実家を売るか残すか。判断の順番と、売ると決めたあとの工程表・費用の総額

実家を売るか残すか。判断の順番と、売ると決めたあとの工程表・費用の総額

監修者
吉田 宏
吉田 宏(株式会社SUMiTAS 代表取締役社長)
  • 二級建築施工管理技士
  • 宅地建物取引士
  • 測量士補
  • 賃貸不動産経営管理士

親が施設に入った、相続が発生した、誰も住む予定がない。実家をどうするかを考え始めたとき、多くの方が最初に税金や相場を調べます。

しかし、当社サイトに実際に寄せられる検索を見ると、実家に関して調べられているのは税金よりも「ゴミ屋敷のまま売れるか」「相続人がいない家はどうなるか」といった、もっと手前の現実的な悩みです。

当社サイトの実家・相続関連クエリの検索表示回数。最多は「ゴミ屋敷 売却」の20,959回で、悩みの中心が税金ではないことを示す棒グラフ

実家の売却でつまずくのは、税金の計算ではありません。モノ(残置物)と人(相続人の合意)と時間(期限)です。だからこの記事は、制度の解説ではなく「実家をたたむ工程表と費用の総額」から始めます。読み終わったときに、何から手を付けるかが決まっている状態を目指します。

この記事の結論
  • 実家売却は「売る」より「たたむ」が本体。工程は実質1年仕事として逆算する
  • 費用の総額は「仲介手数料+α」ではない。遺品整理・登記・測量まで含めて見積もる
  • 兄弟間は「全員の合意が必要」で終わらせない。誰が・何を・どの順で、まで決める

実家売却で最初に決めるのは「いつ売るか」

実家の売却には、大きく2つのタイミングがあります。親が元気なうちに売る(生前売却)か、相続してから売るか。どちらが有利かは状況次第ですが、判断の軸は整理できます。

生前に売る相続後に売る
意思確認親本人の意思で進められる相続人全員の合意が必要
使える特例の例居住用の3,000万円特別控除(親が居住中の場合)相続空き家の特例・取得費加算など(要件あり)
手続き名義がそのままなので比較的単純相続登記を済ませてからでないと売れない
起きやすい問題親の住み替え先の確保遺産分割協議・残置物・空き家期間の維持費

親に判断能力があるうちは選択肢が広く、認知症などで判断能力を失うと、成年後見制度を使わない限り売却自体ができなくなります。「まだ早い」と思ううちが、実は一番動きやすい時期です。

実家じまいの全体像。実質1年仕事として逆算する

相続後に売る場合の工程を1枚にまとめました。首都圏の中古一戸建ては売り出しから成約まで平均100.9日(約3か月強)かかります(東日本レインズ「首都圏不動産流通市場の動向」2025年版)。その手前の遺産分割・登記・残置物処理を含めると、相続発生から引き渡しまでは実質1年前後を見込むのが現実的です。

相続発生から引き渡しまでの工程表。相続の整理2〜4か月、家をたたむ準備1〜3か月、売り出し〜成約約3か月、契約・引き渡し1〜2か月で、合計は実質1年前後になることを示す図解

ポイントは2つあります。

  1. 売り出しより前の工程が長い。遺産分割協議・相続登記・残置物処理で数か月かかるのが普通です。「売ろうと決めてから売り出せるまで」が想像以上に長いのです
  2. 期限のある特例がある。相続空き家の3,000万円控除などは適用期限が区切られています。使う可能性があるなら、工程表は期限からの逆算で組んでください

実家をたたむ費用はいくらか。総額で見積もる

「仲介手数料さえ見ておけばいい」と思っていると、実際には手前の工程で費用が積み上がります。モデルケースの目安をまとめました。

実家をたたむ費用の総額モデル。遺品整理15〜50万円、相続登記6〜10万円、確定測量45〜60万円、解体90〜150万円、仲介手数料約105.6万円で、合計の目安は約130万〜370万円

金額はいずれも目安で、物件の状態・地域・依頼先で変わります。重要なのは、「何にいくらかかる可能性があるか」を最初に全部並べておくことです。売却代金から引かれるものを把握していれば、手取りの見込みを大きく外すことはありません。

なお、解体は必ず必要なわけではありません。古い建物でも「古家付き土地」としてそのまま売る選択肢があり、解体費をかけない方が手取りが増えるケースもあります(この判断は別記事で詳しく扱います)。

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兄弟でもめないための進め方

実家売却の相談で実際に多いつまずきは、税金ではなく兄弟間の段取りです。「相続人全員の合意が必要」というのは知られていますが、問題は「では誰が・何を・どの順で進めるか」です。現場で機能している順番を紹介します。

  1. 言い出す人を決める。実家の話は誰かが切り出さないと始まりません。「このままだと維持費がかかり続ける」という事実(後述の放置コスト)を材料に、費用の話として切り出すと感情論になりにくいです
  2. 代表相続人を1人決める。不動産会社とのやりとり・書類集めの窓口を1本化します。全員が個別に動くと必ず情報がずれます
  3. 売却代金の分け方を先に合意する。不動産を売って現金で分ける方法を換価分割といいます。「売れてから考える」は揉める典型で、割合と諸費用の負担を売り出す前に書面(遺産分割協議書)にしておきます
  4. 「住みたい人」がいる場合は早めに表明してもらう。1人が住み続けたい場合、その人が他の相続人に代償金を払う方法(代償分割)もあります。売る前提で進めてから発覚すると、工程が振り出しに戻ります

もめてしまい協議が進まない場合は、弁護士や家庭裁判所の調停という手段になります。そこまで行くと時間も費用も大きく変わるため、「もめる前の段取り」に価値があるというのが現場の実感です。

売らずに放置するといくらかかるか

「今は決められないから、しばらくそのままにしておく」。この選択にもコストがかかっています。モデルケースで試算します(固定資産税10万円/年・戸建ての例)。

項目年間の目安
固定資産税・都市計画税約10万円
火災保険(空き家は割高になりやすい)約2〜5万円
水道・電気の基本料金(通水・通電を維持する場合)約2〜3万円
管理の手間・交通費(月1回の換気・草取りなど)約2〜10万円
合計年間おおよそ16〜28万円

5年放置すれば単純計算で約80〜140万円。さらに空き家は劣化が進みやすく、建物の価値は待っていて上がることは基本的にありません。加えて、管理されていない空き家は「管理不全空家」「特定空家」に指定され、市区町村から勧告を受けると固定資産税の住宅用地特例(最大6分の1)が解除される制度もあります。

「売る・貸す・住む」のどれでも構いません。決めないことだけが一番高くつく、というのが実家問題の構造です。

税金は「どの特例が使えそうか」だけ確認する

実家売却の税金は、使える特例で結果が大きく変わります。ただし、適用要件の判定と税額の計算は個別性が高く、最終判断は税理士か税務署への確認が必要です。ここでは「自分はどの特例を調べればいいか」の入口だけ整理します。

売却の状況別に、調べるべき税の特例を振り分けたフロー図。生前売却と相続空き家はそれぞれ3,000万円特別控除、相続税納付から3年10か月以内は取得費加算の特例
  • 親が住んでいる家を生前に売る場合 → 居住用財産の3,000万円特別控除を調べる
  • 相続した空き家を売る場合 → 相続空き家の3,000万円特別控除(耐震基準や売却期限などの要件あり)を調べる
  • 相続税を払って3年10か月以内に売る場合 → 取得費加算の特例を調べる

詳しい要件は国税庁のサイトで確認できます。当サイトの税金解説の各記事でも扱っていますが、「特例が使えるかどうかで売るタイミングを決める」のは順序が逆になりがちです。まず売却の意思と工程を固め、特例はその中で最大限使う。この順番をおすすめします。

実家の売却でよくある質問

実家がいくらで売れるか、まず知りたいのですが

不動産会社に問い合わせる前に、自分で調べる方法があります。国土交通省の「不動産情報ライブラリ」とレインズの「Market Information」で、地域ごとの実際の成約価格が公開されています。そのうえで具体的な金額感が欲しければ、SUMiTASの10秒査定なら住所と物件情報を入れるだけで、匿名・電話なしで概算価格を確認できます。相続人どうしの話し合いの材料としても使えます。

誰も住まないし売るのも迷う。選択肢は売却だけですか?

主な選択肢は5つです。①売却(仲介・買取)②賃貸に出す ③親族が住む ④空き家管理サービスで維持 ⑤どうしても引き取り手がない土地は相続土地国庫帰属制度の検討(建物が残っている場合は解体して更地にすることが前提です)。

それぞれ一長一短ですが、判断の軸は「その家に将来、誰かが住む具体的な予定があるか」です。予定がないまま維持する場合のコストは、前の章の試算のとおりです。

家財が残ったまま、正直ゴミ屋敷に近い状態でも売れますか?

売れます。実際、当社サイトの検索データでも「ゴミ屋敷 売却」が検索される回数は非常に多く、珍しい悩みではありません。選択肢は2つで、①遺品整理業者で片付けてから仲介で売る(高く売りやすい)②残置物ごと買取業者に売る(手間なく早い)。費用と手間、期間のどれを優先するかで選んでください。

遺品や仏壇はどう整理すればいいですか?

順番を決めておくと迷いません。①貴重品・書類(権利証・通帳・保険証券)の捜索 → ②形見分け → ③仏壇・位牌は菩提寺や仏具店に相談(閉眼供養) → ④残りを遺品整理業者へ。特に①は、後の相続手続きや売却手続きで必要になる書類が家の中に眠っていることが多く、処分より先に「探す」が鉄則です。

実家を売って後悔しないためには何に気をつければいいですか?

特別な対策があるわけではなく、この記事で述べてきた段取りに尽きます。工程を実質1年仕事として早めに逆算を始めること、費用を仲介手数料だけでなく総額(このモデルでは約130万〜370万円)で見積もっておくこと、売却代金の分け方を売り出す前に書面で合意しておくことの3点です。加えて、放置すれば年間おおよそ16〜28万円の維持費がかかり続けることを知っておくと、「決めないまま先送りする」という一番高くつく選択を避けられます。

まとめ: 工程表と総額がわかれば、実家の話は前に進む

実家の売却は、「売る」と決めることよりも、たたむ工程と費用の全体像が見えないことで止まります。逆に言えば、工程表(実質1年)と総額(このモデルでは約130万〜370万円)が見えれば、兄弟間の話し合いも費用の話として進められます。

最初の一歩は、実家がいくらになりそうかを知ることです。SUMiTASの10秒査定は匿名・電話なしで使えるので、「まだ売ると決めたわけではない」段階の材料集めにお使いください。

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本記事の市場データは、公益財団法人東日本不動産流通機構「首都圏不動産流通市場の動向」(2025年版)および当社サイトの検索データ(Google Search Console・過去16か月)を当社で集計・加工したものです。費用の目安は物件・地域により変動します。

監修者
吉田 宏
吉田 宏(株式会社SUMiTAS 代表取締役社長)
  • 二級建築施工管理技士
  • 宅地建物取引士
  • 測量士補
  • 賃貸不動産経営管理士

愛媛大学在学中に愛媛県で株式会社アート不動産を創業する。現在アート不動産では、アパマンショップ(賃貸)を5店舗、SUMiTAS(売買)を2店舗・管理センターを1店舗、売買店舗を2店舗運営。吉田 宏の詳細プロフィールはこちら