「家を売りませんか」のチラシはなぜ届くのか。宅建業者が教える読み方と、連絡した後に起きること

「家を売りませんか」のチラシはなぜ届くのか。宅建業者が教える読み方と、連絡した後に起きること

監修者
吉田 宏
吉田 宏(株式会社SUMiTAS 代表取締役社長)
  • 二級建築施工管理技士
  • 宅地建物取引士
  • 測量士補
  • 賃貸不動産経営管理士

郵便受けに「家を売りませんか」「このマンションを探している方がいます」というチラシが入っていて、なぜ自分の家に届くのか気味が悪い。検索でも「なぜ怖いのか」という質問が上位に出るほど、不安に感じる方は多いようです。先に結論を書きます。チラシが届くのは、あなたの家が狙われているからではありません。売り物件を探している会社が多いからです。

名前入りで届くのは、登記の情報が誰でも取れる仕組みになっているからで、法令の範囲内です。チラシは無視して構いませんし、連絡した後でも断れます。断ったあとに勧誘を続けることは、宅地建物取引業法で禁止されています。

この記事では、チラシの文言から何が読めるか、連絡した後に何が起きてどこで断れるか、本当に売りたいときにチラシの会社をどう扱えばよいかを、宅建業者の立場で条文とあわせて整理します。

この記事の要点
  • チラシは無視してよい。連絡した後でも断れ、断ったあとの勧誘は法令で禁止されている
  • 名前入りで届くのは、登記事項証明書を誰でも取れるから。狙われているのではない
  • チラシは免許番号・商号・所在地を確かめる。取引態様が書いてあれば、何を提案されるかが読める
  • 媒介契約にクーリングオフはない。査定のその日に契約しない

不動産売却のチラシは無視してよい。断ったあとの勧誘は禁止されている

チラシに返事をする義務はありません。放っておいても不利益はなく、「連絡しないと何か起きる」ということもありません。

連絡した後に断ることもできます。宅地建物取引業法は、業者が契約の勧誘をするときの禁止行為を定めており、その中に「契約を締結しない旨の意思(勧誘を引き続き受けることを希望しない旨の意思を含む)を表示したにもかかわらず、勧誘を継続すること」が明記されています(宅地建物取引業法47条の2第3項・同法施行規則16条の11第1号ニ)。「もう結構です」と伝えた後の電話や訪問は、この規定に触れます。同じ条文は、迷惑な時間の電話や訪問、名乗らずに勧誘することも禁じています。

だからこそ、チラシは「情報源のひとつ」として落ち着いて読めばよいものです。次の章から、その読み方を順に説明します。

チラシの会社はなぜ自分の名前と住所を知っているのか

名前入りの封書やハガキが届くと、「どこで個人情報が漏れたのか」と不安になります。多くの場合、出どころは不動産の登記情報です。

不動産登記法は、「何人も、登記官に対し、手数料を納付して、登記記録に記録されている事項の全部又は一部を証明した書面の交付を請求することができる」と定めています(119条1項)。登記事項証明書には所有者の氏名と住所が載っており、マンションなら建物の名称も分かります。つまり、住所と建物が分かれば、誰でも所有者の名前まで辿れます。不動産会社はこの仕組みで所有者を調べ、名前入りの案内を送っています。

不安の正体はここにあります。漏えいではなく、公開情報です。なお、配偶者からの暴力などで住所を知られると危険がある方は、申し出により住所に代わる事項を記載してもらう制度があります(同条6項)。該当する方は法務局へご相談ください。

チラシが配られる理由は「売り物件を預かりたい」

全国の宅建業者数と、首都圏で1年に売りに出た物件数の規模感

不動産会社が売却のチラシを配る理由は、突き詰めると1つです。売り物件を預かる会社になりたいからです。買いたい人は探せば見つかりますが、売りたい人は自分から動くまで分かりません。だから「売る気になる前の人」に向けて、先に案内を届けておきます。

規模感を数字で示します。国土交通省の調査では、2025年3月末の宅地建物取引業者は全国で132,291業者です。一方、東日本レインズが公表している2025年の首都圏の新規登録件数は、中古マンションが185,762件、中古戸建てが77,395件、土地(100〜200㎡)が44,110件でした。範囲が全国と首都圏で違い、すべての業者が売主を探しているわけでもないため、この2つの数字から「足りない」と証明することはできません。探している会社が多数あり、1年に市場へ出てくる物件には限りがあるという構図を押さえるための、規模感の参考値です。

チラシが一斉に、しかも複数の会社から届くのは、このためです。あなたの家に特別な事情があるのではなく、同じエリアの多くの所有者に同じような案内が届いています。

配る側の実際も書いておきます。当社の店舗でも、売却の相談の問い合わせを受けるために、紙のチラシを配っているところがあります。たとえば九州のある3つの市に月1回配っている店舗では、問い合わせが月15件前後あります。北海道のある市に月1回配っている店舗では、月1件前後です。配る範囲の広さが違うので単純には比べられませんが、同じ月1回でも反響は地域によって大きく変わります。

不動産売却チラシの4類型と目的

届くチラシは、目的で4つに分かれます。

類型よくある文言目的
売り求む「売却物件を募集しています」「無料査定」売主を見つけて媒介契約を結びたい
購入希望者がいます「この地域で探している方がいます」「○○マンションを希望する方がいます」同上。具体的な買主を示して連絡を促す
買取・即現金化「最短7日で現金化」「仲介手数料不要」会社が直接買い取りたい。買取の仕組みは不動産買取の流れの記事で解説しています
物件広告の裏面利用表は売り物件、裏に「売却相談も受付中」買主集めと売主集めを1枚で兼ねる

どの類型も、それ自体は合法な営業活動です。問題になるのは、文言の中身が事実と違う場合と、連絡した後の勧誘の仕方です。

チラシで確かめたい表示。無ければ連絡を避ける

チラシで確かめる7か所。文言4つは根拠を聞き、表示3つは有無を見る

宅建業者としてまず見るのは、表示の3点です。

  • 免許番号: 宅地建物取引業を営むには免許が必要です(宅地建物取引業法3条)。「国土交通大臣(○)第○号」「○○県知事(○)第○号」の形で、括弧内の数字は更新回数です。国土交通省の「建設業者・宅建業者等企業情報検索システム」で、免許番号から会社の実在と処分歴を確認できます
  • 商号と所在地: 会社名と住所がないチラシは、そもそも誰が出しているか分かりません
  • 取引態様: 物件を特定した売買の広告では、自ら当事者になるのか、代理か、媒介かの別を明示する義務があります(同法34条)。所有者に売却を募る「売り求む」型のチラシがこれに当たるかは条文だけでは一律に言い切れませんが、「媒介」「仲介」「買主として直接購入」のどれなのかが書かれていなければ、何を提案されるのかが分かりません

免許番号か商号・所在地が欠けているチラシは、出している会社を確かめる手がかりがありません。そのチラシへの連絡は避けてください。取引態様は、書いてあれば提案の中身が読める項目です。

加えて、広告の内容そのものにも規制があります。業者は、価格や利便性などについて著しく事実に相違する表示や、実際のものよりも著しく優良・有利であると誤認させる表示をしてはなりません(同法32条)。「相場より高く売れます」と断言する表示は、この規定に照らして疑ってよいものです。

チラシで注意する文言の読み方

表示が揃っていても、文言の読み方で差がつきます。当社が実務で「ここは確かめる」と考える4つを挙げます。

「高値で売れました」「相場の○○%で成約」

成約事例が載っている場合、時期・面積・階数・築年が自宅と揃っているかを見てください。条件が違う物件の成約価格は参考になりません。また「成約価格」なのか「売り出し価格」なのかも確かめてください。売り出し価格は売主の希望額で、そのまま売れたとは限りません。

「購入希望者がいます」

本当に希望者がいる場合もあれば、過去の問い合わせをもとにした一般的な表現の場合もあります。確かめる質問は、希望者の条件・予算・購入時期の3つです。特定の物件を見る前の段階では予算や時期が固まっていないこともあるので、答えられないからといって架空とは限りませんし、答えられるからといって実在の証明にもなりません。それでも、具体的な答えが返ってくるかどうかで、その文言にどの程度の重みがあるかは読み取れます。「買付証明書(購入申込書)はあるか」と聞くのも同じ目的です。

「○○マンション限定」「○月まで」「あなただけに」

限定や期限の表現は、判断を急がせるためのものです。急ぐ理由は売主側にはありません。業者には、契約するかどうかを判断するために必要な時間を与えることを正当な理由なく拒むことが禁じられています(施行規則16条の11第1号ロ)。

役所からのお知らせに似せたデザイン

「重要」「お知らせ」と大きく書かれ、公的な通知に見える体裁のチラシがあります。開封率を上げるための設計で、中身は売却の案内です。差出人の会社名と免許番号を確かめれば、公的な文書でないことはすぐに分かります。

チラシの会社に連絡した後に起きること。どこで断れるか

チラシの会社に連絡した後の6段階と、断れる地点

チラシの番号に電話をすると、通常は次の順に進みます。契約を結ぶ前なら、どの段階でも断れます。

  1. 机上査定: 物件の情報を聞き取り、資料上の概算を伝えられます。ここで「訪問して詳しく」と提案されます
  2. 訪問査定: 担当者が物件を見に来ます。見るだけで契約の義務は生じません
  3. 査定書の提示: 査定額が示されます。業者は媒介契約で価額の意見を述べるとき、その根拠を明らかにしなければなりません(宅地建物取引業法34条の2第2項)。「この金額の根拠は何ですか」と聞いて、成約事例や計算の説明が返ってこなければ、その査定は判断材料になりません。査定額が高すぎるときの見方は不動産査定が高すぎるときの記事で扱っています
  4. 媒介契約の勧誘: 「うちに任せてください」と契約を勧められます。ここが最初の分岐です。媒介契約にクーリングオフはありません。宅地建物取引業法のクーリングオフ(37条の2)は、業者が売主となる売買で買主を保護する制度で、媒介契約には適用されません。訪問販売のクーリングオフを定める特定商取引法も、宅地建物取引業者が行う取引には適用されません(26条1項8号ロ)。訪問査定のその日に契約しないでください。媒介契約の種類と選び方は媒介契約の記事にまとめています
  5. 売り出し: 契約後、価格を決めて広告に出ます。専任媒介契約・専属専任媒介契約の有効期間は3か月を超えられません(34条の2第3項)。3か月ごとに続けるかどうかを判断できます
  6. 値下げの提案: 売れないと値下げを提案されます。根拠のある提案かどうかは、内覧の有無と反応で見分けます。根拠のない値下げが続くなら、契約の更新をしない選択があります

要するに、契約上の義務が生じるのは「媒介契約に署名したとき」です。署名後も、契約の類型や約款に沿った解除や更新の拒否はできますが、クーリングオフのような無条件の解除はできません。それまでは、査定を受けても、訪問を受けても、断る自由があります。

不動産買取のチラシの読み方

「最短7日で現金化」「仲介手数料不要」と書かれたチラシは、会社が直接買い取る「買取」の案内です。買取は早くて確実ですが、価格は仲介の相場より低くなります。理由は、買い取った会社がリフォームして再び売るからで、その原価構造は不動産買取の流れの記事で分解しています。

買取のチラシで確かめるのは、その価格が「買取価格」なのか「査定額の上限」なのかです。「最大○○万円」のような表示は上限の例示であることが多く、実際の提示は現地確認の後に決まります。買取を検討するなら、仲介の査定も同時に取って、差額を見てから決めてください。

チラシの断り方と、勧誘が止まらないときの相談先

断り方は簡単です。「売る予定はありません。今後の連絡は不要です」と伝えるだけで足ります。理由を説明する必要はありません。

この意思表示のあとに勧誘が続く場合、それは施行規則16条の11第1号ニが禁じる行為です。加えて、迷惑を覚えさせるような時間の電話や訪問(同ホ)、長時間の勧誘で困惑させること(同ヘ)も禁止されています。止まらないときは、次の順で動いてください。

  1. 日時・会社名・担当者名・内容を記録する
  2. その会社の免許を出している行政庁に相談する: 免許番号が「国土交通大臣」なら地方整備局、「○○県知事」ならその都道府県の宅建業の担当課です
  3. 業界団体の相談窓口や消費生活センター(局番なしの188)に相談する

多くの場合、1の記録を取ったうえで「行政庁に相談します」と伝えるだけで止まります。

本当に売りたいときは、チラシの会社を「比較対象の1社」にする

チラシがきっかけで売却を考え始めたなら、それ自体は悪いことではありません。避けたいのは、チラシの会社1社だけで決めてしまうことです。

順番は次のとおりです。

  1. 相場を自分で確かめる: 国土交通省の取引価格情報や路線価から見当をつけられます(調べ方は路線価と実勢価格の記事にまとめています)。当社の10秒査定も、匿名で、電話番号の入力なしに概算を確かめる手段として使えます。チラシの価格が相場とかけ離れていないかは、これで分かります
  2. 複数社に査定を依頼する: チラシの会社を含めて3社程度に頼み、査定額の根拠を聞き比べます。進め方は複数社への査定依頼の記事を参考にしてください
  3. 媒介契約の種類を決めてから結ぶ: 一般媒介か専任媒介かで、その後の動き方が変わります。会社選びの基準は不動産売却はどこがいいかの記事で扱っています

売却で避けるべきことの全体像は家の売却でやってはいけないことの記事に、売却の全体の流れは不動産売却の流れの記事にまとめています。

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不動産売却のチラシでよくある質問

自宅に家を売りませんかというチラシが入るのはなぜ怖いのですか?

怖さの正体は2つあります。1つは「なぜ自分の家を知っているのか」で、これは登記事項証明書を誰でも取得できる仕組みによるものです(不動産登記法119条)。もう1つは「連絡したら断れなくなるのでは」という不安で、これは媒介契約に署名するまでは断れること、断った後の勧誘は法令で禁止されていること(宅地建物取引業法47条の2・施行規則16条の11)で解消できます。チラシは同じエリアの所有者に広く届いており、あなたの家だけが狙われているわけではありません。

不動産屋が一番嫌がることは何ですか?

売主が複数社を比較することと、囲い込みを確かめられることです。専任媒介契約・専属専任媒介契約では業者にレインズへの登録義務があり(宅地建物取引業法34条の2第5項)、登録証明書で確認できます。売り出し後の登録状況(公開中・書面による購入申込みあり・売主都合で一時紹介停止中など)も確認でき、囲い込みの疑いを調べる材料になります。ただし、他社からの問い合わせを実際に断ったかどうかまでは、この表示だけでは分かりません。詳しくは不動産囲い込みの記事で扱っています。比較されることは、まっとうな会社にとっては嫌なことではありません。

不動産の三大タブーは?

売主にとっての三大タブーは、査定のその日に媒介契約を結ぶこと、1社の査定だけで価格を決めること、根拠を聞かずに値下げに応じることの3つです。法令や業界団体が定めた定義があるわけではありませんが、当社が実務で「これをすると損をする」と考える3つで、この記事で書いてきた内容そのものです。

不動産売却のチラシは無視していいですか?

無視して構いません。返事をする義務はなく、放置しても不利益はありません。連絡した後でも、契約前なら断れます。

名前入りの不動産売却の手紙やハガキも同じですか?

同じです。登記事項証明書から所有者の氏名と住所が分かるため、名前入りの案内が送れます。チラシより個別性が高く見えますが、仕組みは変わりません。

チラシの「購入希望者がいます」は、本当にいることがありますか?

あります。連絡したときに希望者の条件・予算・購入時期を聞けば、話の具体性は読み取れます。ただし、特定の物件を見る前の段階では予算や時期が固まっていないこともあり、答えられないから架空、答えられるから実在、と決めつけることはできません。買付証明書の有無を聞くのも、具体性を確かめるための質問です。

チラシの会社から査定を受けた後、断ってもよいですか?

断れます。査定は契約ではありません。「売る予定はありません。今後の連絡は不要です」と伝えれば足り、それでも勧誘が続くなら免許行政庁や消費生活センターに相談できます。断り方の実例は査定の断り方の記事にまとめています。

まとめ: チラシは情報源、決めるのは比較のあと

「家を売りませんか」のチラシが届くのは、売り物件を探している会社が多いからで、あなたの家が狙われているからではありません。名前入りで届くのは登記情報が公開されているためで、漏えいではありません。

チラシは無視して構いません。連絡した後でも、媒介契約に署名するまでは断れます。署名すると契約上の義務が生じ、クーリングオフのような無条件の解除はできません。断ったあとの勧誘は宅地建物取引業法で禁止されており、続くなら免許行政庁や消費生活センターに相談できます。

読むときは、免許番号と商号・所在地があるかをまず見て、取引態様から何を提案されるかを読み、「購入希望者がいます」「高値で売れました」「限定」「役所風」の4つの文言は根拠を聞いてから判断してください。

本当に売りたいなら、チラシの会社を比較対象の1社にして、相場を自分で確かめ、複数社の査定を並べてから決めてください。当社の10秒査定は、匿名で、電話番号の入力もなくお使いいただけます。

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監修者
吉田 宏
吉田 宏(株式会社SUMiTAS 代表取締役社長)
  • 二級建築施工管理技士
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愛媛大学在学中に愛媛県で株式会社アート不動産を創業する。現在アート不動産では、アパマンショップ(賃貸)を5店舗、SUMiTAS(売買)を2店舗・管理センターを1店舗、売買店舗を2店舗運営。吉田 宏の詳細プロフィールはこちら