使う予定がない土地を売却したら、すぐに売却することをおすすめします。
「相続の手続きをしたばかりなのに、すぐに売ってもいいものか」と思うかもしれませんが、相続後に土地をどう扱うかは所有者次第です。維持費や特例措置などの面から見ても、不要な土地は早く手放すほうがメリットは大きいでしょう。
本記事では、相続した土地をすぐに売却したほうがいい理由や、売却時に受けられる特例措置などをお伝えします。使わない土地を所有している方や、これから所有することになりそうな方はぜひ、参考にしてください。
- 維持費や税負担を軽減できるため、相続後すぐの売却が有利である
- 3年以内に売却すれば、譲渡所得税の特例措置を利用できる
- 不動産会社に相談することで、売却や活用のアドバイスが得られる
目次
相続した土地をすぐに売却したほうがいい理由
相続した土地をすぐに売却したほうがいい理由には、
- 土地を現金化できるから
- 維持費がかからなくなるから
- 特例措置が受けられるから
- 資産価値が下がる可能性あるから
- 相続トラブルを避けられるから
の、5つが挙げられます。
それぞれ詳しく見ていきましょう。
土地を現金化できるから
土地を所有し続けるためには、さまざまな費用がかかります。もし土地を使ったり活用したりする予定がないのであれば、その費用は出ていく一方です。
しかしすぐに売却すれば維持費がかからなくなり、手元に現金が入ってきます。
仲介では買い手が見つかりづらい特殊な形状の土地や田舎の土地でも、不動産会社に買い取ってもらえる可能性があるので、まずは不動産会社に相談しましょう。
維持費がかからなくなるから
土地を所有し続ける限りは、固定資産税や都市計画税などの税金や、土地を管理する手間と費用がかかります。1年単位で考えると大金でなくとも、10年、20年と続くと土地を維持するためだけに数百万円を使うことになるでしょう。
とくに更地の場合は固定資産税が軽減される「住宅用地の特例」が適用されないため、建物がある場合よりも固定資産税が最大6倍、都市計画税が約3倍も高くなってしまうのです。
土地を売却すれば税負担と管理義務のどちらもなくなるため、土地の維持費が一切かからなくなります。
特例措置が受けられるから
土地を売却して利益が出ると、利益部分に対して「譲渡所得税」がかかります。
しかし相続した不動産に関しては、3年以内に売却すれば特例措置によって譲渡所得税を抑えられる可能性があります。期間を過ぎてしまうと特例措置が受けられず、売却後に手元に残るお金が減ってしまうので、売却を検討しているのであれば、相続から3年以内に売却したほうが良いでしょう。
どのような特例措置が受けられるのかは、後ほど説明します。
資産価値が下がってしまうから
土地は資産価値が下がりづらい不動産ですが、地価は毎年変動しているため、数年後に今と同じ価格で売却できるとは限りません。物価上昇や都市開発によって地価が上がる可能性もあれば、逆に社会情勢によっては下がってしまう可能性もあるのです。
相続した土地の地価が上昇傾向にあるのならば、売り時を逃さないためにも早めに売却を検討したほうが良いでしょう。
相続トラブルを避けられるから
相続時に土地を共有名義にした場合、新たに相続が発生すると共有者がどんどん増えていきます。共有名義で土地を売却するときには共有者全員の承諾が必要になるため、共有者が増えるほど売却が難しくなります。
もし共有者全員が今後土地を使う予定がないのであれば、土地を売却したお金を法定相続分通りに分割したほうが、将来的なトラブルを回避できるでしょう。
共有名義でよくあるトラブルや解消法をまとめたコラムがありますので、こちらも参考にしてください。
相続した土地をすぐに売却すると受けられる特例措置
相続した土地を売却したときに受けられる特例措置は、
- 取得費加算の特例
- 空き家の譲渡所得の3,000万円特別控除
の2つです。これらの特例措置は併用できないため、制度の概要や要件を見て、自分にメリットが大きい制度を選びましょう。
取得費加算の特例
「取得費加算の特例」は、土地を売却して得た利益から、相続税の一部を取得費に加算できる特例です。計算式を見てみましょう。
【計算式】
- 譲渡所得 = 売却価格 ー{(取得費 + 相続税の一部)+譲渡費用 }
譲渡所得を計算する際には、売却価格から不動産の取得費や譲渡費用を差し引きますが、特例を利用すれば相続税の一部が加算されます。
通常の売却よりも譲渡所得が低くなり、譲渡所得税を抑えられるのがこの特例の特徴です。
続いて、特例を利用する要件を見てみましょう。
【要件】
- 相続や遺贈により財産を取得した者であること
- その財産を取得した人に相続税が課税されていること
- 相続開始のあった日の翌日から相続税の申告期限の翌日以後3年を経過する日までに譲渡していること
参考:国税庁「No.3267 相続財産を譲渡した場合の取得費の特例」
この特例を利用できるのは、要件にもあるように“相続税が課税された人”のみなので、相続税が発生していない土地は利用できません。
空き家の譲渡所得の3,000万円特別控除
空き家を更地にした場合や、被相続人が住んでいた家の敷地の一部を売却する場合などは、「空き家の譲渡所得の3,000万円特別控除」が適用される可能性があります。この特例を利用すれば、譲渡所得から3,000万円が控除され、大きな節税効果が得られます。
要件を一部見てみましょう。
- 相続の時から譲渡の時まで事業用、貸付け用または居住用に供されていたことがないこと
- 相続開始から3年を経過した年の12月31日までに売ること(令和9年12月31日までは4年間に延長)
参考:国税庁「No.3306 被相続人の居住用財産(空き家)を売ったときの特例」
参考:国土交通省「空き家の発生を抑制するための特例措置(空き家の譲渡所得の3,000万円特別控除)」
他にも細やかな要件が設定されているため、空き家を解体した場合であっても適用されない可能性があります。適用要件も含めて、対象となるかを売却前に確認しておきましょう。
相続した土地をすぐに売却する流れ
相続した土地の売却はどのような流れで進むのか、相続が発生した時点から簡単に見てみましょう。
- 法定相続人を確認し、全員で遺産分割協議を行う
- 法務局にて相続登記を行う(または司法書士に代行を依頼する)
- 不動産会社に売却の相談をする
- 売却活動を行う
- 購入希望者が見つかったら売買契約を結び、土地を引き渡す
- 売却金を法定相続分に応じて分割する
すでに相続登記までが終わっている場合は、手順3の不動産会社への相談から始めましょう。共有名義の土地を売却するときには、引き渡し後に売却金を法定相続分に応じて分割する作業が発生します。
相続した土地をすぐに売却する方法
相続した土地を売却するときには、
- 不動産会社に仲介または買取を依頼する
- 空き家バンクを利用する
などの方法があります。ここでは、それぞれの特徴を見てみましょう。
不動産会社に仲介または買取を依頼する
土地を売却したいときには、どのような土地でもまずは不動産会社に相談することをおすすめします。仲介では買い手を見つけるのが難しいような田舎の土地や特殊な形状の土地でも、不動産会社に買い取ってもらえる可能性があるからです。
また、売却は難しくとも土地活用が適している土地であれば、活用のアドバイスも得られるでしょう。売却以外の選択肢が広がるのも、不動産会社に相談するメリットと言えます。
空き家バンクを利用する
空き家を買いたい人と売りたい人をつなげる「空き家バンク」には、土地情報も掲載できるので、田舎の土地や山、崖地などを安価に売り出している方も多くいます。
空き家バンクを利用するメリットは、掲載料が無料で、売買契約から引き渡しまでを全て個人間で行えば、仲介手数料がかからないことです。
ポータルサイトの掲載では購入希望者が見つかりづらい土地でも、空き家バンクを通じて買い手が見つかる可能性もあります。仲介ではなかなか買い手が見つからないときに、掲載してみると良いでしょう。
相続した不要な土地はすぐに売却を!
土地は資産にはなりますが、所有し続ける限りは税金や管理費などの維持費がかかります。将来的に使ったり活用したりする予定がないのなら、相続してからすぐに売却するほうが得られるメリットが大きいです。
とくに相続した土地の場合は、相続から3年以内の売却であれば特例措置を利用して、手元により多くのお金を残せるでしょう。
自分では売れそうにないと思う土地でも、不動産会社に相談することで思わぬ売却方法や活用方法のアドバイスをもらえる可能性があります。使う予定のない土地を相続した方は、まずは不動産会社に相談しましょう。