自宅を売却して資金を調達する方法に、「リースバック」があります。
“リース”という言葉は車やスマートフォンでよく耳にするようになりましたが、住宅の場合、どのような仕組みなのか気になりますよね。
そこで本記事では、リースバックの仕組みやメリット、注意点を説明します。リースバックが合っている人・合っていない人についてもお伝えしますので、ぜひ参考にしてください。
目次
リースバックとは?
リースバックは「セール・アンド・リースバック」とも呼ばれ、所有物の売却後に“所有していたものを借りる(リースする)”金融取引のことです。
まずは、リースバックの仕組みを解説します。
住宅の売却後に家賃を払って住み続けること
リースバックは、自宅の売却後に家賃を支払いながら売却した住宅に住み続ける取引方法です。
自宅の売却後は所有権がリースバック業者に移りますが、リースバック業者と賃貸借契約を結べば、家賃を支払いながら売却した住宅で暮らせます。
- 「住宅ローンが厳しい」
- 「老後資金が足りない」
- 「まとまった資金が必要」
といった状況に直面しつつも「引っ越しはしたくない」と考えている人に適している取引方法です。
また、この取引では定められた期間内であれば売主が住宅を再購入することが可能で、資金調達と住まいの維持を両立できます。
ただし再購入や賃貸契約には、さまざまな条件があるため注意が必要です。契約後に「イメージと違った」と後悔しないために、リースバックの注意点や契約内容をしっかり理解してから契約しましょう。
「買い戻し」とは元の契約と同等の内容で費用の返還をし、契約を解除させることです。リースバックの場合は、契約解除ではなく新たな売買契約となるので、「再購入(再売買)」という言い方が適切です。両者を区別せずに「買い戻し」と表現しているケースも多く見受けられるので、微妙に意味が異なることを覚えておきましょう。
売却との違い
リースバックと仲介売却や買取の大きな違いは、自宅の売却後に引っ越しが必要か、そのまま住み続けられるかという点です。仲介売却や買取では引っ越しが必要ですが、リースバックはそのまま家に住み続けられます。
また、リースバックは売却活動も不要です。リースバック業者が自宅を買い取ってくれるので、提示された価格に納得がいけば最短1週間程度で自宅を現金化できます。
リバースモーゲージとの違い
リースバックと混同しやすい取引に「リバースモーゲージ」がありますが、リバースモーゲージは、“自宅を担保にして融資を受ける”高齢者向けのローン商品です。
「家に住み続けられる」という点はリースバックと同じですが、リースバックでは所有権がリースバック業者に移るのに対して、リバースモーゲージの所有者は変わらず自分(借入人)のままです。
また、リバースモーゲージは“融資”になるので、住宅ローンと同じように審査があり、誰でも利用できるわけではありません。借入人の生存中は融資を受けた利息分だけを返済し、借入人の死亡後に自宅を売却して残りのローンを一括返済します。
似ているようで、仕組みがまったく異なる取引なので、それぞれの違いをしっかり理解しておきましょう。
リースバックを利用するメリット
仲介売却や買取と比べて、リースバックにはどのようなメリットがあるのか気になりますよね。ここでは、リースバックを利用する4つのメリットをご紹介します。
リースバックのメリット① 住宅を売却しても住み続けられる
リースバックを利用する最大のメリットは、売却後も家に住み続けられることです。
仲介売却や買取では、引き渡しまでに必ず新居を探して引っ越しをしなければなりません。一方でリースバックは、最低でも2〜3年はそのまま家に住み続けられます。
すぐに現金が必要であるものの「子供が卒業するまで」「転勤日になるまで」など、決まった期間はそのまま家に住みたい人にはメリットが大きいでしょう。
また、近隣住民に自宅を売却した事実を知られることがないので、これまで通りの生活を送れます。
リースバックのメリット② 住宅をすぐに現金化できる
リースバックは、提示された金額に納得すればすぐに自宅の売却が可能です。
通常の売却では、買い手を見つけるまでに3か月以上かかることもありますが、業者相手のリースバックはスムーズに取引を進められます。
住宅ローンの返済が厳しくなった人や急な資金が必要になった人にとって、すぐに自宅を現金化できるのは大きなメリットと言えるでしょう。
リースバックのメリット③ 住宅のランニングコストが不要になる
自宅を所有している間は固定資産税や修繕費などの維持費がかかりますが、リースバック後はこれらの費用をリースバック業者が負担します。
マンションの場合は管理費も不要になるため、住宅にかかるランニングコストを大きく抑えられるでしょう。ただし、修繕費は契約内容によっては借主負担になることがあるため、事前確認が必要です。修繕費は意外と大きな金額になるので、必ず確認しておきましょう。
リースバックのメリット④ 再購入できる
仲介売却や買取では売却した物件を再購入することはできませんが、リースバックは一定期間内ならリースバックした自宅を再購入できます。そのため、再購入を前提として、リースバックを利用する方も多いです。
ただし再購入する場合は、売却時の価格よりも高くなるケースがほとんどなので、売却で得たお金に追加資金を足して購入することになります。
また、家賃の滞納や契約違反などをしてしまうと、再購入の権利を失う可能性がある点にも注意が必要です。リースバックした住宅の再購入を検討している方は、居住中に契約違反をしないよう気を付けましょう。
リースバックを利用するときの注意点
リースバックには多くのメリットがありますが、リースバックで後悔しないためには注意点にこそ目を向けておく必要があります。
ここからはリースバックの注意点を説明しますので、しっかり頭に入れておきましょう。
売却価格が市場相場よりも低い
リースバックを利用する際に必ず知っておきたい注意点は、売却価格が市場相場の60〜80%になることです。住宅ローンの完済を目的としている場合は、売却価格がローンの残債額を下回り、完済できない可能性が出てきます。売却金でローンを完済できないときには、預金から補填しなければなりません。
ローン返済の猶予期間や資金調達までの期間に余裕があり、より多くの現金が必要な方は、リースバックよりも仲介売却のほうが適している場合もあります。
住み続けるための家賃が必要になる
リースバックのメリットに自宅の売却後も住み続けられる点を挙げましたが、その場合は家賃の支払いが必要です。リースバック業者と賃貸契約を結ぶため、住み続けるために家賃は欠かせません。
そしてリースバックでは、家賃が必要な点だけではなく「家賃の決まり方」にも注意が必要です。リースバックの家賃は周辺の家賃相場ではなく、買取価格と期待利回りによって決まります。
計算式にすると
家賃 = 買取価格 × 期待利回り(6〜8%)÷ 12か月
となり、自宅を2,000万円で売却した場合の家賃は10〜13万円ほどになります。
ランニングコストが不要になる点を加味しても、周辺の家賃相場と比較すると割高になる場合がほとんどです。「売却後も住み続けられる」というメリットだけではなく、ローンの返済金額や周辺の家賃相場よりも高くなる可能性がある点に納得したうえで検討しましょう。
いつまでも住めるとは限らない
リースバック契約には、「定期借家契約」と「普通借家契約」の2つの契約形態があります。
定期借家契約は契約期間が設定される契約方法で、原則として期間の延長はできません。契約期間は2〜3年の間で設けられることが多く、契約期間終了後に住居を続けるためには再契約が必要です。
「それなら再契約をしながら住み続ければいい」と考えるかもしれませんが、再契約では契約内容が変更され、家賃が大幅に上がる可能性があります。定期借家契約で住み続けられる期間は2〜3年、長く住み続けるためには普通借家契約、または再購入が必要である点を覚えておきましょう。
リースバックした家には何年住める?家に住み続けるためにできることは?リースバックが合っている人・合っていない人
メリットや注意点を説明してきたので、ここではリースバックが合っている人・合っていない人について説明します。自分の状況と照らし合わせながら、リースバックが向いているのか考えてみてください。
リースバックが合っている人
リースバックは、すぐに資金が必要な人や老後資金を用意したい人に向いています。
たとえば次のようなケースでは、すぐに現金が手元に入り、なおかつ引っ越しが不要なリースバックのメリットを活かせるでしょう。
- 借金の一括返済をしなければならない
- 急な病気で長期入院が必要になったが資金が足りない
- 教育資金をすぐに払わなくてはならない
さらに住宅を再購入したいと考えている方は、家賃が割高なリースバックを利用するメリットがあるでしょう。また、リースバックで得たお金は老後資金にも充てられるため、自分の亡き後に相続でもめたくない人や、相続人がいない場合にも適していると言えます。
リースバックが合っていない人
リースバック以外の方法を検討したほうがいいのは、次の項目に当てはまる方です。
- 家賃の支払いが難しい人
- 住宅を親族に相続させたい人
先ほどもお伝えしたように、リースバックの家賃は周辺相場よりも割高です。支出が増えたことで家計に負担がかかり、家賃が払えなくなる可能性もあります。
また、住宅を親族に相続させたい人にも、リースバックは向いていません。
リースバック契約を結ぶと所有権がリースバック業者に移り、相続人が住宅を相続できなくなります。
再購入できたとしても、再購入にかかる価格は売却価格に対して1~2割増の価格になることが多いので、住宅の相続を期待している親族がいる場合はトラブルになりかねません。相続でもめないためにも、相続人になり得る親族には必ずリースバックを利用する旨を伝えておきましょう。
リースバックを利用する流れ
最後に、リースバックを利用する流れをお伝えします。
リースバックを利用する流れの中で重要になるのが、1〜3のステップです。
不動産会社やリースバック業者の中から信頼できる会社に依頼し、契約内容をしっかりと理解してから契約することが、リースバック成功のカギになります。
リースバックの仕組みを理解したうえで、利用の検討を!
自宅の売却後もそのまま住み続けられるリースバックは、「資金が必要だけれど、引っ越しはしたくない」と考えている方が利用すれば、リースバックのメリットを活かせるでしょう。
しかしリースバックは家賃が割高で、住み続けられる期間に制限がある場合も多い点に注意が必要です。状況によっては、リースバックよりも仲介売却や買取のほうが適している場合もあります。
リースバックが自分に適しているのかお悩みの方は、売却全般の相談を承っているSUMiTAS(スミタス)にご相談ください。リースバック以外の選択肢も交えて、お客さまにとって1番利益が大きい方法をアドバイスいたします。