不動産売却でマイナンバーを求められたら。拒否はできるのか、求められる条件と出す前に確かめること

不動産売却でマイナンバーを求められたら。拒否はできるのか、求められる条件と出す前に確かめること

監修者
吉田 宏
吉田 宏(株式会社SUMiTAS 代表取締役社長)
  • 二級建築施工管理技士
  • 宅地建物取引士
  • 測量士補
  • 賃貸不動産経営管理士

不動産を売るときに、買主の不動産会社などから「マイナンバーを教えてください」と言われることがあります。売るのに番号まで必要なのか、断ってもよいのか、迷う方は少なくありません。

結論を先に言うと、国税庁は、条件に当たる売主に対して、買主へのマイナンバーの提供が「必要」としています。一方で、提供しなかった売主を罰する定めは、所得税法・国税通則法・番号法(マイナンバー法)を確認した範囲では見当たりません。番号の提供を受けられなかった場合でも、税務署は、番号の記載がない支払調書も受け取る扱いです。

マイナンバーを求められるのは、買主が法人か不動産業者で、同じ買主から1年に受け取る売却代金の合計が100万円を超えるときです。買主は、売主の番号を書いた「不動産等の譲受けの対価の支払調書」を税務署に出す義務があり、そのために番号を求めます。個人(不動産業者ではない人)が買主なら、番号を求められる理由はありません。

出すか断るかを決める前に確かめたいのは、求めているのが誰か、条件に当たるか、何のために使うかの3つです。

この記事では、マイナンバーを求められる条件、番号を出すときの書類、マイナンバーカードの裏面のコピー、提供を拒否したときの扱い、本物の依頼かの確かめ方を、国税庁の資料と条文で整理します。売却では、これとは別に、犯罪収益移転防止法による本人確認もあり、こちらは不動産会社と司法書士が行います。マイナンバーを受け取るときの本人確認(番号確認と身元確認)は、番号法にもとづいて、番号を受け取る買主が行うもので、根拠の法律が違います(不動産会社が買主になる買取では、同じ不動産会社が両方を行います)。

この記事の要点
  • 国税庁は、条件に当たる売主のマイナンバーの提供を「必要」としている。ただし、提供しなかった売主への罰則の定めは所得税法・国税通則法・番号法では見当たらず、税務署は番号の記載がない調書も受け取る扱い
  • 求められるのは、買主が法人か不動産業者で、同じ買主からの年間の受け取りが100万円を超えるとき
  • 理由は、買主が税務署に出す「不動産等の譲受けの対価の支払調書」に売主の番号を書くため
  • 出すときは、マイナンバーカード1枚か、番号入りの住民票の写しなどと運転免許証などの組み合わせ

不動産売却でマイナンバーの提供は拒否できるのか。国税庁は「必要」としている

最初に、拒否できるかどうかについて、公的な資料が何と書いているかを並べます。

国税庁の「番号制度概要に関するFAQ」は、法定調書(支払調書など、税務署に出すことが法律で決まっている書類)の対象になる支払を受ける人について、次のように書いています。

法定調書の対象となる金銭等の支払等を受ける方は、法定調書の提出義務がある方に対してマイナンバー(個人番号)・法人番号を提供することが必要となります。

内閣府と国税庁のリーフレット「不動産の売主・貸主のみなさまへ」も、条件に当たる場合は「取引先(買主または借主)へのマイナンバーの提供が必要です」と案内しています。国は、提供を求める立場です。

一方、提供しなかった売主を罰する定めは、所得税法・国税通則法・番号法を確認した範囲では見当たりません。「拒否できるか」という問いに一言で答えるなら、国は提供を求めているが、断った売主を罰する定めは見当たらない、となります。断ったときに買主の側で起きることは、後の「不動産売却でマイナンバーの提供を拒否したときの扱い」で説明します。

不動産売却でマイナンバーを求められるのは、買主が法人か不動産業者のとき

番号を求められるかどうかは、次の2つの条件で決まります。

買主が法人か不動産業者で年100万円超ならマイナンバーを求められる
  1. 買主が法人か、不動産業者である個人(ただし、主に建物の賃貸借の代理や仲介をしている個人の不動産業者は除く)
  2. 同じ買主から、その年に受け取る売却代金の合計が100万円を超える

国税庁のタックスアンサーNo.7442によると、100万円には消費税を含めて判断しますが、消費税の額が明確に分けられている場合は含めなくても構いません。合計は「1回の売買ごと」ではなく「同じ買主からのその年の合計」で数えます。

受け取る合計が100万円以下で、買主が調書を出さないことが明らかなときは、買主は番号の提供を求めることができません(国税庁のFAQ)。とはいえ、不動産の売却代金が100万円以下になることは多くはないので、実際には、一般の企業や不動産会社に売るとき(買取を含む)は、ほとんどの場合この条件に当たります。不動産会社が自ら買主になる買取も、買主の条件に当たります。買取の流れは不動産買取の流れの記事で解説しています。

反対に、個人(不動産業者ではない人)に売る場合は、買主に支払調書を出す義務がないので、番号を求められる理由はありません。番号法15条は、法律で認められた場合を除いて、他人に番号の提供を求めることを禁じています。

なお、家や土地を貸している場合(借主が法人などで、同じ借主からの家賃などが年15万円を超えるとき)にも番号を求められますが、これは売却とは別の支払調書の話です。

不動産売却でマイナンバーが要る理由は、買主が税務署へ出す支払調書

買主が番号を求めるのは、税務署に「不動産等の譲受けの対価の支払調書」を出すためです。所得税法225条1項9号が、不動産の譲受けの対価を支払う法人や不動産業者に、この調書の提出を義務づけています。調書に書く事項には、支払を受ける人(売主)の氏名・住所と並んで個人番号が含まれます(所得税法施行規則90条1項1号)。

項目内容
調書の名前不動産等の譲受けの対価の支払調書
出す人法人と、不動産業者である個人(買主)
出す先買主の、支払の事務をする事務所などの所在地を所轄する税務署
出す時期支払が確定した年の翌年1月31日まで
載る事項売主の氏名・住所・個人番号、支払った金額など

売主が書類を作ったり税務署に出したりする必要はありません。買主が売主に調書の写しを渡す場合は、マイナンバーを書いて渡すことはできないとされています(タックスアンサーNo.7442)。

不動産売却でマイナンバーを出すときの書類

番号を受け取る買主は、番号が正しいかの「番号確認」と、出した人が番号の持ち主本人かの「身元確認」の2つを行わなければなりません(番号法16条、同法施行令12条)。買主が不動産会社でない一般の企業でも、番号を受け取るならこの確認をします。仲介の不動産会社や司法書士が行う犯罪収益移転防止法の本人確認とは別の手続きなので、身分証を見せる場面が増えることがあります。国税庁の事業者向けの資料によると、出す書類の組み合わせは主に次の2通りです。

マイナンバーカードなら1枚で、ないときは2種類の書類を出す
  • マイナンバーカードがある場合: カード1枚で、番号確認と身元確認の両方ができる
  • マイナンバーカードがない場合: マイナンバーの記載がある住民票の写し(または、記載の氏名・住所などが今の住民票と一致している通知カード)で番号確認をし、運転免許証やパスポートなど写真付きの書類で身元確認をする

身元確認に使える写真付きの書類は、運転免許証、運転経歴証明書(2012年4月1日以降に交付されたもの)、パスポート、身体障害者手帳、在留カード、特別永住者証明書などです(番号法施行規則1条)。運転免許証もマイナンバーカードもない方は、パスポートなどがあればそれを使います。写真付きの書類がひとつもない場合は、健康保険の資格確認書と源泉徴収票のように、氏名と、生年月日か住所が書かれた写真のない書類を2種類以上出して身元確認をします(同規則2条3項。例は国税庁の案内による)。郵送で出すときは、これらの書類の写しを送ります。

ここで挙げた書類と郵送の扱いは、番号法の決まりです。不動産会社や司法書士が行う犯罪収益移転防止法の本人確認は、使える書類や郵送の扱いが違い、2027年4月からは写しを送る方法などが原則として使えなくなります。

なお、登記の手続きで使う住民票の写しは、マイナンバーの記載がないものです。買主に番号を出すための住民票の写しとは別に取ってください。

マイナンバーカードの裏面のコピーは、相手を確かめてから

マイナンバーカードは、表面が顔写真付きの身分証として使われる面で、裏面に個人番号が載っています。個人情報保護委員会は、身分証明書の写しとして使う目的で表面をコピーすることは問題ないとする一方、番号法で定められた場合以外では「カードの裏面の個人番号をコピーすることはできません」としています。

つまり、支払調書のために番号を受け取る買主(またはその委託を受けた業者)には裏面を見せる理由がありますが、それ以外の相手が身分証として裏面のコピーを求めることはできません。身分証として求められたときに出すのは表面だけです。

なお、身分証としてカードを見せたときに、意図せずに裏面の番号を見られただけでは、番号を提供したことにはならないとされています(個人情報保護委員会のQ&A)。

仲介で売るとき、マイナンバーを求めるのは誰か

仲介で売る場合も、支払調書を出すのは買主です。仲介する不動産会社が売主に売却代金を支払うわけではないので、仲介会社が自分のために売主の番号を求める理由はありません。

ただし、買主が番号の収集を外部の業者に任せていることがあり、内閣府・国税庁のリーフレットも「マイナンバーの収集を外部に委託することは法令で認められています」と案内しています。仲介会社など買主以外から番号を求められたら、どの買主の支払調書のために集めているのかを確かめてから出してください。

不動産売却でマイナンバーの提供を拒否したときの扱い

番号を出さないと決めた場合に、買主の側で起きることは、国税庁の資料に書かれています。

  1. 買主は、番号の記載が法律で定められた義務であることを伝えて、もう一度提供を求めます
  2. それでも提供を受けられないときは、買主は提供を求めた経過を記録し、番号の欄を空けたまま支払調書を出します。この記録は法令上の義務ではなく、いつ求めて、提供を受けられなかったかが後から分かればよいとされています
  3. 税務署は、番号の記載がない調書も受け取る扱いです。ただし、番号は調書に書くべき事項とされていて、記載がない理由は、調書を出した買主の側に確認されることがあります

番号を出さなくても、売主の氏名・住所と支払った金額を書いた支払調書は税務署に出されます。

反対に、番号を出した場合、買主は法律で定められた目的以外に番号を使うことはできず、漏えいを防ぐなどの管理の措置も義務づけられています(番号法12条。内閣府・国税庁のリーフレットにも同じ案内があります)。

提供しなかった売主を罰する定めが見当たらないことは、最初の章で書いたとおりです。国は提供を求めているので、出さないと決める前に、求めている相手と条件を確かめ、出した番号がどう扱われるかも踏まえて判断してください。

不動産売却のマイナンバーを求める連絡が本物か確かめる方法

マイナンバーを聞き出そうとする不審な連絡もあります。依頼を受けたら、次の3点を確かめてください。

  • 求めているのは誰か: 買主本人(法人・不動産業者)か、その買主から収集を任された業者か。売買の相手と関係のない企業や個人が求めることはできません。心当たりのない業者から求められたときは、売買の相手である買主に、収集を任せているかを直接確かめてください
  • 条件に当たるか: 買主が法人か不動産業者で、同じ買主からの受け取りが年100万円を超えるか。個人の買主から求められた場合は理由を聞いてください
  • 何のために使うか: 「不動産等の譲受けの対価の支払調書」に書くため、という説明があるか

税務署を名乗る連絡にも注意が必要です。国税庁は、税務職員が電話で直接マイナンバーを聞くことはないと案内しています。

確定申告で書くマイナンバーとの違い

不動産を売って利益が出た場合などに出す確定申告の申告書には、売主自身が自分のマイナンバーを書きます。申告書や法定調書にマイナンバーを書くことは法律で義務づけられていると、国税庁は案内しています。これは、買主に番号を出すかどうかとは別の話です。

申告が必要かどうか、税額がいくらになるかは、売却の条件によって変わります。税務署か税理士に確かめてください。売却の全体の流れは不動産売却の流れの記事、売却で使う書類は不動産売却の必要書類の記事にまとめています。

不動産売却のマイナンバーのよくある質問

不動産売却でマイナンバーの提出義務はある?

国税庁は、買主が法人か不動産業者で、同じ買主から年100万円を超えて受け取る売主について、買主への提供が「必要」としています。一方で、提供しなかった売主に対する罰則の定めは、所得税法・国税通則法・番号法を確認した範囲では見当たりません。税務署は、番号の記載がない支払調書も受け取る扱いです。

不動産売却でマイナンバーの提供を拒否するとどうなりますか?

買主は、番号の記載が法律で定められた義務であることを伝えて、もう一度提供を求めます。それでも提供しなければ、買主は求めた経過を記録し、番号の記載がないまま支払調書を出すことになり、税務署はそれも受け取る扱いです。売主を罰する定めは、所得税法・国税通則法・番号法を確認した範囲では見当たりません。

マイナンバーの提出を拒否されたらどうすればいいですか?

これは番号を受け取る買主の側の質問です。国税庁は、番号の記載が法律で定められた義務であることを伝えて提供を求め、それでも提供を受けられないときは、提供を求めた経過を記録しておくよう案内しています。この記録は法令上の義務ではなく、いつ求めて提供を受けられなかったかが後から分かればよいとされています。

不動産売買でマイナンバーは必要ですか?

買主が法人か不動産業者で、同じ買主への売却代金の合計が年100万円を超える場合に、買主が支払調書に書くために必要になります。個人(不動産業者ではない人)に売る場合は、番号を求められる理由はありません。

不動産売却で仲介会社にマイナンバーを渡すのですか?

支払調書を出すのは買主なので、仲介会社が自分のために売主の番号を求める理由はありません。ただし、買主が番号の収集を外部の業者に任せていることがあり、買主以外から番号を求められる場合もあります。仲介会社などから求められたときは、どの買主の支払調書のためかを確かめてから渡してください。

不動産売却でマイナンバーカードの裏面のコピーを渡しても大丈夫ですか?

支払調書のために番号を受け取る買主(またはその委託を受けた業者)に渡すのであれば、番号の提供として認められた場面です。それ以外の相手が身分証として裏面のコピーを求めることはできないと、個人情報保護委員会は示しています。身分証として求められたときは、表面だけを出してください。

まとめ: 不動産売却のマイナンバーは、求めている相手と条件を確かめてから出す

不動産売却のマイナンバーについて、この記事でお伝えしたことをまとめます。

1. 求められるのは、買主が法人か不動産業者で、同じ買主からの受け取りが年100万円を超えるときです。個人(不動産業者ではない人)に売る場合は求められる理由がありません。

2. 理由は、買主が税務署に出す「不動産等の譲受けの対価の支払調書」です。売主が書類を作る必要はありません。

3. 国税庁は提供が「必要」としています。ただし、提供しなかった売主への罰則の定めは所得税法・国税通則法・番号法では見当たらず、税務署は番号の記載がない調書も受け取る扱いです。

4. 出すときは、マイナンバーカード1枚か、番号入りの住民票の写しなどと写真付きの身分証の組み合わせです。裏面のコピーは、支払調書のために番号を受け取る相手にだけ渡します。

求められたら、慌てて断る前に、そして言われるままに出す前に、相手・条件・使い道の3つを確かめてください。

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本記事の内容は2026年10月時点の法令・制度にもとづきます。支払調書の提出義務は所得税法225条1項9号、記載事項と提出が不要な範囲は所得税法施行規則90条、提出範囲と写しの扱いは国税庁タックスアンサーNo.7442、提出時期は国税庁「税務手続の案内」F1-5、番号の提供の必要と提供を受けられない場合の扱いは国税庁「番号制度概要に関するFAQ」Q2-1・Q2-3-1・Q2-3-2・Q3-2-2・Q3-3と「法定調書に関するFAQ」Q1-2・Q1-4・Q1-5、売主への案内と安全管理の措置は内閣府・国税庁「不動産の売主・貸主のみなさまへ」(2018年(平成30年)11月作成)と番号法12条、本人確認の書類は国税庁「国税分野における番号法に基づく本人確認方法【事業者向け】」(2023年(令和5年)9月)、不動産業者の範囲は所得税法施行令352条、罰則の照合は所得税法242条・国税通則法第10章・番号法第9章、提供の求めの制限と本人確認の措置は番号法15条・16条と同法施行令12条、マイナンバーカードのコピーの扱いは個人情報保護委員会「『特定個人情報の適正な取扱いに関するガイドライン』に関するQ&A」Q5-10・Q6-13によります。

監修者
吉田 宏
吉田 宏(株式会社SUMiTAS 代表取締役社長)
  • 二級建築施工管理技士
  • 宅地建物取引士
  • 測量士補
  • 賃貸不動産経営管理士

愛媛大学在学中に愛媛県で株式会社アート不動産を創業する。現在アート不動産では、アパマンショップ(賃貸)を5店舗、SUMiTAS(売買)を2店舗・管理センターを1店舗、売買店舗を2店舗運営。吉田 宏の詳細プロフィールはこちら