不動産売却の税金はいつ払う?タイミングと節税方法を解説

不動産売却の税金はいつ払う?タイミングと節税方法を解説

監修者
吉田 宏
吉田 宏(株式会社SUMiTAS 代表取締役社長)
  • 二級建築施工管理技士
  • 宅地建物取引士
  • 測量士補
  • 賃貸不動産経営管理士

不動産を売却したときにかかる可能性があるのは、「印紙税」「登録免許税」「消費税」「譲渡所得税」の4つの税金です。それぞれ納税のタイミングが異なるので、売却のスケジュールも含めて把握しておく必要があります。

吉田 宏
吉田 宏

本記事では売却時に払う税金の種類とタイミング、節税方法などを解説します。これから不動産売却をお考えの方は、ぜひ参考にしてください。

この記事の要約
  • 不動産売却では4種類の税金が発生する可能性がある
  • 譲渡所得税は翌年に申告し、住民税は6月以降に支払う
  • 節税には特別控除や税理士の相談が効果的である

不動産売却で払う可能性がある税金と納税タイミング

冒頭でもお伝えしたように、不動産売却でかかる可能性があるのは次の4つの税金です。

不動産売却で払う可能性がある税金と納税タイミング
不動産売却で払う可能性がある税金と納税タイミング
  • 印紙税
  • 登録免許税
  • 消費税
  • 譲渡所得税

これらの中で必ずかかるのは、印紙税と消費税の2つです。登録免許税はローンが残っている(抵当権が設定されている)家を売るとき、譲渡所得税については、売却で利益が出たときのみかかります。

税金の計算方法や税金がかからない条件については、詳しく説明した記事がありますので、ぜひこちらも参考にしてください。

印紙税とは?支払い期限・支払い方法

不動産売却で必ずかかる「印紙税」は、経済取引における売買契約書や領収書に課せられる税金です。払うタイミングと方法を見ていきましょう。

印紙税を払うタイミング

不動産売却で印紙税を払うのは、「売買契約書」を交わしたタイミングです。

売却では内見者に購入の意志があれば、「購入申込書」に売買価格、手付金額、購入日、引き渡し日などの、購入者の希望が記された書類が提出されます。

売主がその内容を確認し、納得すれば売買契約を結ぶ流れです。印紙税はその際の売買契約書に対して、売買価格に応じた以下の税率が課税されます。

本則税率軽減税率
500万円を超え1,000万円以下10,000円5,000円
1,000万円を超え5,000万円以下20,000円10,000円
5,000万円を超え1億円以下60,000円30,000円
1億円を超え5億円以下10万円60,000円
印紙税

参考:国税庁「不動産売買契約書の印紙税の軽減措置

なお、2027年(令和7年)3月31日までに作成された契約書については、上記の軽減税率が適用されます。

印紙税を払う方法

印紙税は、契約書に収入印紙を貼付する形で払います。不動産会社が用意してくれることもありますが、自分で用意する場合は郵便局や法務局、コンビニ、金券ショップなどで購入しましょう。

登録免許税とは?支払い期限・支払い方法

「登録免許税」は登記手続きを行う際に払う税金です。

不動産売却では住宅ローンの完済時に行う抵当権の抹消登記や、登記名義人(売主)の登記上の住所と現在の住所が異なるときに住所変更登記が必要になります。引き渡し時には名義変更も行いますが、所有権移転登記の登録免許税については、買主負担となるのが一般的です。

以上を踏まえ、払うタイミングや方法を見ていきましょう。

登録免許税を払うタイミング

登録免許税を払うのは、不動産を引き渡すタイミングです。住宅ローンが残っている家は金融機関によって抵当権が設定されているため、売却金でローンを完済し、その際に抵当権の抹消登記を行います。

抵当権の抹消登記にかかる登録免許税は“不動産1個につき1,000円”なので、土地と建物なら合計2,000円が必要です。

住所変更登記も抵当権の抹消登記と同様に、土地(敷地権)1つに対して1,000円、建物(部屋)分で1,000円の登録免許税がかかります。

登録免許税を払う方法

登録免許税を払う方法は、2通りあります。

1つ目が、司法書士に代行してもらう方法です。抵当権の抹消登記の手続きを代行してくれるので、自分で手続きしたり登録免許税を払ったりする手間が省けます。司法書士の報酬相場は、書類の取得費用や登録免許税を除いて15,000〜20,000円ほどです。

2つ目が、自分で手続きする方法です。法務局の窓口で、登記申請書に登録免許税分の収入印紙を貼付する形で払います。オンライン申請の場合は、電子納付も可能です。

消費税とは?支払い期限・支払い方法

「消費税」は、商品や製品の販売やサービス提供に対してかかる税金です。免税事業者の不動産売買は非課税ですが、仲介手数料や測量などのサービスは課税対象となります。

消費税を払うタイミング

消費税を払うのは、サービス料を払うタイミングです。

売却にあたって測量を実施したのなら測量費を払うとき、不動産会社に仲介してもらったなら、仲介手数料を払うときです。仲介手数料は、売買契約の成立時と引き渡し時の2回に分けて半分ずつ払うのが一般的なので、消費税も2回に分けて払います。

消費税を払う方法

消費税は、サービス料と一緒に払うのが基本です。

測量費用の支払い方法は事務所ごとに異なり、確実なのは現金ですが、振込やクレジットカード決済、バーコード決済に対応している事務所もあります。仲介手数料は現金が基本ですが、中には振込に対応している不動産会社も存在します。

譲渡所得?支払い期限・支払い方法税

譲渡所得税は、「所得税」「復興特別所得税」「住民税」の3つの税金の総称です。

不動産売却で利益が出たときのみにかかる税金ですが、それぞれ払うタイミングが異なるので、間違えないようしっかりと確認しておきましょう。

譲渡所得税を払うタイミング

前述のように、譲渡所得税は次のように払うタイミングが異なります。

  • 所得税、復興特別所得税:売却した翌年の確定申告時
  • 住民税:売却した翌年の6月以降

所得税と復興特別所得税は不動産を売却した“翌年”の確定申告時期である、2月16〜3月15日までに払います。もし1月に売却したのなら、1年近く期間が空くことになります。住民税を払うのも、翌年の住民税が決定する6月以降です。

また、譲渡所得税は不動産の所有期間によって、以下のように税率が異なります

所有期間所得税
復興特別所得税(※1)

住民税
合計
短期譲渡所得5年以下30%0.63%9%39.63%
長期譲渡所得5年超15%0.315%5%20.315%
譲渡所得税の税率

(※1)2013年1月1日から2037年12月31日まで

譲渡所得税を払う方法

譲渡所得税は、それぞれ払う方法も異なります。

  • 所得税、復興特別所得税:売却した翌年の確定申告時
  • 住民税:売却した翌年の給与からの天引き、または普通徴収

所得税と復興特別所得税は、確定申告時に払います。

一方で住民税は、会社員ならば翌年6月以降の給与から天引きされますが、自営業者は市区町村から送付される納付書を使って現金または口座振替で払います。

不動産売却で払う税金を節税する方法

吉田 宏
吉田 宏

ここまで不動産売却で税金を払うタイミングと方法を説明しましたが、できれば税負担は軽くしたいと思いますよね。最後に、売却時の節税方法について説明します。

控除や特例を利用する

売却時に払う税金の中でもとくに高額なのが譲渡所得税ですが、課税されるのは“利益が出たときのみ”です。そのため控除や特例を利用して利益が0になれば、税金がかかる心配はありません。

不動産売却で利用できるのは、次のような控除と特例です。

  • 3,000万円特別控除
  • 所有期間10年超の場合の軽減税率特例
  • 買い換え特例
  • 取得加算の特例(相続した不動産の場合)
  • 空き家の3,000万円特別控除

さまざまな制度がありますが、それぞれ要件と控除額、併用の可否などが異なるため、事前に利用できそうな制度を調べておくと良いでしょう。

控除や特例について詳しく説明した記事がありますので、こちらを参考にしてください。

税金関係に詳しい不動産会社に相談する

ここまで説明したように、不動産売却で発生する税金は、それぞれ払うタイミングも方法も異なります。売却では引っ越しなどのやるべきことが多いので、期限を忘れてしまうことも珍しくありません。

吉田 宏
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仲介または買取依頼をする不動産会社を決めるときには、売却とともに納税スケジュールも指示してくれる税金関係に詳しい会社を探すと良いでしょう。

不動産売却で税金を払うタイミングは種類によって異なる!申告忘れに要注意!

売買契約書に貼付する印紙税、引き渡し時に払う登録免許税、サービス料とともに払う消費税は、手続き時に払うため忘れる心配はありません。

しかし譲渡所得税については、所得税と復興特別所得税、住民税で払うタイミングと方法が違うだけではなく、申告も必要なので忘れがちです。申告や納税をし忘れると、加算税や延滞税などのペナルティが発生する恐れがあります。

吉田 宏
吉田 宏

もし売却から申告までに期間が空くのなら、必ずスマホやカレンダーなどを使って忘れないようにリマインドしておきましょう。

監修者
吉田 宏
吉田 宏(株式会社SUMiTAS 代表取締役社長)
  • 二級建築施工管理技士
  • 宅地建物取引士
  • 測量士補
  • 賃貸不動産経営管理士

愛媛大学在学中に愛媛県で株式会社アート不動産を創業する。現在アート不動産では、アパマンショップ(賃貸)を5店舗、SUMiTAS(売買)を2店舗・管理センターを1店舗、売買店舗を2店舗運営。吉田 宏の詳細プロフィールはこちら