家をすぐに現金化したいとき、選択肢になるのが不動産会社による「買取」です。買い手を探す仲介とちがい、不動産会社が直接買い取るため、早ければ数週間で引き渡しまで終わります。
ただし、最初に知っておくべきことが1つあります。買取の価格は、市場相場の6〜8割程度になるのが一般的だということです。多くの記事がこの数字を紹介していますが、「なぜそうなるのか」まで説明したものはほとんどありません。理由が分からないままでは、提示された金額が妥当なのか、安く買い叩かれているのか、判断のしようがありません。
この記事では、買取の流れと期間を7つのステップで整理したうえで、買取価格が6〜8割になる理由を、上場企業の決算数値を使って原価から分解します。そのうえで、仲介とどちらが得かの分岐、両方のいいとこ取りをする「買取保証」、避けたほうがよい業者の見分け方まで解説します。
- 買取は最短数週間で現金化でき、仲介手数料がかからず、内覧対応も不要
- 価格は市場相場の6〜8割程度が目安。これは再販事業の原価構造から来る数字で、根拠を確認できる
- 急ぐ事情がなければ仲介が有利なことが多い。「買取保証付き仲介」という中間の選択肢もある
- 複数社への査定依頼が、価格の妥当性を確認する唯一の現実的な方法
目次
買取とは。仲介との違いを2分で整理
不動産の売り方は大きく2つあります。買い手(個人)を探してもらう仲介と、不動産会社に直接買い取ってもらう買取です。
| 項目 | 買取 | 仲介 |
|---|---|---|
| 買主 | 不動産会社 | 個人の買い手を探す |
| 期間 | 数週間〜1か月程度 | 売り出しから成約まで平均100日超※ |
| 価格 | 市場相場の6〜8割程度が目安 | 市場相場 |
| 仲介手数料 | かからない | かかる(上限は価格×3%+6万円+税) |
※ 首都圏の中古戸建の平均(東日本レインズ2025年公表値・登録から成約まで100.9日)。この後に引き渡しの手続きが加わります。
※ 価格800万円以下の物件の仲介手数料には特例があり、事前の説明と合意を条件に、上限を超えて最大33万円(税込)まで認められる場合があります。
このほか買取には、内覧対応が不要(近所に売却を知られにくい)、契約不適合責任を免除する特約を付けるのが一般的(引き渡し後に欠陥が見つかっても、特約の範囲で責任を問われない)という特徴があります。時間と手間と確実性を買う代わりに、価格を譲る取引だと言えます。

不動産買取の流れ7ステップ
買取の実務は次の7ステップです。それぞれ、かかる期間の目安と準備するものを添えます。
STEP1: 相場を調べる(数日)
先に自分で相場観を持ってから査定に進むと、提示額の妥当性を判断できます。近隣の売り出し価格や、築年数別の売却相場が目安になります。当社の10秒査定なら、匿名・電話番号なしで概算価格を確認できます。
STEP2: 買取査定を依頼する(1〜3日)
買取に対応する不動産会社へ査定を依頼します。このとき必ず複数社に依頼してください。買取価格は会社の再販計画によって差が出るため、1社の提示だけでは相場が分かりません。複数査定は、後述する「安く買い叩かれるリスク」への最も現実的な防衛策でもあります。断り方に困る心配は無用です。査定後の断り方の記事にそのまま使える例文があります。
STEP3: 現地査定を受ける(1週間前後)
机上査定のあと、担当者が物件を確認して正式な買取価格が提示されます。必要書類は権利証(登記識別情報)・固定資産税納税通知書などです。査定に必要な書類の記事でそろえ方を確認できます。
STEP4: 買取条件を確認する(数日)
価格だけでなく、引き渡し日・残置物の扱い・契約不適合責任の特約を確認します。買取では「家具や荷物をそのままでよい」「引き渡し時期を住み替えに合わせられる」など、条件面の柔軟さも価値です。ここは会社によって差が出ます。
STEP5: 売買契約を結ぶ(1日)
価格と条件に合意したら売買契約です。契約書に印紙税(1,000万円超5,000万円以下で1万円・軽減後)がかかります。手付金の授受がある場合は、金額と解約条件を契約前に確認してください。
STEP6: 引き渡しの準備(1〜2週間)
ローンが残っている場合は金融機関へ一括返済の連絡をし、抵当権抹消の準備をします。住民票の移動や必要書類の取得もこの期間に行います。
STEP7: 決済・引き渡し(1日)
代金を受け取り、所有権移転登記と(該当する場合は)抵当権抹消登記を行って完了です。買取は買主が不動産会社のため、個人の買い手のような住宅ローン審査待ちがなく、ここまでの全体が数週間〜1か月程度で終わるのが一般的です。実際の日数は物件と会社によって異なるので、査定時に「最短でいつ引き渡せるか」を確認してください。
買取価格はなぜ6〜8割になるのか。原価から分解する
ここがこの記事の本題です。「6〜8割」は業界でよく使われる目安ですが、感覚の数字ではなく、再販事業の原価構造から逆算できる数字です。
買取をする不動産会社は、買い取った家をリフォームし、商品として再び販売します(買取再販)。つまり会社にとっての買取価格は「再販価格から、かかる費用と利益を差し引いた残り」です。
買取価格 = 再販できる価格 −(リフォーム費 + 保有・販売の費用 + 会社の利益)
実際の数字で確かめてみます。買取再販の全国最大手であるカチタスの決算資料(2026年3月期第1四半期)では、調整後の売上総利益率は24.8%と公表されています。つまり再販価格の約4分の1が粗利益(会社の利益と本社費用の原資)で、残りの約75%が「仕入れ(買取価格)+リフォーム費+取得にかかる諸費用」です。ここからリフォーム費と諸費用を差し引くと、買取価格はおおよそ再販価格の6〜7割前後に落ち着きます。買い叩きではなく、事業として成立させるための計算がこの水準なのです。

この構造が分かると、次の3つが判断できるようになります。
- リフォームの必要が小さい物件ほど、買取価格の割合は上がります。築浅や状態のよい物件は8割に近づき、大規模な修繕が要る物件は6割を下回ることもあります
- 再販しやすい立地ほど、買取価格の割合は上がります。会社が「確実に売れる」と読める物件は、保有期間が短く済み、その分を価格に載せられるからです
- 相場の半値のような提示は、この構造では説明がつきません。後述の「見分け方」で確認してください
なお、上記の粗利率は地方の戸建てを主力とする1社の公表値であり、物件種別や会社によって水準は変わります。目安として6〜8割、根拠は原価構造、と覚えておけば十分です。
買取と仲介、どちらが得か。分岐は「差額」と「事情」
価格だけ見れば仲介が有利です。問題は、その差額と引き換えにしているものです。数字で比べてみます。
例: 市場相場2,000万円の戸建てで、買取の提示が1,500万円(75%)だった場合
| 項目 | 買取 | 仲介 |
|---|---|---|
| 受け取る価格 | 1,500万円 | 2,000万円(想定) |
| 仲介手数料 | 0円 | 約72.6万円(上限) |
| 保有中の費用(固定資産税・管理) | ほぼなし | 売れるまで数か月分 |
| 手取りの目安 | 約1,490万円 | 約1,920万円 |
差はおよそ430万円です。この差額を埋められる事情があるかどうかが分岐になります。仲介の「2,000万円で売れる」はあくまで想定で、売れるまでの期間は平均100日超、売れなければ値下げの判断も入ります。それでも、期限がなければ仲介から始めるのが定石です。
買取が向いているのは、次のような場合です。
- 期限が決まっている: 住み替えの決済日、相続税の納付期限、転勤など。「いつまでに現金化」が動かせないなら、確実性に価値があります
- 近所に知られたくない: 売り出し広告も内覧もないため、売却を知られにくい売り方です
- 建物の状態に不安がある: 契約不適合責任を特約で免除する買取なら、引き渡し後の欠陥トラブルの心配を減らせます
- 仲介で売れにくい物件: 長期間売れていない土地や再販に手間のかかる物件は、買取が現実的な出口になることがあります。売れない土地の対処の記事も参考にしてください

古い家が建っている土地の場合は、「解体して更地で売る」「古家付きのまま仲介で売る」「建物ごと買取」の3択になります。この判断は古家付き土地の記事で詳しく解説しています。
買取保証付き仲介という第3の選択肢
「高く売りたい。でも期限までに売れないのは困る」。その場合に検討したいのが買取保証付き仲介です。一定期間(たとえば3か月)は仲介で市場に出し、期間内に売れなければ、あらかじめ決めた価格で不動産会社が買い取る仕組みです。
- メリット: 仲介の価格を狙いながら、「売れ残るリスク」に下限の保険をかけられます。住み替えの資金計画が立てやすくなります
- 注意点: 保証価格は通常の買取と同水準(市場相場の6〜8割程度)で設定されるのが一般的です。また、保証の条件として専任系の媒介契約や販売価格の設定方法に条件が付く場合があります。保証価格・保証の発動条件・期間中の値下げルールの3点を、契約前に書面で確認してください
取り扱いの有無や条件は会社によって異なります。当社でも買取保証付き仲介を取り扱っており、条件は物件によって変わるため、査定の際にご確認いただけます。いずれの会社でも、仲介と買取の両方を扱っていれば、物件を見たうえで「どちらから始めるべきか」の提案を受けられます。
避けたほうがよい買取業者の見分け方
買取の価格が市場より低いこと自体は、ここまで見たとおり正当な事業構造です。問題は、その構造を知らない売主との情報格差につけこむケースです。宅建業の立場から、確認すべきポイントを挙げます。
- 査定根拠を説明しない: まっとうな買取価格には「再販想定価格とリフォーム計画」という根拠があります。「どうやってこの金額を出しましたか」と聞いて、具体的な説明が返ってこない会社は避けてください
- 即決を迫る: 「今日返事をくれたらこの金額」という急かし方は、他社と比較させないための典型的な手法です。買取価格は数日で大きく変わるものではありません
- 他社への査定依頼を嫌がる: 複数査定は売主の当然の権利です。嫌がること自体が、価格に自信がないサインです
- 相場から極端に離れた提示: 市場相場の半値のような金額は、原価構造では説明がつきません。逆に、他社より不自然に高い提示のあとで、契約直前に減額してくる手口もあります。減額の可能性と条件を契約前に書面で確認してください
- 免許と処分歴を確認する: 買取を業として行う会社は宅地建物取引業の免許が必要です。免許番号は会社の表示やウェブサイトで確認でき、行政処分の履歴は国土交通省の「ネガティブ情報等検索システム」で誰でも調べられます
これらはすべて、複数社に査定を依頼するだけで大半を防げます。比較対象があれば、極端な提示は自然に浮き上がるからです。
よくある質問
買取は最短どれくらいで現金化できますか?
物件の権利関係や書類がそろっていれば、査定から数週間で決済まで進むケースがあります。ただし日数は物件と会社の体制によるため、「最短でいつ」を査定時に確認するのが確実です。期限がある場合は、最初にその期日を伝えてください。
買取でも税金はかかりますか?
仲介と同じです。売却で利益(譲渡所得)が出た場合に譲渡所得税・住民税がかかります。なお、買ったときの金額が分からない場合は「売却価格の5%を取得費とみなす」概算取得費という扱いがあり(国税庁)、税負担が重くなりがちです。購入時の契約書を探したうえで、土地売却の税金の記事で仕組みを確認し、具体的な計算は税理士にご相談ください。
マンションや空き家でも買取できますか?
物件種別ごとに再販のしやすさが異なるため、会社によって得意分野が分かれます。空き家の買取については空き家買取の記事で詳しく解説しています。
買取をやめて仲介に切り替えることはできますか?
売買契約前であれば可能です。むしろ「まず仲介で試して、期限が近づいたら買取」という順番のほうが、手取りを最大化しやすい進め方です。その中間が前述の買取保証付き仲介です。
まとめ: 価格の理由が分かれば、買取は怖くない
買取は「市場相場の6〜8割で、数週間で確実に現金化する」取引です。この割合の理由は再販事業の原価構造にあり、根拠を説明できる会社の買取は、決して不当な取引ではありません。判断のポイントは3つです。
- 期限・秘匿・建物の不安など、差額と引き換えにしたい事情があるか
- 複数社の査定で価格の妥当性を確かめたか
- 迷うなら買取保証付き仲介で、仲介の価格と買取の確実性を両立できないか
当社は仲介・買取・買取保証付き仲介のご相談を受けています。まずは10秒査定で、匿名・電話番号なしで概算価格をご確認ください。そのうえで「期限までにどう売るか」の段取りからご提案します。
本記事の数値は2026年8月時点の公表資料によります。成約までの期間・価格は東日本不動産流通機構「首都圏不動産流通市場の動向(2025年)」(中古戸建の登録から成約まで平均100.9日)、買取再販の売上総利益率は株式会社カチタス「2026年3月期第1四半期決算説明資料」(2025年8月7日公表・調整後売上総利益率24.8%)によります。同社は地方の戸建てを主力とする一例であり、買取価格の割合は物件・会社により異なります。仲介手数料の上限は宅地建物取引業法に基づく報酬告示、印紙税は租税特別措置法の軽減措置(2027年3月31日まで)によります。契約不適合責任の扱いは個別の契約内容によります。
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