空き家の売り方は、大きく3つです。そのまま売る、解体して更地にして売る、不動産会社に買い取ってもらう。
どれを選ぶかの分かれ目は、建物の古さそのものではありません。買い手がその建物に値段を付けるかどうかです。付けるなら建物ごと売ったほうが手取りは多く、付けないなら解体費をかける意味があるのかを別に考えることになります。
では、どのあたりで建物に値段が付かなくなるのか。国土交通省が公表している実際の取引データ(2024年1月〜2025年12月)を当社で集計したところ、築30年台で、木造戸建ての取引価格は同じ市区町村の土地だけの取引の水準とほぼ並びました。つまりこの帯を過ぎると、建物の値段は価格に表れにくくなります。
この記事では、その実測を示したうえで、売り方の選び方、相続から3年という期限からの逆算、売れないときの出口までを整理します。先にお伝えしておくと、いちばん損になりやすいのは「解体してから相談する」ことです。
- 売り方は3つ。分かれ目は買い手が建物に値段を付けるか
- 実測では築30年台で、建物の値段は価格に表れにくくなる
- 解体は査定の前に決めない。更地にすると翌年の固定資産税が上がり、買い手の幅も狭まる
- 相続した空き家には「3年を経過する日の属する年の12月31日」という税の期限がある
目次
空き家の売り方は3つ。分かれ目は建物に値段が付くか

3つの売り方には、それぞれ向いている状況があります。
| 売り方 | 向いている状況 | 注意点 |
|---|---|---|
| そのまま売る | 建物がまだ使える/立地に住宅需要がある/急いでいない | 買い手が見つかるまで保有コストがかかり続けます |
| 解体して更地で売る | 建物が使える状態にない/更地のほうが買い手が広がる立地 | 解体費が先払いになり、翌年の固定資産税が上がります |
| 買い取ってもらう | 期限がある/遠方で管理できない/片付けから任せたい | 市場で売るより価格は低くなるのが一般的です |
ここで大事なのは、この3つを自分だけで決めないことです。とくに解体は、いったん壊すと元に戻せません。判断の材料は次の章の実測データと、査定で分かる「この物件に建物の値段が付くか」の2つです。
実測: 築30年を過ぎると、建物の値段は価格に表れにくい

国土交通省の不動産取引価格情報から、2024年1月〜2025年12月の取引を当社で集計しました。木造戸建ての取引価格を土地面積で割った値が、同じ市区町村の「土地だけの取引の㎡単価」の何倍かを築年帯ごとに見たものです。倍率が1.0に近いほど、建物の値段が価格に表れていないと読めます。
| 築年帯 | 土地だけの取引に対する倍率 | 集計した取引数 |
|---|---|---|
| 築0〜4年 | 2.87倍 | 15,227件 |
| 築5〜9年 | 2.22倍 | 1,183件 |
| 築10〜14年 | 1.96倍 | 1,005件 |
| 築15〜19年 | 1.66倍 | 1,038件 |
| 築20〜24年 | 1.48倍 | 1,433件 |
| 築25〜29年 | 1.23倍 | 1,872件 |
| 築30〜39年 | 1.01倍 | 5,667件 |
| 築40〜49年 | 0.75倍 | 5,182件 |
| 築50年以上 | 0.62倍 | 3,906件 |
国土交通省「不動産取引価格情報」(2024年第1四半期〜2025年第4四半期)をもとに当社で集計。住宅地・木造・用途は住宅・土地面積150〜250㎡・取引の事情等の記載がないものに限り、市区町村ごとに倍率を出してその中央値を取っています
読み取れることは1つです。築30年台で倍率が1.01倍になり、それ以降は1.0を下回ります。築30年を超えたあたりから、建物の値段が価格に表れにくくなる傾向が読み取れます。
3点、注意も添えておきます。
- この倍率は建物の値段を直接測ったものではありません。取引価格を土地面積で割った見かけの数字で、土地の形や接道の違いも含まれます
- 1.0を下回るからといって、その差がそのまま解体費だとは言えません。築古の家は立地条件が劣る場所にも多く、その影響も混ざります
- 土地だけの取引には、更地も古家付き土地(建物ごと土地として売買したもの)も両方含まれています。公開データではこの2つを区別できません
そのうえで、実務の感覚としてもこの帯は合っています。築30年を超えた木造住宅の査定では、建物に価格を付けられる場面は多くありません。ご自宅が該当するなら、「建物を残すか壊すか」ではなく「土地としていくらで売れるか」から考えるほうが、話が早く進みます。
なお、「木造住宅は築22年で価値がなくなる」と聞いたことがあるかもしれません。22年は税務上の減価償却に使う法定耐用年数(住宅用の木造の場合)で、建物の価値がゼロになる年数ではありません。実務では築22年を超えた家にも一定の価格が付くことは多く、上の集計でも倍率は築20〜24年で1.48倍、築25〜29年で1.23倍と、土地だけの取引の水準をまだ上回っています。建物の値段が価格に表れにくくなるのは、築30年を超えたあたりからです。法定耐用年数と市場価値の違いは築年数別の売却相場をまとめた記事で詳しく扱っています。
解体は、査定の前に決めない
「どうせ古いから壊してから売ろう」と考える方は多いのですが、査定の前に解体を決めるのはおすすめしていません。理由は3つあります。
1つ目は、解体費が戻ってこないことです。木造で坪3〜5万円が目安なので、30坪なら90万〜150万円かかります(家の解体費用の記事で構造別に解説しています)。更地にした分だけ高く売れるとは限らず、その差額が解体費を上回るかどうかは、査定してみないと分かりません。
2つ目は、翌年の固定資産税が上がることです。住宅が建っている土地には固定資産税の住宅用地特例があり、更地にするとこれが外れます。1月1日時点で更地だと、その年の税額が上がります。倍率の実際については特定空家と管理不全空家の記事で計算しています。
3つ目は、買い手の幅がかえって狭まることがあることです。建物付きなら住宅ローンを使って買える人がいますが、更地は土地の購入と建築を同時に進める必要があり、資金計画のハードルが上がります。
解体する場合も、自治体の補助金の対象になるなら、契約の前に申請の順番を確認してください。多くの自治体では交付決定の前に契約すると対象外になります。制度の探し方は空き家の解体補助金の記事にまとめました。
リフォームも同じです。買い手の好みと合うとは限らず、費用を回収できないことがあります。判断材料は空き家のリノベーション費用の記事を参考にしてください。
売り出す前に確かめる3つ
空き家の売却でつまずくのは、ほとんどが物件そのものではなく手続きです。査定の前に次の3つを確認してください。
- 名義: 相続した空き家は、名義が亡くなった方のままだと買主へ所有権を移す登記ができません。先に相続登記が必要です。相続登記は2024年4月1日から義務化されており、相続の開始と所有権の取得を知った日から3年以内に申請しなければなりません(不動産登記法76条の2)。手順は相続した土地の売却の記事で扱っています
- 相続人の同意: 複数人で相続した場合、不動産全体を売るには全員の同意が要ります。誰の名義にして売るかを先に決めておかないと、買主が見つかってから止まります
- 権利証と境界: 登記識別情報通知(権利証)が手元にあるか、境界が確定しているか。どちらも売却はできますが、なければ費用と日数が増えます
そろえる書類の全体像は売却に必要な書類の記事にまとめています。
相続した空き家には、期限から逆算する必要がある

相続した空き家を売る場合、「被相続人の居住用財産(空き家)を売ったときの特例」という制度があります。要件に当てはまれば譲渡所得から最高3,000万円(その家屋と敷地を相続または遺贈で取得した相続人が3人以上のときは1人あたり2,000万円)を控除できるものです。
この記事で押さえておいていただきたいのは、期限があることです。国税庁の説明では、適用の要件のひとつが次のように定められています。
相続の開始があった日から3年を経過する日の属する年の12月31日までに売ること
つまり、2026年5月に相続が発生したなら、3年の期限は2029年12月31日です。ただし、現行の制度は2027年12月31日までの譲渡が対象なので、制度が延長されない限り、こちらの期限が先に来ます。ここで言う「売る」は引き渡しまでを指すので、売り出しはもっと前です。
逆算すると、次のようになります。中古戸建住宅はレインズに登録してから成約まで平均100.9日(東日本レインズ2025年公表値)、そこから引き渡しまでさらに1〜2か月。相続登記や片付けの時間も要ります。期限の1年前には動き出しておくと安全です。
そのほかの主な要件も、事実として挙げておきます。
- 昭和56年5月31日以前に建築された家屋であること
- 区分所有建物の登記がされている建物でないこと
- 相続の開始の直前に、被相続人以外に居住していた人がいなかったこと
- 売却代金が1億円以下であること
- 耐震基準を満たすか、家屋を取り壊して売ること。2024年1月1日以後の譲渡については、売った翌年の2月15日までに買主が耐震改修または取り壊しを行った場合も対象になります
- 適用できるのは2027年12月31日までの譲渡
手続きでは、市区町村長が発行する「被相続人居住用家屋等確認書」が必要になります。取得に日数がかかるので、確定申告の直前に慌てないよう早めに問い合わせてください。
なお、この特例が実際に使えるかどうかの判断は税務署または税理士へご相談ください。要件は細かく、老人ホームに入所していた場合の扱いなど例外もあります。ここに書いたのは制度の枠組みと期限だけです。
費用は解体費と片付けで大きく変わる
空き家の売却でかかる費用は、通常の売却にかかるもの(仲介手数料・印紙税・登記費用)に加えて、片付けと解体が乗るかどうかで大きく変わります。
| 項目 | 目安 |
|---|---|
| 仲介手数料(法律上の上限) | 3,000万円で売却した場合105.6万円 |
| 印紙税 | 3,000万円の契約書で1万円(2027年3月31日までの軽減) |
| 抵当権抹消の登記費用 | ローンが残っている場合に必要 |
| 解体費 | 木造で坪3〜5万円(30坪なら90万〜150万円) |
| 片付け・残置物処分 | 量と地域で大きく振れます |
価格帯別の早見表と手取りの計算は不動産売却の費用の記事にまとめました。
片付けについては、まず「売主が全部片付けてから引き渡す」以外の選択肢があることを知っておいてください。残置物がある状態のまま買い取る事業者もありますし、仲介でも買主との合意で一部を残せる場合があります。全部処分してから売ろうとして、費用と時間が想定を超えるケースは実際に見かけます。当社にご相談いただく場合も、片付けの前に一度ご連絡いただければ、どこまで残してよいかを含めてご案内できます。
売れないときの出口
売り出しても買い手が付かない場合、次のような選択肢があります。
- 買取に切り替える: 不動産会社が直接買い取る方法です。市場で売るより価格は低くなるのが一般的ですが、買主を探す期間がなくなります。詳しくは空き家の買取の記事で解説しています
- 価格と売り方を見直す: 内覧が入っているかどうかで原因が変わります。土地が長く売れない場合の考え方は土地が売れないときの記事にまとめました
- 相続土地国庫帰属制度を検討する: 相続した土地を国に引き取ってもらう制度です。建物があると使えないなど条件が厳しく、負担金もかかります。要件は相続土地国庫帰属制度の記事と却下事由の記事で扱っています
当社で受けたご相談の例です(地方の市の空き家)。所有者はご相談者のお父様で、老朽化が進み、近隣からの苦情をきっかけに特定空家に指定されたことで、売却の相談に至りました。解体と庭木の伐採にかかる費用が売却価格を上回る見込みとなり、最終的には買取業者に引き取ってもらう形で手放しています。売主側の費用負担は100万円を超え、相談から引き渡しまでは1か月ほどでした。ご相談者は、もっと早く動けていればよかったと話されていました。
放置した場合に何が起きるかは特定空家と管理不全空家の記事に、空き家の火災保険の扱いは空き家の火災保険の記事にまとめています。
空き家の売却でよくある質問
空き家を売却したいのですが、どうすればよいですか?
先に名義(相続登記が済んでいるか)と相続人の同意を確認し、そのうえで解体もリフォームもしない現況のまま複数社に査定を依頼してください。建物に値段が付くかどうかは査定で分かります。その結果を見てから、そのまま売るか、解体するか、買取にするかを決める順番が安全です。
空き家の売却はどこに相談すればよいですか?
売却そのものは不動産会社です。ただし関わる専門家は場面で分かれます。相続登記は司法書士、境界の確定は土地家屋調査士、税の特例が使えるかの判断は税理士または税務署、解体の補助金は市区町村の担当窓口です。順番としては、まず不動産会社に相談して全体像と時間の見通しを立ててから、必要な専門家につないでもらうのが早いです。
相続した空き家を売るときの3,000万円特別控除とは何ですか?
一定の要件を満たす空き家を売ったとき、譲渡所得から最高3,000万円(その家屋と敷地を相続または遺贈で取得した相続人が3人以上のときは1人あたり2,000万円)を控除できる制度です。昭和56年5月31日以前の建築であること、相続開始の直前に被相続人以外が住んでいなかったこと、売却代金が1億円以下であること、相続開始から3年を経過する日の属する年の12月31日までに売ることなどの要件があります。適用できるかどうかの判断は税務署または税理士へご相談ください。
親の空き家を売却したら税金はいくらかかりますか?
売って利益が出た場合に、譲渡所得への課税があります。金額は取得費や所有期間で変わり、上記の特例が使えるかどうかでも大きく変わるため、一律の答えはありません。税額の計算は税務署または税理士へご相談ください。売却にかかる税金の全体像は土地売却の税金の記事で扱っています。
空き家は解体してから売ったほうが高く売れますか?
一概には言えません。更地のほうが買い手が広がる立地もあれば、建物付きで住宅ローンを使える利点が効く立地もあります。確実なのは、解体費が先払いになることと、1月1日時点で更地だとその年の固定資産税が上がることです。解体する前に、現況のままの査定を取ってください。
まとめ: 壊す前に、まず査定
空き家の売り方は、そのまま売る、解体して更地で売る、買い取ってもらうの3つです。分かれ目は建物の古さではなく、買い手がその建物に値段を付けるかどうかにあります。
国交省の取引データを集計すると、築30年台で木造戸建ての価格は土地だけの水準とほぼ並び、それ以降は下回りました。ご自宅が該当するなら、建物に価格が付く可能性は高くありません。
それでも、解体は査定のあとに決めてください。解体費は戻らず、更地にすれば翌年の固定資産税が上がり、買い手の幅も変わります。順番を逆にすると、取り返しがつきません。
相続した空き家なら、税の特例に「3年を経過する日の属する年の12月31日」という期限があります。売り出しから引き渡しまでの日数を考えると、期限の1年前には動き出しておきたいところです。
まずは現況のままで、いくらになるかを把握するところからで構いません。当社の10秒査定は、匿名で、電話番号の入力もなくお使いいただけます。
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