を利用できます。

この制度を利用して節税効果を得たいのであれば、贈与ではなく相続を待ちましょう。

不動産の生前贈与と相続でお悩みの方はSUMiTASにご相談を!

生前贈与と相続のどちらがいいのかは、財産総額や不動産の状況などによって異なるため、一概にどちらがいいとは言い切れません。税金面だけではなく、他の親族(相続人)との関係性なども考慮しなければならないのが、相続と生前贈与の難しい部分です。

生前贈与と相続のどちらがいいのかお悩みの方や、取得した不動産を売却や活用する予定の方は、相続・贈与の相談実績が豊富なSUMiTAS(スミタス)にご相談ください。

お客さまの悩みや不動産の状況に合わせて、どのような方法が適しているのかアドバイスいたします。

監修者
天池 篤哉
天池 篤哉(株式会社SUMiTAS 取締役)
  • 宅地建物取引士
  • 管理業務主任者
  • 賃貸不動産経営管理士

2005年から不動産賃貸仲介営業で不動産業のキャリアをスタート。
物件マニアで、『従事している期間毎日10件内見する』という裏目標を立て、6年間実施。札幌市内の賃貸物件約18,000件を内見した。
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