不動産の囲い込みは2025年の規制強化でなくなったのか。売主が自分で確認する方法

不動産の囲い込みは2025年の規制強化でなくなったのか。売主が自分で確認する方法

監修者
吉田 宏
吉田 宏(株式会社SUMiTAS 代表取締役社長)
  • 二級建築施工管理技士
  • 宅地建物取引士
  • 測量士補
  • 賃貸不動産経営管理士

不動産の売却を任せた会社が、あなたの物件の情報を他社に渡さず、自社だけで買主を見つけようとする。これが「囲い込み」です。売主が知らないうちに売却のチャンスが減り、売却期間が延び、値下げ圧力だけが強まる。売主にとって百害あって一利なしの行為です。

2025年1月、この囲い込みに対する規制が強化されました。では、囲い込みはもうなくなったのか。答えは「見つけやすくはなったが、なくなってはいない」です

この記事では、囲い込みの仕組みと規制強化で変わったことを整理したうえで、規制後も残る手口と、売主が自分の目で確認する具体的な手順を解説します。宅建業者の側から、業界の内側の実情も含めて正直に書きます。

この記事の結論
  • 囲い込みの動機は「両手仲介」の手数料構造にある。仕組みを知れば警戒ポイントが分かる
  • 2025年の規制強化で「レインズの虚偽登録」は行政処分の対象になった。ただし抜け道は残っている
  • 売主にできる最強の対策は、登録証明書のIDで自分の物件のステータスを自分の目で確認すること

囲い込みはなぜ起きるのか。両手仲介の構造

囲い込みの構造の対比図。レインズで他社にも公開すれば買主候補が最大化するのに対し、両手仲介の手数料を狙って他社を排除すると買主候補が自社客だけに絞られ、売却が長引き値下げ圧力を招く

不動産会社の仲介手数料は、売主と買主のそれぞれから受け取れます。自社で売主も買主も担当すれば手数料は片手仲介の2倍(両手仲介)、買主を他社が連れてくれば両手仲介の半分(片手仲介)です。

両手仲介自体は違法ではありません。問題は、手数料を2倍にしたいがために、他社からの購入希望を意図的に排除する行為です。他社から「その物件を紹介したい」と問い合わせが来ても「商談中です」と嘘をつく。レインズ(不動産会社間の物件情報ネットワーク)に登録しない、あるいは登録しても事実と異なる状態にしておく。これが囲い込みです。

売主への実害ははっきりしています。買主候補の母数が自社の顧客だけに絞られるため、売却期間が延び、「売れないので値下げしましょう」という提案につながりやすい。売主の利益(高く早く売る)と会社の利益(手数料最大化)が衝突する利益相反が、囲い込みの本質です。

2025年1月の規制強化で、何が変わったか

2025年1月、宅地建物取引業法施行規則と、国土交通省による「解釈・運用の考え方」(ガイドライン)の改正が施行され、囲い込みの中核的な手口が行政処分の対象として明文化されました。法律本体の改正ではなく、省令とその運用指針の改正ですが、実務を縛る効果は明確です。ポイントは3つです。

  1. レインズへの「取引状況(ステータス)」の登録自体が義務化され、これを事実と異なる内容で登録することが、宅建業法第65条第1項に基づく指示処分の対象になった。ステータスは「公開中」「書面による購入申込みあり」「売主都合で一時紹介停止中」の3区分。実際は公開中なのに「申込みあり」にして他社を排除する、という代表的な手口が処分対象として明確になりました
  2. 登録証明書の交付と説明が徹底された専任・専属専任媒介(媒介契約には、1社のみに任せる専任媒介・専属専任媒介と、複数社に依頼できる一般媒介があります)では、レインズ登録時に発行される証明書(売主専用の確認用IDつき)を売主に渡し、売主自身がステータスを確認できることを説明する義務があります
  3. 処分は段階構造。まず指示処分があり、従わない場合や悪質な場合に業務停止等へ進みます
2025年1月の規制強化で塞がれたことと残っていることの対比図。レインズのステータス登録の義務化と虚偽登録の指示処分化が塞いだ一方、一般媒介や電話口での引き延ばしは今も規制の外に残る

一方で、規制後も残っている手口があります。

  • 一般媒介への誘導: 一般媒介にはレインズ登録義務がなく、ステータス規制も及びません。「一般媒介のほうが気軽ですよ」という勧め方の裏に、登録義務を避ける意図が隠れている場合があります
  • 電話での引き延ばし: ステータスは正しく「公開中」のまま、他社からの電話問い合わせに「確認して折り返します」と答えて放置する。記録に残りにくい部分は今も規制の外です
  • 登録はするが売れにくくする: 図面を登録しない、写真を最小限にするなど、形式上は義務を果たしながら他社が動きにくい状態を作る手口です

つまり、制度は「売主が確認できる道具」を強化したのであって、囲い込みを自動的に消してくれたわけではありません。道具を使うのは売主です。

売主が自分の目で確認する3ステップ

売主が囲い込みを確認する3ステップの図。契約時にレインズ登録証明書を受け取り、売り出し直後に売主専用IDで「公開中」かを確認、売り出し中は定期報告と突き合わせる
  1. 契約時: レインズ登録証明書を必ず受け取る。専任媒介は契約から7日以内、専属専任は5日以内(いずれも休業日を除く)の登録が義務で、登録されると証明書が発行されます。「もらえますか」と聞くだけです。渋る会社とは契約しないでください
  2. 売り出し直後: 証明書のIDでログインして見る。証明書に記載された確認用のURL・ID・パスワードで、売主専用の物件確認画面にアクセスできます。見るのは1点だけ、自分の物件のステータスが「公開中」になっているか。申し込みをした覚えがないのに「書面による購入申込みあり」になっていたら、その理由を確認してください
  3. 売り出し中: 定期的に見る+報告書と突き合わせる。ステータスは途中で変えられます。販売状況報告(専任媒介は2週間に1回以上、専属専任媒介は1週間に1回以上が義務)を受け取るタイミングで、あわせて画面も確認する習慣にすると、矛盾があればすぐ気づけます

この3ステップは、すべて売主の正当な権利です。確認していることが伝わるだけで、囲い込みへの強力な牽制になります。それでも説明に納得できない場合や、明らかな虚偽登録が疑われる場合は、都道府県の宅建業担当窓口に相談できます。指示処分の権限を持つ行政に相談できること自体が、売主の後ろ盾です。

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当社はどう防いでいるか

囲い込みは会社の「方針」の問題なので、防止策も会社が開示すべきだと考えています。SUMiTASでは次を運用の基本にしています。

  • 専任・専属専任でお預かりした物件は、法定期限内にレインズへ登録し、登録証明書を必ずお渡しして確認方法をご説明する
  • 販売状況の報告には、活動内容だけでなく反響の数字(問い合わせ・内覧)を含める
  • 他社経由の購入希望も、自社のお客様と同じ基準で取り次ぐ

「証明書をください」「ステータスを自分で確認します」と言われて困る会社であってはならない、というのが当社の立場です。媒介契約を結ぶ前に、この記事の3ステップをそのままお使いください。

囲い込みでよくある質問

囲い込みは法律違反ですか?

二段構えで理解してください。両手仲介そのものは違法ではありません。ただし2025年1月以降、レインズのステータスを事実と異なる内容で登録する行為は、宅建業法に基づく指示処分の対象です。また、依頼者の利益を害する行為はそもそも宅建業者の義務違反として処分対象になり得ます。「グレーゾーン」だった時代から、「見つかれば処分される行為」に変わったというのが正確なところです。

囲い込みされているか、確認する方法はありますか?

本文の3ステップ(証明書を受け取る→IDでステータスを見る→報告と突き合わせる)が基本です。加えて、売り出しから1か月以上、問い合わせがゼロに近い場合は、担当者に「他社からの問い合わせは何件ありましたか」と具体的に聞いてください。数字で答えられない場合は注意信号です。

レインズは一般の人でも見られますか?

原則として見られません。レインズは不動産会社間の物件情報ネットワークで、一般向けの検索サービスは提供されていないためです。ただし売主は例外で、専任・専属専任媒介で発行される登録証明書に記載されたURL・ID・パスワードから、自分の物件に限って登録内容とステータスを確認できます。本文の3ステップは、この売主専用の仕組みを使った確認方法です。

買いたい物件が「商談中」と言われ続けています。囲い込みでしょうか?

買主側でも同じ構図に当たることがあります。その物件の売主側の会社ではなく、別の不動産会社経由で問い合わせてもらうと、実際の状態が分かることがあります。長期間「商談中」のままの物件は、囲い込みの可能性も、単に売主都合で止まっている可能性もあるため、複数ルートでの確認が現実的です。

不動産用語で「シコる」とはどういう意味ですか?

物件が長期間売れずに市場に滞留することを指す業界の俗語です。囲い込みされた物件は、市場に出ているのに買主候補へ届かないため、結果としてこの状態になりやすい。売れない期間が長引くほど「売れ残り」の印象がつき、さらに売れにくくなる悪循環に入ります。囲い込みの実害を一言で表すなら、「物件を人為的にシコらせる行為」だと言えます。

まとめ: 規制は「道具」をくれた。使うのは売主

2025年の規制強化は、囲い込みを消してはくれませんでしたが、売主に確認の道具を与えました。登録証明書を受け取り、自分の目でステータスを見る。これだけで、虚偽登録という中核の手口は機能しなくなります。

そして道具を使う前提として、隠す理由のない会社を選ぶことが一番の近道です。SUMiTASの10秒査定は匿名・電話なしで使えます。会社選びの入口として、まず相場感の確認からどうぞ。

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本記事の制度に関する記述は2026年8月時点の情報です。個別の事案への該当性は、国土交通省・都道府県の宅建業担当窓口等でご確認ください。

監修者
吉田 宏
吉田 宏(株式会社SUMiTAS 代表取締役社長)
  • 二級建築施工管理技士
  • 宅地建物取引士
  • 測量士補
  • 賃貸不動産経営管理士

愛媛大学在学中に愛媛県で株式会社アート不動産を創業する。現在アート不動産では、アパマンショップ(賃貸)を5店舗、SUMiTAS(売買)を2店舗・管理センターを1店舗、売買店舗を2店舗運営。吉田 宏の詳細プロフィールはこちら