【離婚の財産分与】婚姻中の財産を正しく清算しよう

離婚と財産分与、婚姻中の財産を正しく清算しよう

監修者
吉田 宏
吉田 宏(株式会社SUMiTAS 代表取締役社長)
  • 二級建築施工管理技士
  • 宅地建物取引士
  • 測量士補
  • 賃貸不動産経営管理士

知らないと損をする、夫婦が離婚する時の財産分与について詳しく説明します。
あなたはこんな勘違いをしていませんか?

  • 相手名義の財産は財産分与の対象にならない
  • 財産分与に時効や期限は無くいつでも請求できる
  • 専業主婦・主夫は財産分与の割合が少なくなる
  • 財産分与はされる側もする側も税金が課税されない
  • 住宅ローンが残っている家は財産分与できない

上記は全て間違いです!
財産分与の流れや方法を確認し、婚姻中に夫婦で築いた財産を正しく清算しましょう。

離婚する時の財産分与とは?

財産分与とは、婚姻中に夫婦が協力して築いた夫婦共同の財産を、離婚の時に夫婦で分けて清算することです。夫婦共同の財産であれば、名義がどちらであるかは関係ありません。

民法768条1項に「協議上の離婚をした者の一方は、相手方に対して財産の分与を請求することができる。」と定められています。財産分与は法律で認められている権利ですので、お互いが納得のいく清算方法を話し合いましょう。しかし、別居後に築いた財産は対象になりませんので注意してください。

離婚する場合の財産分与の割合は、原則2分の1です。共有財産が合計2,000万円の場合、1,000万円づつの50%です。名義や収入は関係なく分けます。

財産分与の財産の種類

財産分与には3種類があり、それぞれで内容が異なります。一般的に、離婚時の財産分与と言えば「清算的財産分与」を指します。

  1. 清算的財産分与
    夫婦が婚姻中に形成した財産を分ける
  2. 扶養的財産分与
    離婚して元配偶者が困窮する場合の扶養
  3. 慰謝料的財産分与
    元配偶者を傷つけたことに対して発生する慰謝料

① 清算的財産分与

婚姻中に夫婦が協力して築き・維持した財産は、夫婦の共有財産ですので離婚時には平等に分配します。婚姻前から所有していた財産や、婚姻後でも相続などで所有することになった財産については財産分与の対象になりません。

② 扶養的財産分与

経済力が弱く離婚することによって生活が困窮してしまう元配偶者に対して、財産分与として生活費の補助をすることです。例えば、子供が幼いために仕事に就くことが難しい、働くことができても収入が少ない、年齢が高く仕事に就くことが難しいなどの事情があるときです。

③ 慰謝料的財産分与

元配偶者を傷つけたことに対して発生する、慰謝料としての意味を持つ財産分与です
例えば、夫婦のどちらかに不貞行為や暴力行為などの有責行為があって離婚した場合、精神的・肉体的苦痛を受けた分の慰謝料を請求することができます。「慰謝料」は一般的に金銭で支払われますが、「慰謝料的財産分与」は金銭以外の財産を分与することもできます。

離婚時の財産分与の対象となる財産

財産分与の対象となる共有財産は下記が該当します。

  • 現金、預貯金
  • 婚姻中に購入した住宅などの不動産(マンション・戸建など)
  • 自動車
  • 夫婦の共同生活に必要な家具や家財、家電製品
  • 保険料(自動車・生命・損害・子どもの学資保険など)
  • 退職金、年金受給権
  • ペット
  • 有価証券(株式・国債など)、投資信託
  • 価値の高い品物(骨董品・美術品・宝石・着物など)
  • ゴルフ会員権
  • 負債(住宅ローン・子どもの教育ローンなど)

どの項目についても、基本的に財産分与の考え方は同じです。

売却で現金化した場合は現金を、売却せずにどちらかが持ち続ける場合は所有する側がしない側へ評価額の2分の1を支払います。ただし、割合は原則として2分の1であり、夫婦での話合いによってそのほかの要素を加味した割合で調整することも可能です。

財産分与の対象となる「共有財産」と、対象外の「特有財産」

離婚の財産分与の対象となる「共有財産」と、対象外の「特有財産」の図解

財産分与の対象になる「共有財産」とは?

婚姻中に夫婦が協力して築き・維持した財産は、夫婦の共有財産です。名義がどちらであるかは関係なく、財産分与の対象です。

財産分与の対象外となる「特有財産」とは?

特有財産とは、「婚姻前から所有していた財産」と「夫婦の協力とは無関係に取得した財産」のことです。結婚する前に貯めた預貯金や、婚姻中でも相続によって得た不動産は特有財産となるので財産分与の対象外です。

特有財産になるもの

特有財産は下記が該当します。財産分与の対象外です。

  • 結婚する前に貯めた預貯金
  • 婚姻中でも相続によって得た不動産
  • 嫁入り道具
  • 家族や親戚から贈与された財産
  • 結婚する前に取得した財産(負債を含む)
  • 婚姻中でも個人的に作った借金(趣味・浪費・ギャンブルなど)
  • 別居後に取得した財産
離婚時に財産分与の対象となる財産 離婚時に財産分与の対象となる財産

財産分与に時効はなく除斥期間が2年間

財産分与は離婚をするときに行うのが一般的ですが、離婚が成立した日から2年以内であれば財産分与を請求することが可能です。この期間を除斥(じょせき)期間といい、除斥期間を過ぎた場合は、相手側が任意で応じてくれない限り財産分与を請求することはできなくなります

除斥(じょせき)期間は離婚した日から2年間の図解

除斥期間が過ぎても財産分与ができるケース

  1. 相手が任意で応じ、お互いが合意する場合
  2. 相手が財産を隠していた場合

財産分与は除斥期間を過ぎると絶対に財産分与ができなくなるわけではありません。相手が任意で応じれば、財産分与は可能です。さらに、離婚をする時に財産分与をしたけれど相手が財産を隠していた場合は、離婚から2年を過ぎても損害賠償を請求できる可能性があります。

離婚時の財産分与の時効とは?除斥期間は離婚から2年

離婚の財産分与の割合は原則2分の1

離婚する場合の財産分与の割合は、原則2分の1です。共有財産が合計2,000万円の場合、1,000万円づつの50%です。名義や収入は関係なく分けます。

離婚する場合の財産分与の割合は、原則2分の1です。夫婦共働きのときも、どちらかが専業主婦(夫)のときも、離婚する時の財産分与の割合は半分づつです。

例外的に、どちらか一方の貢献度が高く2分の1が公平ではないと判断された場合は分与割合が変わることがありますので、このあと紹介します。

財産分与の割合が2分の1にならないケース

例外的に、財産分与の割合が2分の1にならないケースもあります。2分の1ルールで財産分与したときに不公平となる場合があるためです。具体的には下記のようなケースです。

  • 浪費が激しい場合
  • 特殊な能力・才能があり財産を築いた場合
  • どちらかの貢献度が高い場合

財産分与の裁判では各夫婦の事情が考慮されるため、詳しい内容は弁護士に相談することをおすすめします。

離婚時の財産分与の割合のルールと考え方 離婚の財産分与の割合とルール、基本の考え方

通常は財産分与に税金はかからない

通常は、離婚により財産分与をして相手から財産を受け取った場合、贈与税などの税金がかかることはありません。理由は、財産分与は婚姻中に夫婦が協力して築いた夫婦共同の財産を、夫婦で分けて清算することが目的のためです。贈与とは別の制度です。

しかし、財産分与の金額や分与する品物によっては、支払う方も受け取る方も税金が課税されますので確認しておきましょう。特にマンションや一戸建てなどの不動産や、高価な財産をお持ちの方は確認が必要です。

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離婚時に家を財産分与する方法

離婚時に家を財産分与する方法は、売るかどちらかが住み続けるかのどちらかです。

マンションや家などの不動産を財産分与する方法は、主に以下の2つです

家を売却して現金化するとしても、夫婦のどちらかが住み続けるとしても、お互いが新生活に向けて気持ちよく進める方法を選びましょう。

  1. 家を売却し、現金化して夫婦で分ける
  2. 家を売らずに住み続ける場合は、評価額を夫婦で分ける

① 家を売却し、現金化して夫婦で分ける【おすすめ】

夫婦が結婚中に共同で得た財産は、夫婦の共有財産になります。離婚するときにスムーズに家の財産分与を行うのであれば、家を売却し、現金化してから夫婦で平等に分ける方法がおすすめです。

不動産は資産価値が高くなりやすく、査定額により支払う金額や受け取る金額が大きく変動してきます。支払うべき金額と、受けとるべき金額を正しく判断できるように、信頼できる不動産会社に相談することが大切です。

SUMiTASは全国ネットワークの販売力で、条件のいい買主を迅速かつ的確に見つけることが可能です。また、不動産を売却して現金化してから財産分与した方が、節税になるケースがありますのでお気軽にSUMiTASまでご相談ください

② 家を売らずに住み続ける場合は、評価額を夫婦で分ける

家を現金化せずに財産分与をする場合は、不動産を査定して現在の評価額を算出し、原則としては評価額の半分を分与することになります。

後になって公平に分与されていないことが判明するとトラブルに発展することになりかねませんので、必ず不動産業者に査定を依頼しましょう

家を財産分与するときの流れ

家の財産分与を行う場合は、以下の5つのステップで行われます。

  1. 家の名義人を確認する
  2. 住宅ローンの契約名義人と残額を確認する
  3. 現在の不動産の価値を査定する
  4. 親の援助など特有財産が含まれているか確認する
  5. 夫婦で話し合う
離婚と財産分与、婚姻中の財産を正しく清算しよう 離婚の財産分与で家を分ける方法

家の住宅ローンが残っていても財産分与はできます

結論からお話しすると、住宅ローンが残っていても財産分与は可能です。しかし、住宅ローンの残債とマイホームの査定額によって、対処法が異なってきますので確認しましょう。

財産分与時の住宅ローンで確認すること4つ

住宅ローンが残っている状態で離婚と財産分与を検討している方は、まずは下記の4つを確認してください。その次は、信頼できる不動産業者に査定を依頼します。

  1. 住宅の名義人
  2. 住宅ローンの契約名義人
  3. 住宅ローンの残額
  4. 住宅ローンの保証人

住宅ローンの内容は、借り入れをしている金融機関に直接問い合わせると確認できます。上記の内容がわかっていると、財産分与に必要な手続きが把握できます。場合によっては土地・建物の名義と住宅ローンの名義が異なるケースもあります。

たとえば不動産は夫婦の共有名義であったとしても、住宅ローンの名義人は夫の単独名義の場合もあります。このような場合は、財産分与の割合を決める際に影響することになります。

夫婦の名義人と住宅ローンの関係は、下記の4パターンのどれかにあてはまると思います。

名義人と住宅ローンの関係4パターン①1人で組んだ②ペアローン③連帯保証④連帯債務

住宅ローンを確認したら不動産の査定依頼

次は、住宅の査定を不動産業者に依頼します。不動産の価値は流動的であり、購入時の価格より上がることもあれば下がることもありますので、財産分与をするときは必ず不動産の時価を調べます。

住宅ローンと離婚の財産分与について 離婚の財産分与で住宅ローンが残っている場合

財産分与をスムーズに進めるために

財産分与をする場合は、まず財産分与の対象となる財産の総額を正しく確定させることが大切です。その中でもマンションや一戸建てなどの不動産は価格が大きいため、総額に大きく影響します。不動産を所有している夫婦は、まず不動産の査定から進めると全体の金額を把握しやすいのでおすすめです。

離婚の財産分与、まずは不動産査定から

監修者
吉田 宏
吉田 宏(株式会社SUMiTAS 代表取締役社長)
  • 二級建築施工管理技士
  • 宅地建物取引士
  • 測量士補
  • 賃貸不動産経営管理士

愛媛大学在学中に愛媛県で株式会社アート不動産を創業する。現在アート不動産では、アパマンショップ(賃貸)を5店舗、SUMiTAS(売買)を2店舗・管理センターを1店舗、売買店舗を2店舗運営。吉田 宏の詳細プロフィールはこちら