不動産の売却を決めたとき、最初のつまずきが「どこに頼めばいいのか」です。大手がいいのか、地元の会社がいいのか。ネットで調べても「実績を確認しましょう」「担当者を見ましょう」という答えばかりで、具体的に何をどう確認すればいいのかは、なかなか書いてありません。
先に結論をお伝えします。会社の規模では決まりません。決め手は「あなたの物件と同じ種別・同じエリアでの実績」と「査定額の根拠を説明できるか」の2つで、どちらも査定の場で質問すれば確かめられます。
この記事では、大手と地元の向き不向きを整理したうえで、査定面談でそのまま使える10の質問を、「良い回答」と「気になる回答」の見分け方つきでお渡しします。さらに、2025年1月に始まった囲い込み規制を使った確認手順、依頼した後に会社を替える方法まで、不動産会社の現場を知る立場からわかりやすく解説します。
- 会社選びは規模ではなく「同種物件の実績」と「査定根拠の説明力」で決める
- 査定は複数社に依頼し、10の質問への答え方を比べる。質問リストはこの記事からそのまま使える
- 2025年1月から囲い込みの中核手口は行政処分の対象。売主は登録証明書のIDで自分の物件の状態を確認できる
- 媒介契約は最長3か月で自動更新なし。「合わなければ替えられる」ことを前提に選んでよい
目次
結論: 会社の規模では決まらない
不動産会社には、それぞれ得意分野があります。マンションが得意な会社、土地の実務に強い会社、賃貸が主力で売買は少ない会社。「良い会社」が一律にあるのではなく、「あなたの物件に合う会社」があるだけです。
だから、最初の絞り込みは次の順番で考えます。

- 期限があるか: 転勤や相続税の納付などで期限が動かせないなら、仲介と並行して買取も比較します
- 物件種別×エリアの実績で2〜3社選ぶ: 会社の名前ではなく、「この駅・この地域で、戸建て(土地・マンション)を直近に売った実績があるか」で選びます
- 査定で答え方を比べる: 価格の高い安いではなく、後述の10の質問への答え方で比べます。査定額はあくまで予想価格で、高い査定額を出した会社が高く売ってくれる会社ではありません。この勘違いは売却の失敗パターンの筆頭です(詳しくは家の売却でやってはいけないことの記事)
大手と地元、それぞれが向いているケース
「大手か地元か」は誰もが迷うところですが、実務から見ると次のような向き不向きです。
| 大手(全国区の仲介会社) | 地元密着の会社 | |
|---|---|---|
| 強み | 広告量・購入希望者の登録数・組織的な対応 | 地場相場の肌感覚・地域の買い手や業者との接点・柔軟な対応 |
| 向く物件 | 都市部・駅近など広く買い手を集めたい物件 | 地縁のある買い手が想定される物件・地方や郊外・土地の実務が絡む案件 |
| 注意点 | 担当者の入れ替わりや、案件規模による優先度の差が出ることがある | 会社によって得意分野と体制の差が大きい |
補足として、この2択に収まらない形もあります。地元の会社が全国ブランドのネットワークに加盟しているフランチャイズ方式(当社もこの形です)は、地場の当事者性と全国の情報網を併せ持つ構造です。どの形であれ、大事なのは次章の質問で「その会社の実力」を直接確かめることです。規模はその代わりになりません。
なお、店舗に行く前の段階で「うちの物件はいくらくらいか」を知りたいだけなら、匿名・電話番号なしで使える当社の10秒査定のような道具で相場観を先に持っておくと、その後の面談で提示される査定額を冷静に見られます。
査定面談で聞くべき10の質問。回答の見分け方つき
ここからが本題です。査定に来た担当者へ、次の10問を聞いてください。すべて、誠実に仕事をしている会社なら答えに困らない質問です。逆に、複数の質問で回答が曖昧なら、その会社に任せる根拠がないということです。

実績を確かめる2問
Q1「この物件と同じ種別で、このエリアの直近の売却実績を教えてください」
- 良い回答: 件数と、近い条件の事例(成約時期・おおよその価格帯)が具体的に出てくる
- 気になる回答: 「たくさんやっています」だけで、具体例が出てこない
Q2「その事例では、売り出しから成約までどれくらいかかりましたか」
- 良い回答: 期間と、途中で何をしたか(価格調整・見せ方の変更など)まで話せる
- 気になる回答: 期間の話を避ける。参考までに、首都圏の中古戸建は登録から成約まで平均100日超です(東日本レインズ2025年公表値)。「すぐ売れます」を強調する会社ほど、この現実との差を説明できるかが試金石になります
価格の根拠を確かめる2問
Q3「この査定額は、どの成約事例と比較して出しましたか」
- 良い回答: 比較した事例と、あなたの物件との差(プラス要因・マイナス要因)を資料で説明できる
- 気になる回答: 根拠の説明がなく「頑張ってこの金額を狙いましょう」と意欲だけを語る
Q4「査定額と、実際の売り出し価格はどう決めますか」
- 良い回答: 査定額(売れるであろう価格)と売り出し価格(戦略として付ける価格)を区別し、反応を見て調整する計画を話せる
- 気になる回答: 他社より目立って高い査定額を出し、その根拠を聞いても「実績があるので」で終わる。媒介契約を取るための高値提示は、後の値下げで帳尻を合わせる典型パターンです
販売活動を確かめる2問
Q5「販売活動は具体的に何をしますか」
- 良い回答: レインズ(不動産会社間の物件情報ネットワーク)への登録、掲載するポータルサイト、写真・図面の作り方、案内の体制まで具体的に挙がる
- 気になる回答: 「ネットに載せます」で終わる
Q6「販売状況の報告は、どの頻度で、何を報告してもらえますか」
- 良い回答: 法律で決まった頻度(専任媒介は2週間に1回以上)に加えて、問い合わせ数や案内数といった数字で報告すると明言する
- 気になる回答: 報告義務そのものの説明があいまい
透明性を確かめる2問(囲い込み対策)
Q7「レインズの登録証明書はもらえますか。自分でステータスを確認できますか」
- 良い回答: 当然のこととして交付し、売主専用IDでの確認方法まで説明してくれる(専任・専属専任では交付と説明が義務です)
- 気になる回答: 話をそらす、「そういうのは気にしなくて大丈夫です」
Q8「他社から買い手の紹介があった場合、どう対応しますか」
- 良い回答: 「すべておつなぎします」と明言し、社内ルールとして説明できる
- 気になる回答: 「まずは自社のお客様を優先で」など、他社経由の買い手を遠ざける姿勢が見える。これは囲い込み(両手仲介を狙って他社への物件紹介を絞る行為)につながるサインです。仕組みは囲い込みの記事で詳しく解説しています
出口を確かめる2問
Q9「3か月で売れなかった場合、どう動きますか」
- 良い回答: 反応データの振り返り→見せ方・広告の改善→価格の順で、プロセスとして説明できる
- 気になる回答: 「そのときは値下げですね」だけ。根拠のない値下げ提案しか出てこない会社とは、長い販売活動を組み立てられません
Q10「買取や買取保証の選択肢はありますか」
- 良い回答: 仲介との使い分けや、期限が来た場合の切り替えまで提案できる
- 気になる回答: 自社の得意な売り方に誘導するだけで、他の選択肢の説明がない
査定書のどこを見るか
質問への答えと合わせて、出てきた査定書そのものも判断材料になります。見るポイントは3つだけです。
- 比較事例が載っているか: あなたの物件の近隣・同種別の成約事例と、価格を補正した過程が書かれているか。事例のない査定書は、根拠を後から検証できません
- プラスとマイナスの両方があるか: 良い点しか書かれていない査定書より、マイナス要因(前面道路・築年数・修繕状況など)まで正直に評価している査定書のほうが、販売中の説明も信頼できます
- その金額になる理由を説明できるか: 「2,980万円」と一点で示す会社もあれば、「2,800万〜3,100万円」と幅で示す会社もあります。どちらが良いとも言えません。見るべきは幅の有無ではなく、その価格になる理由を聞いたときに答えられるかです。一点なら、なぜその額に絞れるのか。幅なら、何が満たされれば上限に近づくのか。ここに答えられる会社は、売り出したあとの説明も具体的になります
避けたほうがよい会社のサイン。2025年の規制を知っておく
会社選びの失敗パターンには共通点があります。前章までの質問で大半は見抜けますが、制度の後ろ盾も知っておくとさらに確実です。
2025年1月から、囲い込みの中核的な手口は行政処分の対象になりました。レインズへの取引状況(ステータス)の登録が義務化され、実際は売り出し中なのに「申込みあり」と偽って他社を排除する行為は、宅建業法に基づく指示処分の対象です。売主は、専任・専属専任媒介なら交付される登録証明書の売主専用IDで、自分の物件のステータスをいつでも自分の目で確認できます。

ただし、規制後も抜け道は残っています。一般媒介にはそもそも登録義務がないこと、電話口での「確認して折り返します」という引き延ばしは記録に残らないこと。だからこそ、Q7・Q8のような運用を直接聞く質問に意味があります。規制の詳細と残る手口は囲い込みの記事にまとめています。
このほか、契約前に確認できる公的な情報が2つあります。
- 免許番号: 会社概要にある「宅地建物取引業 ◯◯県知事(3)第◯◯号」の( )内は免許の交付回数で、5年ごとの更新のたびに1つ増えます。数字が大きいほど営業年数が長いことを示します(ただし年数は信頼の一要素にすぎません)
- 処分歴: 国土交通省の「ネガティブ情報等検索システム」で、宅建業者の行政処分歴を誰でも検索できます
依頼したあとで、会社を替えるには
会社選びを過度に怖がる必要はありません。媒介契約は最長3か月で、自動更新されないからです(専任・専属専任の場合。更新には売主からの申し出が必要です)。

- 3か月の満了時: 更新の義務はありません。報告内容と反応数を見て、納得できなければそのまま契約終了にできます
- 期間の途中: 会社側に義務違反(報告がない、レインズ未登録など)がある場合は途中解除の正当な理由になります。事情がなくても解除自体は可能ですが、それまでの広告実費を請求される場合があります(標準媒介契約約款による)。まずは満了のタイミングを使うのが穏当です
- 契約の種類ごとの縛りと選び方、3か月後の判断基準は媒介契約の記事で詳しく解説しています
なお、査定を受けた会社に依頼しないのは失礼ではありません。断り方に迷ったら査定の断り方の記事の例文をそのまま使ってください。
よくある質問
何社に査定を依頼するのがいいですか?
2〜3社が現実的です。1社では比較ができず、多すぎると対応の負担で判断が雑になります。大手と地元を1社ずつ混ぜると、価格と提案の違いが見えやすくなります。
田舎の土地は、どこに相談すればいいですか?
その地域の物件を実際に扱っている会社です。都市部の会社は地方の土地の買い手接点を持たないことが多く、査定だけで終わりがちです。地域で売買実績のある会社が見つからない場合は、買取や自治体の空き家バンクも含めた出口の相談になります。売れにくい土地の選択肢は売れない土地の記事で整理しています。
知り合いの不動産会社に頼むのは避けるべきですか?
知り合いであること自体は問題ありませんが、質問10問を省略しないことをおすすめします。断りにくさから実績外の物件を任せてしまい、売却が長期化するケースは実務でよく見ます。
査定額が会社によって数百万円違います。どれを信じればいいですか?
一番高い額ではなく、根拠の説明が最も具体的な会社を信じてください。査定額は約束された売却価格ではありません。差が大きいときこそQ3・Q4の質問が効きます。
まとめ: 質問リストを持って、2〜3社と話す
不動産売却の依頼先は、会社の規模ではなく「同種物件の実績」と「根拠の説明力」で選びます。やることはシンプルです。
- 物件種別×エリアの実績で2〜3社を選ぶ
- この記事の10の質問を持って査定面談に臨む
- 答え方と査定書を比べて、1〜2社に絞る(媒介契約の選び方はこちらの記事)
当社は加盟店方式の全国ネットワークで、地域の物件はその地域を知る加盟店が担当します。他社と比べていただく前提で構いません。まずは10秒査定で、匿名・電話番号なしで概算価格をご確認ください。査定面談では、この記事の10の質問にすべてお答えします。
本記事の制度に関する記述は2026年8月時点の情報です。囲い込みに関する規制は2025年1月施行の宅地建物取引業法施行規則および「宅地建物取引業法の解釈・運用の考え方」の改正(レインズの取引状況登録の義務化・虚偽登録の宅建業法65条1項に基づく指示処分対象化・登録証明書の交付と確認方法の説明義務)によります。媒介契約の期間・報告頻度は宅地建物取引業法34条の2、途中解除の費用は標準媒介契約約款によります。成約までの期間は東日本不動産流通機構「首都圏不動産流通市場の動向(2025年)」によります。
不動産売却ガイド
