空き家を解体したいけれど、費用が重い。補助金が出ると聞いたが、いくらもらえるのか。この記事は、その2つに答えます。
先に3つだけお伝えします。補助金は国から直接もらうものではなく、市区町村(と一部の都道府県)の制度です。そして制度がない自治体もあります。金額は自治体によって大きく違い、調べた4つの自治体では上限10万円から200万円まで開きがありました。
もうひとつ、もっとも多い失敗は金額の話ではありません。順序です。交付決定を受ける前に工事を契約したり着工したりすると、要件をすべて満たしていても1円も出ません。ここを外すと取り返しがつきません。
- 補助金は自治体の制度。国から直接は出ず、制度がない自治体もある(窓口は市区町村が中心。都道府県が実施している場合もある)
- 上限額は自治体で大きく違う(調べた4件で10万円〜200万円)。補助率も1/3〜9/10と幅がある
- 交付決定の前に契約・着工すると対象外。受付期間と予算枠にも締切がある
- 解体すると住宅用地特例が外れるが、建物分の税がなくなるため実額は約1.5倍。6倍ではない
目次
補助金は国からではなく自治体から出る
「国の補助金」という言い方を見かけますが、所有者が申請する窓口は市区町村をはじめとする自治体です。
国土交通省には、自治体向けの事業として空き家再生等推進事業(2008年度〜)と空き家対策総合支援事業(2016年度〜)があります。いずれも国が自治体の取り組みを支援するもので、国 → 自治体 → 所有者という経路になります。所有者が国に直接申請することはできません。窓口の中心は市区町村です。

ここから3つのことが言えます。
窓口は市区町村が中心ですが、そこだけとは限りません。空き家対策総合支援事業は補助の対象が市区町村に限られていますが、空き家再生等推進事業(社会資本整備総合交付金の基幹事業)は事業主体が「地方公共団体」とされており、都道府県も含まれます。実際に、都道府県が独自の補助を設けていたり、市区町村の補助に上乗せしていたりする地域があります。まず市区町村の窓口で確認し、そこに制度がなければ都道府県の制度も見てください。
制度がない自治体もあります。空き家対策に取り組む市区町村は増えていますが、除却(解体)の補助を用意しているかは自治体ごとに違います。まず「(市区町村名) 空き家 解体 補助金」で公式サイトを確認してください。民間サイトの一覧は更新が追いついていないことがあるので、必ず自治体の公式ページで確かめます。
金額も要件も自治体が決めています。次章のとおり、同じ「空き家の解体補助」でも中身はかなり違います。
いくら出るのか。4つの自治体で比べる

2026年8月時点で、4つの自治体の制度を公式ページで確認しました。
| 自治体・制度 | 補助率 | 上限額 | 受付など |
|---|---|---|---|
| 札幌市 危険空家等除却補助(通常型) | 工事費の1/3 | 50万円 | 2026年5月15日〜9月30日。予算に達し次第終了 |
| 札幌市 同(地域連携型) | 工事費の9/10 | 150万円 | 同上 |
| 岡山市 空家等適正管理支援事業(除却・地域活性化) | 4/5 | 200万円 | 2026年5月1日〜12月18日 |
| 横浜市 住宅除却補助 | ― | 昭和56年5月末以前の建築で50万円/それ以降〜平成12年5月末は課税世帯20万円・非課税世帯40万円 | 耐震性・建築年の要件あり |
| 東京都 空き家家財整理・解体促進事業 | 1/2 | 解体10万円(家財整理は別に5万円) | 東京都空き家ワンストップ相談窓口への相談が必要 |
上限額で20倍、補助率で1/3から9/10まで開きがあります。「解体費用の補助金は20万〜100万円が目安」という説明を見かけますが、その幅に収まらない制度が実際にはあります。自分の自治体を調べるまでは、金額を当てにしないほうが安全です。
「補助率」だけを見ると計算が合わないことがある
見落としやすい点があります。補助額は補助率だけで決まるとは限りません。
札幌市(通常型)の場合、補助額は次の3つのうちもっとも低い額です。
- 工事費の1/3
- 国が定める標準除却費 × 延べ面積 × 8/10
- 50万円
つまり実際の工事費が高くても、2番目の計算で頭を抑えられることがあります。「工事費の1/3が出る」と思って資金計画を立てると、想定より少なくなる可能性があるということです。申請前に、自分のケースでいくらになるかを窓口で確認してください。
申請の順序を間違えると1円も出ない

ここがこの記事でいちばん伝えたい部分です。
補助金の流れは、どの自治体でもおおむね次のようになっています。
- 事前相談・事前確認(対象になるか、危険な状態かの判定を受ける)
- 交付申請
- 交付決定(通知が届く)
- 工事の契約
- 着工・完了
- 実績報告
- 補助金の入金
問題は3と4の順序です。交付決定より前に契約すると対象外になります。
これは各自治体の要綱に明記されています。札幌市は「交付決定前に契約された工事は対象になりません」、岡山市は「工事請負契約日は補助金交付決定日以降でないといけません」としています。着工だけでなく契約の日付が見られる点に注意してください。解体業者から「先に契約を」と言われても、交付決定を待つ必要があります。
順序のほかに、3つの時間的な制約があります。
受付期間があります。札幌市は5月15日から9月30日、岡山市は5月1日から12月18日というように、年度ごとに受付期間が決まっています。年度末に思い立っても、その年度は間に合いません。
予算枠があります。札幌市の案内には「予算に達し次第受付を終了します」と書かれています。期間内でも締め切られることがあるということです。
後払いです。補助金が振り込まれるのは工事が終わって実績報告をした後です。工事費はいったん全額を自分で払う必要があります。解体費用の相場は家の解体費用の記事で確認できますが、木造戸建てで100万円を超えることも珍しくありません。補助金があるから払える、という資金計画は成り立ちません。
対象になる空き家の共通パターン
自治体ごとに要件は違いますが、よく見られる条件は次のとおりです。
- 建築年: 昭和56年5月末以前(旧耐震)など、古い建物に限る
- 状態: 一定期間使われていない、市区町村の調査で危険と判定される
- 申請者: 所有者本人、税の滞納がない
- 施工業者: 市内に本社・営業所がある業者に限る場合がある
- 跡地: 解体後の土地を適切に管理する、一定期間売却しないなどの条件が付く場合がある
最後の「跡地の条件」は見落としやすい項目です。売却を前提に解体するなら、その制度が売却を制限していないかを先に確認してください。
解体すると固定資産税はどうなるのか

「解体すると固定資産税が6倍になる」という話があります。これも正確ではありません。
住宅が建っている土地には住宅用地の特例があり、200㎡以下の部分は固定資産税の課税標準が1/6に、都市計画税は1/3に軽減されています。建物を解体するとこの特例が外れます。ここまでは事実です。
ただし税額は6倍になりません。理由は2つあります。
1つ目は、課税標準額に上限があること。住宅用地でなくなった宅地の課税標準額は、評価額の70%が上限です。1/6(約16.7%)から70%への変化なので、土地の固定資産税で見ても最大4.2倍にとどまります。この70%は負担調整措置による上限で、評価替えのたびに延長されてきた措置です(現行は令和8年度まで)。
2つ目は、建物の税金がなくなること。解体すれば建物に対する固定資産税・都市計画税は課税されません。土地の増加分と建物の減少分が相殺されます。
具体的に計算します。土地180㎡・固定資産税評価額1,080万円、建物の評価額300万円、市街化区域内(都市計画税0.3%)とします。
| 項目 | 解体前 | 解体後 |
|---|---|---|
| 土地の固定資産税 | 1,080万×1/6×1.4%=25,200円 | 1,080万×70%×1.4%=105,840円 |
| 土地の都市計画税 | 1,080万×1/3×0.3%=10,800円 | 1,080万×70%×0.3%=22,680円 |
| 建物の固定資産税・都市計画税 | 300万×1.7%=51,000円 | 0円(建物がなくなる) |
| 年間の合計 | 87,000円 | 128,520円 |
約1.5倍です。年間で41,520円の増加になります。決して小さくはありませんが、「6倍」とは違います。建物の評価額が高いほど、解体で消える建物分が大きくなるため、増え方はさらに緩やかになります。
なお、特例が外れた翌年にいきなり上限まで上がるわけではありません。土地の固定資産税には負担調整措置があり、前年度の課税標準額に評価額の5%分を加えながら段階的に引き上げる仕組みです。
税額は自治体の税率や負担水準で変わります。ここでの数字は仕組みを示すための試算なので、実額は納税通知書と市区町村の資産税課で確認してください。
解体のタイミングは1月1日で決まる
固定資産税の基準日(賦課期日)は毎年1月1日です。1月2日以降に解体すれば、その年の課税は建物がある状態で計算されます。税負担が上がるのは翌年からです。
逆に、年末に急いで解体すると、わずか数日の差で翌年から税負担が上がることになります。売却の予定が決まっていないのであれば、解体の時期は補助金の受付期間と賦課期日の両方を見て決めるのが実務的です。
そもそも解体してから売るべきか
補助金が出るからといって、解体が最善とは限りません。判断の順番は逆で、まず売り方を決めてから、その手段として解体を検討します。
古家が建ったまま「古家付き土地」として売る方法もあります。買主が自分で解体する前提で価格を調整する形です。解体費用を負担せずに済む一方、買い手が限られます。どちらが手取りで有利かは、建物の状態と地域の需要で変わります。判断材料は古家付き土地の売却の記事にまとめました。
注意したいのは、解体してから売れ残ったときです。更地にすると住宅用地特例が外れた状態で保有が続きます。売却の目途が立たないまま解体すると、上がった税金を払い続けることになります。土地が売れないときの考え方は土地が売れない場合の記事で扱っています。
順番としては、①査定を取って売れる価格と期間の目安をつかむ、②古家付きと更地でどちらが手取りが多いかを比べる、③解体すると決めたら補助金の受付期間に合わせて動く、という流れになります。
よくある質問
空き家の解体に補助金は出ますか?
自治体によります。国から直接支給される制度はなく、市区町村(一部は都道府県)が独自に設けている制度を使います。制度がない自治体もあります。まず自分の物件がある市区町村の公式サイトで「空き家 解体 補助」を確認してください。制度があっても、旧耐震の建物に限る、危険と判定されたものに限る、といった要件が付くのが一般的です。
空き家を解体すると固定資産税は6倍になりますか?
なりません。住宅用地の特例(課税標準1/6)が外れるため「6倍」と言われますが、住宅用地でなくなった宅地の課税標準額には評価額の70%という上限があり、土地の固定資産税で最大4.2倍です。さらに解体すれば建物分の税金がなくなるので、この記事の試算では土地と建物を合わせた年額で約1.5倍でした。
補助金はいつ振り込まれますか?
工事が終わって実績報告を出し、審査を経てからの後払いです。工事費はいったん全額を立て替える必要があります。入金までの期間は自治体によりますが、実績報告から1〜2か月程度かかることがあります。
解体業者を先に決めてもいいですか?
見積もりを取るところまでは問題ありません。ただし契約は交付決定を受けてからです。交付決定前に契約すると対象外になります。また、市内の業者に限るという要件がある自治体もあるので、業者を選ぶ前に要件を確認してください。
解体費用の相場はどれくらいですか?
構造と延床面積で変わります。木造戸建ての相場や、費用を抑えるポイントは家の解体費用の記事にまとめています。補助金の額を検討する前に、まず総額の目安を把握してください。
まとめ: 金額より先に、順序と期限を確認する
- 補助金は自治体の制度。国から直接は出ない。制度がない自治体もある
- 上限額は自治体で大きく違う(調べた4件で10万円〜200万円)。補助率も1/3〜9/10
- 補助額は「補助率・国の標準費用による計算・上限額」のもっとも低い額になることがある
- 交付決定の前に契約・着工すると対象外。受付期間と予算枠にも締切がある
- 補助金は後払い。工事費はいったん全額立て替える
- 解体後の税負担は6倍ではなく、この試算では約1.5倍
解体するかどうかは、売り方を決めてから判断する話です。まずは今の状態でいくらで売れるのかを知ると、解体費用をかける意味があるかどうかが見えてきます。
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本記事の補助制度の内容は、札幌市・岡山市・横浜市・東京都の各公式ページ(2026年8月18日確認)によります。制度の内容・金額・受付期間は年度ごとに変わるため、申請前に必ず各自治体の最新の要綱をご確認ください。国の事業の名称は国土交通省「空家等対策の推進に関する特別措置法関連情報」によります。住宅用地の特例および負担調整措置は地方税法と総務省の公表資料によります。税額の試算は仕組みを示すための例であり、税率・負担水準・評価額は自治体と個別の土地により異なります。解体費用の実額は建物の構造・面積・立地により大きく変わります。
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