家を解体する費用は、木造の30坪で90万円から150万円が目安です。解体業者が公表している価格帯から出した数字で、重機が入れる立地か、隣家との距離、依頼する解体業者の坪単価で変わります。ただ、この金額を調べ始めた時点で、順番が一つ飛んでいることがあります。
解体するかどうかは、壊した分が売値で戻るかどうかで決まります。当社が国土交通省の取引データ85,058件を集計したところ、築40年以上の木造一戸建ての取引価格の中央値は、首都圏で1,400万円、地方圏では520万円でした。解体費を仮に120万円と置くと、首都圏では売値の1割弱、地方圏では2割を超えます。地方圏では、そもそも約半数が500万円以下で取引されています。「解体してから売るべきか」の答えは、地域によって逆になります。
一方で、解体費そのものは、待っても下がることを期待しにくい状況です。工事の人件費の基準になる公共工事設計労務単価は14年連続で上がり、平成24年度の約2倍になりました。この記事では、構造・坪数別の相場と内訳、見積もりの比べ方、壊した分が戻るかの判断、そして解体費を払えないときの選択肢を、宅建業者の立場で整理します。
- 木造30坪の解体費は90万〜150万円が目安。ただし立地や解体業者で変わるので、見積もりは複数の解体業者から取って比べる。国と3市の補助要綱にはその1.4倍から5倍の単価が置かれているが、補助の計算のための数字で、相場ではない
- 解体費は待っても下がりにくい。公共工事の人件費の基準(全国・全職種)は14年連続で上昇し、平成24年度比で94.1%増
- 「解体してから売るか」の答えは地域で逆になる。築40年以上の取引価格の中央値は首都圏1,400万円・地方圏520万円
- 払えないときの出口は、現況のまま売る・買取・更地渡しで代金から精算の3つ。補助金は多くが後払いで、立て替えが要る
目次
家の解体費用は木造30坪で90万〜150万円が目安。立地と解体業者で変わる
まず金額の目安から示します。次の表は、解体業者と見積もりサイトが公表している価格帯を当社で10件確認し、その範囲をまとめたものです。公的な解体費の統計は存在しないため、これは業界が公表している幅であって、当社が集計した実額ではありません。
| 構造 | 坪単価の目安 | 20坪 | 30坪 | 40坪 | 50坪 | 100坪 |
|---|---|---|---|---|---|---|
| 木造 | 3万〜5万円 | 60万〜100万円 | 90万〜150万円 | 120万〜200万円 | 150万〜250万円 | 300万〜500万円 |
| 鉄骨造 | 4万〜7万円 | 80万〜140万円 | 120万〜210万円 | 160万〜280万円 | 200万〜350万円 | 400万〜700万円 |
| 鉄筋コンクリート造 | 6万〜8万円 | 120万〜160万円 | 180万〜240万円 | 240万〜320万円 | 300万〜400万円 | 600万〜800万円 |
ここでいう坪数は延べ床面積です。2階建てなら1階と2階の床面積を足した数字で、敷地の広さではありません。
当社の10秒査定に寄せられた一戸建ての査定依頼26,376件のうち、築40年以上は4,867件(18.5%)で、その84.8%が木造でした。建物面積の中央値は100平方メートル、坪に直すと30.2坪です。この記事で「木造30坪」を基準の例に使うのは、解体を考える家として最も多い姿だからです。
なお国土交通省の取引データで築40年以上の木造一戸建ての延べ床面積を見ると、中央値は95平方メートル(28.7坪)でした。査定依頼の実態と取引の実態が、ほぼ同じ大きさを指しています。
解体費用の内訳と、追加請求で差がつきやすい項目
見積書は次の項目に分かれます。総額だけを比べても意味がないのは、解体業者によってどこまでを本体工事に含めるかが違うからです。
| 項目 | 内容 | 差がつきやすさ |
|---|---|---|
| 本体工事費 | 建物そのものの解体と、コンクリート基礎の斫り(はつり=砕いて取り除く作業) | 構造と延べ床面積が基本。重機が入れる立地か、隣家との距離、解体業者ごとの坪単価でも変わる |
| 付帯工事費 | 庭木・ブロック塀・門扉・物置・カーポート・浄化槽・井戸の撤去 | 大きい。見積書に入っていないと後から追加になる |
| 残置物の処分費 | 家具・家電・衣類など家の中に残っているもの。家庭から出るものは一般廃棄物で、解体で出る廃材(産業廃棄物)とは扱いが別 | 大きい。家電リサイクル法の対象品は別途料金 |
| 事前調査費 | 石綿(アスベスト)の有無を調べる調査 | 規模を問わず法律で義務。一定規模以上は結果の報告も義務 |
| 諸経費 | 届出・近隣挨拶・仮囲い・養生・散水・交通誘導 | 立地で変わる |
| 整地費 | 解体後の土地をならす作業。仕上げの程度で金額が変わる | 中程度 |
追加の請求で差がつきやすいのは、付帯工事と残置物です。 例として、庭木が数本あるだけで10万円単位、浄化槽の撤去で10万円前後、残置物が一軒分あれば数十万円が乗ることがあります。金額は量と地域、解体業者で変わります。相見積もりを取るときは、この2つを現地で確認したうえで見積書に明記してもらってください。
残置物は、解体業者がまとめて処分できるとは限りません。家庭から出る家具・衣類・家電などは一般廃棄物で、その処分を請け負うには、市区町村の一般廃棄物処理業の許可か、市区町村からの委託が必要です。解体で出る廃材を扱う産業廃棄物の許可だけでは足りません。環境省も、残置物は解体の前に建物の所有者が処分する必要があるとしています。市区町村のルールに従って自分で出すか、許可を持つ業者に依頼してください。
なお解体費は、売却にかかる費用のなかでは「物件と状況によって発生する費用」に当たります。仲介手数料や印紙税のように必ずかかるものとの違いは、不動産売却の費用の記事で全体像を整理しています。
解体の見積もりが高いかは、相見積もりで確かめる
「坪3〜5万円」という相場を知っていても、手元の見積もりが妥当かどうかは、それだけでは判断しにくいものです。基本は、複数の解体業者から同じ条件で見積もりを取り、比べること(相見積もり)です。何をそろえて比べるかは「解体の見積もりで不動産会社が見ている点」の7点にまとめています。
もう1つ参考になるのが、自治体が解体の補助金を計算するときに使っている単価です。ただし、これは解体費の相場そのものではありません。補助の対象にする上限や、補助額を計算するための基礎として置かれた数字です。補助金の要綱は公開されているので、誰でも確認できます。
当社が国と3つの市の要綱を確認したところ、木造住宅の除却について次の単価が定められていました(2026年9月16日確認)。
| 出典 | 木造の単価(1平方メートルあたり) | 何の単価か |
|---|---|---|
| 国(空き家再生等推進事業) | 36,000円 | 補助の対象にする除却工事費の上限単価。非木造は51,000円 |
| 札幌市(木造住宅除却工事補助) | 47,800円 | 補助額の算定基礎。延べ面積に乗じた額の23%以内・上限30万円 |
| 大阪市(狭あい道路沿道老朽住宅除却促進制度) | 27,000円 | 市が定める額の単価。解体と整地に要する費用が対象 |
| 横浜市(住宅除却補助制度) | 21,800円 | 補助額の算定基礎。延べ面積に乗じた額の1/3 |
国の制度については、国土交通省の資料に「除却工事費については、除却工事費の1平方メートル当たりの額(一定の単価の上限あり)に、不良住宅又は空き家住宅の延べ面積を乗じて得た額を限度とする」と仕組みが書かれています。金額そのものは資料に載っていませんが、広島市が補助制度の説明のなかで「国が定める標準除却費(木造36,000円、非木造51,000円)」と公表しています。
注意したいのは、これらが平均額ではないことです。 いずれも「ここまでは補助の対象にする」という上限や算定の基礎として置かれた数字です。それでも、1平方メートルあたり21,800円から47,800円という幅は、坪に直すとおよそ7万円から16万円になります。業者が公表している木造の坪3万〜5万円(1平方メートルあたり約9,100円から15,100円)の、1.4倍から5倍です。
上限や算定の基礎として置かれた数字なので、この単価と見積もりを比べて、高いか安いかを決めることはできません。見積もりの妥当性は、相見積もりで判断してください。
そのうえで当社は、業者が公表している坪3〜5万円は、条件のよい現場の目安と見ています。見積もりがその幅を超えていても、それだけで不当とは言えません。超えている理由が「解体費用が高くなる家の条件」に当てはまるかを確認してください。逆に、相場を大きく下回る見積もりは、付帯工事や残置物が含まれていない可能性を疑うところです。
解体費用が高くなる家の条件
金額が上振れするのは、ほとんどが次のどれかです。
| 条件 | なぜ高くなるか |
|---|---|
| 前面道路が狭く重機が入らない | 手作業の割合が増え、人件費と工期が伸びる。運搬も小型車に分ける |
| 隣家との距離が近い | 養生と防音の手間が増え、手壊しの範囲が広がる |
| 石綿(アスベスト)が使われている | 除去の工法が変わり、専門の作業と届出が必要になる |
| 地中に障害物がある | 古い基礎、浄化槽、井戸、以前の建物のガラなど。掘ってから判明することが多い |
| 残置物が多い | 家財の量に比例して処分費が増える |
| 庭木・塀・付属物がある | 撤去は本体工事とは別。数が多いほど積み上がる |
| 敷地が傾斜している、擁壁がある | 重機の据え付けと搬出の手間が増える |
このうち地中障害物だけは、着工前に金額を確定できません。「掘って出てきたら別途」という条件が見積書に書かれていることが多いので、その場合の単価と上限を先に決めておくと後の揉め事が減ります。
「2階建ては平屋より高いのか」については、同じ延べ床面積なら、平屋のほうが高くなりやすいというのが当社の見方です。延べ床100平方メートルの家で比べると、平屋は基礎も屋根もそれぞれ約100平方メートルですが、2階建てなら約50平方メートルずつになります。単価の高い基礎の斫りと屋根の撤去の面積が、平屋では2倍になるからです。
解体費用は待っても下がりにくい

解体工事の費用では、人件費が大きな割合を占めます。その水準を測る公的な指標として、国土交通省が毎年決めている公共工事設計労務単価があります。公共工事の積算に使う単価なので、民間の解体工事の請負額そのものではありませんが、職人の賃金の動きを示す物差しにはなります。
2026年2月17日の公表によると、令和8年3月から適用される全国全職種の加重平均は25,834円で、初めて25,000円を超えました。前年度比4.5%の上昇で、14年連続の引き上げです。国土交通省の公表では平成24年度比で94.1%増(年度ごとの伸び率を積み上げた公表値)で、平成24年度の13,072円のほぼ2倍になっています。
解体に関わる職種の全国平均は次のとおりです。
| 職種 | 全国平均値 | 前年度比 |
|---|---|---|
| とび工 | 30,780円 | +4.0% |
| 特殊作業員 | 28,111円 | +4.3% |
| 運転手(特殊) | 29,442円 | +4.8% |
| 普通作業員 | 23,605円 | +3.0% |
「もう少し様子を見てから解体しよう」という判断は、この上昇分を引き受けることになります。空き家のまま持ち続ける間の固定資産税と管理の手間も別にかかります。空き家を放置した場合のリスクは特定空家と管理不全空家の記事に、火災保険の扱いは空き家の火災保険の記事にまとめています。
築古の家は、実際いくらで売れているか

解体費を判断するには、比べる相手が要ります。その家が今いくらで売れているのかです。
当社は国土交通省の不動産取引価格情報から、木造・用途が住宅・住宅地・土地面積100〜300平方メートル・特殊な事情のない取引に絞った85,058件を、築年帯別に集計しました(2024年第1四半期〜2025年第4四半期)。
| 築年帯 | 取引価格の中央値 | 500万円以下の割合 | 解体費120万円が価格に占める割合 |
|---|---|---|---|
| 築20年未満 | 3,400万円 | 0.3% | 3.5% |
| 築20〜29年 | 1,700万円 | 8.4% | 7.1% |
| 築30〜39年 | 1,100万円 | 22.2% | 10.9% |
| 築40〜49年 | 750万円 | 35.9% | 16.0% |
| 築50年以上 | 650万円 | 43.7% | 18.5% |
築30年を超えたあたりから、解体費が価格の1割を占め始めます。築50年以上では2割近くになり、4割以上の物件が500万円以下で取引されています。築50年前後の一戸建てがどう評価されるかは築50年の一戸建ての売却相場の記事で詳しく扱っています。
ここでいう解体費120万円は、木造30坪の目安90万〜150万円の中位値として置いた仮の数字です。実際の金額は「解体費用が高くなる家の条件」の章で挙げた条件で上下します。
なお、建物そのものに値段が付いているかどうかについては、当社が別の方法で集計した結果があります。同じ市区町村の土地だけの取引と比べると、築30年台の一戸建ては土地単価とほぼ並び(1.01倍)、築40〜49年は0.75倍、築50年以上は0.62倍でした。築30年を過ぎると、建物の値段が価格に表れにくくなるということです。集計の全体は空き家の売却の記事に載せています。
解体すべきかの答えは、地域で逆になる

前の章と同じ集計(国土交通省の取引データ85,058件)を圏域で割り、解体費を同じく仮に120万円と置くと、判断が分かれます。
| 圏域 | 築40年以上の取引価格の中央値 | 500万円以下の割合 | 解体費120万円が占める割合 |
|---|---|---|---|
| 首都圏(1都3県) | 1,400万円 | 21.6% | 8.6% |
| 近畿圏(2府2県) | 1,300万円 | 23.2% | 9.2% |
| 中京圏(3県) | 540万円 | 48.2% | 22.2% |
| 地方圏 | 520万円 | 49.5% | 23.1% |
解体費を同じ120万円と置いても、首都圏と地方圏では、その重みが2.7倍違います。
考え方はこうです。解体して更地にすると、建物が価格を押し下げていた分がなくなる代わりに、解体費が手元から出ていきます。押し下げていた分が解体費より大きければ壊す意味があり、小さければ古家付きのまま売るほうが手元に残ります。
首都圏のように取引価格の水準が高い地域では、押し下げ分が解体費を上回りやすく、更地にする判断が成り立ちます。一方、取引価格の中央値が520万円で、半数が500万円以下という地方圏では、仮に置いた120万円の解体費が価格の4分の1近くを占めます。押し下げ分がそれを超えないことのほうが多くなります。
ただし、これは地域の傾向であって、あなたの土地の答えではありません。押し下げ分がいくらかは、その土地に買い手がつくかで決まります。同じ市内でも、駅からの距離や前面道路の広さで結果は変わります。自分の土地がいくらくらいなのかを自分で調べる方法は路線価と実勢価格の記事にまとめています。だから解体を考える前に、現況のまま査定を受けて、建物付きでいくらなのかを先に知るのが順番として正しくなります。壊すか残すかの判断の手順そのものは、古家付き土地の売却の記事に整理しています。
不動産会社が解体を勧める家、勧めない家
売主から「解体したほうがいいですか」と聞かれたとき、当社が見ているのは次の点です。
勧めることが多い場合
- その地域で、買い手が「建物のない土地」を探している。周辺の取引に更地が多く、新築を建てる前提の需要がある
- 建物が中古住宅として見てもらえる状態にない。雨漏り・傾き・シロアリなどで、内覧しても購入検討につながらない
- 更地にすれば買い手の幅が広がると見込める。建て替え目的の個人と、分譲を考える事業者の両方が候補になる
- 解体してから売れるまでの期間が短く見込める。売れ残る期間が長いほど、上がった固定資産税を払い続けることになる
勧めない場合
- 再建築不可の可能性がある。建築基準法上の道路に2メートル以上接していない敷地では、壊すと原則として新しい建物を建てられなくなります。この確認をせずに解体するのは、取り返しがつきません
- 建物に用途がある。倉庫として使える、賃貸で貸せる、リフォームして住めるといった見方をする買い手がいる
- 土地の値段が解体費に対して小さい。取引価格の水準が低い地域のケースです
- 買主がすでに決まっていて、買主自身が解体を予定している。売主が先に壊す理由がありません
当社の札幌の店舗で、建物付きのまま売った例があります。築45年の戸建てで、見て分かる傾きがあり、塀と給排水管が隣地へ越境していました。土地として売るなら解体費が200万〜300万円かかり、売り出し価格590万円の3分の1から半分ほどにあたります。解体して土地として売る前提の価格も示されていましたが、越境は隣地と合意書を交わし、傾きは直すためのリフォームの見積もりを先に用意し、建物診断(専門家に建物の状態を調べてもらうこと)を行って買主が状態を確かめられるようにしたうえで、戸建てとして成約しました。壊すかどうかを決める前に、建物付きでいくらになるかを確かめる、という順番の例です。
境界が未確定のまま解体すると、隣地との境の目印が失われて後の測量が難しくなることもあります。境界の確認については確定測量の記事を参照してください。
解体の見積もりで不動産会社が見ている点
売主から見積書を見せてもらったとき、当社が確認するのは次の7点です。
- 「一式」で書かれた項目がないか。 本体工事以外が一式でまとめられていると、何が含まれているかが分かりません。付帯工事は品目ごとに分けてもらいます
- 付帯工事の対象が現地と合っているか。 庭木・塀・門扉・物置・カーポート・浄化槽・井戸を、現地を見ながら1つずつ突き合わせます
- 残置物の扱い。 「施主で処分」なのか「業者が処分」なのかで金額が変わります。業者が処分する場合は、一般廃棄物を扱う許可を持っているか、許可を持つ業者に頼むのかを確かめます。家電リサイクル法の対象品は別料金です
- 重機が入る道幅か。 入らない場合は手壊しの範囲と、その分の上乗せが見積書に反映されているかを見ます
- 石綿の事前調査が計上されているか。 調査は解体の規模を問わず法律で義務づけられており(「解体工事の流れと届出」で解説します)、調査の結果によって工法も金額も変わります
- 追加費用が発生する条件と単価。 地中障害物が出た場合の単価と上限を、着工前に書面で決めておきます
- 整地の仕上げ。 砕石を敷くのか、土をならすだけなのかで金額が違います。売却するなら、買い手に見せられる仕上げにしておくほうが有利です
相見積もりを取るときは、同じ条件で比べられるように、この7点を各社に同じ形で出してもらうのが要点です。総額だけを並べても、何が抜けているかが見えません。
更地渡しと現況渡し。契約でどう精算するか
売却とセットで解体するときは、契約の形が2つあります。それぞれ意味が違うので、言葉の確認から入ります。
現況渡しは、建物が建ったままの状態で引き渡す形です。解体するかどうかは買主が決めます。売主は解体費を負担しません。そのぶん、解体を前提に買う買主は自分が壊す費用を見込むので、その分が価格に反映されることが多くなります。売買契約には、たとえば「本物件は現況のまま引き渡す。買主が引き渡し後に解体する場合、その費用は買主の負担とする」といった特約を入れます。解体費の分を売買代金から差し引く形で合意し、買主が引き渡し後に解体する方法もあります。
更地渡しは、売主が引き渡しまでに建物を解体し、更地の状態で引き渡す形です。売買契約には「引渡しまでに売主の負担で建物を解体し、更地として引き渡す」といった特約を入れます。
更地渡しを選ぶ場合、実務上の要点は3つです。
- 解体の時期を、契約から引き渡しの間に収める。 解体には近隣挨拶から整地まで時間がかかります。工期を確かめずに引渡日を決めると間に合いません
- 解体費を売却代金から精算する形にできる場合がある。 手元に現金がなくても進められることがあります。ただし、解体費の支払いを決済日まで待ってもらえるかは解体業者によって違うため、先に確認が必要です
- 引き渡し前に、更地の状態を買主と一緒に確認する。 整地の仕上げや、残った基礎・ガラの有無で後から揉めることがあります
なお、土地を売るために建物を取り壊した場合の取壊し費用は、譲渡所得の計算上「譲渡費用」に含められます。国税庁は譲渡費用となるものとして「土地などを売るためにその上の建物を取り壊したときの取壊し費用とその建物の損失額」を挙げています。一方、修繕費や固定資産税のように資産の維持や管理のためにかかった費用は譲渡費用になりません。実際に適用できるかどうかは個別の事情によるため、税務署または税理士にご確認ください。
解体してから売れ残ったときにかかる費用
更地にして売れなかった場合、費用は解体費だけでは終わりません。
住宅が建っている土地には住宅用地の特例があり、200平方メートル以下の部分は固定資産税の課税標準が6分の1に軽減されています。建物を解体して更地のまま1月1日を迎えると、その年度の固定資産税からこの特例が外れます。
「6倍になる」と言われますが、実際はそこまで増えません。住宅用地でなくなった宅地の課税標準額には評価額の70%という上限があり、土地の固定資産税で見ても最大4.2倍です。さらに解体すれば建物分の税金がなくなるので、土地と建物を合わせた年額では、当社の試算(土地180平方メートル・評価額1,080万円、建物の評価額300万円の例)で約1.5倍でした。土地の評価額が高く建物が古いほど、この倍率は大きくなります。計算の中身は空き家の解体補助金の記事に載せています。
ただしこの例の1.5倍でも、売れない期間が長引けば毎年かかり続けます。加えて、更地は草が伸び、不法投棄の対象にもなるため、管理の手間は建物があるときと変わりません。土地が売れないときの考え方は土地が売れない場合の記事にまとめています。
解体は、売れる見込みが立ってからが原則です。
解体費用が払えないときの出口: 先に払わずに済む3つと、補助金

手元に解体費がないことを理由に、何年も動けないままになっている家は珍しくありません。解体しない選択肢を含めて、出口は、先に解体費を払わずに済む3つと、補助金の計4つです。
1. 現況のまま売る。 ここまで見てきたとおり、解体が正解とは限りません。建物付きのまま売れるなら、解体費を売主が先に払う必要はなくなります。ただし解体を前提に買う買主は、その費用を見込んだ価格を付けます。まずは現況で査定を受けてください。
2. 不動産会社の買取を使う。 買主を探さず、不動産会社に直接買い取ってもらう方法です。残置物や建物をそのままにして引き渡せることが多く、片付けと解体の費用を売主が別に支払わずに済みます。その費用は買取価格に織り込まれるため、価格は市場より低くなるのが一般的です。買取の仕組みは不動産買取の流れの記事で解説しています。
3. 更地渡しにして、売却代金から精算する。 「更地渡しと現況渡し」で触れたとおり、売買契約を結んでから解体に着手し、決済のときに精算する形が取れる場合があります。自己資金を用意せずに更地にできる可能性がある方法です。
4. 自治体の補助金を使う。 空き家の解体には補助制度がある自治体があります。上限額は調べた4件で10万円から200万円、補助率は3分の1から10分の9まで幅がありました。ただし交付決定の前に契約や着工をすると対象外になり、受付期間と予算枠にも締切があります。制度の探し方と申請の順序は空き家の解体補助金の記事にまとめています。
このうち1〜3は、自分で先に解体費を用意しなくてよい方法です。4の補助金は、工事が終わってからの後払いとしている自治体が多く、その場合は工事費をいったん全額立て替える必要があります(補助金を業者が直接受け取る仕組みを設けている自治体もあります)。補助金を当てにして払えない工事を始めることはできません。金融機関の解体ローンは自分で払う方法なので、ここには数えていません。使う場合は、金利や条件が商品によって大きく違うため、個別に確認してください。
解体工事の流れと届出
解体は、依頼してすぐ始まるものではありません。届出の期間があるためです。
- 現地調査と見積もり(1〜2週間)。複数社に依頼するなら同じ条件で
- 契約。工期・支払時期・追加費用の条件を確認する
- 石綿の事前調査。建築物の解体では、規模を問わず、工事を請け負った解体業者が調査を行うことが大気汚染防止法で義務づけられています。解体する部分の床面積の合計が80平方メートル以上の工事は、業者が調査結果を都道府県などへ報告することも義務です。売主(発注者)が自分で調査や報告をするわけではありませんが、調査の費用は見積もりに入ります。調査を行う人にも資格要件があり、2023年10月からは厚生労働大臣が定める講習を修了した者などが行う必要があります。調査結果の記録は3年間保存します
- 建設リサイクル法の届出。床面積の合計が80平方メートル以上の建築物の解体工事は、工事に着手する日の7日前までに、都道府県知事への届出が必要です(建設リサイクル法第10条第1項、同法施行令第2条第1項第1号)。届出は発注者(売主)の義務です。実務では業者が代理で行うことが多いのですが、義務者は発注者である点は知っておいてください
- 近隣への挨拶。工事の内容と期間を伝える
- 残置物の処分。家具や家電などは、解体の前に建物の所有者が処分しておきます。家庭から出るものは一般廃棄物なので、市区町村のルールに従うか、許可を持つ業者に依頼します
- 解体工事(木造30坪でおおむね1〜2週間)
- 整地
- 建物滅失登記。建物がなくなったことを登記簿に反映する手続きです。建物が滅失した日から1か月以内に申請しなければなりません(不動産登記法第57条)。正当な理由なく怠ると10万円以下の過料の定めがあります(同法第164条第1項)。土地を売るには建物の登記が残っていると支障が出るため、いずれにせよ必要な手続きです
石綿の調査と建設リサイクル法の届出は、どちらも80平方メートルという数字が出てきますが、別の制度です。前者は石綿の飛散を防ぐためのもので報告先に労働基準監督署も含み、後者は建設廃棄物の分別・再資源化のためのもので届出先は都道府県知事です。
家の解体費用でよくある質問
一軒家を解体して更地にする費用はいくらですか?
木造の30坪で90万〜150万円が目安です。ここに庭木・塀・物置などの付帯工事、残置物の処分費、整地費が加わります。家具や家電などの残置物は一般廃棄物なので、解体業者がまとめて処分できるとは限りません。前面道路が狭い、隣家が近い、石綿があるといった条件では上振れします。更地のまま1月1日を迎えると住宅用地の特例が外れ、土地と建物を合わせた固定資産税は、当社の試算(土地の評価額1,080万円・建物300万円の例)で約1.5倍でした。土地の評価額が高く建物が古いほど、この倍率は大きくなります。
木造一軒家の解体費用はいくらですか?
坪単価で3万〜5万円が目安です。20坪で60万〜100万円、30坪で90万〜150万円、50坪で150万〜250万円になります。ただしこれは解体業者が公表している価格帯で、条件のよい現場の目安です。重機が入れない、隣家が近いといった条件では上振れするので、複数の解体業者から同じ条件で見積もりを取って比べてください。
2階建ての一軒家の解体費用はいくらですか?
延べ床面積で決まるため、2階建てであること自体が高くなる理由にはなりません。むしろ同じ延べ床面積なら平屋のほうが高くなりやすい傾向があります。延べ床100平方メートルなら、平屋は基礎と屋根がそれぞれ約100平方メートル、2階建ては約50平方メートルずつになり、単価の高い基礎の斫りと屋根の撤去の面積が平屋では2倍になるためです。
100坪の一軒家の解体費用はいくらですか?
木造なら300万〜500万円が目安です。ただし延べ床100坪の住宅は敷地も広いことが多く、庭木・塀・付属建物といった付帯工事の量が増えます。本体工事より付帯工事で総額が動きやすい規模なので、見積書では付帯を品目ごとに出してもらってください。
家を解体すると固定資産税はいくら上がりますか?
更地のまま1月1日を迎えると住宅用地の特例(課税標準6分の1)が外れるため「6倍になる」と言われますが、住宅用地でなくなった宅地の課税標準額には評価額の70%という上限があり、土地の固定資産税で最大4.2倍です。さらに解体すれば建物分の税金がなくなるので、土地と建物を合わせた年額では、当社の試算(土地の評価額1,080万円・建物300万円の例)で約1.5倍でした。
家の解体費用が払えないときはどうすればいいですか?
現況のまま売る、不動産会社の買取を使う、更地渡しにして売却代金から精算する、自治体の補助金を使う、の4つが主な出口です。補助金は多くの自治体で後払いのため工事費の立て替えが要りますが、ほかの3つは先に自己資金で壊さずに済む方法なので、費用が理由で動けない場合は、解体の見積もりより先に売却の査定を受けることをお勧めします。
家を解体してから売るのと、そのまま売るのはどちらが得ですか?
地域と物件によって逆になります。当社の集計では、築40年以上の木造一戸建ての取引価格の中央値は首都圏で1,400万円、地方圏で520万円でした。取引価格の水準が高い地域では解体費を上回る効果が期待でき、低い地域では解体費のほうが重くなります。現況のまま査定を受けて、建物付きでいくらかを先に確かめてから判断してください。
まとめ: 見積もりを取る前に、壊した分が戻るかを確かめる
家の解体費用は、解体業者が公表している価格帯で見ると木造30坪で90万〜150万円が目安です。重機が入れる立地か、隣家との距離、解体業者ごとの坪単価で変わります。追加の請求で差がつきやすいのは付帯工事と残置物の処分費で、地中障害物のように着工前に確定できない項目もあります。見積もりの妥当性は、複数の解体業者から同じ条件で取った見積もりを比べて判断します。自治体の補助要綱に書かれた単価は補助の計算のための数字で、相場そのものではありません。
解体費そのものは、待っても下がることを期待しにくい状況です。工事の人件費の基準になる公共工事の労務単価は14年連続で上がり、平成24年度の約2倍になりました。
ただし、順番として先に確かめるべきなのは金額ではありません。壊した分が売値で戻るかどうかです。築40年以上の木造一戸建ての取引価格の中央値は、首都圏で1,400万円、地方圏で520万円。解体費を仮に120万円と置くと、占める重みが2.7倍違います。地方圏では半数が500万円以下で取引されており、この仮定では解体費が価格の4分の1近くを占めます。
そして、解体するかどうかを決める前に必要なのは、建物が建ったままの状態でいくらなのかという数字です。これが分からないまま壊すと、比べる相手がないまま費用だけが確定します。再建築不可の確認をせずに解体するのも避けてください。
当社の10秒査定は、住所と物件情報を入れるだけで、匿名で、電話番号の入力もなく概算価格を確認できます。解体の見積もりを取る前に、まず現況の価格を把握するところから始めてください。
本記事の相場は、解体業者・見積もりサイトが公表している価格帯を当社で10件確認したものです(2025〜2026年に公開されているもの)。公的な解体費の統計は存在しません。取引価格は国土交通省「不動産情報ライブラリ」の不動産取引価格情報(2024年第1四半期〜2025年第4四半期・宅地(土地と建物)・木造・用途が住宅・住宅地・土地面積100〜300平方メートル・特殊な事情のない取引85,058件)をもとに当社で集計したものです。物件データは当社10秒査定の利用履歴(2025年7月〜2026年7月・機械的な連続アクセスを除いた56,825件のうち一戸建て26,376件)の集計によります。行政の単価は国土交通省「空き家再生等推進事業」の資料、広島市・札幌市・大阪市・横浜市の各公式ページ(2026年9月16日確認)によります。労務単価は国土交通省「令和8年3月から適用する公共工事設計労務単価について」(2026年2月17日公表)によります。制度の内容・金額・受付期間は年度ごとに変わるため、申請前に必ず各自治体の最新の要綱をご確認ください。税務の取扱いは国税庁タックスアンサーNo.3255(令和8年4月1日現在法令等)によります。解体費用の実額は建物の構造・面積・立地により大きく変わります。
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