仲介手数料は、不動産を売るときに一番大きな費用です。3,000万円で売れた場合の上限は105万6,000円。この金額を見て「少しでも下げられないか」と考えるのは自然なことだと思います。
先に答えをお伝えします。値引き交渉はできます。仲介手数料は法律で上限だけが決まっていて、下限はありません。標準的な媒介契約書にも、報酬の額は「国土交通省告示に定める限度額の範囲内で、甲乙協議の上、定めます」と書かれています。協議して決めるものなので、交渉すること自体は制度に沿った行為です。
ただし、応じてもらえるかどうかは条件によります。そして交渉の前に知っておいたほうがよい計算が1つあります。手数料を半額にしてもらっても、そのぶん売却価格が2%下がれば、手取りはかえって減ります。この記事では、通る条件とやり方を先に説明したうえで、その計算まで示します。
- 法律で決まっているのは上限だけ。下限はないので、交渉すること自体に問題はない
- 応じてもらえるのは「会社側に余裕が生まれる条件」が揃ったとき。主に4つ
- 切り出す順番は「査定の根拠 → 媒介契約の種類 → 手数料」。仕事を見る前に言うと断られやすい
- 手数料を半額にしても、売却価格が2%下がれば得は消える
目次
値引き交渉はできる。ただし応じてもらえる条件は限られる
まず前提の確認です。仲介手数料には宅地建物取引業法にもとづく上限があり、売却価格が400万円を超える場合は「売却価格 × 3% + 6万円 + 消費税」で計算します。この上限を超えて請求することはできませんが、下限は決められていません。上限の範囲内であれば、不動産会社が自由に設定できます。
実務では上限どおりの金額を提示する会社が多数です。仲介手数料は成功報酬で、広告費も人件費もここから賄うためです。ただ「上限額」は決まりではなく協議の結果なので、交渉の余地がないわけではありません。
もっとも、交渉すれば下がるという話でもありません。応じてもらえるのは、その取引で会社側に余裕が生まれるときだけです。次の章で、その条件を理由とセットで見ていきます。
値引きに応じる条件と、応じにくい条件
値引きに応じるかどうかは、担当者の人柄より、その取引の採算で決まります。応じてもらいやすいのは、主に次の4つの場合です。

1. 買主も自社で見つかりそうなとき
不動産会社は、売主と買主の双方を仲介した場合、それぞれから報酬を受け取れます。片方だけを仲介する場合と比べて、同じ1件の取引で受け取れる額が変わります。買主も自社で見つけられる見込みがあるなら、売主側を下げても採算は合います。
ただし注意点があります。自社で買主を見つけることを優先しすぎると、他社経由の購入希望者を断る「囲い込み」につながる恐れがあります。囲い込みが起きると、売れるまでの期間が延びたり、より高く買う人を逃したりします。手数料の数十万円より影響が大きくなりうるので、不動産の囲い込みの記事で確認方法を知っておいてください。
2. 専任媒介・専属専任媒介で依頼するとき
媒介契約には一般媒介・専任媒介・専属専任媒介の3種類があります。専任・専属専任は1社だけに依頼する契約なので、会社から見れば、成約したときに報酬を得られることが確実になります。
一般媒介だと、他社が先に買主を見つければ報酬はゼロです。その不確実性がなくなる分、専任での依頼は交渉の材料になります。契約の種類ごとの違いと選び方は媒介契約の記事にまとめています。
3. 早く売れる見込みが高いとき
人気エリアのマンションなど、広告を大量に打たなくても買主が見つかりそうな物件は、販売にかかるコストが小さく済みます。掲載期間が短ければ広告費も抑えられるため、その分の余裕が交渉の余地になります。
4. もともと割引を掲げている会社に依頼するとき
これは交渉ではなく、最初からその料金設定という話です。半額や無料をうたう会社は、買主側からも報酬を得られる物件に絞る、広告を絞る、といった形で採算を取っています。仕組みと注意点は仲介手数料無料のデメリットの記事で解説しています。
逆に、応じてもらいにくい場合
次のような物件では、上限額でも会社の採算はぎりぎりです。
- 売却価格が低い物件。手数料は価格に比例しますが、調査や書類作成の手間は価格が低くても変わりません
- 境界が確定していない、権利関係が複雑など、手間のかかる物件。役所調査や隣地との調整に時間がかかります
- 買い手が限られる物件。販売期間が長くなり、その間の広告費がかさみます
こうした物件で無理に手数料を下げると、広告の量や販売の優先度に影響が出て、結果として売却価格や売れるまでの期間で損をすることがあります。ここは後半の計算で確かめます。
交渉を切り出す順番とタイミング
条件が揃っていても、言い方より先に順番で結果が変わります。

1. まず査定の根拠を聞く
査定額そのものより、その根拠を聞いてください。近隣の成約事例をいくつ見たのか、どのくらいの期間で売る想定なのか、どこに広告を出すのか。ここで具体的な答えが返ってくる会社なら、手数料に見合う仕事が期待できます。逆にここが曖昧なら、手数料を下げる交渉より、依頼先を考え直すほうが先です。
2. 媒介契約の種類を決める
専任・専属専任で依頼するつもりなら、それは交渉の材料になります。「専任でお願いするつもりです」と伝えたうえで相談するのと、契約の種類を決めないまま値引きだけを求めるのとでは、相手の受け止め方が変わります。
3. そのうえで手数料の相談をする
タイミングは媒介契約を結ぶ前です。契約後は交渉の材料がなくなります。売買契約が近づいてからの要求は、それまでの販売活動を否定することになるため、関係が壊れやすいところです。
査定を受ける前に切り出すと、断られやすい
問い合わせの電話やメールで、いきなり「手数料は安くなりますか」と聞くやり方があります。これは避けたほうが無難です。会社側から見ると、査定も提案もしていない段階で報酬の話から入る相手は、この先も価格以外を評価してもらえないだろうと判断されやすいためです。実際、その時点で依頼を受けない方針の会社もあります。
査定を受け、根拠の説明を聞き、そのうえで「御社にお願いしたい」という意思とセットで相談する。この順番が最も通りやすいと考えてください。
そのまま使える言い方と、嫌われる言い方
言い方の例を挙げます。共通するのは、依頼する意思を先に伝えることと、下げてほしい理由を自分の側の事情として説明することです。
専任で依頼することを材料にする場合
「御社にお願いしたいと思っています。専任媒介でお任せするつもりですので、仲介手数料をご相談させていただくことはできますか」
他社の条件を伝える場合
「他社さんからも査定をいただいていて、条件面で迷っています。御社の提案が一番納得できたので、手数料についてご相談できればと思っています」
手取りの事情を説明する場合
「住み替え先の資金計画で、あと◯十万円が足りない状況です。仲介手数料でご相談できる余地はありますか」
いずれも、金額を指定せずに「相談できるか」を聞く形にしています。最初から「半額に」と指定すると、応じられない会社は交渉自体を打ち切ることになります。
一方、避けたほうがよい言い方もあります。
- 問い合わせの第一声で手数料の話をする。前章のとおりです
- 「他社は半額だった」と競わせる。事実であっても、条件の違う見積もりを並べて迫る形になるため、価格だけの取引と受け取られます
- 売買契約の直前に持ち出す。ここまでの販売活動が終わった段階での要求は、信頼関係を壊します
- 高圧的な態度をとる。応じるかどうかを決めるのは相手なので、逆効果にしかなりません
手数料を半額にしても、売却価格が2%下がれば消える
ここがこの記事で一番お伝えしたい部分です。手数料の値引きは、金額としては数十万円の話です。一方、売却価格は数百万円の幅で動きます。桁が1つ違うものを比べている、という点を確認してください。
3,000万円で売れる見込みの物件で計算します。上限額は105万6,000円なので、半額にしてもらえば52万8,000円が浮きます。では、売却価格のほうはどうでしょうか。
| 売却価格 | 手数料の上限(税込) | 半額にしてもらった得 | 売却価格が2%下がった損 |
|---|---|---|---|
| 1,000万円 | 39万6,000円 | +19万8,000円 | −20万円 |
| 2,000万円 | 72万6,000円 | +36万3,000円 | −40万円 |
| 3,000万円 | 105万6,000円 | +52万8,000円 | −60万円 |
| 4,000万円 | 138万6,000円 | +69万3,000円 | −80万円 |
| 5,000万円 | 171万6,000円 | +85万8,000円 | −100万円 |
どの価格帯でも、手数料を半額にした得より、売却価格が2%下がった損のほうが大きくなります。損益の分かれ目は、価格が下がる割合でおよそ1.7〜2.0%です。3,000万円の物件なら約55万円分、価格が下がったところで得が消えます。

売却価格の2%は、実際に動きうる幅です。売り出してから買主が見つかるまでには価格を調整する場面がありますし、広告の露出が減れば見に来る人の数が減り、条件のよい買主に出会う確率も下がります。手数料を下げた結果として販売活動が細れば、この2%は簡単に動きます。
もう1つ、知っておいたほうがよい経路があります。売主の手数料を下げた会社が、買主からの価格交渉に応じるよう勧めてくる場合です。買主も自社で仲介している取引では、売主側を下げた分を、成約させることで取り戻す形になります。「この金額なら決まります」という提案自体は珍しくありませんが、手数料を下げてもらった直後だと、断りにくくなります。値引きの相談をするなら、価格の判断は別の話として切り分けて考えてください。
もちろん、値引きに応じたからといって必ず活動が細るわけではありません。前半で挙げた4つの条件が揃っているなら、会社側に余裕があるので活動は変わらないはずです。判断の基準はここです。条件が揃っているなら交渉する価値があり、揃っていないなら、値引きを求めるより「どう売るか」の提案を引き出すほうが得になります。
※ 手数料は上限額(消費税込み)で計算しています。実際の金額は媒介契約で定めた額によります。
断られたときの選択肢
交渉して断られることもあります。そのときは次の3つで考えてください。
- 納得して任せる。断る理由が「この物件は手間がかかるので、上限額でないと十分な広告が打てない」といった具体的なものなら、それは誠実な回答です。無理に下げるより、その分の活動を約束してもらうほうが手取りは増えます
- 手数料以外を交渉する。金額そのものより、販売状況の報告の頻度、広告の掲載先と期間、内覧の対応範囲といった中身のほうが、売却価格に効きます
- 依頼先を選び直す。断り方が高圧的だった、根拠の説明ができなかった、という場合は、手数料以前の問題です。会社の選び方は不動産売却はどこがいいかの記事にまとめています
なお、媒介契約を結んだあとでも、契約期間が満了すれば更新しない自由があります。専任媒介の期間は最長3か月で、自動更新はされません。3か月ごとに、このまま任せるかを判断する機会が来ます。
800万円以下の物件は「値引き」より「特例の確認」
売買価格が800万円以下の物件を売る方は、この章もご確認ください。
2024年7月1日から、売買価格が800万円以下の宅地・建物については、通常の計算による上限を超えて、30万円の1.1倍(税込33万円)までの報酬を受け取れる特例が始まりました。500万円の物件なら通常の上限は23万1,000円ですが、この特例が適用されると33万円になります。値引きどころか、上限が上がる方向の話です。
この価格帯は珍しくありません。国土交通省の不動産取引価格情報で2024年から2025年の全国の住宅地の取引を見ると、戸建ての23.6%、土地の36.0%が800万円以下でした。地方圏の土地に限ると48.3%です。
そのうえで、売主として押さえておきたいのは適用の条件です。国土交通省の解釈・運用の考え方では、この特例で通常の上限を超えて報酬を受ける場合、媒介契約を結ぶ際にあらかじめ、上限の範囲内で報酬額について説明し、合意することが必要とされています。事前の説明と合意がなければ、通常の計算による上限が基準です。
つまりこの価格帯では、交渉すべきは「下げてもらうこと」ではなく、「いくらになるのかを媒介契約の前に確認すること」です。制度上の名前は「低廉な空家等の特例」ですが、空き家である必要はなく、住んでいる家でも対象になります。
よくある質問
媒介契約を結んだあとでも交渉できますか?
制度上はできますが、通ることは少ないと考えてください。会社側は契約を前提に広告費や人員を割り当てており、その後で報酬が下がると計画が変わるためです。契約後に条件を変えたい場合は、手数料より販売活動の中身(報告の頻度、広告の追加)を相談するほうが現実的です。
値引きを頼むと、手を抜かれませんか?
会社側に余裕がある条件(買主も自社で見つかりそう、専任で依頼、早く売れる見込み)が揃っているなら、活動が変わる理由はありません。逆に、採算がぎりぎりの物件で下げてもらった場合は、広告の量や優先度に影響が出る可能性があります。心配なら、交渉と同時に「広告はどこに、どのくらいの期間出すか」を書面か記録の残る形で確認してください。
一般媒介でも値引きしてもらえますか?
専任・専属専任に比べると通りにくくなります。一般媒介は複数社に依頼できる契約なので、会社から見れば他社が先に成約すれば報酬がゼロになります。その不確実性がある分、報酬を下げる余地は小さくなります。
マンションの売却でも同じですか?
計算式も交渉の考え方も同じです。ただしマンションは同じ建物内で似た条件の部屋が売りに出ることがあり、価格の比較がされやすい分、売り出し価格の設定が結果に直結します。手数料より価格設定の相談に時間を使うほうが手取りは増えやすいところです。
仲介手数料が無料や半額の会社は信用できますか?
仕組みを確認すれば判断できます。買主側からも報酬を得られる物件に限る、広告の範囲を絞る、といった条件で成立していることが多く、それが自分の物件に合うかどうかの問題です。詳しくは仲介手数料無料のデメリットの記事をご覧ください。
まとめ: 交渉できるかは、条件が揃っているかで決まる
仲介手数料の値引き交渉はできます。法律で決まっているのは上限だけで、報酬の額は協議して定めるものだからです。ただし応じてもらえるのは、買主も自社で見つかりそう、専任で依頼する、早く売れる見込みがある、といった条件が揃ったときに限られます。
そして、手数料を半額にしてもらっても、売却価格が2%下がれば得は消えます。交渉する価値があるかどうかは、条件が揃っているかで判断してください。揃っていないなら、値引きを求めるより「いくらで、どのくらいの期間で、どう売るのか」を具体的に説明させるほうが、手取りは大きくなります。
判断の出発点は、その物件がいくらで売れそうかを知ることです。当社の10秒査定は、住所と物件情報を入れるだけで匿名・電話番号なしで概算価格を確認できます。手数料の額も、この記事の計算も、価格が決まらないと始まりません。
本記事の内容は2026年8月時点の制度にもとづきます。仲介手数料の上限は宅地建物取引業法46条にもとづく「宅地建物取引業者が宅地又は建物の売買等に関して受けることができる報酬の額」(昭和45年建設省告示第1552号・最終改正 令和6年国土交通省告示第949号)、800万円以下の特例は同告示の第七(2024年7月1日施行)と「宅地建物取引業法の解釈・運用の考え方」、報酬額を協議で定める旨と媒介契約の期間は標準媒介契約約款(平成2年建設省告示第115号・最終改正 令和4年国土交通省告示第583号)第8条・第7条によります。比較表の手数料は上限額(消費税込み)で計算した当社試算です。取引価格の集計は国土交通省「不動産取引価格情報」(不動産情報ライブラリ・2024年第1四半期〜2025年第4四半期・全国の住宅地)をもとに作成しました。
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