査定を受けたあとで「やっぱりやめよう」「他社にお願いしよう」と思ったとき、どう伝えればいいか迷うと思います。時間を使ってもらった手前、言いにくいのは自然なことです。
先にお伝えすると、査定後に断るのは普通のことです。査定は見積もりの段階で、契約する義務はありません。費用も原則としてかかりません。不動産会社の側も、複数社に査定を依頼したうえで1社を選ぶ流れを前提に動いています。
この記事では、状況別にそのまま使える例文を12本と、電話で理由を聞かれたときの答え方、そしてすでに媒介契約を結んでしまった場合の解除の方法まで整理します。急ぐ方は、次の図でご自分の状況に近いものを探してください。
- 査定後に断るのは自由。契約する義務はなく、費用も原則としてかからない
- 伝え方より早さが大事。「検討中」のまま連絡しないのが一番こじれる
- 媒介契約を結んだあとでも解除できる。ただし専任・専属専任は費用の償還を求められることがある
- 断ったあとも営業が続く場合は、宅地建物取引業法で勧誘の継続が禁じられている

目次
不動産査定を受けたあとに断ってもいい?
断って問題ありません。査定はあくまで「いくらで売れそうか」の見積もりで、そこから先に進むかどうかは売主が決めることです。
不動産会社の側から見ても、査定は日常の業務です。当社サイトの検索データを見ても、この記事に辿り着く方の多くが「他社で決めた」「複数社に頼んでしまった」という状況で、複数社を比べたうえで1社を選ぶのが一般的な流れになっています。断られること自体は織り込み済みだと考えてください。
ただし、担当者が本当に困るのは断られることではなく、「検討中」のまま連絡が途絶えることです。返事がないと、まだ可能性があると考えて連絡を続けることになります。早く伝えたほうが、お互いにとって楽になります。
断るときの注意点
断ると決めたらできるだけ早く伝える
査定後に何日も返事をしないでいると、その間ずっと見込み客として扱われます。定期的な連絡や資料の送付が続く原因もここです。決めた時点で伝えれば、それで終わります。
連絡を無視しない
無視は「断った」ことになりません。それどころか、確認のための連絡が増えます。ひと言でよいので返してください。
なお、他社に決めたことを隠す必要もありません。売却の依頼を受けた会社は、物件をレインズ(国土交通大臣が指定した、不動産会社どうしが物件情報を共有するネットワーク)に登録し、ポータルサイトにも掲載します。同業者はそこで気づくので、事実と違う理由を作るとかえって気まずくなります。
曖昧な伝え方をしない
「もう少し考えます」「また連絡します」は、断りとして受け取られません。「今回は見送ります」「他社にお願いすることにしました」と、結論を先に置いてください。理由は詳しく説明しなくてかまいません。
状況別の断り方と例文
ここからは、そのまま使える文面です。ご自分の状況に近いものをお使いください。
メール: 売却そのものをやめる場合
件名: 査定のお礼とご連絡(〇〇〇〇)
〇〇不動産 〇〇様
先日は査定をしていただき、ありがとうございました。
家族と相談した結果、今回は売却を見送ることにいたしました。
お時間をいただいたにもかかわらず、申し訳ございません。
丁寧にご説明いただき、大変参考になりました。
またご相談させていただくことがあるかと存じますので、その際はよろしくお願いいたします。
〇〇〇〇
メール: 他社で決めた場合
件名: 媒介契約についてのご連絡(〇〇〇〇)
〇〇不動産 〇〇様
先日は査定をしていただき、ありがとうございました。
検討の結果、今回は他社にお願いすることにいたしました。
ご期待に沿えず申し訳ございません。
〇〇様のご説明はとても分かりやすく、判断の助けになりました。
今後ご縁がありましたら、あらためてご相談させてください。
〇〇〇〇
会社名を伝える必要はありません。聞かれた場合も「社名は控えさせてください」で問題ありません。
メール: 一括査定で依頼した残りの会社へ
一括査定を使うと数社から連絡が来ます。1社に決めたら、残りの会社にも同じ文面をまとめて送って差し支えありません。
件名: 査定のお礼とご連絡(〇〇〇〇)
〇〇不動産 〇〇様
このたびは査定をしていただき、ありがとうございました。
複数社に依頼しておりましたが、検討の結果、今回は他社にお願いすることにいたしました。
今後のご連絡は不要です。
お手数をおかけしました。ありがとうございました。
〇〇〇〇
「今後のご連絡は不要です」の一文を必ず入れてください。これがあるかどうかで、その後の連絡の有無が変わります。
なお、一括査定サイトを経由して依頼した場合は、サイトの運営会社にキャンセルを連絡するという方法もあります。各社へ個別に連絡する手間を省けます。
メール: 訪問査定・内覧のあとで断る場合
現地を見てもらったあとは、相手の負担が大きい分だけ言いにくくなります。ただ、伝えることは同じです。
件名: 先日のご訪問のお礼(〇〇〇〇)
〇〇不動産 〇〇様
先日はご訪問いただき、ありがとうございました。
ご提案いただいた内容を検討しましたが、今回は他社にお願いすることにいたしました。
現地まで足を運んでいただいたのに申し訳ございません。
ご説明いただいた点は今後の参考にさせていただきます。
〇〇〇〇
売却する側の内覧対応については家を売るときの内覧の記事でまとめています。
メール: 買取の査定・申込をキャンセルする場合
買取は不動産会社が直接買主になる取引です。売買契約を結ぶ前であれば、キャンセルに費用はかかりません。買取の申込書に署名していても、それは契約そのものではないため、この段階なら断れます。
件名: 買取のお申し込みについて(〇〇〇〇)
〇〇不動産 〇〇様
先日は買取のご提案をいただき、ありがとうございました。
恐れ入りますが、事情により今回のお申し込みを取り下げさせていただきたく、ご連絡いたしました。
ご準備を進めていただいていたにもかかわらず、申し訳ございません。
〇〇〇〇
ただし売買契約を結んだあとは扱いが変わります。手付金を支払っている場合、その放棄によって解除することになります。契約書の内容を確認したうえで進めてください。
メール: 断ったあとも連絡が続く場合
件名: ご連絡の停止のお願い(〇〇〇〇)
〇〇不動産 〇〇様
先日、今回は見送る旨をお伝えしましたが、その後もご連絡をいただいております。
恐れ入りますが、今後の勧誘のご連絡はお控えいただきますようお願いいたします。
〇〇〇〇
この一文には法律上の意味があります。理由は「断ったあとも営業が続くときの止め方」の章で説明します。
電話: 査定直後にその場で断る
「ご提案ありがとうございました。検討しましたが、今回は他社にお願いすることにいたしました。お時間をいただいたのに申し訳ございません」
結論を先に言い切るのがコツです。理由から話し始めると、そこに対する提案が返ってきて長引きます。
電話: 「理由をお伺いしてもよろしいですか」と聞かれたとき
これはほぼ必ず聞かれます。担当者としては、条件を変えれば挽回できるかを確認したいのと、社内への報告に理由が要るためです。
「担当の方の対応に不満があったわけではありません。家族で相談して決めたことですので、ご理解いただければと思います」
条件面(査定額や手数料)を理由として挙げると、そこを調整する提案が返ってきます。長引かせたくない場合は、条件以外の言い方にしてください。
電話: 「もう一度だけお会いできませんか」と言われたとき
「お気持ちはありがたいのですが、すでに決めておりますので、お会いしてもご期待に沿えません。ここで区切りとさせてください」
「決定事項である」と伝えることが要点です。「今は忙しくて」のように時間の問題にすると、日を改めて連絡が来ます。
電話: 担当者が不在で伝言になるとき
「〇〇様に、査定をお願いしていた〇〇からとお伝えください。今回は見送らせていただく旨をご連絡しました。折り返しのお電話は不要です」
伝言だけで完結させたい場合は、折り返しが不要であることを必ず添えてください。
LINEでやり取りしている場合
担当者とLINEでやり取りしていたなら、そのまま送って問題ありません。
「先日はありがとうございました。検討の結果、今回は他社にお願いすることにいたしました。ご対応いただき感謝しております」
媒介契約を結んだあとに断るには
すでに媒介契約を結んでいる場合も、解除はできます。ただし契約の種類によって、費用の扱いが変わります。

有効期間は3か月以内。自動更新はされない
標準的な媒介契約書では、3種類とも有効期間は3か月を超えない範囲で決めることになっています。専任媒介と専属専任媒介については、宅地建物取引業法でも3か月が上限と定められています。
そして自動更新はされません。更新するには売主から文書などで申し出る必要があります。つまり、何もしなければ3か月で契約は終わります。急ぎでなければ、満了を待って更新しないのが最も揉めない方法です。
期間の途中で解除する場合
期間中の解除も可能です。費用の扱いは次のようになります。
- 一般媒介契約: 標準的な媒介契約書では、費用の償還を請求できるのは「売主が明示していない他社に依頼して成約させた場合」に限られています。単に解除するだけであれば、この条項には当たりません
- 専任媒介・専属専任媒介: 売主の都合による解除の場合、それまでの販売活動に要した費用の償還を請求されることがあります。ただし請求できる額は約定報酬額(媒介契約で定めた仲介手数料の額)が上限と定められています
- 不動産会社の側に義務違反がある場合: 販売状況の報告が来ない、レインズに登録しない、業務を誠実に行わない、といった場合は、期間を定めて是正を求めたうえで解除できます。この場合に費用を負担する必要は基本的にありません
実務では、話し合いで円満に終わるケースが大半です。不満がある場合は、まず率直に伝えてください。契約の種類ごとの違いは媒介契約の記事で詳しく解説しています。
解除の伝え方
書面でなくても、電話やメールで意思を伝えれば足ります。記録を残しておきたい場合はメールが確実です。
件名: 媒介契約の解除について(〇〇〇〇)
〇〇不動産 〇〇様
お世話になっております。
〇月〇日に締結いたしました媒介契約について、事情により解除させていただきたく、ご連絡いたしました。
これまでご対応いただき、ありがとうございました。
手続きに必要なことがございましたら、ご教示ください。
〇〇〇〇
断ったあとも営業が続くときの止め方
はっきり断ったのに連絡が続く場合の手順です。こうした対応をする会社は一部ですが、対処の方法は決まっています。
1. 「勧誘を受けたくない」と明確に伝える
宅地建物取引業法では、契約を締結しない旨の意思を表示した相手に対して勧誘を続けることが禁止されています(宅地建物取引業法47条の2第3項、同法施行規則16条の11第1号ニ)。この「意思の表示」には、勧誘を引き続き受けることを希望しない旨の意思も含まれます。
つまり「今後の勧誘のご連絡はお控えください」と伝えた時点で、それ以降の勧誘は禁止行為に当たります。前章の例文にこの一文を入れているのはそのためです。
同じ規則では、次の行為も禁止されています。
- 勧誘の前に、会社名・担当者名・勧誘の目的を告げずに勧誘すること(同号ハ)
- 迷惑を覚えさせるような時間に電話または訪問すること(同号ホ)
- 深夜や長時間の勧誘など、私生活や業務の平穏を害する方法で困惑させること(同号ヘ)
2. 個人情報の利用停止を求める
勧誘を止めても、資料やダイレクトメールが届き続けることがあります。この場合は、個人情報の取り扱いとして対応を求められます。
個人情報保護法では、本人は個人情報取扱事業者に対し、保有個人データを利用する必要がなくなった場合や、取り扱いによって本人の権利や正当な利益が害されるおそれがある場合に、利用の停止や消去、第三者への提供の停止を請求できると定められています(同法35条5項)。請求に理由があると判断されれば、事業者は必要な限度で対応する義務を負います。
各社のサイトには個人情報の問い合わせ窓口が設けられています。「査定の依頼は終了しているので、登録情報の利用停止をお願いします」と伝えてください。必ず消去されるとは限りませんが、法律に根拠のある依頼です。
3. それでも止まらない場合は行政の窓口へ
改善しない場合は、その会社の免許を出している行政庁に相談できます。免許の種類は会社のサイトや名刺に記載があり、「〇〇県知事(1)第〇〇号」なら都道府県、「国土交通大臣(1)第〇〇号」なら地方整備局が窓口です。都道府県の不動産業を担当する課で相談を受け付けています。
相談する際は、いつ・どのような連絡があったかの記録があると話が早くなります。着信履歴やメールは残しておいてください。
よくある質問
一度断った会社に、後日また依頼してもいいですか?
問題ありません。売却の時期を変えた、別の物件を売ることになった、といった理由で再び相談される方はいます。誠実に断っていれば、次の相談がしにくくなることはありません。
断る理由は正直に言うべきですか?
理由を詳しく説明する義務はありません。ただ、事実と違う理由は避けてください。他社に依頼すればレインズやポータルサイトで分かりますし、「売却をやめた」と伝えたのに売り出されていれば、気まずさが残ります。理由を言いたくなければ「家族で相談して決めました」で十分です。
無視してもいいですか?
おすすめしません。断ったことにならず、連絡が続く原因になります。ひと言返すほうが早く終わります。
菓子折りやお詫びの品は必要ですか?
不要です。査定は不動産会社が営業の一環として無料で行っているものなので、断ることへの負い目を感じる必要はありません。ひと言のお礼で十分です。
査定を受けただけで費用を請求されることはありますか?
原則としてありません。不動産会社が受け取れる報酬は国土交通省の告示で決まっていて、案内料や申込料といった名目でそれ以外のお金を受け取ることは認められていないためです。仲介手数料も売買契約が成立したときに発生する成功報酬なので、契約に至らなければ支払いは生じません。
ただし「必ず無料」と言い切れる制度ではありません。国土交通省の解釈・運用の考え方では、遠方への現地調査など売主が特別に依頼した業務の実費にあたるものは、負担について事前に売主の承諾を得ている場合に限り、報酬とは別に受け取ってよいとされています。裏を返せば、事前の説明も承諾もないまま請求されたなら、応じる必要はありません。なお、不動産鑑定士に依頼する「鑑定評価」は、相続や裁判で正式な評価額が必要なときに使う有料のサービスで、不動産会社の査定とは別のものです。
まとめ: 早く、はっきり、文面で伝える
査定後に断るのは普通のことです。伝え方に完璧さは要りません。早く、はっきり、文面で伝えれば、それで終わります。
すでに媒介契約を結んでいる場合も解除できます。急ぎでなければ、3か月の期間満了を待って更新しないのが最も揉めない方法です。断ったあとも営業が続く場合は、「今後の勧誘の連絡は控えてください」と明確に伝えてください。それ以降の勧誘は宅地建物取引業法で禁じられています。
そもそも、断る手間が発生しない査定の受け方もあります。当社の10秒査定は、住所と物件情報を入れるだけで匿名・電話番号なしで概算価格を確認できます。営業の連絡は来ないので、まず相場だけを知りたい段階に向いています。
会社を選ぶ段階まで進んだ方は、不動産売却はどこがいいかの記事で、査定で確認しておきたい点をまとめています。
本記事の内容は2026年8月時点の法令・制度にもとづきます。勧誘の禁止行為は宅地建物取引業法47条の2第3項および同法施行規則16条の11、査定の費用の扱いは同法46条1項にもとづく報酬の告示(昭和45年建設省告示第1552号)と「宅地建物取引業法の解釈・運用の考え方」第46条第1項関係、媒介契約の有効期間は同法34条の2第3項・第4項、契約期間と費用償還の扱いは標準媒介契約約款(平成2年建設省告示第115号・最終改正 令和4年国土交通省告示第583号)、個人情報の利用停止は個人情報の保護に関する法律35条によります。検索語の分類は当社サイトのGoogle検索データ(2026年5月23日〜8月22日・本記事が表示された検索語の上位100語)によります。
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