家の売却は内覧で決まる?データで見る買い手の行動と、準備・同席の判断・空き家の内覧まで

監修者
吉田 宏
吉田 宏(株式会社SUMiTAS 代表取締役社長)
  • 二級建築施工管理技士
  • 宅地建物取引士
  • 測量士補
  • 賃貸不動産経営管理士

内覧の日程が決まった途端、「何を掃除すればいいのか」「自分は居たほうがいいのか」と急に不安になる。家の売却で内覧は、売主が買い手と直接向き合う唯一の場面です。

まず前提を1つ。よく「5〜10件の内覧で成約する」と言われますが、この数字に公的な統計の裏づけはありません(国の住宅市場動向調査に、見学件数を問う設問自体がありません)。確認できる実測に最も近いのは業界団体の利用者調査で、住まいの買い手は平均5.3物件を問い合わせて比較しています(RSC・2025年・売買契約者)。件数の正確な相場より大事なのは、この数字が示す事実です。あなたの家は、必ずほかの物件と比較されながら見られています。

比較される前提に立つと、内覧でやるべきことは「当日のおもてなし」ではなく、順番のはっきりした準備になります。

この記事の結論
  • 買い手は平均5.3物件を問い合わせ、約3社の不動産会社を訪ねて比較している(RSC2025・売買)
  • 準備は水回りの掃除・生活感の圧縮・臭い・明るさの4点に絞る。当日の主役は売主ではなく物件
  • 内覧は売主が同席するのが基本。判断の軸は「立ち会えるか」と「説明を引き継げているか」
  • 空き家の内覧は管理が印象を決める。月1回の通水・換気を止めない

内覧は何件で決まるのか。データで見る買い手の行動

図1: 買い手の行動データ。売買契約者は平均5.3物件を問い合わせ、平均3.0社の不動産会社を訪問し、住まい探しから契約までは1か月〜3か月未満が最多で、3か月以上も47.6%を占めることを示している

売主から見えないだけで、買い手側の動きには実測データがあります。RSC(不動産情報サイト事業者連絡協議会)が毎年公表している利用者調査の2025年版から、売買で契約した人の行動を拾うと次のとおりです。

  • 問い合わせた物件数: 平均5.3物件(この5年は5〜6物件で推移)
  • 問い合わせた不動産会社: 平均3.7社、実際に訪問したのは平均3.0社
  • 住まい探しを始めてから契約まで: 「1か月〜3か月未満」が最多(33.3%)。3か月以上かけた人が47.6%

※回答者には新築の購入者も含まれ、「問い合わせ」は内見そのものの件数ではありません。それでも、買い手が複数の物件を並べて数ヶ月かけて選ぶという行動は、はっきり読み取れます。

売主側の実測と合わせると、内覧の位置づけが見えてきます。首都圏で売り出しから成約までの平均は戸建てで100.9日(東日本レインズ・2025年)。約3ヶ月の売り出し期間のあいだに、比較検討中の買い手を何組か迎え、そのうちの1組と合意する。これが内覧の実像です。1回の内覧で決まらないのは普通のことで、一喜一憂する必要はありません。売却期間全体の考え方は、不動産売却の期間の記事で解説しています。

内覧前の準備はチェックリストで済ませる

比較される前提に立つなら、準備の目的は「よく見せる」ことではなく、比較の土俵で減点されないことです。競合する物件も同じ相場帯にある以上、印象の差は細部で決まります。ただし、やることは多くありません。次の4点に絞ってください。

優先度やること要点
1水回りの掃除浴室・キッチン・トイレ・洗面所。内覧者が最も見る場所であり、生活の質感が最も出る場所
2生活感の圧縮出しっぱなしの物を減らす。不要な家具は思い切って処分すると部屋が広く見える
3臭いの対策ペット・タバコ・排水口。住んでいる本人は気づけないので第三者(不動産会社)に確認してもらう
4明るさの確保内覧の時間帯は全部屋の照明を点け、カーテンを開けておく

この4点に加えて、効き方が大きいものが2つあります。1つは日程の柔軟さです。買い手は複数の物件を回る予定を組んでいるため、希望日時に応えられるほど内覧の機会そのものが増えます。土日に限定せず、可能な範囲で幅を持たせてください。もう1つは、自力で落ちない汚れをプロに任せる判断です。水回りの水垢やカビが掃除で取り切れない場合、ハウスクリーニングを入れるかは費用対効果の問題になるので、内覧の反応を見ながら不動産会社と相談すれば十分です。

スリッパの用意やお茶出しの心配は、これらの後で十分です。住みながら売却する場合の内覧には固有のコツがあるため、詳しくは既存の記事も参考にしてください

なお、内覧の準備を怠ることが売却全体でどれだけ高くつくかは、失敗パターン側からまとめた記事があります

当日、売主は同席すべきか

図2: 売主が内覧に同席するかどうかの判断フロー。内覧に立ち会えるか、物件の説明を不動産会社に引き継げているかの2つの質問で、同席して説明する・挨拶して席を外す・会社に任せるの3つに分岐することを示している

売主が最も迷うのがここです。まず前提として、住みながらの売却では、売主が同席するのが基本です。鍵の受け渡しや戸締まりの問題もありますし、住んでいる人だからこそ答えられることが必ずあります。そのうえで、判断の軸は2つです。

軸1: そもそも内覧に立ち会えるか。遠方に住んでいる、空き家である、内覧の時間帯に予定が動かせない。この場合は不動産会社に任せることになります。任せるなら、後述の引き継ぎを厚くしておいてください。

軸2: 物件の説明を不動産会社へ引き継げているか。修繕の履歴、設備の状態、近隣の環境。これらが営業担当にまだ渡っていなければ、同席してその場で説明する価値が高いです。すでに渡っているなら、挨拶だけして席を外すという選び方もあります。

席を外す選択肢を残しているのは、買い手の側の事情です。売主が横にいると、収納を開けにくかったり、本音の会話(この家をどう使うか・予算の相談)がしにくかったりします。同席を基本としつつ、案内が始まったら少し距離を取るくらいが、実務的にはちょうどよい距離感です。

同席する場合は、話すことと黙ることを分けておいてください。

  • 聞かれたら答える: 住み心地、近隣・学区の情報、修繕・リフォームの履歴、引っ越しの理由(住み替え・転勤などはそのまま伝えて問題ありません)
  • こちらからは話さない: 売却を急ぐ事情、価格の下げ余地。その場での値引きの打診には即答せず、「不動産会社を通じて回答します」で止めるのが鉄則です
  • 隠さない: 雨漏りや設備の不具合など、物件の不具合(瑕疵)は正直に伝えます。後から発覚すると契約不適合責任の問題になり、売主が不利になります

空き家・遠方の家の内覧は「管理」が印象を決める

図3: 空き家の内覧管理サイクル。月1回程度の通水・換気・郵便物の回収・庭の手入れを回し、内覧前には電気と水道を使える状態にしておくことを示している

実家を相続した場合など、空き家の売却では内覧の風景がまったく変わります。売主は立ち会わず、鍵を預かった不動産会社が案内するのが基本形です。遠方に住んでいても売却は進められます。

ただし空き家には、住んでいる家にはない敵がいます。放置の痕跡です。締め切った家の臭い、排水口の封水が切れた下水の臭い、たまった郵便物、伸びた庭木。買い手は「管理されていない家」と感じた瞬間に、建物の状態全体を疑い始めます。

最低限のサイクルはこれだけです。

  1. 月1回程度: 通水(各水栓を1分ほど流し、排水トラップの水切れを防ぐ)・全部屋の換気・郵便物の回収・庭木と雑草の確認
  2. 内覧の前: 電気・水道は使える状態にしておく(照明が点かない家は昼でも暗く見えます)。夏冬は内覧前に空調で室温を整えられると印象が変わります
  3. 遠方で通えない場合: 管理を不動産会社や管理サービスに任せる方法があります。媒介契約のときに相談してください

空き家になった実家を売る手順の全体像は、こちらの記事で詳しく解説しています

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内覧の後。連絡がない・値下げを求められた

内覧が終わった後の数日は、売主が最も落ち着かない時間です。ここも動き方を決めておけます。

連絡がない場合。買い手は複数の物件を比較しているため、返事に数日かかるのは普通です。1週間近く音沙汰がなければ、営業担当に感触を確認してください。大事なのは断られた理由を必ず聞くことです。価格なのか、間取りなのか、状態なのか。理由が積み上がると、次の内覧までに直せる点と、価格で調整すべき点が分かれてきます。

値下げ交渉が来た場合。購入申し込みに指値(希望価格)が添えられるのは、ごく一般的なことです。慌てる必要はありません。判断の材料は2つです。

  1. 周辺の成約事例と比べて、今の価格と指値のどちらが相場に近いか(希望価格と成約価格の間には平均で1割前後の開きがあるのが市場の実態です)
  2. 売却の期限。急ぐ事情がなければ満額の買い手を待つ選択もあり、期限があるなら早期確定の価値は大きい

内覧が何週間も入らない場合は、交渉以前に価格・写真・広告のどこかが詰まっています。見直しの順序は失敗パターンの記事と、売却期間の記事を参考にしてください。期限が動かせないときは買取という選択肢もあります。

家の売却の内覧でよくある質問

内覧は何件くらいで成約しますか?

「5〜10件」と言われることが多いのですが、この数字に公的な統計の裏づけはありません。参考になる実測としては、買い手側が平均5.3物件を問い合わせて比較しているというデータがあります(RSC・2025年・売買契約者)。物件の価格設定と条件次第で、1件目で決まることも10件を超えることもあります。件数そのものより、内覧後に断られた理由を集めて次に活かすことが成約への近道です。

内覧の所要時間はどのくらいですか?

30分〜1時間程度になることが多いです。熱心な買い手ほど収納や設備まで確認するため長くなります。予定を詰めすぎず、前後に余裕を持たせておくと落ち着いて対応できます。

お茶出しは必要ですか?

不要です。買い手は物件を見に来ており、滞在時間も限られています。もてなしよりも、全部屋を気兼ねなく見てもらえる状態を作ることのほうがはるかに重要です。

マンションの内覧で気をつけることはありますか?

室内の準備は戸建てと同じ4点(水回り・生活感・臭い・明るさ)ですが、マンションは共用部も一緒に見られている点が違います。エントランスや廊下・ゴミ置き場は自分では変えられないぶん、内覧の案内時間帯や、管理状態の良さを伝える資料(長期修繕計画など)で補えないか、不動産会社と相談してください。

まとめ: 内覧の主役は売主ではなく物件

内覧について、データで確かめられることと実務の要点を整理しました。

  1. 買い手は平均5.3物件を問い合わせて比較している。内覧は常に比較の場
  2. 準備は水回り・生活感・臭い・明るさの4点に絞る
  3. 内覧は売主が同席するのが基本。判断軸は「立ち会えるか」「説明を引き継げているか」で、引き継ぎ済みなら席を外す選択もある
  4. 空き家は月1回の管理サイクルが印象を守る
  5. 内覧後は理由の収集と、指値への冷静な判断。即答はしない

内覧で比較されるのは、最終的には価格と物件のバランスです。いまの相場観を持っておくことが、内覧後の交渉でも判断の土台になります。SUMiTASの10秒査定は、住所と物件情報を入れるだけで匿名・電話なしで概算価格を確認できます。

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本記事の買い手の行動データは、不動産情報サイト事業者連絡協議会(RSC)「不動産情報サイト利用者意識アンケート」2025年版(2025年10月27日公表)の売買契約者の回答(問い合わせた物件数は61名・探し始めから契約までの期間は63名。新築の購入者を含む)をもとにしています。「問い合わせた物件数」であり、内見した件数そのものの統計ではありません。なお、見学件数を直接調べた公的統計は、国土交通省「住宅市場動向調査」(令和7年度)に該当する設問がないことを当社で確認しています。売り出しから成約までの日数は東日本不動産流通機構「首都圏不動産流通市場の動向(2025年)」によります。内覧の所要時間・同席の判断は一般的な実務の目安です。

監修者
吉田 宏
吉田 宏(株式会社SUMiTAS 代表取締役社長)
  • 二級建築施工管理技士
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  • 賃貸不動産経営管理士

愛媛大学在学中に愛媛県で株式会社アート不動産を創業する。現在アート不動産では、アパマンショップ(賃貸)を5店舗、SUMiTAS(売買)を2店舗・管理センターを1店舗、売買店舗を2店舗運営。吉田 宏の詳細プロフィールはこちら