「不動産を売る」という同じ行動でも、個人と法人では課せられる税金が異なります。法人が不動産を売却したときにかかるのは、法人税や法人住民税などの税金です。
本記事では、法人が不動産を売却したときにかかる税金の種類や税率、節税方法をお伝えしていきます。事業において税金を知ることはとても大切なので、ぜひ参考にしてください。
- 法人の不動産売却には複数の税金が課される。
- 節税対策には設備投資、役員報酬調整、新規不動産購入がある。
- 適切な節税で課税所得を減らし、経営を維持する。
目次
法人が不動産を売却したときにかかる税金
給与所得者や個人事業主が不動産売却で得た利益は「譲渡所得」として、所得税と住民税に課税されます。これに対して、株式会社や合同会社などの法人に課せられるのは「法人税」です。
法人税にはいくつか種類があり、不動産を売却したときに課税される代表的な税金は、次の4つの税金です。
- 法人税
- 法人住民税
- 法人事業税
- 消費税、印紙税など
ここでは、法人が不動産を売却したときにかかる税金と計算方法を説明していきます。
1. 法人税
法人が納める税金は、事業の収益である「益金」から、利益を減少させる「損金」を差し引いた「所得」に対して課税されます。つまり益金から損金を差し引いた結果、所得が0円になれば法人税は課税されません。
法人税の計算式と税率
法人税は、以下の計算式で求められます。
課税所得(益金-損金)× 税率
税率は法人の種類や資本金によって決まっており、令和4年4月1日以降に事業開始した普通法人の税率は以下のとおりです。
税率 | ||
---|---|---|
資本金1億円以下の法人 | 年800万円以下の部分 | 15% (適用除外事業者は19%) |
年800万円超の部分 | 23.20% | |
上記以外の普通法人 | 23.20% |
参考:国税庁「No.5759 法人税の税率」
https://www.nta.go.jp/taxes/shiraberu/taxanswer/hojin/5759.htm
普通法人以外の法人税に関しては、国税庁のウェブサイトでご確認ください。
上記の表をもとに、資本金1億円以下の法人の法人税を計算してみましょう。
500万円 × 15% = 75万円
課税所得が500万円の法人が納める法人税は、75万円になります。では、不動産を売却したことで、課税所得が1,000万円になったと仮定して計算してみましょう。
(800万円 × 15%)+(200万円 × 23,20%)=166.4万円
800万円を超える部分は税率が上がるため、法人税は一気に跳ね上がります。
2. 法人住民税
個人が納めるのは住民税ですが、法人が納めるのは「法人住民税」です。法人住民税は地方自治体に納める地方税にあたります。法人住民税には都道府県に納める「都道府県民税」と、市町村に納める「市町村民税」の2種類あり、その合計が法人住民税になります。
法人税と大きく異なるのは、所得が赤字の年も納税義務があることです。
法人住民税の計算式と税率
法人住民税は、次の計算式で求めます。
法人住民税 = 法人税割 + 均等割
「法人税割」は法人税に、自治体が定める税率をかけて計算します。ここでは、東京都で“令和元年10月1日以後に開始する事業年度”における法人税割を見てみましょう。
区分 | 標準税率 | 超過税率 |
---|---|---|
23区内に事務所等がある場合 | 7.0%(道府県民税相当分1.0+市町村民税相当分6.0) | 10.4%(道府県民税相当分2.0+市町村民税相当分8.4) |
市町村に事務所等がある場合 | 1.0% | 2.0% |
参考:東京都主税局「法人事業税・法人都民税」
https://www.tax.metro.tokyo.lg.jp/kazei/houjinji.html
「均等割」は、資本金や従業員の人数に応じて税額が決まります。税率は法人税割と同じように自治体によって異なるため、詳しくは事業所が所在する自治体で確認してください。
ここでは、東京都の特別区内のみに主たる事務所等を有する法人のうち、資本金が1億円以下の場合の均等割の金額を見てみましょう。
資本金 | 従業員50人以下 | 従業員50人超 |
---|---|---|
1,000万円以下 | 70,000円 | 14万円 |
1,000万円超1億円以下 | 18万円 | 20万円 |
参考:東京都主税局「均等割額の計算に関する明細書(第6号様式別表4の3)記載の手引」
https://www.tax.metro.tokyo.lg.jp/shomei/houjin/6-4-3b.pdf
法人税額の例で算出した75万円と166.4万円をもとに、資本金1,000万円以下の法人住民税を計算してみましょう。
(75万円 × 7.0%) +7万円 = 122,500円 (166.4万円 × 7.0%) +7万円 = 186,480円
法人税が高くなることで、法人住民税も高くなることがわかります。
3. 法人事業税
「法人事業税」は、事業によって得た利益に対して課税される地方税です。法人税との違いは、納税先です。法人税が国に納めるのに対して、法人事業税は地方自治体に納めます。法人税と同じく、所得が0円や赤字の年度は納税義務はありません。
法人事業税の計算式と税率
法人事業税は、次の計算式で求めます。
法人税額 = 課税所得 × 法人事業税率
法人事業税も法人住民税と同じように自治体ごとに異なるため、ここでは東京都における“令和4年4月1日以後に開始する事業年度”の普通法人の法人事業税率を見てみましょう。
普通法人における事業税の区分 | 標準課税 | 超過課税 |
---|---|---|
年400万円以下の所得 | 3.5 | 3.75 |
年400万円を超え年800万円以下の所得 | 5.3 | 5.665 |
年800万円を超える所得 | 7.0 | 7.48 |
参考:東京都主税局「法人事業税・法人都民税」
https://www.tax.metro.tokyo.lg.jp/kazei/houjinji.html
課税所得500万円、1,000万円と仮定して、それぞれ計算してみましょう。
(400万円 × 3.5%)+(100万円 × 5.3%)=19.3万円
(400万円 × 3.5%)+(400万円 × 5.3%)+(200万円 × 7.0%)=49.2万円
税率は課税所得に応じて段階的に高くなるため、課税所得が2倍になると法人事業税は2倍以上の金額になります。
4. その他の税金
法人が不動産を売却したときにかかる可能性があるのは、次の2つの税金です。
- 印紙税
- 消費税
「印紙税」は、売却価格に応じて段階的に税額が定められている税金です。不動産売買契約書に貼り付けて納付します。
「消費税」が課税されるのは、次の2つの項目に当てはまるときです。
- 建物を売却したとき
- 課税事業者になっているとき
課税事業者になっている場合は消費税が課せられますが、免税事業者の場合は非課税となります。課税事業者になっているのであれば、消費税を加味して売り出し価格を決めましょう。
法人が不動産を売却するときの節税方法
ここまでの計算例でわかるように、課税所得が増えると税負担も大きくなります。とくに段階的に税率が決まっている法人税や法人事業税の負担が大きく増えるため、経営を成り立たせるためには節税対策が必要です。
最後に、法人が不動産を売却するときの節税方法をお伝えします。
設備投資をする
事業に必要な設備は経費として計上できるので、設備投資をすれば所得を減らすことができます。パソコンやコピー機のようなOA機器の購入、事業所のリフォーム、社用車の買い替えなどを検討しましょう。
事業に必要な設備を購入する際には、「中小企業投資促進税制」の利用がおすすめです。対象設備を一定額以上購入したときに、経費や控除などの優遇が受けられます。詳しくは、「国税庁のウェブサイト」をご確認ください。
利益を減らす
法人では、役員へ支払うお金が損金として認められています。そのため、一時的に役員報酬を増やしたり、役員の退職金や賞与を支払ったりすれば、損金を増やして所得を減らすことができます。
役員報酬や賞与を支払う場合は、個人の収入が増えることで社会保険料が増える可能性がある点に注意しましょう。
新しく不動産を購入する
不動産を売却した年度に、新たに不動産を購入すれば課税所得を減らすことができます。取得費だけではなく仲介手数料も減価償却費として経費計上できるので、節税対策として有効です。
節税対策で不動産を購入するのなら、築年数が経った木造物件がおすすめです。木造物件は短期間で取得費を減価償却できるため、高い節税効果が得られます。主な減価償却資産の耐用年数表
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不動産を売却することで利益が出ると、その年の課税所得が増え、税金も高くなります。法人税は累進課税よりも上限の税率が低く設定されているといっても、経営を成り立たせるために節税対策は必要です。
今回紹介したように、節税対策にはいろいろな方法がありますが、中でも高い節税対策が得られるのは「不動産の購入」です。SUMiTAS(スミタス)では不動産の売却はもちろん、節税対策としての物件購入のアドバイスもいたします。
売却から購入までワンストップで対応することも可能ですので、法人で不動産の売却をお考えの方は、お気軽にご相談ください。