不動産取引の仲介手数料は消費税がかかります!非課税の取引と計算方法について解説

不動産取引の仲介手数料は消費税がかかるのか?非課税の取引や計算方法について解説

監修者
吉田 宏
吉田 宏(株式会社SUMiTAS 代表取締役社長)
  • 二級建築施工管理技士
  • 宅地建物取引士
  • 測量士補
  • 賃貸不動産経営管理士

不動産取引における仲介手数料の金額は、不動産会社によって異なり、請求金額を見て驚くケースも少なくありません。この請求金額を算出する上で重要なのが「消費税」です。

この記事では、不動産取引を行う上で、事前に仲介手数料と消費税を把握できるよう、課税対象となる要件や消費税の計算方法を詳しく解説していきます。

消費税の課税対象となる要件

仲介手数料には消費税がかかります。では、どのような理由で消費税がかかるのか、まず消費税の課税対象となる要件を確認しましょう。具体的には、消費税の課税対象となる取引は、消費税法第4条で規定されており、以下の要件を満たすことが課税の対象となります。

  • 国内における取引であること
  • 事業者が事業として行うものであること
  • 対価を得て行われるものであること
  • 資産の譲渡、貸付け、及び役務の提供であること

この要件を満たし、非課税取引・免税取引・不課税取引に該当しないものが課税取引として扱われます。非課税取引については消費税法第6条で定められていて、課税の対象としてなじまないものや、社会的配慮から消費税の対象とならない取引のことを指します。

土地は消費されないという扱いなので、土地の譲渡・貸付けについては、課税の対象としてなじまないとされ、非課税取引として定められています。また、住宅の貸付けについても、社会的配慮の観点から非課税取引に規定されています。

仲介手数料とは

消費税の非課税対象となる要件について整理することができましたが、不動産取引において発生する仲介手数料とは何なのか、どのような理由で支払い義務が発生し、どのようなタイミングで支払う手数料なのかを明確にしていきましょう。

不動産取引における仲介手数料は、不動産取引の仲介を行う不動産会社に対して支払う報酬です。具体的には、物件の案内(内覧時の案内、不動産サイトの情報掲載)、重要事項の説明、不動産所有者と契約者間の契約条件の交渉ごと、契約の締結に関する処理などが該当します。仲介手数料は不動産会社がこれらの業務を代行し、不動産の取引を成立させてくれた対価として発生するのです。

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仲介手数料の計算方法

ここでは仲介手数料の金額について解説をしていきます。

仲介手数料の上限金額と計算方法

不動産会社が受け取ることのできる仲介手数料の上限額は、宅地建物取引業法という法律で決められています。売買の仲介手数料の法定上限額は、下記のとおり取引額を「200万円以下の部分」「200万円を超えて400万円以下の部分」「400万円を超える部分」の3つに区分してそれぞれ計算し、それを合計するという計算方法になっています。

区分1:物件の売買価格が「200万円以下」の部分 → 金額の5%+消費税
区分2:物件の売買価格が「200万円超~400万円以下」の部分 → 金額の4%+消費税
区分3:物件の売買価格が「400万円超え」の部分 → 金額の3%+消費税

例として、価格が「500万円」の不動産を売却する際の仲介手数料上限額を計算してみます。まずは、
・合計500万円を、200万円以下の部分の「200万円」(区分1)
・200万円から400万円以下の部分の「200万円」(区分2)
・400万円を超えた部分の「100万円」(区分3)
に分割します。

それぞれに定められた料率(3%~5%)を適用して合計します。結果、下記のとおりの仲介手数料の上限額が導き出されます。

{(200万円×5%)+(200万円×4%)+(100万円×3%)}+消費税=21万円+消費税

不動産取引において消費税がかかる費用

では、不動産取引において消費税がかかる費用とは何かを説明していきます。消費税がかかる費用には、法人が関係する場合や司法書士への報酬など様々なものがあります。ここでは、消費税の支払いが必要な不動産取引にかかる費用と、非課税となる取引にかかる費用、さらに仲介手数料の負担を抑える方法などをご紹介します。

法人が売主の建物の購入や売却

個人間で建物の売却を行った場合には消費税はかかりません。しかし、法人が売主の場合、個人の買主は消費税を支払う必要があります。つまり、法人が売主として販売する物件を売買する場合には消費税がかかります。

司法書士への報酬

不動産の購入時に所有権の移転をする場合など、司法書士に手続きを依頼することがあります。この司法書士に支払う報酬にも消費税がかかります。

司法書士に依頼する主な手続きは抵当権の抹消や設定、所有権移転登記です。手続きを依頼した場合、司法書士に対して報酬を支払うことになります。司法書士が代行して行う登記手続きはサービスの提供にあたるので、消費税の課税対象取引になります。

取引で発生する手数料

不動産関連の取引で発生する手数料にも消費税はかかります。例えば、住宅ローンを利用する場合の手数料です。住宅ローンの返済中で残債がある不動産を売却する場合、残債を売却時に一括して返済する必要があります。融資している金融機関は、残りの返済期間について利息を受け取れなくなる代わりに、債務者に一定金額の負担を求めます。これが一括繰上返済手数料です。

残債の一部を繰上返済する場合には手数料が無料となることもありますが、一括繰上返済の場合は基本的に手数料が発生します。これらの手数料は金融機関のサービス提供に該当するので消費税の課税対象になります。

建物の工事にかかる費用

新しく住宅を建築する工事の費用にも消費税がかかります。建物の工事には注文住宅などの新築や増改築、リフォームなどがありますが、その全ての建築費が課税対象です。

具体的には建築工事費や設計料などに消費税がかかります。建築会社によって、見積もり時の税込み価格と税抜き価格の表示については様々なので、事前に確認をしておくようにしましょう。

不動産取引における非課税の取引

では、反対に不動産取引において消費税がかからない費用とはどのようなものでしょうか。

土地の代金

消費税は、消費される物やサービスの購入に課税される税金です。国税庁のウェブサイトによると土地は消費するものではないという扱いになっています。よって、土地の譲渡や貸付けで発生する金額については消費税がかかりません。

つまり、住宅購入の場合は住宅価格のうち「土地分の価格」は非課税となり、マンションや一戸建ての「建物分の価格」にのみ課税されることになります。個人が売主となる中古マンションや一戸建ての場合は、建物についても非課税となります。

保証料や保険料

火災や地震などの保険料や銀行へ支払う利子、住宅ローンの保証料は原則、非課税となります。保険料は課税対象になるべき取引であっても、課税に馴染まないという理由で課税しないことになっています。さらには、政策的な配慮という観点からも課税しないことになっているようです。

また、住宅ローンや賃料の保証料についても消費税はかかりません。消費税法第6条では、国内で行われる資産譲渡などで利子を対価とした貸付金、その他の政令で定める資産の貸付け、信用の保証としての役務の提供などは消費税を課さないと規定されています。

個人が売主の場合

原則として建物は課税対象ですが、「個人が売主の中古住宅を購入する場合」には、消費税はかかりません。売主が個人であるか法人であるかによって課税の有無が変わってきます。

建物の売主が不動産会社や法人などの課税事業者であれば、消費税の課税対象になります。反対に、売主が個人であった場合は非課税になります。

ただし、新築物件を販売するのは不動産会社などの法人であることが多いでしょう。よって、基本的には新築の建物購入は消費税の対象であると考えておきましょう。一方、個人が売主になるケースとしては、中古物件の売買になることが多いです。

もちろん、法人も中古住宅をリフォームして販売することはあるので、その場合には課税対象になります。

行政で発行してもらう書類の手数料

戸籍謄本や住民票など市役所等で発行してもらう、各種手数料についても非課税となります。

市役所や役場などから住民票(住民票の写し・住民票記載事項証明書)の交付を受ける際に支払う発行手数料は租税公課勘定を使用して記述することになり、他の課税取引と区分して記帳することになります。

消費税法第6条第1項によると、市役所や町役場・村役場などが発行する住民票の写しなどの発行手数料には消費税が発生しないという取り決めになっています。不動産の売買を行う際は、多くの行政から発行してもらう書類があります。これらの手数料には消費税がかからないことを覚えておきましょう。

住宅を貸付ける場合

住宅や土地を一時的ではなく貸付ける場合には非課税となります。土地、家賃、権利金、敷金など、それぞれについて解説していきます。

まず、土地の譲渡や貸付けは、消費税の課税の対象とならないこととされています。なお、土地の貸付けのうち、貸付けに係る期間が1ヶ月に満たない場合や、駐車場などの住宅以外に土地が使用される場合は、非課税にはなりません。

住宅の賃料は、貸付期間が1ヶ月に満たない場合などを除き消費税がかかりませんが、事務所などを貸付ける場合の家賃は課税の対象となります。この場合、家賃を土地部分と建物部分として区分していたとしても、総額が建物の貸付けの対価として扱われることになります。

次に家賃に関しての課税の有無です。法人に事務所として貸付ける場合と個人に住宅用として貸付ける場合で異なってきます。事務所として貸付ける場合の家賃は課税対象です。不動産によっては建物と土地で家賃の内訳を区分していることがありますが、ともに家賃として課税対象となります。個人に住居として貸付ける場合の家賃は課税対象ではありません。

最後に、権利金・敷金などの取扱いについてです。法人がオフィスを借りた場合など、事業目的での賃貸契約の締結や更新の際に発生する費用(保証金、権利金、敷金、更新料など)は課税対象です。これらは、権利の設定の対価として扱われているので、資産の譲渡等の対価として課税の対象となります。

一方、個人が住宅用として契約した場合に、契約終了時に借主が受け取ることになる敷金の返還金は、課税対象ではありません。これは、敷金などの返還が資産譲渡の対価に該当しないためです。

不動産取引で支払う消費税についての注意点

売買価格は消費税込みの価格になる場合がある

マンションなどの売買価格は、消費税込みの価格となっていることが多く、店頭で表示されている価格は基本的に税込み価格です。仲介手数料は売買価格の税抜き価格をもとに計算されるので、その表示価格で上限額を計算してしまうと誤った上限額が算出されてしまいます。

事前に不動産会社に確認を行い、消費税込みで示されている場合、その額をもとに仲介手数料の計算をしないように注意が必要です。仲介手数料の計算は不動産会社に任せることがほとんですが、この仲介手数料は上限の限度額で請求されることが多いので、税込み価格で上限額が計算されていないかどうか自分自身でも確認しておくことが大切です。

消費税以外でかかる税金の種類

消費税がかかる不動産取引とかからない取引について整理する事ができました。しかし、不動産においては、消費税以外にもかかる税金はたくさんあります。どのような税金があるのかを確認していきましょう。

印紙税

印紙税は、契約書などの文書に課税される国税であり、不動産の売却時に作成する売買契約書も文書として印紙税の課税対象となっています。印紙税の納税は文書に収入印紙を添付して行います。この納税額は、契約書に記載されている売買価格に応じて金額が変わるので、売買金額が大きくなると印紙税の負担も増えることになります。

登録免許税

登録免許税とは、不動産を取得した際に登記をするための税金です。登録免許税も国税で、原則として登記をした場合に課税されます。課税対象金額は、固定資産税評価額です。

不動産取得税

不動産取得税とは、不動産を取得した場合に課税される税金であり、税率は原則として4%です。都道府県税であり、取得の対象となった不動産の所在する都道府県が、不動産を取得した人に対して課税をします。不動産の取得とは、売買や交換や新築、価値が増加する増改築が挙げられます。

また、有償・無償を問わず、不動産の贈与を受けた場合でも課税対象となります。不動産の相続を受けた場合には非課税ではありますが、死因贈与で不動産を取得した場合には、不動産取得税がかかります。

仲介手数料には消費税がかかる

今回は、仲介手数料にかかる消費税について解説をしていきました。不動産売買で発生する仲介手数料は消費税の課税対象です。

しかし、ほとんどの不動産会社が仲介手数料を「税抜き価格」で表示しています。実際には消費税を上乗せした額が請求されるので注意が必要です。あらかじめ、手数料に関する計算方法を把握しておかないと、想定外の費用が発生することになる可能性があるので、正確に仲介手数料と消費税を計算できるようにしておきましょう。併せて、消費税以外の課税項目についても確認してみてください。

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吉田 宏(株式会社SUMiTAS 代表取締役社長)
  • 二級建築施工管理技士
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愛媛大学在学中に愛媛県で株式会社アート不動産を創業する。現在アート不動産では、アパマンショップ(賃貸)を5店舗、SUMiTAS(売買)を2店舗・管理センターを1店舗、売買店舗を2店舗運営。吉田 宏の詳細プロフィールはこちら