底地の売却は誰に売るかで価格が変わる。借地人への切り出し方と相場の考え方

監修者
吉田 宏
吉田 宏(株式会社SUMiTAS 代表取締役社長)
  • 二級建築施工管理技士
  • 宅地建物取引士
  • 測量士補
  • 賃貸不動産経営管理士

親から引き継いだ土地に、他人の家が建っている。地代は年に数十万円しか入らないのに、相続税の評価では相応の金額がつく。固定資産税を払い、たまに更新料の話が出て、それ以外は何も起きない。

底地(貸宅地)を持ち続けていると、やがて次の疑問に行き着きます。「これ、売れるんでしょうか」。

売れます、と単純にお答えするつもりはありません。ただし、底地の売却では「いくらで売れるか」より先に決まってしまうことがあります。それは「誰に売るか」です。同じ土地でも、売る相手によって手取りは数倍変わります。そして売る相手の選択肢は、最初の一手をどう打つかでほとんど決まります。

この記事の結論
  • 底地の価格は「誰に売るか」で数倍変わる。最も高いのは借地人で、最も安いのは第三者・買取業者
  • 第三者への価格が安いのは、地代から固定資産税を引いた手取りを利回りで割り戻すとその金額にしかならないため
  • 相続税評価額は「更地価格×(1−借地権割合)」で計算されるが、これは第三者に売れる価格とは別物
  • 最初にやるのは借地人への打診。ただし断られた事実は次の交渉に影響するので、切り出し方と順番が重要

底地の価格は「誰に売るか」で決まる

底地の売り方による手取りの違いを示した図。借地人に売る場合は手取りが高く、借地人と一緒に第三者へ売る場合は総額が最大、第三者や買取業者に売る場合は手取りが低いことを、それぞれの理由とともに縦に並べた図

底地の売却・整理方法は、大きく次の5つに整理できます。

選択肢成立の条件価格の考え方
借地人借地人に購入の意思と資金があること完全所有権になる価値で判断されるため、最も高くなりやすい
借地人と共同で第三者へ(同時売却)借地人の合意が必要更地として売れるため総額は最大。ただし借地人と配分を決める必要がある
等価交換(土地を分け合う)借地人の合意と、分割しても使える面積があること売却ではなく整理。分割後は完全所有権として売れる
第三者(投資家)地代収入に見合う利回りが出ること投資商品として評価されるため、利回りで価格が決まる
買取業者ほぼ常に成立する業者が転売益と借地人との交渉リスクを見込むため、最も低くなりやすい

上の2つは借地人の協力が要るかわりに価格が高く、下の2つは借地人と関係なく売れるかわりに価格が低い。これが底地売却の基本構造です。

つまり底地の売却とは、価格の交渉である前に、借地人との関係をどう扱うかの選択です。

なぜ第三者に売ると安くなるのか

「更地なら3,000万円の土地なのに、底地だと数百万円にしかならない」と言われて納得できない方は多いはずです。この差には理由があります。第三者にとって底地は、土地ではなく利回り商品だからです。

計算してみます。次の前提を置きます。

底地価格を利回りから逆算する計算例。更地価格3,000万円の土地で年間地代30万円、固定資産税と都市計画税が年10万円の場合、手取り20万円を期待利回り4%で割ると500万円、6%で割ると約333万円となり、更地価格の11〜17%にとどまることを示した図
  • 更地なら3,000万円で売れる土地
  • 年間の地代収入 30万円(月2万5千円)
  • 固定資産税・都市計画税 年10万円

このとき、買った人の手元に残るのは 30万円 − 10万円 = 年20万円 です。投資家がこの20万円に対して年4%の利回りを求めるなら、支払える金額は 20万円 ÷ 0.04 = 500万円。年6%を求めるなら 20万円 ÷ 0.06 = 約333万円 です。

更地価格3,000万円に対して、333万円から500万円。割合にすると11%から17%にしかなりません。

これは買い叩かれているのではなく、地代の水準がそのまま価格になっているということです。裏を返すと、底地の価格を上げる方法は理屈のうえでは2つしかありません。地代を上げるか、借地人に買ってもらうかです。

※この試算は当社が仕組みを説明するために作成したものです。実際の価格は借地契約の内容、地代の改定履歴、更新までの期間、借地人の属性、土地の立地によって変わります。

借地人にとっては、まったく違う計算になる

同じ底地でも、借地人が買う場合は計算の前提が変わります。借地人はすでに借地権を持っているので、底地を買えば土地が完全な所有権になるからです。

完全所有権になると、次のことが起きます。

  • 地代の支払いがなくなる
  • 更新料・建替承諾料・譲渡承諾料といった一時金が不要になる
  • 建替えや売却に地主の承諾が要らなくなる
  • 金融機関の担保として扱いやすくなり、住宅ローンが組みやすくなる
  • 売るときに「借地権付き建物」ではなく「土地建物」として売れる

借地権付き建物は買い手が限られ、価格も抑えられます。それが完全所有権になるのですから、借地人にとっての価値は投資利回りでは説明できません。だから借地人は、第三者よりも高い金額を出せる立場にあります。

底地を売るなら最初に借地人へ、と言われるのはこのためです。値段の駆け引きの話ではなく、買い手によって払える上限が構造的に違うという話です。

相続税の評価額は、売れる価格ではありません

相続で底地を引き継いだ方が最初に見る数字は、相続税の評価額です。ここで誤解が生まれやすいので整理しておきます。

底地(貸宅地)の相続税評価は、国税庁が次の算式を示しています。

自用地としての価額 − (自用地としての価額 × 借地権割合)

借地権割合は、国税庁の路線価図に記号で示されています。

路線価図の記号借地権割合
A90%
B80%
C70%
D60%
E50%
F40%
G30%

路線価図で「215D」と書かれていれば、路線価は1㎡あたり215,000円、借地権割合は60%という意味です。この場合、底地の評価は更地価格の40%になります。借地権の取引慣行がないと認められる地域では、借地権割合を20%として計算します。

さきほどの3,000万円の土地(借地権割合60%)で言えば、相続税の評価額は1,200万円です。しかし第三者に売ろうとすると、先ほどの試算では333万円から500万円でした。

評価額1,200万円、売れる価格は数百万円。この差が、底地でいちばん多いつまずきです。

ここで気をつけたいことが2つあります。

1つ目は、遺産分割の場面です。相続人どうしで「底地は評価額1,200万円だから、そのぶん他の財産は少なくていい」と話がまとまってしまうと、底地を引き継いだ人だけが実質的に損をすることになります。分けるときに、評価額ではなく売れる価格の見当をつけておく必要があります。

2つ目は、納税資金です。評価額に応じた相続税がかかる一方で、底地を売って作れる現金はそれより小さいことがあります。相続税の申告期限は10か月ですが、底地の売却は借地人との交渉を含むため、それより時間がかかることが珍しくありません。相続した不動産を早めに売るかどうかの一般的な考え方は、こちらの記事で解説しています

最初の一手: 借地人への切り出し方

借地人への打診から断られた後までの時系列フロー。切り出すタイミングの候補、伝え方の要点、借地人が買わない場合に同時売却の再提案、等価交換、第三者への仲介、買取業者という順に進む流れを示した図

ここからが本題です。借地人に最も高く売れる可能性があるとして、では実際にどう切り出せばよいのか。ここを書いている記事はほとんどありません。買取を事業にしている会社の記事では、そもそも借地人に売られては困るという事情もあります。

仲介の立場から、実務的な考え方を整理します。

切り出すタイミング

話を持ちかけやすい節目があります。

  • 契約の更新時期が近いとき。更新料の話をするタイミングは、双方が契約について考える機会になります
  • 相続が発生したとき。地主が代わったことの通知は、自然に接点を持てる場面です。借地人側も「新しい地主はどういう人か」を気にしています
  • 借地人側に変化があったとき。建替えの相談、譲渡や増改築の承諾の依頼が来たときは、借地人が土地の権利について考えているタイミングです
  • 借地人の側で相続があったとき。相続した子世代が「借地のままにしておきたくない」と考えることがあります

逆に、何の節目もないときに突然「売りたいので買いませんか」と伝えると、借地人は「立ち退きを求められるのでは」「地代を上げたいのでは」と身構えることがあります。

伝え方で気をつけること

まず、いきなり価格を提示しないことです。最初に金額を出すと、その金額が交渉の上限として扱われます。借地人に購入の意思があるかどうかを先に確かめ、意思があると分かってから価格の話に入るほうが、結果的に話が進みます。

次に、文書と対面を使い分けることです。関係が良好なら対面や電話から入るほうが早いのですが、代替わりして面識がない場合や、これまで地代の受け渡し以外の接点がない場合は、まず手紙で意向を伝えるほうが受け取られやすくなります。文書にしておくと、後から「言った・言わない」になりません。

そして、期限を切らないことです。借地人にとっても資金の準備が必要な話です。「今月中に返事を」と迫ると断られる確率が上がります。

最後に、不動産会社を間に入れるかどうかを先に決めておくことです。当事者同士だと感情が入りやすく、こじれると修復に時間がかかります。長年の付き合いがある場合ほど、第三者を挟んだほうがお互いに言いやすいことがあります。

断られたときの順番

借地人が「買わない」と言った場合、次の順番で検討します。順番を間違えないことが大切です。

1. 同時売却を再提案する。借地人が底地を買う資金はなくても、「一緒に売って、それぞれの持ち分に応じてお金を受け取る」なら乗れることがあります。借地権と底地をまとめれば更地として売れるので、総額が最も大きくなる方法です。借地人にとっても、借地権単独で売るより有利になる可能性があります。断られた直後にこれを出せるかどうかで、結果が変わることがあります。

2. 等価交換を検討する。土地を分割して、一部を借地人の完全所有、一部を地主の完全所有にする方法です。分割しても双方が使える面積があることが条件になります。

3. 第三者(投資家)への仲介に出す。底地を収益物件として買う投資家がいます。時間はかかりますが、買取業者よりは高くなる可能性があります。

4. 買取業者に売る。最も確実で、最も早く、最も安くなる方法です。

ここで知っておいていただきたいことがあります。借地人に一度断られたという事実は、その後の交渉に影響します。第三者や買取業者は「借地人が買わなかった底地」として見ますし、将来もう一度借地人に話を持ちかけるときにも、前回の経緯が前提になります。

だからこそ、最初の打診は「断られてもよい聞き方」で行うほうが安全です。「売却を検討しているので買ってください」ではなく、「将来的な整理を考えているが、そちらに何かご希望はあるか」という形で意向を確かめるところから始める。この差は小さく見えて、次の手の選択肢を残せるかどうかを分けます。

借地人が複数いる場合

アパートや長屋、あるいは一団の土地に複数の借地人がいる場合は、話が変わります。

全員が同時に買うことは現実的ではないため、次のような整理になります。

  • 買いたいと言う借地人だけに、その部分を分筆して売る。ただし分筆によって、残った土地や売った土地が接道の条件を満たさなくなると、建替えができない土地になってしまうことがあります。分筆できるかどうかは事前に確認が必要です
  • 一括で買取業者に売る。複数の借地人との交渉を業者が引き受ける形になります。価格は下がりますが、地主側の負担は最も小さくなります
  • 順番に個別交渉していく。時間はかかりますが、条件が整った借地人から順に整理できます

複数借地人の底地は、1件ずつの価格よりも「全部でいくらか」で評価されることが多く、単独の底地とは考え方が変わります。まず何筆に分かれていて、誰が何を借りているのかを図面で整理するところから始めてください。

売却の流れと税金

底地の売却の流れそのものは、通常の土地売却と大きく変わりません。ただし借地人との交渉が入るぶん、期間は長めに見ておく必要があります。

  1. 契約内容の確認(借地契約書、地代の額と改定履歴、更新時期、旧法か新法か)
  2. 土地の状況の確認(登記、境界、実測面積、接道)
  3. 売却先の検討と、借地人への打診
  4. 価格の決定と売買契約
  5. 決済・引渡し・所有権移転登記

契約書が見つからないことは珍しくありません。代替わりを重ねた借地では、書面がないまま地代の授受だけが続いているケースがあります。この場合、地代の入金記録や固定資産税の課税明細から関係を整理していきます。契約書がないこと自体が売却を妨げるわけではありませんが、条件の確認に時間がかかります。

売却して利益が出た場合は、譲渡所得として所得税と住民税がかかります。所有期間が5年を超えるかどうかで税率が変わり、相続で取得した場合は被相続人の取得時期を引き継ぎます。先祖代々の土地で取得費が分からない場合、売却額の5%を取得費とみなす方法があり、この場合は利益が大きく計算されます。取得費の資料が残っていないかは、売却の前に確認しておく価値があります。

税額の計算や特例の適用については、税務署または税理士にご確認ください。

売却を仲介で進める場合の媒介契約の選び方は、別記事にまとめています

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底地の売却でよくある質問

底地の売却相場はいくらですか?

底地だけを切り出した公的な価格統計はありません。価格は「誰に売るか」で構造的に変わります。第三者や買取業者に売る場合は、地代から固定資産税などを差し引いた手取りを期待利回りで割り戻した金額が目安になります。本記事の試算(年間地代30万円・固定資産税など10万円・更地価格3,000万円)では、更地価格の11%から17%でした。一方、借地人が買う場合は完全所有権になる価値があるため、これより高い水準が交渉の出発点になります。まずは自分の土地の地代と固定資産税を並べて計算してみてください。

底地を売却するメリットは何ですか?

主に4つあります。①管理と交渉から解放されること(地代の集金、更新料の交渉、建替え承諾の判断が不要になる)②固定資産税の負担がなくなること(地代収入に対して税負担が重い底地では、実質的な持ち出しになっている場合があります)③相続対策になること(評価額に対して現金化できる額が小さいため、相続人が納税で困る事態を避けられます)④次世代に交渉を引き継がせずに済むこと。逆にデメリットは、地代収入がなくなることと、価格が更地価格より大幅に低くなることです。

底地権だけを売却することはできますか?

できます。借地人の承諾は不要で、地主の判断だけで第三者に売却できます。ただし借地権は買主にそのまま引き継がれるため、買主は「借地人がいる土地」を買うことになります。この点が価格に反映されます。なお、借地人に無断で第三者に売ること自体は法律上可能ですが、新しい地主と借地人の関係がこじれる原因になることがあります。売却を決めた場合でも、借地人に事前に伝えるかどうかは検討したほうがよい点です。

借地人が底地を買い取るとどうなりますか?

その土地は完全な所有権になります。借地人にとっては、地代の支払いがなくなり、更新料や建替承諾料といった一時金も不要になります。建替え・増改築・売却に地主の承諾が要らなくなり、金融機関の担保としての評価も上がるため、住宅ローンが使いやすくなります。売却するときも「借地権付き建物」ではなく「土地建物」として売れるので、買い手の幅が広がります。地主側から見ると、この価値があるからこそ借地人は第三者より高い金額を出せるという関係になります。

地代が安いまま何十年も変わっていません。上げてから売るべきですか?

理屈のうえでは、地代が上がれば底地の投資価値も上がります。ただし地代の改定は借地人との交渉が必要で、合意できなければ調停や訴訟になることもあります。売却を急がない場合の選択肢としては検討に値しますが、「売るために地代を上げる」という順番で切り出すと、借地人との関係が悪化して売却そのものが難しくなることがあります。地代の改定と売却の打診は、どちらを先にするかで結果が変わるため、進め方を決めてから動くことをおすすめします。

借地人と長年連絡を取っていません。何から始めればよいですか?

まず登記で現在の建物所有者を確認してください。相続によって借地人が代わっているのに、地代だけが従来どおり振り込まれていることがあります。建物の登記名義と地代の支払い名義が一致しているかを確認したうえで、書面で連絡を取るところから始めるのが安全です。長期間接点がない場合ほど、いきなり売却の話をせず、現状確認から入るほうが話が進みやすくなります。

まとめ: 順番を決めてから動く

底地の売却でいちばんもったいないのは、買取業者に相談するところから始めてしまうことです。最も確実で最も早い方法ですが、同時に最も安い方法でもあります。しかも一度その道に入ると、借地人に打診する機会は失われます。

順番はこうです。

  1. 契約内容と地代、固定資産税を並べて、自分の底地の収支を把握する
  2. 相続税評価額と、利回りから逆算した価格の両方を出しておく(この2つは別物です)
  3. 借地人に、断られてもよい形で意向を確かめる
  4. 借地人が買わないなら、同時売却を提案する
  5. それも難しければ、第三者への仲介、最後に買取業者を検討する

1と2は自分で計算できます。地代の年額と固定資産税の年額。この2つの数字を並べるところから始めてください。

なお、底地に隣接して自用地や古家をお持ちの場合、そちらは通常の不動産として査定できます。SUMiTASの10秒査定は、住所と物件情報を入れるだけで匿名・電話なしで概算価格を確認できます。底地の整理とあわせて資産全体を把握したい場合の材料としてお使いください。

借地権の側から見た仕組みについては、こちらの記事で解説しています。

田や畑、山林もあわせて相続した場合は、それぞれの売り方を別の記事で解説しています。

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本記事の相続税評価に関する記述は、国税庁「貸宅地の評価」および「路線価図の説明」(借地権割合の記号A〜G)によります。底地価格の試算は、記載した前提条件をもとに当社が仕組みの説明のために作成したもので、実際の取引価格を示すものではありません。底地のみを対象とした公的な価格統計は存在しないため、本記事では相場の数値を提示していません。税制に関する記述は2026年8月時点の情報です。

監修者
吉田 宏
吉田 宏(株式会社SUMiTAS 代表取締役社長)
  • 二級建築施工管理技士
  • 宅地建物取引士
  • 測量士補
  • 賃貸不動産経営管理士

愛媛大学在学中に愛媛県で株式会社アート不動産を創業する。現在アート不動産では、アパマンショップ(賃貸)を5店舗、SUMiTAS(売買)を2店舗・管理センターを1店舗、売買店舗を2店舗運営。吉田 宏の詳細プロフィールはこちら