古家付き土地の売却、解体すべきか。判断の基準と、後悔しない売り方

古家付き土地の売却、解体すべきか。判断の基準と、後悔しない売り方

監修者
吉田 宏
吉田 宏(株式会社SUMiTAS 代表取締役社長)
  • 二級建築施工管理技士
  • 宅地建物取引士
  • 測量士補
  • 賃貸不動産経営管理士

親から相続した古い家。長く空き家のままの実家。「もう建物に価値はないだろうから、更地にしてから売ろう」と考えて、解体業者の見積もりから取り始める方は少なくありません。

しかし、売却の現場から言うと、「とりあえず解体」は最も高くつく失敗になり得ます。解体費を100万円以上かけたのに建物付きのままとほとんど変わらない価格でしか売れなかったケースも、逆に解体して更地にしたら固定資産税が跳ね上がったケースも、珍しい話ではありません。

解体するかどうかは、費用の問題ではなく、「その建物に値段が付くか、買主にとって邪魔か」の見立ての問題です。この記事では、その見立ての基準を先に示し、そのうえで売り方の選択肢と注意点を整理します。

この記事の結論
  • 解体は「売れないから壊す」ではなく「壊した方が高く早く売れると確認できたら壊す」
  • 判断の軸は3つ。建築年(旧耐震かどうか)・構造と状態・買主層
  • 迷ったら壊さずに売り出せる。解体は後からでもできるが、壊した建物は戻せない

古家付き土地の売り方は4つある

「古家付きで売るか、更地で売るか」の二択で考えがちですが、実際の出口は4つあります。

古家付き土地の売り方4つの比較。古家付き・中古一戸建て・更地(解体費90万〜150万円)・買取業者について、費用や税金の違いと向くケースを整理した図解
  1. 古家付き土地として売る: 建物の価値をゼロ扱いにして土地として売り出す方法。解体費がかからず、固定資産税の住宅用地特例も維持されます。買主が「土地探しの実需層」(自分で住む目的の買主)なら解体費分の値引き交渉が入りやすい一方、リノベーション目的の買主なら建物がプラスに働くこともあります
  2. 中古一戸建てとして売る: 建物にまだ住める価値がある場合の売り方。買主が住宅ローンを組みやすく、価格も建物評価分だけ上がる余地があります
  3. 更地にして売る: 買主がすぐ建築でき、土地の状態も確認しやすいため売りやすくなる場合があります。ただし解体費の持ち出しが先に発生し、1月1日をまたいで更地で保有すると固定資産税の住宅用地特例(最大6分の1)が外れます
  4. 買取業者に売る: 価格は仲介より下がりますが、解体もリフォームも残置物処理も不要で、早く売却できます。「手間と時間をかけたくない」場合の現実解です

どれが正解かは物件によって違います。そして1〜3の分かれ目になるのが、次の「建物の見立て」です。

解体すべきかは、この順番で判断する

解体すべきかの判断フロー。建築年(1981年6月以降か)・建物の状態・買主層の3段階で、建物を活かして売るか価値を見込まないかに分岐する図解

軸1: 建築年。1981年(昭和56年)5月が最初の分かれ目

建築確認が1981年6月以降の建物は「新耐震基準」で建てられています。新耐震なら、築年数が古くても中古一戸建てとして評価される余地が十分あります。それより前の「旧耐震」の建物は、買主が住宅ローンや地震保険で不利になりやすく、建物価値が付きにくくなります。旧耐震かどうかは、感覚ではなく登記や建築確認の日付で確認してください

軸2: 構造と状態。「古い」と「傷んでいる」は別物

築40年でも、雨漏りがなく基礎がしっかりした在来木造は、リノベーション前提の買主に選ばれます。逆に築25年でも、雨漏り・シロアリ・基礎の傾きがあれば建物価値はほぼ付きません。見るべきは築年数の数字ではなく、雨漏りの跡・シロアリ被害・基礎の亀裂・床の傾きの4点です。当社では、解体の見積もりを取る前に、建物の状態を見てから判断することをおすすめしています。「壊してから、残せば売れた建物だったと分かる」のが一番の後悔だからです。

軸3: 買主層。その土地を買うのは誰か

同じ古家付き土地でも、エリアによって買主層が違います。建売業者や土地探しの実需層が中心のエリアなら建物は「解体費分のマイナス」として扱われ、古民家リノベーションの需要があるエリアなら建物は「素材」になります。ここは売主が自力で判断しにくい部分なので、査定時に「このエリアで買うのはどんな層か」を不動産会社に必ず聞いてください。答えられない会社は、その土地を売る戦略を持っていません。

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解体して更地にすると、何が変わるか

更地にすれば必ず高く早く売れる、というのは思い込みです。データと制度で確認します。

首都圏の登録から成約までの日数推移(2015〜2025年)を示した折れ線グラフ。2025年は中古戸建100.9日、土地89.8日で、更地でも売れる速さの差は小さい

首都圏の実測では、売り出し(登録)から成約までの平均日数は中古戸建100.9日に対して土地89.8日(2025年・東日本レインズ)。更地の方がやや早い傾向はあるものの、劇的な差ではありません。「更地にしさえすれば早く売れる」と期待して解体費を先払いする根拠としては弱い数字です。

一方、確実に変わるものがあります。

  • 解体費の持ち出しが先に発生する: 木造の戸建てで、一般に公表されている相場では坪3〜5万円、30坪なら90万〜150万円程度が目安です(規模や立地のほか、付属物や庭木の撤去、狭い道路での作業などで上振れします)
  • 固定資産税の住宅用地特例が外れる: 住宅が建っている土地は固定資産税の課税標準が最大6分の1に軽減されています。更地にしてそのまま1月1日を迎えると、この特例が外れて土地の固定資産税が大きく上がります。解体するなら売却スケジュールとセットでが鉄則です

つまり更地化は「先行投資と税負担の増加を受け入れてでも、買主層に対して更地の方が確実に刺さる」と見立てられたときの手段です。順番は必ず「見立てが先、解体は後」です。

古家付きのまま売るときの注意点3つ

古家付きで売り出す場合は、この3点を押さえてください。

注意点理由
境界を確認しておく(確定測量の要否を査定時に相談)古い土地は境界が未確定のことが多く、隣地との立ち会いに数か月かかる場合があります。売り出してから発覚すると引き渡しが延びます
残置物は「そのまま」にしない家財が残ったままだと内覧の印象が大きく下がります。処分してから売るか、残置物ごと買取かを先に決めます
契約不適合責任の免責を契約書に明記する古い建物は雨漏り等の欠陥が「あって当然」の前提で取引します。「建物については契約不適合責任を負わない」という特約を入れるのが一般的です。ただし知っている不具合は必ず告知します(隠すと免責が効きません)

境界と測量については、監修者が測量士補の資格を持つ当社として強くお伝えしたい点があります。古家付き土地の売却で引き渡しが遅れる原因の筆頭は、価格交渉ではなく境界です。査定の段階で「境界標はあるか」「測量図は手元にあるか」を確認しておくだけで、後の工程が大きく変わります。

買う側は何を見ているか。売主の準備リストに変換する

古家付き土地の買主が内覧や資料で確認しているポイントは、売主の準備リストにそのまま変換できます。

買主が見る5つのポイントを売主の準備に変換した図解。再建築の可否・解体のしやすさ・地中の埋設物・境界と越境・ライフラインについて、用意すべき資料や確認事項を並べている
  • 買主は再建築できるかを見る → 売主は接道状況・用途地域を資料で示せるように準備する
  • 買主は解体しやすいかを見る → 売主は前面道路の幅・隣家との距離が分かる写真や資料を用意する
  • 買主は地中に何か埋まっていないかを心配する → 売主は過去の建て替え履歴・浄化槽や井戸の有無を告知書に正直に書く
  • 買主は境界と越境を見る → 売主は境界標の位置を確認し、ブロック塀や樹木の越境があれば先に把握しておく
  • 買主はライフラインの引き込みを見る → 売主は上下水道・ガスの引き込み状況を確認しておく

これらは全て「聞かれてから調べる」と1つずつ数日〜数週間かかります。先に揃えてある売主の物件は、買主からも不動産会社からも「売りやすい物件」として扱われます

古家付き土地の売却でよくある質問

解体費用はいくらぐらい見ておけばいいですか?

木造の戸建てで、おおむね坪3〜5万円が目安で、30坪なら90万〜150万円程度というのが一般に公表されている相場です。ただしこれは本体の解体だけの話で、庭木・物置・ブロック塀の撤去、アスベストの有無、前面道路が狭く重機が入りにくい立地などで大きく上振れします。正確な金額は必ず現地を見た相見積もりで確認してください。そして繰り返しになりますが、見積もりを取る前に「そもそも解体すべきか」の見立てが先です。

売却したら確定申告は必要ですか?

売却益(譲渡所得)が出た場合は必要です。また、3,000万円特別控除などの特例を使う場合は、税額がゼロでも確定申告が必要です。「利益が出なかったから不要」と思い込んで特例を逃すケースがあるため、売却した翌年の申告時期(2月16日〜3月15日)は忘れないようにしてください。

古家付きで売り出したけれど、売れないときは?

打ち手は順番に3つあります。①価格と見せ方の見直し(例えば、売り出しから1か月反響がなければ着手)②「更地渡し可」という条件を付けて買主の解体不安を取り除く(契約成立後に売主負担で解体する方式)③買取業者への切り替え。売れない状態を長く放置するほど印象が下がるので、「何か月で次の手を打つか」を売り出し前に不動産会社と決めておくことをおすすめします。

まとめ: 壊すのはいつでもできる。見立てが先

古家付き土地の売却で覚えておくことは1つです。解体は後からでもできるが、壊した建物は戻せない。だから順番は、①建物の見立て(旧耐震か・状態・買主層)②売り方の選択 ③必要なら解体、です。

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本記事の市場データは、公益財団法人東日本不動産流通機構「首都圏不動産流通市場の動向」(2025年版)をもとに当社で作成したものです。費用の目安は物件・地域により変動します。

監修者
吉田 宏
吉田 宏(株式会社SUMiTAS 代表取締役社長)
  • 二級建築施工管理技士
  • 宅地建物取引士
  • 測量士補
  • 賃貸不動産経営管理士

愛媛大学在学中に愛媛県で株式会社アート不動産を創業する。現在アート不動産では、アパマンショップ(賃貸)を5店舗、SUMiTAS(売買)を2店舗・管理センターを1店舗、売買店舗を2店舗運営。吉田 宏の詳細プロフィールはこちら