相続によって取得した空き家にも維持費がかかるため、売却や活用はできないかとお悩みの方も多いでしょう。限界集落にある空き家の選択肢は、地域の状況や空き家の状態によって異なります。

本記事では、空き家の具体的な選択肢や注意点を説明しますので、ぜひ参考にしてください。
- 限界集落の空き家には、売却、解体、賃貸、リノベーションなどの選択肢がある
- 状況によっては「相続土地国庫帰属制度」で手放す方法も有効
- まずは不動産会社や自治体の窓口に相談し、最適な対応を検討するべき
目次
空き家が増えている限界集落とは?
「限界集落の空き家は売れない」といわれていますが、そもそも限界集落とはどのような状態を指すのでしょうか。
まずは限界集落の定義と原因を説明します。
人口の半数以上が高齢者の集落

限界集落は、集落人口の半数以上が65歳以上の高齢者が占める地域のことです。
地域の過疎化や高齢化の進行によって、社会的共同生活の継続ができなくなっている状態から「限界」と呼ばれています。
過疎化や高齢化が問題視される集落は、状態によって次のように7つの区分に分けられています。
- 存続集落
- 準限界集落
- 限界集落
- 危機的集落
- 超限界集落
- 廃村集落
- 消滅集落
過疎化が進むと限界集落から危機的集落へ、無人になると消滅集落として扱われます。
限界集落の定義を説明した記事がありますので、詳しくはこちらをご覧ください。
限界集落が生まれる原因
限界集落が生まれるのは、人口が増えないことが原因です。
働き口を求めて若者世帯が集落を出て行くことで次の世代が生まれなくなり、高齢化がどんどん進んで産業が衰退し、社会的共同生活が困難になっていきます。
産業が衰退するとさらに働き口がなくなるため、集落の少子化、高齢化、産業の衰退がループして、集落の過疎化にさらに拍車をかけてしまうのです。
限界集落にある空き家の選択肢
限界集落にある空き家を取得したときには、次のような選択肢があります。
- 空き家のまま売却する
- 家屋を解体して売却する
- 不動産会社や業者に買い取ってもらう
- 家屋を解体して相続土地国庫帰属制度で手放す
- 賃貸物件として格安価格で貸し出す
- リノベーションして活用する
冒頭でもお伝えしたように、限界集落の状況や空き家の状態によって選択肢が異なります。
まずはそれぞれがどのような方法なのかを知り、所有する空き家にはどの方法が適しているのかを考えてみてください。
空き家のまま売却する
限界集落の空き家の売却はできないと思われがちですが、売り方次第で売却は可能です。
不動産会社の仲介や空き家バンクに物件を掲載し、移住者をターゲットに安価で売り出せば、買い手が見つかる可能性があります。とくに地域を挙げて再生事業を進めている集落ならば、移住者の目に留まりやすいので、売却を検討しても良いでしょう。
逆に集落の過疎化がどんどん進んでいる場合は、売却以外の方法を検討することをおすすめします。
家屋を解体して売却する
空き家の劣化が進んでいるのなら、家屋を解体して土地探しをしている人もターゲットに入れたほうが、買い手が見つかりやすくなる可能性があります。
管理面から見ても、倒壊や破損のリスクがない更地にしておくほうが安心でしょう。ただし、家屋を解体してしまうと、固定資産税の減税措置が受けられなくなり、固定資産税が最大6倍まで高くなります。
家屋を解体したら、できるだけ早く売却または活用ができるよう、計画を進めておきましょう。
不動産会社や業者に買い取ってもらう
不動産会社や買取業者に空き家を買い取ってもらうことを買取といいます。
買取価格は市場価格の5〜8割ほどですが、現金化までの早さと売却活動が不要な点がメリットです買い手が見つかりづらい空き家では、買取を選択する方が増えています。
ただし、買い取ってもらえるのは、不動産会社や業者にとって買い取るメリットのある空き家のみです。
そのため、限界集落のように過疎化が進む地域では、再生事業が進んでいるなどの理由で不動産需要がない限りは、断られることが多いのが現状です。
賃貸物件として格安価格で貸し出す
限界集落の空き家は、週末移住やデュアルライフ(二拠点生活)の希望者をターゲットに、格安家賃で貸し出す方法もあります。
通常の移住では地域の過疎化はデメリットになり得ますが、一時的な移住の場合は人里を離れることを目的とする人も多く、限界集落である点がニーズに合う可能性もあります。
住人がDIYを自由に行えるようにしたり、家具付きで貸し出したりすれば、より借り手が見つかりやすくなるでしょう。ただし、空き家の家賃収入は決して多くはないので、維持管理費に充てられても、事業として成り立たせるのは難しい場合がほとんどです。
収入を得る目的ではなく、空き家の維持、または地域再生への貢献目的で行いましょう。
リノベーションして活用する
空き家をリノベーションすれば、次のような方法で活用することができます。
- 古民家カフェ
- ホテル
- レンタルスペース
- オフィス・コワーキングスペース
古民家カフェ
空き家を再生し、ノスタルジックな雰囲気を楽しめる古民家カフェにする方法です。
古民家ならではの風合いを活かし、落ち着きのあるカフェへとリノベーションすれば、集客を望めるでしょう。ただしカフェの経営には人手が必要なため、限界集落では人員の確保が難しいケースもあるかもしれません。
他の活用方法と比べて初期投資額も大きいので、事業計画をしっかりと立てたうえでの検討が必要です。
ホテル・宿泊施設
限界集落の再生事業として、地域全体をホテル化する自治体が増えてきています。
地域にそのような動きがあるのなら、空き家をホテルへとリノベーションするのもひとつの手です。再生事業が軌道に乗れば、ホテル経営で安定的に収入を得られるようになるでしょう。
しかしカフェ経営と同様に、人員の確保や初期投資のハードルがあるため、しっかりとした事業計画が必要です。
レンタルスペース
空き家を改装してレンタルスペースにすれば、改修費用のみで活用を始められます。
レンタルスペースとひとくちに言っても、撮影やイベント、教室などのさまざまな使い方があるため、貸し出し方法をある程度は絞っておくことが大切です。
オフィス・コワーキングスペース
働き方の多様化やリモートワークを取り入れる企業が増えたことで、シェアオフィスやサテライトオフィス、コワーキングスペースの需要が高まっています。
空き家をリノベーションしてWi-Fi環境を整えれば、すぐにオフィスとして貸し出せます。
ただし空き家が都心から遠く離れている場合は、オフィス需要はあまり見込めません。都心からの移動距離も加味して検討しましょう。
家屋を解体して相続土地国庫帰属制度で手放す
相続土地国庫帰属制度は、相続した土地を国に帰属させる制度です。申請が認められれば、土地の10年間の維持管理にかかる負担金を納めて、土地を手放すことができます。
売却も活用も難しい空き家は、家屋を解体したのちに「相続土地国庫帰属制度」の利用を検討すると良いでしょう。他の方法のように、限界集落であるという点が影響する心配もありません。
ただし対象となるのは相続によって取得した場合のみで、すべての土地が対象になるわけではない点がデメリットです。たとえば建物が建っている土地や崖地、権利が設定されている土地、汚染されている土地などは対象外となります。
制度の要件やメリットについて詳しく説明した記事がありますので、ぜひこちらも参考にしてください。
限界集落の空き家について相談できる窓口
限界集落の空き家について相談できるのは、次の3つの窓口です。
- 不動産会社
- 買取業者
- 自治体の窓口
売却や買取、活用を検討しているのなら、まずは不動産会社に相談することをおすすめします。地域の再生事業も含め、空き家をどう扱えば良いのかをさまざまな観点から提案してもらえるでしょう。
買取のみを検討しているのであれば、買取業者を探すのもひとつの方法です。しかし、限界集落の空き家は買い取ってもらえない可能性があり、安値で買い叩かれる心配もあるため、慎重に業者を選ぶ必要があります。
空き家バンクや相続土地国庫帰属制度の利用を検討している方は、自治体の窓口で相談できます。物件の登録や、所有する土地が制度の対象となるのかを相談してみてください。
限界集落にある空き家の売却・活用は不動産会社に相談を
人口の半数以上を高齢者が占める限界集落の空き家は、一般的な空き家と比べて売却も活用も難航する場合がほとんどです。
空き家の維持管理が厳しければ、家屋を解体して相続土地国庫帰属制度を利用したほうが良いケースもあるでしょう。
空き家をどう扱うべきなのか、どうすれば負担を減らせるのかと悩んだときには、まずは不動産会社に相談することをおすすめします。売却・活用・制度の利用のさまざまな観点から、アドバイスを受けられるでしょう。