「不動産売却の仲介手数料」値引き交渉のやり方とタイミング

仲介手数料の値引き交渉は可能?タイミングや交渉術を解説

監修者
天池 篤哉
天池 篤哉(株式会社SUMiTAS 取締役)
  • 宅地建物取引士
  • 管理業務主任者
  • 賃貸不動産経営管理士

不動産売却を行う際には、不動産会社に仲介をしてもらうことが一般的です。不動産会社の仲介を利用して不動産売買を行うと、仲介手数料を支払う必要があり、内容次第では仲介手数料だけで数十万円から100万円を超えることもあります。

仲介手数料は不動産売却における大きな費用となりますが、これは交渉によって値引きしてもらうことも可能です。どこまで値引きが可能なのか、交渉時の注意点はなにかなどを知り、仲介手数料への理解を深めていきましょう。

不動産売却の仲介手数料とはなにか?

まずは、不動産売却における仲介手数料とはどのようなものなのか、いつどのようなときに支払うものなのか、またなにに対しての手数料なのかなど、基礎的な部分から知っておくことが大切です。

不動産売却における費用の詳細について理解したうえで、値引き交渉などの方法を考えていきましょう。

仲介した不動産会社に支払う成功報酬

仲介手数料は、不動産売却を仲介してくれた不動産会社に対して支払う成功報酬です。不動産売買取引は個人間でも行うことができ、この場合は不動産会社を利用しないため仲介手数料は発生しません。

しかし、個人間での売買にはリスクがつきものであり、取引後のトラブルや契約内容の不備などが発生することも多いです。これらを回避するには、不動産会社に仲介を依頼したほうが確実であり、リスクを避けて不動産売却を行うための費用でもあるといえるでしょう。

内訳は各手続きや販売活動の代行費用など

仲介手数料の内訳としては、次のものがあげられます。

  • 売買契約書など契約書類の作成
  • 売買契約の条件の調整
  • 各種事務手続きの代行
  • 販売活動の代行

不動産を売却するには、買主の募集や広告活動、契約書類の作成から契約締結まで、さまざまな手続きを行わなければなりません。これらの煩雑な手続きや活動は、不動産会社が代行してくれます。

手続きの確実性が上がるだけではなく、簡略化もできるため、時間的なコストや労力を削減できる対価として、仲介手数料を支払っていると考えてもよいでしょう。

法律によって上限が定められている

仲介手数料は不動産の取引金額によっていくら請求されるか異なりますが、上限は法律によって定められています。仲介手数料の上限額は、以下の表のように取引金額を額によって分割して計算し、それらを合計することで求められます。

売買価格報酬額の上限
200万円以下の部分取引額の5%+消費税
200万円超400万円以下の部分取引額の4%+消費税
400万円超の部分取引額の3%+消費税

なお、400万円を超える取引の場合は、次の式で一括計算が可能です。

仲介手数料 = 売却価格 × 3% + 60,000円 + 消費税

売却する不動産によって異なりますが、住宅なら基本的に400万円を超えることが多いため、上記の一括計算できる式を用いて上限額が求められます。

しかし、売却価格が400万円以下だと「低廉な空き家等の売買に関する特例」が適用されることもあります。これは売却価格による仲介手数料に加えて、現地調査などにかかった費用を上乗せして仲介手数料を請求できるようになるというものです。

この特例を適用した時の仲介手数料の上限額は18万円+消費税となるため、400万円以下の取引(仲介手数料の上限が18万円以下)であっても、上限額の18万円を請求することができます。

原則として、現地調査費などの計上は売主の合意が必要となるため、不動産会社と相談しながら、仲介手数料がいくらになるかが決まるケースもあることは頭に入れておきましょう。

2回に分けて払うのが一般的

仲介手数料は、利用する不動産会社によって異なることがありますが、基本的には売買契約成立時と、不動産の引き渡し時の2回に分けて支払うのが一般的です。それぞれのタイミングで支払いが必要となることを覚えておきましょう。

契約の締結により成功報酬である仲介手数料が発生することになるので、売買契約締結以前では、販売活動をしてもらっていたとしても、仲介手数料は発生しません。

もちろん、販売活動などで実費精算が必要な費用がある場合は支払いがありますが、仲介手数料だけで考えると、売買契約の締結までは一切発生しないことになります。

不動産売買時に発生する仲介手数料とは?上限や計算方法を解説不動産売買時に発生する仲介手数料とは?上限や計算方法を解説

仲介手数料の値引き交渉は可能

仲介手数料は、法律で決められているのはあくまで上限額のみです。よって、上限の範囲内なら仲介手数料は下げられるため、値引き交渉はできます。

仲介手数料は不動産会社との話し合いによって決定するため、交渉は十分に可能です。もちろん、値引き交渉ができても、不動産会社が必ずしもそれに応じてくれるとは限りません。交渉しても上限額いっぱいから引き下げてくれないこともあります。

仲介手数料の値引き交渉のやり方とタイミング

仲介手数料を値引きしてもらいたいなら、上手な交渉のやり方と適切なタイミングを知っておきましょう。

  • 専属専任/専任媒介契約で依頼する
  • 中小の不動産会社に依頼する
  • 他の不動産会社の査定報告書を見せる
  • タイミングは媒介契約を結ぶ前
  • 値下げキャンペーンをやっている不動産会社を狙う

これらのポイントを把握しておくことで、値引き交渉がスムーズに行いやすくなり、かつ値引きをしてもらえる可能性も高まります。

専属専任/専任媒介契約で依頼する

不動産会社に不動産売却の仲介を依頼する際には媒介契約を結びますが、仲介手数料の値引き交渉をするなら、専属専任媒介契約か専任媒介契約がおすすめです。

媒介契約には3つの種類があり、専属専任媒介契約と専任媒介契約の他には一般媒介契約があります。一般媒介契約は複数の不動産会社と契約できるため、不動産会社が販売活動に積極的になってくれないことも多いです。

しかし、専属専任媒介契約や専任媒介契約なら、不動産会社1社のみと契約するため、自社での仲介手数料の獲得が確実であるという点から、値引き交渉に応じてもらいやすくなります。

また、専任媒介契約の場合は、個人でも買主を探せますが、専属専任媒介契約は個人で買主を探した場合でも、媒介契約を結んでいる不動産会社を通して契約しなければなりません。つまり、契約した不動産会社の仲介による契約のみで売却することになるため、より値引き交渉に応じてもらえる可能性が高まるでしょう。

中小の不動産会社に依頼する

不動産会社は大手から中小の不動産会社までいろいろありますが、仲介手数料の値引き交渉を考えるなら、中小の不動産会社に依頼することがおすすめです。

大手の不動産会社は知名度の高さから顧客の獲得に困っていないことが多く、より多くの利益を獲得したいと考え、仲介手数料の値引きには応じてくれない場合が多いです。

中小の不動産会社なら、多少仲介手数料を安くしてでも顧客を獲得したいと考えている場合があるので、大手との差別化のために積極的に割引サービスを実施することも少なくありません。

他の不動産会社の査定報告書を見せる

不動産会社と媒介契約を結ぶ前に、複数の不動産会社から査定を受けておき、他社の査定報告書を見せて値引き交渉を行うこともおすすめです。もし他社のほうが査定額が高い場合は、提示することで別の不動産会社の利用を迷っているという意思表示になります。

不動産会社は他社に顧客を取られたくないと考え、査定額の見直しや仲介手数料の減額などで引き留めようとする場合があるのです。

他の不動産会社のほうがよい条件を提示していると示すことで、値引き交渉時の武器となり、仲介手数料の割引を迫りやすくなります。

タイミングは媒介契約を結ぶ前

仲介手数料の値引き交渉をするなら、媒介契約を結ぶ前がおすすめです。特に専任媒介契約や専属専任媒介契約の場合は、不動産会社が確実に契約したいと考えるため、このときの交渉材料として仲介手数料の値引きを求めると、上手くいく可能性が高いでしょう。

契約後に話し合いで仲介手数料の値引きを求めることも可能ですが、交渉して割引してもらいやすいのは契約締結前といえます。契約がほしいという不動産会社の心理を利用し、媒介契約締結前を狙って交渉することで、より好条件で不動産会社を利用しやすくなります。

値下げキャンペーンをやっている不動産会社を狙う

仲介手数料の値下げや割引、その他プレゼントなどのキャンペーンを実施している不動産会社を利用することも1つの方法です。キャンペーンを実施している不動産会社なら値引き交渉がしやすいだけでなく、ギフト券のプレゼントなど、金銭的なメリットがあることも多いため、よりお得に利用できます。

また、不動産会社によっては仲介手数料の割引をする代わりに、建物診断やインスペクションなどを不動産会社で実施し、売主と買主がより安心して売買できるサービスを提供していることもあります。

不動産取引には契約不適合責任というものがあり、契約時に告知していない瑕疵(かし)などが取引後に見つかった場合は、売主がその賠償責任などを負わなければなりません。

つまり、この契約不適合責任による賠償や契約解除などのリスクを回避するために、建物診断やインスペクションなどは有効であるため、仲介手数料割引の代わりにこれらのサービスを無料で提供する不動産会社を利用することもおすすめです。

売却を依頼する不動産会社を見つける際には、SUMiTASがおすすめです。SUMiTASでは全国のネットワークを活かしてさまざまなエリアの対応が可能です。さらに、サイト内に設けてある自動査定からおおよその概算を把握し、そこから簡易査定・机上査定・訪問査定といった顧客のニーズに合わせた査定を行なってくれます。

建物診断のサービスも実施しており、より安心して不動産を売却できます。また、一定の基準を満たす家なら、「既存住宅瑕疵保証保険」にも加入できるため、売却後のリスクも回避でき、安全かつお得に不動産を売却しやすいでしょう。

値引き交渉がしやすくなる不動産会社や物件の特徴

仲介手数料の値引き交渉をするなら、値引きしてもらいやすい不動産会社や物件の特徴を知っておくことも大切です。

  • 両手仲介に強い不動産会社
  • 仲介手数料が安いことを強みとして売り出している不動産会社
  • 人気エリア内にある高値で売れる物件

これら3つの特徴を把握し、どのようなケースだと値引き交渉が成功しやすいのかを知っておきましょう。

両手仲介に強い不動産会社

不動産会社によっては、自社で売主と買主双方の仲介を行うことがあります。これを「両手仲介」と呼び、この場合は仲介手数料の値引き交渉がしやすいでしょう。

なぜなら、両手仲介の場合は、不動産会社が売主と買主の双方に仲介手数料を請求できるため、売主か買主どちらか一方のみの仲介を行う片手仲介よりも、単純計算で倍の利益を獲得できるからです。

つまり、多少値引きをしたとしても片手仲介よりももうかることから、顧客満足度や円滑な契約を目指して仲介手数料の値引きに応じることは多いでしょう。

両手仲介に強い不動産会社は集客力が高く、不動産売買を盛んに行っている不動産会社です。気になる不動産会社はホームページや口コミなどで詳細を調べ、不動産の売却と購入それぞれについての実績やコメントが多い場合は、両手仲介になりやすいといえるでしょう。

仲介手数料が安いことを強みとして売り出している不動産会社

不動産会社によっては、仲介手数料の安さを強みとして売り出し、顧客の獲得に努めていることもあります。不動産会社としての強みが仲介手数料の安さであるなら、最初から割引されていることも多く、値引き交渉にも応じてもらいやすいでしょう。

ただし、仲介手数料が安いからといって、必ずしも利用がおすすめであるとは限りません。中には他社に対抗できる営業力や魅力がないために、仲介手数料を値引きしているということもあります。

不動産会社としての実力がなく、仲介を依頼しても好条件で不動産を売却できない可能性もあるので、仲介手数料の安さだけで決めず、信頼できるか、実力があるかを見極めなければなりません。

人気エリア内にある高値で売れる物件

売却予定の不動産が人気のエリアにあり、高値で売れそうなら仲介手数料の値引き交渉にも応じてもらいやすいです。仲介手数料は売却価格によって決まるため、高値で売れるほど仲介手数料の上限は高くなります。

そのため、上限が高い状態なら、多少割引をしても十分に利益が出るということは多く、自社での契約を確実なものとするために、値引き交渉に応じる場合は多いでしょう。

また、人気のエリアで価値が高い物件なら、すぐに買い手が見つかるため、不動産会社にとっても楽に売却できることが多いです。それほど手間をかけずに大きな利益を獲得できるため、確実に自社の顧客にしようと考えて、値引き交渉に応じてくれる可能性は高くなるといえるでしょう。

仲介手数料を値下げした際のデメリット

交渉によって仲介手数料は値下げしてもらえる場合がありますが、これにはデメリットもあります。

  • 他の物件より優先順位を下げられる恐れ
  • 広告費を削られる恐れ
  • 物件価格の値引きを勧められる可能性がある

これら3つのデメリットを把握して、どのような点に気をつけなければならないのかを知っていきましょう。

他の物件より優先順位を下げられる恐れ

仲介手数料の値引き交渉をすることで、不動産会社が他の物件よりも販売の優先順位を下げる可能性があります。これは仲介手数料を値下げした状態で契約が成立しても、自社で得られる利益は少なくなるからです。

並行していくつかの物件を仲介している場合なら、より利益率が高い取引に力を入れやすくなるため、値引きをするほど優先順位は下がり、担当者が販売活動に積極的になってくれない可能性もあるでしょう。

広告費を削られる恐れ

仲介手数料には販売活動の広告費も含まれており、値引き交渉をすることで広告費が削られる可能性もあります。仲介手数料を値引きすると、不動産会社の利益は少なくなるため、その分を補填するために費用を削減しなければなりません。

販売活動の中で広告費は削減しやすく、これを削ることで仲介手数料の値引きとバランスを取る場合もあるでしょう。広告費が下がって広告が少なくなると、物件情報の発信量が少なくなり、買主の目に留まりにくくなります。

その結果、売れるまでの期間が長くなってしまい、長期にわたって販売活動を続けることで、売却にかかるコストが結果的に高くなってしまう場合があるため注意が必要です。

物件価格の値引きを勧められる可能性がある

両手仲介の場合は、売主の仲介手数料の値引きに応じると、買主からは満額の手数料を請求するということが多いです。満額請求によって買主の負担は大きくなるため、このバランスを取るために不動産会社が売主に対して、買主からの物件価格の値引き交渉に応じるように勧めてくることも少なくありません。

物件価格の値下げ交渉に応じるように不動産会社から強く求められ、言われるままに契約すると仲介手数料の値引き分を考えても結局自分が損をするということもあるでしょう。

両手仲介の場合は値引き交渉もしやすいですが、その分物件価格の値引きの説得に不動産会社が加わる可能性も高いことは頭に入れておく必要があります。

交渉中に契約をせかされたら要注意

仲介手数料の値引きに限らず、不動産取引では様々なシーンで交渉が行われます。不動産売却を成功させるには、慎重に判断して契約することが大切であり、交渉中に契約をせかされたら注意が必要です。

契約をせかすことで売主を焦らせ、自社にとって都合のよい内容で契約しようと考える不動産会社もいます。当日中での契約が必須と言われたとしても、もう少し考えたいなどと断って、一度冷静になる時間を持ちましょう。

すぐに契約を迫る不動産会社は、悪徳業者であったり、顧客の獲得ができない魅力のない不動産会社だったりすることがあるため、こちらが納得するまで待ってくれる不動産会社を選ぶほうが信頼できる場合が多いです。

仲介手数料の値引き交渉は可能だがデメリットもあり

仲介手数料は、交渉によって値引きをしてもらうことが可能であり、場合によっては半額や無料といった大幅な値下げが期待できることもあります。しかし、仲介手数料の値引きによって、広告費の削減や販売活動の優先順位の低下といったデメリットはあるため、この点には注意しなければなりません。

仲介手数料の値引きをしてもらわずに、念入りな販売活動で売却したほうがお得になるケースもあるため、少しでも高く、早く売却するには値引き交渉が必須とは限らないことを頭に入れておきましょう。

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監修者
天池 篤哉
天池 篤哉(株式会社SUMiTAS 取締役)
  • 宅地建物取引士
  • 管理業務主任者
  • 賃貸不動産経営管理士

2005年から不動産賃貸仲介営業で不動産業のキャリアをスタート。
物件マニアで、『従事している期間毎日10件内見する』という裏目標を立て、6年間実施。札幌市内の賃貸物件約18,000件を内見した。
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