相続したくない土地はどうすればいい?選択肢と放置するリスクを解説

監修者
天池 篤哉
天池 篤哉(株式会社SUMiTAS 取締役)
  • 宅地建物取引士
  • 管理業務主任者
  • 賃貸不動産経営管理士

土地は資産になりますが、維持管理の大変さや税負担の重さから「相続したくない」と考えている方もいらっしゃるでしょう。

被相続人の財産がいらないときには、相続放棄をすれば相続せずに済みます。しかし、土地以外の財産を相続したいときや、相続人全員が相続放棄をしそうな状況であれば、本当に相続放棄をしていいものかと悩んでしまうと思います。

天池篤哉
天池篤哉

本記事では、いらない土地の相続で困ったときの選択肢や、相続登記をしないリスクを説明します。土地を相続したくないときには、どの方法を選ぶべきなのかを判断するヒントになると思いますので、ぜひ参考にしてください。

この記事の要約
  • 土地の相続を放棄し、維持管理や税負担を回避できるが、他の財産も放棄する必要がある。
  • 相続放棄が難しい場合、土地の売却や国庫帰属制度、寄贈、不動産引取業者の利用を検討する。
  • 相続登記を放置すると罰金や権利関係の複雑化などのリスクが生じるため、早急な対応が必要。

土地を相続したくないときには相続放棄の検討を!

土地を相続したくないときに検討すべきなのは、「相続放棄」です。家庭裁判所に相続放棄が受理されれば、土地を含めた全ての財産を相続する権利義務がなくなります。

しかし、相続放棄にはメリットもあればデメリットもあるため、慎重に判断しなければなりません。さらに土地を相続放棄するときには、管理義務に関して知っておきたい注意点もあります。まずは土地の相続放棄について、ここで詳しく確認していきましょう。

相続放棄のメリットとデメリット

まずは、相続放棄のメリットとデメリットを説明します。

【メリット】

  • 土地を相続しなくて済む(維持管理コストがかからない)
  • 借金やローンなどのマイナスの財産を相続せずに済む
  • 相続トラブルに巻き込まれにくくなる

【デメリット】

  • 相続放棄が受理されると撤回できない
  • 土地以外の財産も放棄しなくてはならない
  • 相続を知ってから3か月以内に手続きしなくてはならない

土地を相続すると、登録免許税や相続税、固定資産税などのさまざまな費用がかかりますが、相続放棄をすればこれらの費用は一切かかりません。借金やローンなどのマイナスの財産も引き継がずに済みます。
また、相続人間で財産をめぐってトラブルが起こりそうなときも、相続放棄をすれば争いを回避できるでしょう。

一方で、相続放棄が受理されると撤回はできず、土地以外の財産も全て放棄しなくてはならないなどのデメリットもあります。そして相続放棄の前提条件として、“相続を知った3か月以内に手続きする”という決まりがあるため、期限を過ぎてしまうと相続放棄はできません。

相続放棄のデメリットについてまとめた記事がありますので、ぜひこちらも参考にしてください。

相続人が全員相続放棄するとどうなる?

「法定相続人が全員相続放棄すると、土地はどうなってしまうのか」「相続放棄できるのか」と、心配に思う方もいらっしゃるでしょう。相続人がいなくなった不動産は、土地・家屋に限らず売却して現金にした後に国に継承されます。

売却の手続きは家庭裁判所が選出した「相続財産清算人」によって行われますが、相続財産清算人が決まるまでの間は、相続人に管理義務が残ります。

いらない土地の相続で困ったときの選択肢

天池篤哉
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「土地は相続したくないけれど、他の財産は相続したい」「相続放棄の期限を過ぎてしまった」などの理由で、土地を相続するしか選択肢がないケースもあるでしょう。

そのようなときには、

  • 相続してからすぐに売却する
  • 相続土地国庫帰属制度を利用する
  • 自治体に寄付する
  • 不動産引取業者を利用する

のうち、いずれかの方法で相続した土地を手放すことができます。それぞれ見ていきましょう。

相続してからすぐに売却する

土地の相続後は一定期間は所有しなくてはならないなど、所有期間に関する決まりはありません。そのため不要な土地は、すぐに売却することをおすすめします。

売却方法には、不動産会社を介して第三者に土地を売る「仲介」と、不動産会社に土地を買い取ってもらう「買取」があります。買い手が見つかりそうな土地ならば仲介、田舎の土地や特殊な形状の土地などは買取のように、土地の状態に合わせて売却方法を決めましょう。

また、山や崖地、田畑などの仲介も買取も難しい土地ならば、自治体が運営する「空き家バンク」を利用するのもひとつの手です。土地情報が多くの人の目に触れるよう、掲載先を増やしてみてください。

相続した土地をすぐに売るメリットや受けられる特例措置、売却方法などを詳しくまとめた記事がありますので、こちらも参考にしてください。

  • 土地を相続したらすぐに売却したほうがいい!理由と注意点を合わせてチェック

相続土地国庫帰属制度を利用する

「相続土地国庫帰属制度」は、負担金を払って国に土地を引き取ってもらう制度です。この制度を利用すれば、いらない土地を相続しても手放すことができます。

しかし相続土地国庫帰属制度の要件は厳しく、抵当権のような担保権が設定されている土地や土壌汚染されている土地、崖地などは引き取ってもらえません。

さらに審査には1筆あたり14,000円、負担金に20万円(ただし区域や用途地域によって異なる)がかかるなどのデメリットもあります。

仲介も買取も難しいときに、制度の利用を検討しましょう。

参考:法務省「相続土地国庫帰属制度について

自治体に寄贈する

施設を建てられるような広い土地や、公共利用ができそうな土地などは、自治体に寄贈を申し出れば引き取ってもらえる可能性があります。

ただし、引き取り後の税金は自治体が負担することになるため、自治体にとって引き取るメリットのある土地でなければ、申し出を断られてしまいます。再現性が低い方法ではありますが、寄贈を希望する方は市区町村役場に相談してみると良いでしょう。

不動産引取業者を利用する

不動産引取業者に相談すれば、手数料を払えば土地を引き取ってもらえます。

業者に依頼するメリットは、どのような状態の土地でも引き取ってもらえることです。相続土地国庫帰属制度では対象外になる土地でも、手数料さえ払えば手放せます。

料金の相場は40万〜100万円と決して安くはありませんが、この先土地を所有し続けることで必要になる固定資産税や管理費などを考えると、手数料を払ってでも手放したほうがいいケースもあるでしょう。

しかし不動産引取業者の中には所有者の「土地を手放したい」という悩みに付けこんで高額請求をするような悪質な業者もあるため、業者選びは慎重に行う必要があります。

相見積もりをするなどして、複数社を比較してから依頼しましょう。

いらない土地を相続登記せず放置するリスク

相続放棄にしても、相続した土地を手放すにしても、「手続きや行動するのが面倒」と感じた方も多いはずです。しかし面倒だからといって相続登記をしないでいると、さまざまなリスクが生じます。

ペナルティとして過料がかかる

2024年4月1日に施行された相続登記の義務化によって、相続を知った日、または施行から3年以内に相続登記をしなければ、10万円以下の過料が科せられる可能性があります。

過去にあった相続も対象となるため、相続したくないからという理由で土地を放置することは認められません。

権利関係が複雑になる

土地の相続登記を放置すると、権利関係がどんどん複雑になります。相続発生時には相続人が2人だったとしても、新たな相続の発生によって、3人、4人、5人と、雪だるま式に増えていくのです。

相続登記を行う際には相続人全員で遺産分割協議を行い、さらには戸籍謄本も必要なため、人数が増えるほど手続きが煩雑になります。新たな相続が発生する前に、できるだけ早く相続登記をしておきましょう。

相続したくない土地は放棄または売却の検討を!放置はリスク大

土地を相続したくないときには、相続を知ってから3か月以内であれば相続放棄を検討しましょう。「他の財産は相続したい」「期限を過ぎてしまった」など、相続放棄できない理由があれば、ひとまず相続登記をしてから、土地を手放す方法を考えてみてください。

売却、制度の利用、自治体への寄贈、不動産引取業者の利用など、いくつか選択肢がありますが、所有者にとって1番メリットが大きいのは売却です。

天池篤哉
天池篤哉

不動産会社に相談した結果、売却が難しいとわかったときに、制度の利用、自治体への寄贈、不動産引取業者の利用を検討しましょう。相続したくない土地で困ったときには、まずは不動産会社に相談し、自分にとってどの方法が適しているのかを考えてみてください。

監修者
天池 篤哉
天池 篤哉(株式会社SUMiTAS 取締役)
  • 宅地建物取引士
  • 管理業務主任者
  • 賃貸不動産経営管理士

2005年から不動産賃貸仲介営業で不動産業のキャリアをスタート。
物件マニアで、『従事している期間毎日10件内見する』という裏目標を立て、6年間実施。札幌市内の賃貸物件約18,000件を内見した。
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