空き家の火災保険。入れるのか、いくらかかるのか、入らないとどうなるのか

監修者
吉田 宏
吉田 宏(株式会社SUMiTAS 代表取締役社長)
  • 二級建築施工管理技士
  • 宅地建物取引士
  • 測量士補
  • 賃貸不動産経営管理士

実家が空き家になったとき、火災保険をそのままにしている方が多くいます。住んでいたときの保険が続いていると思っていたら、実は空き家になった時点で扱いが変わっている、ということが起こります。

この記事で答えるのは3つです。入れるのか。いくらかかるのか。入らないとどうなるのか。

先に結論を書きます。空き家でも入れますが、多くの場合「住宅物件」から「一般物件」という扱いに変わり、保険料は上がります。保険会社によっては引き受け自体を断られたり、補償の範囲に制限がついたりします。そして保険料の相場は、公的なデータが存在しません。理由も含めて後で説明します。

もうひとつ、隣家の火事が燃え移って自分の空き家が燃えても、火元の隣家から弁償してもらえるとは限りません。いわゆる「もらい火」です。火災保険に入っていなければ、自分の建物の損害は自分で被ることになります。逆に、自分の空き家から火が出て隣に燃え移っても、原則として賠償責任は負いません。これは失火責任法という古い法律によるもので、空き家を持つ人がいちばん誤解しやすいところです。

この記事の結論
  • 空き家は「一般物件」の扱いになることが多く、保険料は上がる。引き受けを断られたり、補償に制限がついたりすることもある
  • 保険料の相場を示した公的データはない。建物の評価額・所在地・補償範囲で変わるため
  • もらい火は原則として相手に請求できない。自分の建物は自分の保険でしか戻らない
  • 国の調査では空き家の維持費は年10万〜20万円が最多。保険はその一部で、全体で払い続けるかを判断する

空き家になると、保険の扱いはどう変わるか

火災保険の物件区分を、住宅物件と一般物件の2つのカードに左右で並べて比べた図解。住宅物件は保険料が標準で地震保険もつけられ、通常は加入できる。一般物件は保険料が上がり、地震保険はつかず、引き受けを断られることもある。空き家は一般物件として扱われることが多いことを示している

火災保険には物件の区分があります。人が住んでいる住宅は「住宅物件」、事務所や店舗などは「一般物件」です。誰も住んでいない空き家は、住宅ではなく一般物件として扱われることが多くなります。

区分が変わると、次の3点が変わります。

項目住宅物件(人が住んでいる)一般物件(空き家の多くはこちら)
保険料比較的安い高くなる
地震保険つけられる原則つけられない
引き受け通常は可能断られる・制限がつくことがある

ただし、空き家がすべて一般物件になるわけではありません。別荘やセカンドハウスとして定期的に使っている、家財を残したまま一時的に留守にしている、といった場合は住宅物件として扱われることがあります。判断は保険会社によって異なります。

見落としやすいのが通知義務です。住んでいたときに入った火災保険は「住宅物件」として契約しています。空き家になったのに保険会社へ知らせないままにしていると、いざというときに保険金が支払われない可能性があります。空き家になったら、まず今の契約がどうなっているかを保険会社に確認してください。

なぜ引き受けが渋くなるのか

保険会社が空き家を敬遠するのは、リスクが高いからです。国の調査を見ると、その理由が数字で分かります。

国土交通省の令和6年空き家所有者実態調査(2025年8月公表)によると、相続で取得した空き家のうち7割超に腐朽・破損がありました。内訳は、構造上の不具合が生じていたものが21.2%、外観または室内に全体的な腐朽・破損があったものが3.5%、部分的な腐朽・破損があったものが47.1%です。

相続で取得した空き家の状態を100%の帯グラフで示した図。構造上の不具合が21.2%、全体的な腐朽・破損が3.5%、部分的な腐朽・破損が47.1%で、腐朽・破損があるものが合わせて71.8%を占める。腐朽・破損なしは28.2%

さらに、腐朽・破損の程度が大きい空き家ほど、管理の頻度が低いという傾向も出ています。構造上の不具合が生じていた空き家で月1回以上管理している世帯は約6割、不具合がなかった空き家では約8割でした。傷んでいる家ほど手が入っていない、ということです。

空き家で起こりやすい事故は、火災だけではありません。放火、漏電、給排水設備の劣化による水漏れ、屋根や外壁の飛散による近隣への被害、不法侵入。人が住んでいれば早期に気づける異変が、空き家では見つかるまでに時間がかかります。保険会社から見ると、事故の確率が高く、発見も遅れる物件ということになります。

保険料はいくらかかるのか

ここが多くの記事で数字が出ていない部分です。当社も具体的な金額は示しません。理由を説明します。

火災保険の保険料は、次の要素で決まります。

  • 建物の構造(木造か、耐火構造か)
  • 所在地(都道府県や市区町村による差がある)
  • 建物の評価額(再調達価額。建て直すのにいくらかかるか)
  • 補償の範囲(火災だけか、風災・水災・盗難まで含めるか)
  • 物件の区分(住宅物件か一般物件か)
  • 空き家の管理状態(定期的に管理されているか)

同じ「空き家の火災保険」でも、木造で地方の20坪と、耐火構造で都市部の40坪では前提が違いすぎます。この幅を1つの相場として示すことに意味がありません。保険会社が金額を出さないのは見積もりへ誘導するためでもありますが、条件次第で大きく変わるという事情も実際にあります。

代わりに、見積もりを取るときに確認すべき点を挙げます。

  1. 住宅物件と一般物件、どちらで扱われるか。同じ建物でも、この区分で金額が変わります
  2. 地震保険をつけられるか。一般物件では原則つきません。地震による火災は火災保険では補償されないため、この点は確認が必要です
  3. 建物の評価額をどう置いているか。築古の空き家では、時価と再調達価額のどちらで契約するかで保険料も保険金も変わります
  4. 管理の状態で条件が変わるか。定期的な管理を条件に引き受ける商品もあります

なお、区分の変更とは別に、火災保険そのものの保険料が近年上がっています。損害保険料率算出機構が2023年6月に参考純率を全国平均で13.0%引き上げ、これを受けて各社が2024年10月に保険料を改定しました。あわせて2022年10月からは契約期間の上限が10年から5年に短縮されています。以前に長期契約を結んでいた場合、更新の時期に区分の変更と料率改定が重なることがあります。

なお、通常の火災保険で断られた場合でも、空き家を対象にした専用の商品や共済が存在します。取扱いのある会社は限られるので、複数に問い合わせるか、代理店に相談してください。

「空き家の火災保険加入率」は公表されていない

検索でよく見かける質問ですが、加入率を示した公的な統計はありません。国土交通省の空き家所有者実態調査は、利用状況・管理状況・維持費用・今後の意向まで詳しく調べていますが、保険への加入を尋ねる設問はありません(令和6年調査の報告書で確認しました)。

「加入率が低い」と書いている記事を見かけますが、根拠になる数字は示されていません。ここは分からないものとして扱うのが正確です。

入らないまま持つと、どうなるのか

失火責任法によって隣家との間で賠償が動かないことを示した図解。自分の空き家と隣家を両向きの矢印で結び、その矢印に大きな×印を重ねることで、どちらから火が出ても賠償の請求は通らないことを表している。自分の建物の損害は自分の火災保険でしか戻らない。火元に重大な過失があった場合は別

無保険の空き家が燃えたとき、何が起きるか。ここが本題です。

日本には失火責任法(失火ノ責任ニ関スル法律・明治32年法律第40号)という法律があります。内容はごく短く、火事を起こした人に重大な過失がなければ、民法709条の損害賠償責任を負わないというものです。

これを空き家の持ち主の側から読むと、こうなります。

隣の家から出た火で自分の空き家が焼けても、相手に重大な過失がなければ、修理費や建て替え費用を請求できません。自分の建物の損害は、自分がかけていた火災保険でしか戻ってこないということです。無保険なら全額自己負担になります。

逆方向も同じです。自分の空き家から出火して隣家に燃え移っても、重大な過失がなければ賠償責任は負いません。ただし「重大な過失」と判断されれば話は別です。空き家の場合、著しく管理を怠っていた、危険な状態を放置していた、といった事情が問題になる可能性があります。ここは個別の判断になるため、断定はできません。

火災が起きた場合、自己負担になりうる費用は建物の再建費だけではありません。

  • 焼け跡の解体・撤去費用(残った基礎や瓦礫の処分を含む)
  • 近隣への見舞いや、後片付けに伴う実費
  • 消火活動による水濡れなど、類焼以外の損害

木造戸建ての解体費用だけでも100万円を超えることが珍しくありません。実額の目安は家の解体費用の記事で確認できます。建物としての価値がほとんど残っていない空き家でも、燃えれば片付けの費用は発生します。「価値がないから保険は要らない」という判断が成り立たないのは、この撤去費用があるためです。

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維持費の全体でみる。保険はその一部

空き家の年間維持管理費用の分布を示した横棒グラフ。10〜20万円未満が約17%で最も多く、5万円未満が合計で約5割を占め、そのうち費用がかかっていないは12.1%、30万円以上は8.5%。国土交通省の令和6年空き家所有者実態調査による

保険料が高いと感じたときに考えたいのは、保険単体ではなく維持費の全体です。

同じ国の調査で、空き家の年間の維持管理費用が集計されています。もっとも多いのは「10〜20万円未満」で約17%。5万円未満の世帯を合わせると約5割、そのうち「費用はかかっていない」が12.1%です。一方で30万円以上かかっている世帯も8.5%あります。

年間の維持管理費用割合
費用はかかっていない12.1%
5万円未満(上記を含む)約50%
10〜20万円未満約17%(最多)
30万円以上8.5%

この金額に含まれるのは、火災保険料だけではありません。固定資産税・都市計画税、草刈りや点検の委託費、電気や水道の基本料金、遠方なら交通費。同じ調査では、管理をする上での課題として「管理費用の負担が大きい」を挙げた世帯が22.5%、「遠方に住んでいるので往訪が困難」が21.6%ありました。

保険に入るかどうかは、この全体の中で決める話になります。保険料を削って無保険にするのは、いちばんリスクの大きい節約です。火災が起きれば、それまでに節約した金額を一度で超えます。

払い続けるか、手放すか

維持費が負担なら、選択肢は3つです。

1. 管理を整えて持ち続ける。定期的な管理を条件に引き受ける保険商品もあります。管理の記録を残しておくことは、保険の面でも、行政から管理不全を指摘されないという面でも意味があります。

2. 貸す。賃貸に出せば人が住んでいる状態になり、物件区分も戻ります。ただし修繕費と入居者募集の手間がかかります。

3. 売る。維持費と保険料の負担が続くこと自体を終わらせる方法です。

判断は感覚ではなく計算でできます。年間の維持費(税金+保険料+管理費)と、売った場合の手取りを並べるという手順です。この考え方は土地が売れないときの記事で詳しく扱っています。建物付きで売るか更地にするかは古家付き土地の売却の記事、相続した空き家で買い手が付きにくい場合は空き家が売れない理由の記事が参考になります。

相続人が複数いる、あるいは相続人がいない空き家では、保険の契約者を誰にするかという問題も出てきます。名義が被相続人のままだと、保険金の請求で手間がかかることがあります。詳しくは相続人のいない空き家の記事をご覧ください。

よくある質問

空き家の火災保険の相場はいくらですか?

相場として示せる公的なデータはありません。保険料は建物の構造・所在地・評価額・補償範囲・物件区分(住宅物件か一般物件か)で変わり、条件が違えば金額も大きく変わるためです。同じ建物でも、住宅物件として扱われるか一般物件になるかで差が出ます。見積もりを取るときは、どちらの区分で計算されているかを必ず確認してください。

空き家の火災保険加入率は?

公表されている統計はありません。国土交通省の空き家所有者実態調査は、利用状況・管理状況・維持費用まで詳しく調べていますが、保険の加入を尋ねる設問がないためです。加入率を示している記事もありますが、出典が確認できるものは見当たりませんでした。

空き家でも火災保険に入れますか?

入れます。ただし通常の住宅向け商品では引き受けを断られることがあり、その場合は空き家を対象にした専用の商品や共済を探すことになります。取扱いのある会社は限られるので、複数の会社や代理店に問い合わせてください。

今かけている火災保険は、空き家になっても続きますか?

契約が続いていても、空き家になったことを保険会社に知らせる必要があります(通知義務)。知らせないままだと、いざというときに保険金が支払われない可能性があります。契約の条件が変わることもあるので、空き家になった時点で確認してください。

もらい火で自分の空き家が焼けたら、相手に請求できますか?

原則としてできません。失火責任法により、火元に重大な過失がなければ損害賠償責任は生じないためです。自分の建物の損害は、自分がかけていた火災保険でしか戻りません。これは空き家に限らず、住んでいる家でも同じです。

更地にすれば保険は要らなくなりますか?

建物がなくなれば建物の火災保険は不要になります。ただし解体費用がかかるうえ、更地にすると固定資産税の住宅用地特例が外れて土地の税負担が上がります。保険料の負担だけを理由に解体を決めると、別の負担が増える可能性があります。解体の補助金と税の変化は別記事で扱っています。

まとめ: 保険単体ではなく、維持費の全体で決める

  • 空き家は一般物件の扱いになることが多く、保険料は高くなる傾向がある。地震保険は原則つかず、引き受けを断られたり補償に制限がついたりすることもある
  • 空き家になったら保険会社への通知が必要。放置すると保険金が出ないことがある
  • 保険料の相場を示す公的データはない。見積もりでは物件区分と評価額の置き方を確認する
  • もらい火は原則として請求できない。自分の建物は自分の保険でしか戻らない。無保険なら解体・撤去費用まで自己負担
  • 空き家の維持費は年10万〜20万円が最多。保険はその一部で、全体で払い続けるかを判断する

維持費を計算した結果、持ち続ける理由が見つからないのであれば、売却も選択肢に入ります。SUMiTASの10秒査定は、住所と物件情報を入れるだけで匿名・電話なしで概算価格を確認できます。判断の材料としてお使いください。

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本記事の空き家の状態・管理頻度・維持管理費用に関する数値は、国土交通省「令和6年空き家所有者実態調査」(2025年8月29日公表)の報告書によります。腐朽・破損の程度は相続により取得した空き家についての集計です。失火責任法は「失火ノ責任ニ関スル法律」(明治32年法律第40号)、損害賠償責任は民法709条によります。重大な過失に当たるかどうかは個別の事情により判断されます。火災保険の物件区分・補償内容・引き受けの可否は保険会社および商品により異なります。本記事は特定の保険商品を推奨するものではありません。保険料および契約内容は、保険会社または代理店にご確認ください。

監修者
吉田 宏
吉田 宏(株式会社SUMiTAS 代表取締役社長)
  • 二級建築施工管理技士
  • 宅地建物取引士
  • 測量士補
  • 賃貸不動産経営管理士

愛媛大学在学中に愛媛県で株式会社アート不動産を創業する。現在アート不動産では、アパマンショップ(賃貸)を5店舗、SUMiTAS(売買)を2店舗・管理センターを1店舗、売買店舗を2店舗運営。吉田 宏の詳細プロフィールはこちら