転勤で持ち家はどうする?空き家・賃貸・売却の3つの選択肢を比較

転勤で家はどうする?空き家・賃貸・売却の3つの選択肢を比較

監修者
吉田 宏
吉田 宏(株式会社SUMiTAS 代表取締役社長)
  • 二級建築施工管理技士
  • 宅地建物取引士
  • 測量士補
  • 賃貸不動産経営管理士

勤務先で転勤を言い渡されたとき、持ち家をどうするか悩んでしまう方も多いでしょう。主な選択肢には、

  • 空き家にしておく
  • 賃貸に出す
  • 売却する

の3つがあり、方法としては「空き家にしておく」が最も簡単かつリスクも最小限で済むケースが多いです。

しかし空き家にする場合は、住宅ローンと転勤先の家賃の二重負担になるため家計が心配です。そうなると考えるのは、賃貸または売却になりますが、それぞれメリットもあればデメリットもあるため慎重に検討する必要があります。

そこで本記事では、転勤期間中に持ち家をどうするのか、空き家・賃貸・売却の選択肢のメリットとデメリットを説明し、方法で悩んだときの判断ポイントをお伝えします。

この記事の要約
  • 転勤時に持ち家をどうするかは、空き家、賃貸、売却の3つの選択肢がある。
  • 空き家にする場合、手間が少なく簡単だが、住宅ローンと新居の二重負担や定期的な管理が必要。
  • 賃貸に出す場合、家賃収入が得られるが、入居者探しや管理の手間がかかる。
  • 売却は手間がかかるが、ローンの負担がなくなり、転勤先での選択肢が広がる。

転勤が決まったときに持ち家の3つの選択肢

転勤が決まったときに持ち家の3つの選択肢
転勤が決まったときに持ち家の3つの選択肢

冒頭でも説明したように、転勤が決まったときの持ち家の扱いには、

  • 空き家にしておく
  • 賃貸に出す
  • 売却する

の3つの選択肢があります。まずはそれぞれがどのような方法なのか、見ていきましょう。

選択肢1:空き家にしておく

最も多く選ばれるのが、空き家にしておく方法です。

空き家にしておけばとくに手続きも必要なく、転勤期間が終わったときには再び家で暮らすことができます

しかし家は定期的に換気をしなければ、湿気やカビが発生してあっという間に劣化してしまうものです。最低でも月に1度程度は換気のために自宅へと戻るか、親族などに鍵を預けて換気してもらうことをおすすめします。

選択肢2:賃貸に出す

中~長期の転勤であれば、転勤期間中だけ賃貸に出す方法もあります。親族や知人に住んでもらうほか、不動産会社に相談して入居希望者を募ることもできます。

転勤による賃貸転用は一時的なものなので、賃貸期間をあらかじめ決めておく「定期借家契約」を結ぶのが一般的です。

選択肢3:売却する

転勤期間が長期になる、あるいは転勤先にそのまま永住する可能性があるのなら、売却するのもひとつの手です。

売却してしまえば住宅ローンの返済がなくなるため、転勤先の家賃との二重負担で家計が苦しくなる心配もありません。もちろん固定資産税や修繕積立金、管理費の支払い義務もなくなります。

転勤の間は空き家にしておくメリットとデメリット

持ち家をどうするのか、それぞれの選択肢についてもう少し深掘りしていきましょう。
まずは空き家にしておくメリットとデメリットをお伝えします。

空き家にしておくメリット

転勤期間中に持ち家を空き家にしておくメリットは、次の3つです。

  • 特別な手続きが不要
  • 転勤期間が早まってもすぐに自宅へと戻れる
  • 管理しておけば、家が汚れたり傷ついたりする心配がない

転勤期間中の対応として、最も手間がかからないのが空き家にしておく方法です。

急に転勤が終わり自宅へ戻ることになったときにも、自分たちのタイミングで引っ越しできるので借家期間や住み替え先を考える必要はありません。

月1回程度の換気をしておけば家が激しく劣化する心配もなく、簡単な掃除をするだけで、これまでどおり暮らしていけるでしょう。

空き家期間は住宅ローン控除を受けることはできない

空き家期間は住宅ローン控除を受けることはできないので、管轄する税務署に届け出をしておきましょう。自宅へ戻ってから、残りの控除期間が適用されます。

空き家にしておくデメリット

空き家にしておくデメリットは、次の3つです。

  • 住宅ローンと転勤先の住居費で支払い負担が大きい
  • 換気や掃除などの定期的な管理が必要
  • 放火や空き巣、不法占拠などの犯罪リスクがある

会社から家賃の全額補助がない限り、転勤期間中は住宅ローンと賃貸物件の家賃で今よりも出費が増えてしまいます。転勤期間中の一時的なものではありますが、家計が苦しくなる恐れもあるでしょう。

また前述したように、家は換気しなければあっという間に劣化してしまうものです。同時に空き家期間が長いと放火や空き巣、不法占拠などの犯罪リスクも高まります。

実際に空き家になっているマンションが、特殊詐欺グループの住処になっていたこともありました。家の状態を維持するためだけではなく、犯罪リスクを防ぐためにも定期的な管理は必要です。

転勤の間は家を賃貸に出すメリットとデメリット

住宅ローンはあくまで持ち家のための融資なので、返済期間中は原則として賃貸転用はできません。しかし転勤のようなやむを得ない事情であれば、一時的な賃貸転用が認められるケースもあります。

金融機関に賃貸転用が認められたと仮定して、賃貸物件にするメリットとデメリットを見ていきましょう。

賃貸に出すメリット

転勤期間中に持ち家を賃貸に出すメリットは、次の3つです。

  • 入居者がいる間は家賃収入を得られる
  • 管理の手間が省ける
  • 「定期借家契約」にすれば転勤期間終了後に再び家で暮らせる

賃貸に出す大きなメリットは、家賃収入を得られることです。ただし定期借家契約の場合は短期間契約になるため、周辺相場よりも家賃が低くなる点には注意しましょう。

契約期間が3年の場合は2割、5年であれば1割ほど周辺相場よりも家賃を低く設定するのが一般的です。

また、入居者がいる間は換気の手間が省ける点もメリットと言えます。もし賃貸期間中に傷ついたり汚れたりしてしまっても、受け取った敷金で修復できるでしょう。

転勤期間が終わるまでに定期借家契約の契約期間も終わるようにしておけば、転勤が終わったときに再び家で暮らせます。

なお、空き家のときと同様に、その家で暮らさない期間は住宅ローン控除は受けられません。管轄する税務署に届け出を提出し、自宅へと戻ったときに残りの控除を受けましょう。

賃貸に出すデメリット

いいことづくしのように思える賃貸転用ですが、知っておきたいデメリットもあります。

  • 入居者探しや片付けに手間がかかる
  • 契約期間が終わるまでは自宅へ戻れない
  • 入居者とトラブルになる可能性がある

賃貸転用するためにはまず金融機関に相談し、許可を得られたら不動産会社に相談して入居者の募集活動の手続きを行います。ほぼ不動産会社に任せるとはいえ、転勤の準備をしながらだとハードスケジュールになるでしょう。

そして賃貸転用で一番注意したいのが、定期借家契約の期間中に転勤が終わってしまうことです。定期借家契約の期間中は、原則貸主から契約解除することはできません。もし退去に納得してもらえたとしても、立ち退き料を支払う必要があります。

また、第三者に貸し出すときには、家賃の滞納や設備機器の破損などでトラブルになる可能性があります。その点も納得したうえで、賃貸転用を検討してください。

転勤を機に家を売却するメリットとデメリット

売却は手間がかかると思われがちですが、長期間の転勤であれば金銭的・精神的なリスクが少ない方法と言えます。メリットとデメリットを見てみましょう。

売却する出すメリット

転勤を機に家を売却するメリットは、次の3つです。

  • 住宅ローン、修繕費、管理費、税金の支払いがなくなる
  • 管理の手間がなくなる
  • 転勤期間を終えたときの選択肢が広がる

繰り返しにはなりますが、家を売却すると住宅ローンの返済義務がなくなるとともに、税金や管理費、修繕積立金の支払いもなくなります。期間が未定の転勤であれば、これらの費用と管理義務がなくなるだけで気持ちにゆとりができるでしょう。

また、転勤期間を終えたときに、住み替え先の選択肢が広がるのもメリットのひとつです。

買ったときよりも高く売れれば、その資金を住み替え費用にあてることもできます。地元または新たな地で家を買う、あるいは賃貸物件に住むなど、そのときの状況に合わせて暮らし方を決められるのも売却のメリットです。

売却するデメリット

家を売ることには、次のようなデメリットもあります。

  • 売却活動に手間がかかる
  • オーバーローンの場合は手元資金からの補填が必要になる
  • 気に入る家が見つかるとは限らない

家を売るためには、不動産会社探しや内見などの売却活動が必要です。スムーズに買い手が見つかったとしても3〜6か月ほどかかる場合が多いため、転勤が決まったと同時に売却活動を始める必要があります。

転勤先の住居探しと同時進行になるため、しばらくはハードスケジュールになるでしょう。

住宅ローンが残っていて、残高が明らかに査定額を超えるオーバーローンの場合は、不足分を自己資金から補填しなければなりません。月々のローン返済の負担がなくなるとはいえ、預金が減ってしまうのはやはりデメリットです。

また、住み替え先の選択肢が広がる点をメリットに挙げましたが、今住んでいる家と同じくらい気に入る家が見つかるとは限りません。「売るんじゃなかった」と後悔しないよう、慎重に検討しましょう。

転勤期間や住宅ローン残高などから後悔のない選択を!

空き家・賃貸・売却、どの方法もメリットもあればデメリットもあるとわかりました。「結局どの方法がいいのかわからない」と、頭を抱えてしまった方もいらっしゃるでしょう。

どうするか悩んだときの判断ポイントは、

  • 転勤期間がどのくらいなのか
  • 住宅ローン残高はどのくらいあるのか
  • 転勤期間が終わったあとに再び家に暮らしたいか

の3つです。

転勤期間が短期ならば空き家、長期であれば売却と賃貸を視野に入れ、住宅ローン残高よりも高く売れそうならば売却を検討してもよいでしょう。

そして最も大切なのが「転勤期間が終わったあとに再び今の家で暮らしたいか」という部分です。今の家を気に入っているのなら、安易に貸したり手放したりする方法はおすすめしません。

もし持ち家をどうすればいいのか悩んでいるのなら、まずは不動産会社に相談してみましょう。一度相談しておけば、賃貸や売却をしたいと思ったときの相談もスムーズです。

SUMiTAS(スミタス)は全国に店舗展開しているので、転勤先からもご相談いただけます。まずはお気軽にご相談ください。

監修者
吉田 宏
吉田 宏(株式会社SUMiTAS 代表取締役社長)
  • 二級建築施工管理技士
  • 宅地建物取引士
  • 測量士補
  • 賃貸不動産経営管理士

愛媛大学在学中に愛媛県で株式会社アート不動産を創業する。現在アート不動産では、アパマンショップ(賃貸)を5店舗、SUMiTAS(売買)を2店舗・管理センターを1店舗、売買店舗を2店舗運営。吉田 宏の詳細プロフィールはこちら